2005/05/12 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) # 本日はユークリッドの互除法をやるが、その前に言葉の定義をいくつか f(x), g(x) が K-係数多項式とする ( K は、Z, Q, R, C のいずれか ) def f(x) が ( K[x] / K の範囲 )で、「既約」とは f(x) が、自分自身と、定数倍以外に、約数をもたない こと # 自然数の世界では「素数」に対応する。 def f(x) が既約でないときに「可約」であるという [例] f(x) = x^2-2 を考える。 これは、 (x - \sqrt{2})(x + \sqrt{2}) と因数分解できるのだが.. Z[x] の世界で考えると \sqrt{2} は Z (整数) ではないので、 x - \sqrt{2} は、Z[x] に入らない。 つまり、 Z[x] の一次以上の要素の積 を使って、f(x) を表すことはできない => f(x) は、Z[x] では既約。 Q[x] の世界で考えると 同様に、既約 R[x] の世界で考えると x - \sqrt{2} が R[x] に入るので、 f(x)=x^2-2 は、R[x] の要素、 x - \sqrt{2} と x + \sqrt{2} を使って (x - \sqrt{2})(x + \sqrt{2}) と、因数分解できる。 つまり、可約 C[x] の世界で考えると 同様に可約 [例] f(x) = x^2+1 を考える。 これは、 (x - i)(x + i) と因数分解できるのだが.. Z[x] の世界で考えると既約 Q[x] の世界で考えると既約 R[x] の世界で考えると既約 C[x] の世界で考えると可約 [例] f(x) = x^2-1 を考える。 これは、 (x - 1)(x + 1) と因数分解できるのだが.. Z[x] の世界で考えると可約 Q[x] の世界で考えると可約 R[x] の世界で考えると可約 C[x] の世界で考えると可約 [例] f(x) = x-2 を考える。 これは、これ以上分解できるので、 Z[x] の世界で考えると既約 Q[x] の世界で考えると既約 R[x] の世界で考えると既約 C[x] の世界で考えると既約 # つまり、K をどの世界で考えるかによって、同じ式でも、既約になったり可 # 約になったりする可能性がある。 ## 一次の式は、どの世界でも既約 def f_1(x), f_2(x), .., f_n(x) が「互いに素」であるとは、それらの最大公約数が定数の場合。 # 注意、自然数の場合は、最大公約数が 1 の時に、互いに素であるといった。 == ユークリッドの互除法 495 と 315 の最大公約数は 45 であるが、これを次のように求める # 大きい数を小さい方で割り、その余りが 0 なら小さい方が最大公約数 # 余りが 0 でなければ、小さい方と余りの最大公約数が、元の最大公約数 495 = 315 x 1 + 180 315 = 180 x 1 + 135 .. この方法で元めた 45 は本当に、最大公約数か ? 次の二点をチェック 45 が、二つの数の公約数であること 45 が最大であること ( 他に、公約数があれば、それが 45 の約数になっている ) # この自然数に関する互除法を多項式まで拡張したのが次の定理 [定理] f(x) と g(x) の最大公約数は、次のような手順で求めることができる f(x) = g(x)q(x) + r_1(x) g(x) = r_1(x)q_1(x) + r_2(x) r_1(x) = r_2(x)q_2(x) + r_3(x) .. r_{k-2}(x) = r_{k-1}(x)q_{k-1}(x) + r_k(x) r_{k-1}(x) = r_k(x)q_k(x) となる、この r_k(x) が最大公約数 # 本当に最後には求められるの ? ( アルゴリズムの停止性 ) [アルゴリズムの停止性の証明] # deg r(x) < deg g(x) が保証されるので、次数は必ず下る deg r_1(x) < dig g(x) deg r_2(x) < dig r_1(x) deg r_3(x) < dig r_2(x) .. deg r_k(x) < dig r_{k-1}(x) deg r(x) は 0 以上なので、最終的に必ず止る。 # q(x) に次数を n とすると、n 回以下で止る この時 r_k(x) = r_{k-1}(x)q_{k-1}(x) - r_{k-2}(x) となる ( つまり、r_k は r_{k-1} と r_{k-2} の線型和で表現できる )。 同様に、r_{k-1} も r_{k-2}, r_{k-3} で表現できるので、結果的に、 r_k も r_{k-2}, r_{k-3} で表現できる。 これを繰り返すと、 r_k(x) = f(x)u(x) + g(x)v(x) u(x), v(x) \in K[x] と表現できる。 [例] f(x) = x^6 + 1 g(x) = x^2-2x^2+x-2 互除法により.. f(x) ÷ g(x) を行う。 # 多項式の計算では、x を入れると繁雑なので、係数だけで # 計算を行う。 1 2 3 6 +-------------------- 1 -2 1 -2 | 1 0 0 0 0 0 1 1 -2 1 -2 ---------- 2 -1 2 0 2 -4 2 -4 ---------- 3 0 4 0 3 -6 3 -6 ---------- 6 1 6 1 6 -12 6 -12 ---------- 13 0 13 つまり、r_1(x) = 13 x^2 + 13 ここで、q は r_1 で割切れるので、結局、r_1 が最大公約数 最大公約数は 13x^2+13 最大公約数は、定数倍に関して自由度があるので、 (このままでも良いが..) 最高次数の係数 (13) で割り、 x^2+1 と「してもよい」 更に、この場合、最大公約数は、f(x) と g(x) を用いて、 13x^2+13 = f(x) + g(x) ( -x^3-2x^2-3x-6) と表現されることが解る。 [例] f(x) = 5x^6+7x^5+8x^4+2x^3-14x-8 g(x) = x^5+x^4+x^3-3 最大公約数は、 x-1 これは、f(x), g(x) を利用して x-1 = f(x)(x^2+2x+2)+g(x)(-5x^3-12x^2-15x-5) とかける。 # ここまでは、二つの式の最大公約数を求めたが、一般に、三つ以上 # の場合はどうするか ? 三つの多項式 f_1(x), f_2(x), f_3(x) の最大公約数は.. まず、f_1(x), f_2(x) の最大公約数をユークリッドの互除法でもとめる これを q(x) とする 次に、q(x) と f_3(x) .の最大公約数をユークリッドの互除法でもとめる # 一般に n 個の場合も、2 つずつ取り出してユークリッドの互除法で Okey ## ここまでは、多項式の話、次は代数方程式の話 == 方程式 def f(x) = 0 ... (1) f(x) \in C[x], deg f(x) = n を、 「n 次 (代数) 方程式」 という。 \alpha \in C が、 f(\alpha) = 0 を満すときに、 \alpha を (1) の「根 ( 解 )」 と呼ぶ # 或は、 \alpha は f(x) の「零点」と呼ぶ。 [定理] ( 代数学の基本定理 ) n > 0 の時、(1) は少くても(複素数の範囲で..) 1つの根を持つ。 # 実数の範囲では、1 つもないことはありうるが、複素数の範囲だと必ずある。 [Prof] 証明は、Text にあるが、内容は、まだ学んでいない ことを利用しているので、ここでは説明しない。 [系] f(x) は、 f(x) = a_n(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)..(x-\alpha_n) と分解できる。 [Prof] 上記の基本定理と、因数定理を使う def \alpha が f(x) = 0 の根の時、\alpha_1, .., \alpha_n の 中に \alpha が現れる個数を \alpha の重複度 ( ちょうふく ど / じゅうふくど ) と呼ぶ def 重複度が 1 の時、単根 重複度が k の時、k 重根 == 根と係数の関係 多項式 f(x) = a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + .. + a_1 x + a_0 が、 f(x) = a_n(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)..(x-\alpha_n) と因数分解できるとする。 この二つの係数を比較することにより、 \alpha_1 + \alpha_2 + .. + \alpha_n = - \frac{a_{n-1}}{a_n} \alpha_1\alpha_2 + \alpha_1\alpha_2 .. + \alpha_{n-1}\alpha_2\alpha_n = - \frac{a_{n-2}}{a_n} \alpha_1\alpha_2\alpha_3 + \alpha_1\alpha_2\alpha_4 .. + \alpha_{n-2}\alpha_{n-1}\alpha_2\alpha_n = \frac{a_{n-3}}{a_n} .. \alpha_1\alpha_2 ..\alpha_n = (-1)^n \frac{a_0}}{a_n} == 対称式と交代式 def f(x_1,..,x_n) が対称式 ( 交代式 ) とは どの二つの変数を入れ替えても 元の多項式に等しい ( -1 倍 ) n 重度の基本対称式 # さっきの、根と係数の所に出て来た式の左辺 s_1 = x_1 + x_2 + .. + x_n s_2 = x_1x_2 + x_1x_2 .. + x_{n-1}x_2x_n s_3 = x_1x_2x_3 + x_1x_2x_4 .. + x_{n-2}x_{n-1}x_2x_n .. s_4 = x_1x_2 ..x_n # 対称式の和積は、共に対称式になる # 全ての対称式は、実は、基本対称式の和積で表現できる [交代式の例] 差積 \Delta(x_1,..,x_n) = \Pi_{i ) 任意の変数を入れかれると、差積から -1 がで、対称式は変らないので結果的に全体は対称式 ( <= ) 変数を入れ替えると -1 になるということは、 x_i = x_j とすれば 0 になることを意味する。 したがって、元の式は、 x_i - x_j の項を持つ ( 因数定理 ) なので、全ての 変数の組み合わせに関して、上記の組み合 わせの因数を持つ、つまり f = \Delta x P とかける。この時、f が交代で、\Delta も交代だから p の方は対称式でなければならない。 # この話は、三年になってから.. ## 差積の話だけは、三章 ( text p.76 ) でやるので後期にやる