§6 計量線型空間 def V:K-線型空間が、次の公理(IV) を満すとき、 計量(線型)空間/内積空間 と呼ぶ、 (IV) x, y in V に対して、「内積」と称する (x,y) in K が定まり 以下を満す (1) (x, y1+y2) = (x, y1) (x,y2) (x1+x2, y) = (x1, y) (x2,y) (2) (cx,y) = c(x,y), (x,cy) = \~c(x,y) (3) (x,y) = \~{(y,x)} (4) (x,y) >= 0 特に、 (x,x) = 0 <=> x = 0 特に、 実計量空間をユークリッド空間 複素計量空間を ユニタリ空間 と呼ぶ。 def (長さ) ||x|| = |x| = \sqrt{(x,x)} >= 0 を、x の長さ (ノルム) と呼ぶ def (直交) x, y が直交 def (x,y) = 0 例 1. x,y in K^n に対して x = (x1,...,xn) y = (y1,...,yn) (x,y) def ^tx \~y = \t\~y x = x1\~y1 + x2\~y2 + .. + xn\~yn で定義すれば、公理 (IV)を満すので、計量空間になる。 例 2. V^2(V^3) (x,y) def |x||y|\cos{\thita} と定義すれば普通に 平面ベクトル、空間ベクトルは、計量空間になる。 例 3. f, g in V = Pn(R) # Pn(R) は 実数(R)係数の n 次の多項式全体の集合 に、対し、 (f,g) def \int_{-1}^{1} f(x)g(x) dx とすれば、(IV) を満す。 prof) (1)-(3) は積分の性質より明か (4) => (f,f) = \int_{-1}^{1} f(x)f(x) dx >= 0 は成立 <= いま、区間 [-1,1] の中で f(a) != 0 となる a があると仮定する。 f(x) は、区間[-1,1] で連続なので、 \exist \deta s.t. -1 <= a - \deta < a + \deta < 1 \all x in [a - \deta, a + \deta] => |f(x) - f(a)| < \frac{1}{2}|f(a)| である。 したがって、 x in [a - \deta, a + \deta] => f(x) >= \frac{1}{2} f(a) よって、 \int_{a - \deta}^{a + \deta} f(x)^2 dx >= \frac{1}{4}\int_{a - \deta}^{a + \deta} f(a)^2 dx = \frac{\delta}{2}|f(a)|^2 > 0 つまり、 \int_{-1}^{1} f(x)f(x) dx = \_{-1}^{a - \deta} + \_{a - \deta}^{a + \deta} + \_{a - \deta}^{1} + > 0 となり、f(x) ≡ 0 でなければ、(f,f) = 0 とならない ことがわかる。 同様にして、Pn(C) にたいしても、 (f,g) = \intt_{-1}^{1} f(x)\~g(x) dx とすればよい。 # 複素数を考えるときには、(x,cy) = \~c(x,y) となる # 工夫をすれば、実計量空間を複素計量空間に拡張できる。 == def V: 計量空間、 W は V の部分線型空間の時、W は V の内積を使って 計量空間になる W は V の部分計量空間 == Th. [6.1] |(x,y)| <= |x| |y| (シュワルツの不等式) |x+y| <= |x| + |y| (三角不等式) # これは、実の場合と複素の場合の両方を考える必要があるが、 # 複素で成立すれば、自動的に実でも成立するので、複素だけを # 議論する。 (prof) # (4) y=0 の時 両辺が 0 なので、成立する y!=0 の時 まず、 0 <= |ax+by|^2 = (ax+by,ax+by) が成立する。 そこで、これを展開すると.. = a\~a(x,x)+a\~b(x,y)+b\~a(y,x)+b\~b(y,y) = |a|^2|x|^2 + a\~b(x,y)+b\~a\~(x,y)+|b|^2|y|^2 ここで、a=|y|^2, b=-(x,y) を代入すれば、 = |y|^4|x|^2 - |y|^2 \~(x,y)(x,y) - |y|^2 \~(x,y)(x,y) + |(x,y)|^2 |y|^2 = |y|^4|x|^2 - |y|^2|(x,y)|^2 つまり |y|^4|x|^2 >= |y|^2|(x,y)|^2 よって、両辺を |y|^2 > 0 で割れば |y|^2|x|^2 >= |(x,y)|^2 両辺の平方根をとれば、 |y||x| >= |(x,y)| # (5) |x+y|^2 = (x+y,x+y) = (x,x) + (x,y) + (y,x) + (y,y) = |x|^2 + (x,y) +\~(x,y) + |y|^2 <= |x|^2 + 2|x||y| + |y|^2 because) z = x + yi in C の時 z + \~z <= 2|z| prof) z + \~z = 2x |z|^2 = x^2 + y^2 2|z| = 2\sqrt{x^2+y^2} >= 2|x| > 2x = z+\~z = (|x|+|y|)^2 だから、両辺の平方根をとって |x+y| <= |x| + |y| [6.2] 0 でないベクトル x1, .., xn が互いに直交していれば、互いに独立 prof) c1 x1 + .. + cn xn = 0 とすると.. ( c1 x1 + .. + cn xn, xi ) = ( 0, xi ) 左辺は、 ci(xi,xi) 右辺は、 0 となるので、 ci(xi,xi) = 0 ここで、(xi,xi) > 0 より、 ci = 0 つまり、x1, .., xn は独立。 def. (計量空間 V) のベクトル e1, .., en が互いに直交し、かつ長さが 1 の時、 # 即ち、(ei,ej) = \delta_{i,j} 「正規直交系」と呼ぶ。特に、e1, .., en が基底の時には、「正規直交基底」 と呼ぶ。 == シュミットの直交化法 # 正規直交基底を探すための手段の一つ ## !! 試験に出る e1, .., er が正規直交系 a : e1, .., er で表せない ( a が e1, .., er と独立 ) の時、 a' = a - (a,e1)e1 - (a,e2)e2 - .. - (a,er)er にかんして a' != 0 (a', ei) = 0 ( i = 1, .., r ) が成立する。 prof) 前 a'=0 と仮定すると a = (a,e1)e1 + (a,e2)e2 + .. + (a,er)er となる。 これは、a が e1, .., en に独立であることに矛盾 後 (a',ei) = (a,ei) - ((a,e1)e1,ei) - ((a,e1)e1,ei) - .. ((a,er)er1,ei) = (a,ei) - 0 - ((a,ei)ei,ei) - 0 = (a,ei) - (a,ei)(ei,ei) = (a,ei) - (a,ei) 1 = 0 ここで、e_{r+1} = a'/|a'| とすれば、 は、正規直交系になる。 Th. _K = _K prof) e_{r+1} = \frac{1}{|a'|}( a-(a,e1)e1-..-(a,er)er) in _K a = (a,e1)e1+..+(a,er)er+(a,e_{r+1})e_{r+1} in _K == 次の手順により、独立なベクトル列 a1, .., ar から 正規直交系 e1, .., er が得られる。 1) e1 = a1 / |a1| i) e1, .., ei が正規直交系の時 ai+1' = を e1, ei で正規かすればよい == Th.[6.3] 任意の 計量線型空間 V ( != {0} ) は、正規直交基底を持つ。 prof) V の基底 a1, .., an を取りこれをシュミットの直交化を行えばよい。 例 4. a1, a2, a3 in V^3 を考える。 e1 は a1 / |a1| e2 は、a2 から e1 への射影をとれば、その足は e1 と直交する 足a2'は、a2' = a2 - (a2,e1)e1 になっているが、これはシュミットの直交化 になっている。 同様に、e1, e2 の張る平面への a3 の射影を考えると、その足が e1, e2 に直交していることがわかる。 # 要素が複素数の場合は、片方が共役になることに注意 # 特に、「長さ」の結果は必ず負でない実数になることに注意