2003/05/30 [前回まで] 部分空間の話 基本は、和とスカラー倍をチェックする 積集合は部分空間 和集合は部分空間となるとはかぎらない 和空間を定義した dim V = dim (Kern T) + dim (Img T) [今回] [Th. 4.7] W1, W2 : V の部分空間 この時 dim W1 + dim W2 = dim( W1 \cap W2 )+ dim( W1 + W2 ) が成立 # この内の三つが判れば、残りの一つが解る (prof) W1, W2, W1 \cap W2 の次元を r+s, r+t, r とする このとき、dim( W1 + W2 ) = r+s+t が成立すればよい。 W1 \sub (W1\cap W2) なので、(W1\cap W2) の基底、 を拡大して W1 の基底 が作れる ( 既出の定理 )。 同様に、W2 の基底 もえられる。 この時、 が W1 + W2 の 基底であることが示せれば、よい。 # が W の基底 # <=> # a,..,z が独立 # W の元は、a,..,z の線型結合で表される。 [表現性] x in W1 + W2 とする。 すると、W1 + W2 の定義より、 x = x1 + x2 ( x1 in W1, x2 in W2 ) とかける。 x1 in W1 より x_1 = \Sum_{i=1}^r \alpha_i a_i + \Sum_{j=1}^s \beta_j b_j 同様に x_2 = \Sum_{i=1}^r \alpha_i' a_i + \Sum_{k=1}^t \gama_k c_k よって、 x = x_1 + x_2 = \Sum_{i=1}^r \alpha_i a_i + \Sum_{j=1}^s \beta_j b_j + \Sum_{i=1}^r \alpha_i' a_i + \Sum_{k=1}^t \gama_k c_k = = \Sum_{i=1}^r (\alpha_i + \alpha_i') a_i + \Sum_{j=1}^s \beta_j b_j + \Sum_{k=1}^t \gama_k c_k つまり、表現できる [独立性] 線型和 \Sum_{i=1}^r \alpha_i a_i + \Sum_{j=1}^s \beta_j b_j + \Sum_{k=1}^t \gama_k c_k = 0 とする。これより、 \Sum_{i=1}^r \alpha_i a_i + \Sum_{j=1}^s \beta_j b_j = - \Sum_{k=1}^t \gama_k c_k ここで、左辺は W1 の要素 右辺は W2 の要素 となる。つまり、これは、W1 にも入るし、W2 も 入るので W1 \cap W2 に入ることになる。 が W1 \cap W2 の基底なので、左辺も右辺も \Sum_{i=1}^r \alpha_i' a_i の形でかける。 右辺 = \Sum_{i=1}^r \alpha_i' a_i より、 これは、W2 の基底の線型なので、各係数は 0 同様に、右辺も各係数が 0 なので、 def (直和) V = W1 + W2 であり、V のベクトルを W1 と W2 のベクトル和 として、表すしかたが一意的のとき、V を W1 と W2 の直和 といい、 V = W1 \directsum W2 で表す。 Th. V = W1 + W2 の時、次の性質は同値 (1) V = W1 \directsum W2 (2) W1 \cap W2 = {0} (3) dim V = dim W1 + dim W2 (prof) (2) <=> (3) Th.4.7 より Okey (2) => (1) W1 \cap W2 = { 0 } とする。 いま、x in V が x = x1 + x2 = x1' + x2' と二通りに書けたとする。これから x1 - x1' = x2 - x2' 左辺は、W1 の要素、右辺は W2 の要素なので、 この式は、共に W1 \cap W2 の要素 ところが、W1 \cap W2 の要素は 0 だけなので、 x1 - x1' = x2 - x2' = 0 よって、 x1 = x1', x2 = x2' が成立する。つまり、これは x が一意に表現される ことを意味する。 (1) => (2) これの対偶すなわち ~(2) => ~(1) を示す。 a ( in W1 \cap W2 ) != 0 とする。 0 = 0 + 0 = a + (-a) と二通りに表現される。よって、示せた。 例 4: V = Mn(K) W1 = { x in V | tx = x } W2 = { x in V | tx = -x } とすると、 V = W1 \directsum W2 (prof) x in V のとき x = ( ( x + tx ) / 2 ) + ( ( x - tx ) / 2 ) と表現できる。この時、前者を x1, 後者を x2 と すれば、tx1 = x1, tx2 = - x2 となるので、 x1 in W1, x2 in W2 よって、V = W1 + W2 は成立。 後は、th 4.8 を利用する。 # 実は、V, W1, W2 の次元はすでに判っているので # (3) でも良いが、ここでは (2) を利用する。 x in W1 \cap W2 とする x in W1 より tx = x x in W2 より tx = -x よって、x = tx = -x なので x = 0 つまり W1 \cap W2 = {0} def (和空間) W1, .., Wk が V の部分空間に対して、その和空間を W1 + .. + Wk = { x1 + .. + xk | xi \in Wi } と定義すると、これは、V の部分空間になる これを、W1 + .. + Wk の和空間と呼ぶ。 Th. V = W1 + .. + Wk の時 dim V <= \Sum_i^k dim W_i (prof) 定理 4.7 を i の数に関して帰納的に適用する。 特に表し方が一通りの場合は、 V = W1 \directsum .. \directsum Wk で表し、直和と呼ぶ。 Th 4.9 V = W1 + .. + Wk の時、以下は同値 (1) V = W1 \directsum .. \directsum Wk (2) Wi \cap { W1 + .. + Wi-1 + Wi+1 + .. + Wk } = {0} (for i=1..,k) (3) dim V = dim W1 + .. + dim Wk (prof) k ( > 1 ) に関する帰納法で示す。 k=2 の時 Th 4.8 の場合なので Okey k>2 で k-1 で成立するとする。この時 k について (1) => (3), (3) => (2), (2) => (1) をそれぞれ示せばよい。 なお、以下では、 Ui = W1 + .. + Wi-1 + Wi+1 + .. + Wk とする。 (1) => (3) U1 = W2 \directsum .. Wk V = W1 \directsum U1 (prof) (前) x in U1 とすると x は V の元なので、 x = x1 + .. + xk ( Uniq ) 一方、U1 = W2 + .. + Wk よって、 x = x2' + .. + xk' ところが、x の表現の一意性より x1 = 0, x2 = x2' .. より、x = x2' + .. + xk' は Ui の中で一意に 表現できる。つまり U1 は W2 \direcsum .. Wk (後) また、 x in V とすると、 x = x1 + x2 + .. + xk = x1 + ( x2 + .. + xk ) つまり、後者は Ui の要素 同様に、x = x1' + u' in ( W1 \direcsum U1 ) とするとこれも一意。 よって、 u' = x2 + .. + xk x1' = x1 なので、 V = W1 \directsum U1 以上により dim V = dim W1 + dim U1 = dim W2 + dim ( W1 \directsum .. Wk ) = dim W2 + dim W1 + .. + dim Wk ( 帰納法の仮定 ) (3) = 2 V=Ui + Vi dim Ui + dim Wi > dim V dim Ui >= dim V - dim Wi = \SUm dim Wj (j!=i) 一方、 dim Ui < sum Wj よって、 dim Ui = sum Wj 4.8 より Wi \cap Ui = {0} 2 => 1 x in V が 二通りに表されたとする。 x = x1 + .. xk = x1' + .. xk これより、 x - x' = sum (xk-xk') 右辺は Wi, 後半は Ui なので、 Wi cap Ui = {0} より、 x = x' つまり、一意 補題 V = W1 + .. + Wn => dim V <= \Sum dim W1 (prof) まにあわなかった.. § 5. 線型写像と、特に線型変換 { T | K^n -> K^n 線型写像 } -> Mmn(K) in in T |-> A T = T_A T から、A を得るにはどうすればよいかというと.. e1, .., en in K^n ( where ei = ( 0 .. 1 ... 0 ) ) ^ i 番目 を取り、 A = (Te1,..,Ten) とする。 例 1: P_n(K) = { n 次以下の K 係数多項式 } T_b : P_n(K) -> Pn(K) in in f |-> T_b(f) T_b(f)(x) = f(x+b) ( b in K ) これは、線型変換 (prof) # 和と定数倍をチェック T_b(f+g)(x) = (f+g)(x+b) = f(x+b) + g(x+b) = T_b(f)(x) + T_b(g)(x) T_b(c f)(x) = (c f)(x + b) = c ( f(x+b) ) = c T_b(f)(x) よって、T_b は線型変換 例 2: V = { {xn} | x_{n+k} + a_{k-1}x_{n+k-1} + .. + a_1 x_{n+1} + a_0 x_n = 0 } (n = 0, .. ) の時 T : V -> V in in {x_n} {x_{n+1}} これは、線型変換 (prof) x in V の時、T(x) in V は明か => 線型性だけを言えばよい T( {x_n} + {y_n} ) = T ( {x_n + y_n} ) = {x_{n+1} + y_{n+1} } = {x_{n+1}} + { y_{n+1} } = T({x_n}) + T({y_n}) T( c{ x_n } ) = T( { c x_n } ) = { c x_{n+1} } = c { x_{n+1} } = c T( { x_{n} } ) よって、T は線型 例 3: V = { y=f(x) | d^k y/d x^k + a_{k-1} d^{k-1}/d x^{k-1} + .. + a_0 y = 0 } (n = 0, .. ) の時 D : V -> V in in y |-> dy/dx (prof) まず、 d^k y/d x^k + a_{k-1} d^{k-1}/d x^{k-1} + .. + a_0 y = 0 の両辺を微分すると、 d^{k+1} y/d x^{k+1} + a_{k-1} d^{k}/d x^{k} + .. + a_0 dy/dx = 0 ここで、各項のdy/dx を括ると d^k/d x^k (dy/dx) + a_{k-1} d^{k-1}/d x^{k-1}(dy/dx) + .. + a_0 (dy/dx) = 0 なので、dy/dx も元の式を満す。 # つまり y in V ならば、 Dy in V 線型性は、D が微分なのであきらか