2003/11/07 正規変換のスペクトル分解を行ってきた。 # スペクトル分解は、必ずしも、正規変換でなくても定義できる # ( 条件を緩めることが可能.. ) 正規変換の定義は、 T = \beta_i P_i + .. P_1 + .. = I P_i P_j = O ( i \ne j ) \beta_i \ne \beta_j 正規変換がスペクトル分解できることはわかったので、実際の スペクトル分解の方法から説明する。 [例 2] 0 i 1 A = ( -i 0 i ) 1 -i 0 これは、ルミート ( だから、正規変換 ) 固有値 1, -2 [\beta_1 = 1] W_1 = { (x_1,x_2,x_3) | x_1 - i x_2 - x_3 = 0 } u_1 = \frac{1}{\sqrt{2}}( 1 0 1 ) u_2 = \frac{1}{\sqrt{6}}( -1 2i 1 ) [\beta_2 = -2] W_2 = { (x_1,x_2,x_3) | x_2 = i x_1, x_3 = - x_1 } u_3 = \frac{1}{\sqrt{3}}( 1 i -1 ) U = ( u_1, u_2, u_3 ) = .. 1 U^{-1}AU = ( 1 ) -2 == これから、スペクトル分解を行う。仮定より、 P_1 u_1 = u_1 P_1 u_2 = u_2 P_1 u_3 = 0 つまり、 P_1 U = P_1 ( u_1 u_2 u_3 ) = ( u_1 u_2 0 ) これから、 P_1 = ( u_1 u_2 0 ) U^{-1} なので、計算すると、 ( ここで、U エルミートなので、U^{-1} = U^{*} に注意 ) 2 i 1 P_1 = \frac{1}{3} ( -i 2 i ) 1 -i 2 # [注意] Text では、2 行 3 列目の値が間違っている。 同様に、 1 -i -1 P_2 = \frac{1}{3} ( i 1 -i ) -1 i 1 が得られる。 # ここで、P_1 + P_2 = I であることを確認する。 これによって、 A = \beta_1 U_1 + \beta_2 U_2 2/3 i/3 1/3 = (1) ( -i/3 2/3 i/3 ) 1/3 -i/3 2/3 # 射影子は、エルミートなので、結果がエルミートでなければ、どこかの計算 # で失敗している。 ## [注] (x y) = ^tx \var{y} の \var{\ } を忘れる人がいる == T : エルミート (Tx y) = (x Ty) ( \forall x, y \in V ) 特に (Tx x) = (x Tx) = \var{ (Tx x) } # 前は、エルミート、後は、内積の一般的性質 なので、 (Tx x) \in R [2.3] T : エルミート 固有値が全て正 ( 非負 ) <=> (Tx x) > (\ge) 0 ( \forall x \ne 0 ) prof) T : エルミートなので、 : T の固有ベクトル からなる V の正規直交基底 \alpha_1, .., \alpha_n : 固有値 がとれる。 ( -> ) x = x_1 e_1 + .. + x_n e_n ( \forall x \in V ) なので、 ( Tx x ) = ( \sigma_{i=1}^n x_i \alpha_i e_i \sigma_{j=1}^n x_j e_j ) = ( \sigma_{i=1}^n \sigma_{j=1}^n x_i \alpha_i x_j ( e_i e_j ) = \sigma_{i=1}^n x_i \var(x_i) \alpha_i = \sigma_{i=1}^n |x_i|^2 \alpha_i ここで、|x_i|^2 >= 0 なので、全ての \alpha_i が正なら、全体としても正になり、非負なら非負となる。 ( <- ) x = e_i とすれば、 (T e_i e_i) = ( \alpha e_i e_i ) = \alpha > 0 == def. 2.9 を満すエルミート変換を、半正値エルミート変換という。 remark T : エルミート -> T^2 半正値エルミート prof) (T^2 x x) = (Tx Tx) = (x T^2 x) なので、T^2 はエルミート (T^2 x x) = (Tx Tx) \ge 0 なので、T^2 は半正値 remark T : 線型変換 -> T^*T は半正値エルミート prof) (T^*T x x) = (T x T x) = (x T^*T x) なので、T^*T はエルミート (T^*T x x) = (T x T x) \ge 0 なので、T^*T は半正値 remark T :正則エルミート T^2 : 正値エルミート prof) T^2 は、半正値エルミート ( 前 remark ) 一方、正則なので、 x \ne 0 -> Tx \ne 0 よって、 (Tx x) \ne 0 よって、正値 remark \forall T (半)正値エルミート -> \exist 1 S (半)正値エルミート s.t. S^2 = T prof) [存在] T : (半)正値エルミート より、T のスペクトル分解が存在し、 T = \beta_1 P_1 + .. となり、各々の \beta_i は正 ( 非負 ) 値 よって、各々の \beta_i の平方根をとって、次のような S をつくる S = \sqrt{\beta_1} P_1 + .. すると、S は、正規変換で、固有値が、\sqrt{\beta_i} となる ( 半 ) 正値エルミート また、計算すると S^2 = T となる。 [一意性] S' = \beta_1' P'_1 + .. が存在して、S'^2 = T とする 仮定より、 S'^2 = \beta_1'^2 P'_1 + .. で、これが、 T = \beta_1 P_1 + .. に等しい。ところが、スペクトル分解の一意性質より、 # もちろん、適切に番号を振り直して.. \beta_1 = \beta_1'^2 P_1 = P_1' ここで、S' が正値なので、結局 \sqrt {\beta_1} = \beta_1' となるので、 S' = S # この定理より、正値エルミート行列 T に対して、S^2 = T # が唯一存在するので、以下これを \sqrt{T} で表す。 Th.[2.10] \all T : 正則 \exist1 H : 正値エルミート \exist1 U : ユニタリ s.t. T = HU prof) [存在] TT^* は正値エルミート ( by remark ) H = \sqrt{ HH^* } とすれば、H も正値エルミート U = H^{-1}T とすれば、 U U^* = (H^{-1}T)(H^{-1}T)^* = H^{-1}TT^*(H^{-1})^* = H^{-1}TT^*H^{-1} = H^{-1}(TT^*)H^{-1} = H^{-1}HHH^{-1} = I よって、U はユニタリ したがって T = HU T : 正値エルミート U : ユニタリ と表すことができる。 [一意性] T = H_1U_1 とすれば、 HU = H_1U_1 なので、 H_1 = H_1U_1U^{-1} H_1^* = .. ... H_1^2 = H^2 よって、 H_1 = H = \sqrt{TT^*} 同様に、 U_1 = U == Th. [2.10'] (行列の場合) 任意の正則行列は、正値エルミート行列と、ユニタリ行列の積で 一意に表現できる # 注意 T = HU = U'H' ともできる。 # この分解を、n = 1 と考えると、 # z = |z| e^{i\thita} # |z| .. エルミート # e^{i\thita} .. ユニタリ # と表すことができること意味するので、この一般化になっている。 == Th. [2.11] H : エルミート # 固有値が、全て実数なので、比較可能になり.. \alpha : 最大の固有値 \beta : 最小の固有値 とすると、 \alpha = \sup_{||x|| = 1} (Hx x) = sup_{||x|| \ne 1}\frac{(Hx x)}{(x x)} \beta = \inf_{||x|| = 1} (Hx x) = inf_{||x|| \ne 1}\frac{(Hx x)}{(x x)} # これは、固有値の解析的性質の一つ prof) 今、 \alpha_1,.. を H の固有値、 e_1, .. を対応する正規直交基底 とすると、 x = x_1 e_1 + .. ( \forall x \in V ) と表すことができる。 ここで、||x|| = 1 となる x を考えると、 ||x||^2 = \sigma_{i=1}^n |x_i|^2 = 1 となることに注意。 ここで、 (Hx x) = \sigma_{i=1}^n \alpha_i|x_i|^2 であり、\alpha は、\alpha_i の最大値なので、 <= \sigma_{i=1}^n \alpha|x_i|^2 = \alpha \sigma_{i=1}^n |x_i|^2 = \alpha つまり、 (Hx x) <= \alpha 一方、\alpha_i = \alpha となる i が存在するので、 それに対応した固有ベクトル e_i を取ると、 (He_i e_i) = (\alpha_i e_i e_i) = (\alpha e_i e_i) = \alpha (e_i e_i) = \alpha よって、\alpha が上限であることがわかる。 # 後ろの方は、 # ||x|| > 0 に対して x' = x/||x|| とすれば、 # 成立する。 # \beta に関しても同様に証明できる。 # これまで、エルミート空間に関して述べてきたが、これを # 実内積空間でも同様に述べることができるので、それをこれの続き # として、次回から説明する。 == 来週は、普通に講義だが、再来週と、その次は、講義の時間に、小さなテストを 行う可能性があるので、注意のこと