複素数 # 高校でやっていた人は、復習だが、そうでなければ、最初からしっかり、身に付けること まず、複素数というものが何処ら出て来たか ? を説明する。 自然数 { 1, 2, 3, ... } = N は、最初からあった。 次に、単純な一次方程式 a + x = b a, b \in N を考える。ここで、 a = 3 b = 2 の場合を考えると、この一次方程式を満す数は、 N の中に存在しない。 そこで、このような方程式を満すような数 ( 0 と、負の数 ) を考えて、 数を広げた 整数 = { 0, \pm 1, \pm 2, ... } = Z これで、上記のような、方程式を満す解は全て得ることができた。 次に、 a x = b a, b \in N ( a \ne 0 ) a = 3 b = 5 を考えると、同様に整数 Z に解がなかった。そこで、 有理数 { p/q | p,q \in Z, p \ne 0 } = Q を考えた。 # 長い間、有理数だけが数であるような時代が続いたが... x^2 = a a > 0 \in Q a = 3 の解もほしくなり 実数 R が作られた。 # 実際は、この他に、「代数的数」などの議論もあるのだが、ここでは省略 しかし、 x^2 = a a < 0 \in Q a = -2 の解は R の中になかった # 長い間、しょうがないので、このような方程式は「解なし」と扱われる時代が続いた しかし、結局、二乗すると -1 になる数を i ( = \sqrt{-1} ) で表し、 虚数単位と呼ぶことにし、形式的に何らかの数を表すことにした。 すると、 x^2 = -2 の解もあり x = \pm \sqrt{2} i とすることができるようになった。 この様に二乗すると負になる数 => 純虚数 実数と純虚数の和からなる数 a + bi ( a, b \in R ) を複素数と呼ぶ。 複素数 = { a + bi | a, b \in R } = C 特に、複素数 α = a + bi に対して a : αの実(数)部 ( Re α で表す ) b : αの虚(数)部 ( Im α で表す ) と呼ぶ。 Col. b = 0 <=> αは実数 a = 0 ( b \ne 0 ) <=> αは純虚数 # ここまで、新しい(代数)方程式を作る度に、その解を求めるために数を拡張する # 必要があった。では、まだ必要なのだろうか... ? 実は.. Th. 一般の代数方程式 a_n x^n + a_{n-1}x^(n-1) + .. + a_1 x + a_0 = 0 ( n \in N, a_n \in C ) の解は、全て複素数 # 証明はなし # つまり、もう、代数方程式を解くために、数の範囲を広げる必要はなくなった。 == 二つの複素数について α = a + bi ( a, b \in R ) β = c + di ( c, d \in R ) 複素数の等価性 α = β <=> (a = c) \and (b = d) 特に α = 0 <=> a = b = 0 複素数の四則 α + β = ( a + bi ) + ( c + di ) = ( a + c ) + ( bi + di ) = ( a + c ) + ( b + d )i α - β = ( a + bi ) - ( c + di ) = ( a - c ) + ( bi - di ) = ( a - c ) + ( b - d )i αβ = ( a + bi )( c + di ) = ac + ad i + bc i + bd i^2 = ac + ad i + bc i - bd = ( ac - bd ) + ( ad + bc )i α/β = ( a + bi ) / ( c + di ) = [ ( a + bi ) ( c - di ) ] / [ ( c + di )( c - di ) ] # 分母の実数化 : ここで何処らともなく c + di に対応した c - di を # ( これを共役複素数と呼ぶ.. ) をもってくる所がポイント = [ ( ac + bd ) + ( bc - ad ) i ] / ( c^2 + d^2 ) = ( ac + bd ) / ( c^2 + d^2 ) + ( bc - ad ) / ( c^2 + d^2 ) i 共役複素数 α = a + bi に対して \bar{α} (α^*) = a - bi = a + (-b)i を共役複素数と呼ぶ。 Re α = Re \bar{α} = ( α + \bar{α} ) / 2 Im α = - Im \bar{α} = ( α - \bar{α} ) / (2i) \bar{\bar{α}} = α α\bar{α} = a^2 + b^2 ( \ge 0 ) \sqrt{a^2 + b^2} を αの絶対値(又は長さ)と呼び、|α| で表す |α|^2 = α\bar{α} Th. α = 0 <=> |α| = 0 ∵ (=>) α = 0 より a = b = 0 だから |α|^2 = a^2+b^2 = 0 なので |α| = 0 ∵ (<=) |α| = 0 より、a^2+b^2 = 0 ここで、a, b は実数なので、 このような方程式を満す a, b の組は、0 と 0 しかない よって、a = b = 0 なので、α = 0 Th. |αβ| = |α| |β| ∵ # 計算する # 共役複素数の性質 => 証明は略 # 共役複素数に於ける四則 (和/差/積/商) の性質 == 複素平面 ( 数と図形の関係 ) 実数 <=> 数直線 複素数 <=> 複素(数)平面 \in \in a + bi <-> (a,b) Y ^ | b+ (a,b) α = a + bi | / | / <- この線分の長さはピタゴラスの定理から \sqrt{a^2+b^2} = |α| |/ --+---+------> X | a つまり、αの絶対値 |α| は、複素平面上での、αに対応する点と原点の距離 あるいは、原点から、その点へ引いた線分の長さになっている。 同様に、 α = a + bi 点 P ( a, b ) に対応 β = c + di 点 Q ( c, d ) に対応 を考えると、点 P, Q の間の距離は、 |PQ| = |β-α| で表現できる ( これも、両辺を計算して確かめる )。 Col. ( 三角不等式 ) | α + β | \le |α| + |β| |α| - |β| \le | α - β | # 等号は、αとβが一直線上にある場合に成立する # 後半の証明は、省略 証明は、計算によって、求めることができるが、作図をすることによって、 直観的に成立することが理解できる # 図形的な性質が、計算により確かめることができる # 計算の性質が、図形から、予測することができる [極座標形式] 点 P ( a, b ) を、 P の 原点 O からの距離 r と 線分 OP と x 軸のなす角度 θ ( 反時計回り ) で表現することを考えると、 α = r ( cos(θ) + i sin(θ) ) となることがわかる。 この形式を、αの極形式(極表示)と呼ぶ r = |α| θを αの偏角とよび、 arg θ で表す。 [注意] θ がαの偏角ならば、θ+2πもαの偏角となる。 つまり、偏角は一つに定まらない 通常は、θの取り得る範囲を [0 2π] とか、 [-π π] とかに、 範囲を決めて一つに定めて扱うことが多い # 極座標形式は、足し算や引き算には都合が悪いが、かけ算や、割り算では都合がよい。 α1 = r1 ( cos(θ1) + i sin(θ1) ) α2 = r2 ( cos(θ2) + i sin(θ2) ) において、積 α1α2 = r1 r2 ( cos(θ1+θ2) + i sin(θ1+θ2) ) となる。 つまり、二つの複素数の積は 大きさは、かけ算 に 角度は、足し算 なる。 # 図形的な性質 (1,0) : α1 = α2 : α1α2 商も同様に、 α1/α2 = (r1/r2) ( cos(θ1-θ2) + i sin(θ1-θ2) ) [ド・モアブルの公式] (cos(θ)+ i sin(θ))^n = cos(nθ)+ i sin(nθ) [複素数の n 乗根] 複素数 α に対して、 α = β^n ( α, β \in C, n \in N ) を満す複素数βを αの n 乗根 と呼ぶ。 # この n 乗根を求めてみる。 α = r ( cos(θ) + i sin(θ) ) β = ρ ( cos(φ) + i sin(φ) ) とすると β^n = ρ^n ( cos(nφ) + i sin(nφ) ) なので、 r = ρ^n nφ = θ + 2kπ ( k \in Z ) より ρ = r^(1/n) φ = θ/n + 2kπ/n ( k = 0, 1, 2, ..., n - 1 ) # n 乗根は、n 個ある == x 軸に対する線対称 α に対して\bar{α} は、x 軸に線対称な点を表している == [オイラーの公式] e^(iθ) = cos(θ) + i cos(θ) # 三年生の複素関数論で学ぶ。ここでは、天下り的に与える # つまり、ここでは、上記の式の左辺の意味を右辺で定義する これを利用すると、 α = r( cos(θ) + i sin(θ) ) = r e^(iθ) と、極形式が簡単に表現できるようになる。 |e^(iθ)| = 1 e^(iθ1)e^(iθ2) = e^(i(θ1+θ2)) # 普通に指数関数で成立する方式が、複素数の指数関数でも成立する 特に (e^(iθ))^n = e^(inθ) (e^(iθ))^(-1) = e^(-iθ) cos(θ) = (e^(iθ)+e^(-iθ))/2 sin(θ) = (e^(iθ)-e^(-iθ))/(2i) # e^z は、複素関数と呼び、複素解析で詳しく行う。 なお、 1/β = \bar{β}/(β\bar{β}) = \bar{β}/(|β|^2) 特に |β| = 1 であれば、 1/β = \bar{β} となる。 == 次回は、多項式 係数は、複素数の場合も実数の場合の両方がある 複素数係数の話の時に思い出せるように !!