2003/10/17 # ずっと、対角化の話をしてきた。 # 前回、[例 8]をやった.. ( ちょっと、復習 ) [例 8] V = { {x_n} | x_{n+3} - 4x_{n+2} + x_{n+1} + 6x_{n} = 0 } は、3 次元の線型空間 基底として、 e_0 = { 1, 0, 0, .. } e_1 = { 0, 1, 0, .. } e_2 = { 0, 0, 1, .. } がとれる。 T : V -> V として、 要素を一つシフトする写像を取ると、これは線型変換 これの上記の基底にかんする T の行列 A をとると 0 1 0 A = ( 0 0 1 ) -6 -1 4 で、これの固有値は、 x = -1, 2, 3 となる。これに対する固有ベクトルは、 f_1 = { (-1)^n } f_2 = { 2^n } f_3 = { 3^n } となり、 { x_n } \in V は、 { \alpha f_1 + \beta f_2 + \ganma f_3 } 更に、P を E から F へのとりかえ行列とすれば、 \alpha x_0 P^{-1}( \beta ) = ( x_1 ) \ganmma x_2 となるので P^{-1} がわかれば、初項 x_0, x_1, x_2 が決れば、 ( それから、上記の \alpha, \beta \gamman ) がわかり、 それら初項を持つ一般項を求めることができる。 # 漸化式ができれば、それに対応して、微分方程式も求められる。 [例 9] V = { y=f(x) | \frac{d^3y/dx^3} - 4\frac{d^2y/dx^2} + \frac{dy/dx} + 6 y = 0 } は、3 次元の線型空間 E = < e_0, e_1, e_2 > e_i^(j)(0) = \delta_{i,j} ( i, j = 0, 1, 2 ) とすれば、線型変換 D : V ---> V \in \in y |-> dy/dx に関する行列 A は、 0 1 0 A = ( 0 0 1 ) -6 -1 4 となり、固有値は、 x = -1, 2, 3 となる。これに対する固有ベクトルは、 D y_1 = - y より y_1 = e^{-1} # 本来は、積分定数 C を利用して、 # y_1 = C e^{-1} となるが、定数倍しても、同じなので、 # C = 1 としてもよい。 y_2 = e^{2} y_3 = e^{3} となり、 y ( \in V ) = { \alpha y_1 + \beta y_2 + \ganma y_3 } なので、 \alpha x_0 P^{-1}( \beta ) = ( x_1 ) \ganmma x_2 となる P がえられれば、初期条件 f(0) = x_0 f'(0) = x_1 f''(0) = x_2 にたいする任意の微分方程式の解を得ることができる。 # 微分方程式や漸化式の一般解を求めるために、対角化が利用できる。 == Sec. 2 ユニタリ空間の正規変換 # ユニタリ空間 : 線型空間かつ、内積が入っている。 V : ユニタリ空間, T : V 上の線型変換 E : 正規直交基底 A : E に関する T の行列 A^{*} = \var{{}^tA} : A の随伴行列 T^{*} : E に関するの行列が A^{*} になるような V の線型変換 T = \phai^{-1}T_A\phai の時 T^{*} = \phai^{-1}T_{A^{*}}\phai となる。 この T^{*} を T の随伴変換と呼ぶ。 [prop.] (T^{*}x,y) = x,Ty) ( \forall x,y \in V ) prof) (T^{*}x, y) = ( \phai T^{*}x, \phai(y) ) # \phai は内積を変えないので.. = ( T_{A^{*})\phai x, \phai(y) ) = ( A^{*}\phai x, \phai(y) ) = ( A^{*}\phai x, \phai(y) ) .. = ( \phai(x), \phai(Ty) ) # T^{*} の定義にはは、E を利用しているので、場合によっては、 # E が異れば、T^{*} が異なる可能性がある。したがって、 # ( 定義が well defined であるためには.. ) T^{*} が、 # E の取りかたによらないことをチェックする必要がある。 E' での随伴変換を T' とすれば、 (T'x,y) = (T*x,y) = (x,Ty) なので T' = T* def. T がユニタリ変換とは、 T^{*} = T^{-1} ( A がユニタリ行列 : A^{*} = A^{-1} ) T がエルミート変換とは、 T^{*} = T ( A がエルミート行列 : A^{*} = A ) prop. A : E に関する T の行列 T : エルミート <=> A : エルミート def. Tが正規変換とは、 T^{*}T = TT^{*} # エルミート変換や、ユニタリ変換は、特別な正規変換 # 正規変換は、かならず、対角化できる ( しかも、正規基底で.. ) Th.[2.1] T,S : V の線型変換 ( ここで、V は、線型空間でよい ) TS = ST ならば、T, S は少くても、一つの共通な固有ベクトルをもつ。 prof) T の固有値 \alpha に対する固有空間を W とする W は、(定義により)T-不変であるが、実は、S-不変でも ある。 実際、x \in W について T(S x) = S( T x) = S \alpha x = \alpha S x よって、 S x \in W S_{W} の一つの固有ベクトル a をとれば、 a は、 S の一つの固有ベクトルかつ、T の固有ベクトル Th[2.2] T,S : V の線型変換 TS = ST => \exist W0,..,Wn : V の部分変換 ( n は V の次元 ) s.t. 1) W_i は T-不変、かつ S-不変 2) {0} = W_0 \sub W_1 \sub .. \sub W_n = V 3) dim W_i = dim W_{i-1} + 1 # 2), 3) を満すには、適当な V の基底をとり、それをひとつずつ、 # をついかするだけでよい。問題は、1) を満すものをどうさがすか? prof) n に関する帰納法で行う。 n=1 の時 {0} = W_0 \sub W_1 = V は明かに成立 n が一般の時 n-1 で成立すると仮定する。 T^{*},S^{*} を T, S の随伴変換とする。 TS=ST より T^{*}S^{*}=S^{*}T^{*} そこで、[2.1] より、\exist a s.t. T^{*} と S^{*} の共通固有ベクトル よって、この a を使い、a の直交空間を W_{n-1} とする。 つまり、 W_{n-1} = _{C}^{直交} = { v \in V | (a,v) = 0 } とすると、 n - 1 次元空間 で、しかも T-不変、かつ S-不変 実際、 \all x \in V (a, Tx) = (T^{*}a, x) = (\alpha a, x ) = \alpha ( a, x ) = \alpha 0 = 0 よって、Tx \in W_{n-1}。 つまり W_{n-1} は T-不変 同様に、S-不変 T' = T_{W_{n-1}}, S' = S_{W_{n-1}} とすれば、 T'S' = S'T' よって、帰納法の仮定より、 1) W_i は T'-不変、かつ S'-不変 2) {0} = W_0 \sub W_1 \sub .. \sub W_{n-1} = W_{n-1} 3) dim W_i = dim W_{i-1} + 1 がとれるで、これに V = W_n を追加すれば、結論がでる。 Th.[2.2'] AB=BA => \exist U : ユニタリ行列 s.t. U{-1}AU, U{-1}BU : 上三角行列 V=C^n T=T_A S = T_B すると、[2.2] より W_i がとれる。 W_i の元で W_{i-1} と直交する元を u_i とすれば E = < u_1, ., u_n > は正規直交系 E 関する T_A の行列 C は 上三角 prof) T_A u_i \in W_i より T_A u_i = c_{1i}u_1 + .. + c{ii} u_i つまり、 C は対角行列 更に、 (u_i, T_A u_j) = c_{ij} U{-1}AU = U*AU = C なので、対角化される。 [[ 正規直交系を並べた行列は、ユニタリ行列。 prof) U = ( u_1, .., u_n ) とすると、 \var{{}^tu_1} U^{*} = ( \var{{}^tu_2} ) \var{{}^tu_n} U^{*}U = ( ( \var{{}^tu_i}, u_j ) ) = ( \delta_{i,j} ) = E つまり、 U は、ユニタリ行列。 ]] Th. [2.3] 1) AB=BA の時 A+B (AB) の固有値は、A の固有値と B の固有値の 和 (積) で表現できる。 2) A の固有値が、\alpha_1, \alpha_2,..,\alpha_n の時 A^k の固有値は、\alpha_1^k, \alpha_2^k,..,\alpha_n^k prof) [2.2] より \exist U : ユニタリ U^{-1}AU、 U^{-1}BU が上三角 # 上三角行列の固有値は、対角線上の成分要素値だった A + B の固有値 U^{-1} (A+B) U の固有値 U^{-1} A U + U^{-1}BU の固有値 U^{-1} A U + U^{-1}BU の対角要素 U^{-1} A U の対角要素 と U^{-1}BU の対角要素の和 U^{-1} A U の固有値 と U^{-1}BU の固有値の和 A の固有値 と B の固有値の和 A B の場合は、 U^{-1}ABU = U^{-1}AUU^{-1}BU として同様 Th. [2.4] T が適当な、正規直交基底にかんして、対角行列で表現される <=> T が正規変換 Th. [2.4'] \exist U : ユニタリ s.t. U^{-1} A U が対角行列 <=> A 正規行列 prof) [2.4] で、V=C^n, T=T_A とすればよい。 系 [2.5] T : 正規変換 \beta_1, .., \beta_n : T の相異なる固有値全体 対応するベクトルは互いに直交する。 W_1, .., W_k : 対応する固有空間 W_i (直) W_j ( i \ne j ) V = W_1+..+W_n ( 直和 ) prof) [2.4] 固有ベクトルからな正規直交基底 E = が存在する。 E の \beta_i に対応する固有ベクトルからなる 空間を W_i とすれば、W_i (直) W_j ( i \ne j ) がいえる。 # 今回のポイント # 「正規変換は、正規直交基底で、対角化できる」