対角化の話をしてきた。 前回の最後 : 正規変換というものがあった 正規変換 <=> 正規直交系で対角化できる 正規変換 : とってもよい形をしている.. ただし条件は厳しい 本日は、その性質をもう少しみる。 == 例 1: 0 i 1 A = -i 0 i 1 -i 0 これは、 A = A^* なので、エルミート行列となり、したがって、同時に正規行列でもある。 正規行列である以上、ある、ユニタリ行列が存在し、それを利用することに よって、対角化ができるはずなので、それを求めてみよう.. # この手の問題を解くには、行列式が計算できなければならない。 # 4x4 程度の行列式が計算できるようにしておこう \Phai_A(x) = | A - xE | = x^3 -3x + 2 = (x-1)^2(x+2) よって。 固有値 : 1(重), -2 固有値 が 1 の固有空間 W_1 を考える。 A - \lambda E ( \lambda = 1 ) を考えると、 -1 i 1 A -1E = -i -1 i 1 -i -1 # これは、rank = 1 ( 3 - 2 ) なので、固有ベクトルは 2 個 なので、よって、 W_1 = { ( x1, x2, x3 ) | x1 - ix2 - x3 = 0 } ここで、W_1 の直交基底を考える # 必要なら、適当な、直交基底をとりだし、シュミットの直交化等 # 利用して、つくればよい # 個々の空間の直交基底を取り出せば、全体の直交基底になるので.. # U : ユニタリなので、U^{-1} は簡単に求めることができる ( # U^{-1} = U^* ) 正規行列は、かならず、対角化できる => 重解に対する固有ベクトルが複数 ( 重複分 ) あるので、 必ず、とりだすこと !! == 正規行列は、スペクトル分解が可能 スペクトル分解の話をするのに、必要な準備 ( 射影子 ) から.. def V : ユニタリ空間、W を V の部分空間 W^{直交} : 直交補空間 とすると、 V = W +直 W^{直交} なので、 \all x \in V \exist ! x' \in W \exist ! x" \in W^{直交} s.t. x = x' + x" # 直和 -> 表現が一通り この対応関係で、定まる V から W への対応関係 P ( 射影子 ) は、 P : V --> W : 射影子 \in \in x |-> x' 線型変換である。 prof) # 和が和に、定数倍が定数倍に移ることを確かめればよい。 [定理 2.6] P : 射影子 <-> P^2 = P P^* = P prof) (=>) V = W +直 W^(直) とすると、 x = x' + x' なので、 Px = x' 一方 x' = x' + 0 なので、 Px' = x' つまり、 P^2x = Px が全ての x について成立。 つまり P^2 = P 同様に、 y = y' + y" なので、内積をとって ( Px y ) = ( x' y' + y" ) = ( x' y') = ( x' + x" y') = ( x' + x" Py ) = ( x Py ) = ( P^*x y ) ( P^* の定義 ) つまり、全ての y について、 ( Px y ) = ( P^*x y ) よって、 Px = P^*x つまり P = P^* (<=) W = P(V) x' \in W とすると、 \exist x \in W s.t. Px = x' すると、 Px' = P^2x = Px = x' x" \in W^(直) なら Py \in W ( \all y \in V ) より ( x" , Py ) = .. = ( P^*x', y ) よって、 px’= 0 よって、 射影子 th. P が射影子 <=> P は固有値が全て 0 か 1 のエルミート変換 prof) ( -> ) [2.6] より P = P^* よって、エルミート変換であることは clear 一方、 W = { x \in V | Px = x } とすれば、これは固有値 1 の固有空間 同様に、 W^{直} = { x \in V | Px = 0x = 0 } とすれば、これは固有値 0 の固有空間 V = W + W^{直} なので、これ以外の要素はないので、0, 1 のみ ( <- ) W = { x \in V | Px = x } W' = { x \in V | Px = 0x = 0 } とすれば、 W 直 W' 一方、 V = W +^{直} W' なので、 W ^{直} = W' Th. V \sub W_1, W_2 <=> P_1 P_2 = 0 <=> P_2 P_1 = 0 prof) ( -> ) W_1 直 W_2 より W_2 \sub W_1^(直) なので、 P_1(W_2) = 0 つまり、 P_1(P_2(V)) = 0 よって、 P_1 P_2 = 0 ( <- ) P_1 P_2 = 0 とすると、 x_1 \in W_1, x_2 \in W_2 にたいして、 (x_1, x_2) = (P_1x_1, P_2x_2) = (x_1, P_1^*P_2x_2) = (x_1, P_1P_2x_2) = 0 したがって、 W_1 直 W_2 def. (スペクトル分解) T : 正規変換 \beta_1, .. : 固有値 W_1, .. : 固有空間 P_1, .. : 射影子 prop. 2.5 より V = W_1 + .. + W_k である。 この時 [3] P_1 + .. + P_k = I [4] T = \beta_1 P_1 + .. \beta_k P_k # T をこのように表現することをスペクトル分解と呼ぶ (prof) [3] V = W_1 .. W_1 直 W_i なので、 W_i \sub W_1^(直) よって、 W_2 + .. + W_k \sub W_1^(直) ところが、ふくまれていて、次元が同じなら、空間として等しい ので、 W_2 + .. + W_k = W_1^(直) ここで、 x \in V = x_1 + x_2 + .. + x_k をとると、 P_1 x = x_1 したがって、 ( P_1 + .. + P_k ) x = x つまり、 P_1 + .. + P_k = I P_i P_j = 0 は、一つ前の定理から [4] x \in V = x_1 + x_2 + .. + x_k をとると、 T x = T (x_1 + .. x_k) = \beta_1 x_1 + .. = \beta_1 P_1 x + .. = ( \beta_1 P_1 + .. ) x よって、 T x = \beta_1 P_1 + .. Th. T のスペクトル分解は、一意的 prof) .. Th. 逆に [3] をみたす P_1 .. によって [4] で定義されている 変換は、正規変換になる。 prof) T^* = \var{\beta_1}P^* = \var{\beta_1}P よって、 TT^* = |\beta_i|^2 P_i + .. T^*T = |\beta_i|^2 P_i + .. となるので、 TT^* = T^*T すなわち、正規変換 Th. 2.7 ( 上記のまとめ ) T: 正規変換 \beta_1, .. : 相異なる固有値全部とする \exist ! P_1, .. : 射影子 s.t. [3], [4] を満す 逆に [3] をみたす P_1 .. によって [4] で定義されている 変換は、正規変換になる。 Col. 2.8 T : 正規変換 1) T がエルミート <=> 固有値が全て実数 2) T がユニタリ <=> 固有値の絶対値が 1 prof) 1) T = \beta_1 P_1 + .. なので、 T^* = \var\beta_1 P_1 + .. とうなる。 ここで、 T : エルミート <-> T^* = T よって、 beta_i = \var\beta_i これは、 beta_i : 実数 を意味する。 2) T^*T = |\beta_1|^2 P_1 +.. だった。 ここで、 T : ユニタリー <-> T^*T = I よって |\beta_i|^2 = 1 # 例 2 は、来週回し P.143 の問 イ) A = a i i a for a \in R を考える。 A^* = a -i -i a なので、 A^*A = a^2 + 1 0 0 a^2 + 1 = AA^* つまり、A は正規行列 \Phai_A(x) = x^2 - 2ax + a^2 + 1 より、 固有値 : a +- i 固有値 : a - i に対する正規な固有ベクトル u_1 は u_1 = \frac{1}{\sqrt{1}} ( 1 1 ) 固有値 : a + i に対する正規な固有ベクトル u_2 は u_2 = \frac{1}{\sqrt{1}} ( 1 -1 ) 対角化のためのユニタリ行列 U は U = ( u_1, u_2 ) = \frac{1}{\sqrt{2}} ( 1 1 ) 1 -1 対角化すると U^{-1}AU = ( a + i 0 ) 0 a + i となる。 # この T は、平面上の原点を達直線に関する線対象 ロ) A = ( 1 1 1 ) 1 0 0 1 0 0 A^* = A なので、エルミート 固有値は -1, 0, 2 対角化のためのユニタリー行列 U は、 U = \frac{1}{\sqrt{6}} ( \sqrt{2} 0 2 ) -\sqrt{2} \sqrt{3} 1 -\sqrt{2} -\sqrt{3} 1 対角化の結果は、 -1 0 0 0 0 0 0 0 2 となる。 # 来週は休み、次回は、例 2 から..