2005/05/19 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) # 本日から、ベクトルの話。しばらくベクトルの話 ( 多分 数 B でやっていると思うが、とりあず、復習から.. ) ベクトル : 方向と大きさを持つ <-> スカラー : 大きさしかない ( 実数、複素数、.. etc ) # これまでの数は、大きさだけだが、その他に、「方向」もあるという点が違う # ベクトルの例 平面上の二つの点 ( 始点 P と終点 Q ) を指定すると、有向線分 \Vec{PQ} が決る 色々な有効線分があるが、その中で同じ向き、同じ大きさのものをまとめて一つのベクトルと考え、\Vec{(PQ)} で表す。 # \Vec{PQ} と \Vec((PQ)} は本来異るものだが、面倒なので、以下、\Vec{PQ} でベクトルを表すものをとする # 本来は「同値」を定義し、同値な有向線分を同一視することで、ベクトル空間が定義されるが、これは、「数学入門」話題なので、ここでは高校の範囲で議論する。 def ベクトルの和 二つのベクトルの始点を同じにし、その二つのベクトルを二辺とする平行四辺形(この平行四辺形を、その「二つのベクトルの張る平行四辺形」と呼ぶ。)をつくる。 その共通の始点を始点とし、平行四辺形の対角の頂点を終点とするベクトルを、この二つの「ベクトルの和」と呼ぶ。 def (0 ベクトル ) \Vec{PP} = \Vec{0} : 始点と終点が同じベクトルを零ベクトルと呼ぶ 大きさは 0, 向きは「ない or 全ての方向を向いている」と考える def 逆ベクトル 与えらたベクトル \Vec{PQ} に対して、その始点 P と終点 Q を交換した ベクトル \Vec{QP} を、元のベクトル \Vec{PQ} の「逆ベクトル」とよぶ。 # あるベクトルとその逆ベクトルの和は 0 ベクトルになる。 def (実数倍) 与えられた実数 c とベクトル\Vec{x} に対して、\Vec{x}の方向は変えず、 長さだけを |c| 倍したもの (c\Vec{x}) を、\Vec{x}の実数倍と呼ぶ。 ただし c>0 の時、c\Vec{x}の向きは元のベクトル\Vec{x}と同じだが、 c<0 の時は、向きが逆になる。 (c=0 の時には、c\Vec{x} は 0 ベクトルになることに注意 ) 公理 (線型空間) 1. \Vec{a} + \Vec{b} = \Vec{b} + \Vec{a} (交換法則) 2. (\Vec{a} + \Vec{b}) + \Vec{c} = \Vec{a} + (\Vec{b} + \Vec{c} ) (結合法則) 3. \exist \Vec{v} s.t. \all \vec{a} \Vec{a} + \Vec{v} = \Vec{v} + \Vec{a} = \Vec{a} # \Vec{v} は 0 ベクトル (零元 (単位元) の存在) 4. \all \Vec{a} \exist \Vec{v} s.t. \Vec{a}+\Vec{v}=\Vec{v}+\Vec{a}=\Vec{0} # \Vec{v} ( = -\Vec{a} ) は 逆ベクトル (逆元の存在) 5. (a+b)\Vec{x}=a\Vec{x}+b\Vec{x} (定数倍の分配) 6. a(\Vec{x}+\Vec{y})=a\Vec{x}+a\Vec{y} (定数倍の分配) 7. (ab)\Vec{x}=a(b\Vec{x}) (定数倍の結合) 8. 1\Vec{x}=\Vec{x} (定数倍の単位元) def 1 から 8 を満す空間を線型空間と呼ぶ (cf. text p.96) # 一般的な線型空間は、来年学ぶが、いま学んでいるベクトルも、線型空間になっている def V^2 = {\Vec{v} | \Vec{v} は平面ベクトル } : 平面ベクトル空間 def V^3 = {\Vec{v} | \Vec{v} は空間ベクトル } : 空間ベクトル空間 # しばらくは、V^2, V^3 に共通な話題を扱う。区別が必要になってきたら、その時に注意する def 成分表示 直交座標を考え、二点 点 P ( x_1, y_1, z_1 ) 点 Q ( x_2, y_2, z_2 ) を考える。この時 ベクトル \Vec{PQ} = \VTVec{x_2-x_1}{y_2-y_1}{z_2-x_1} を、ベクトル\Vec{PQ}の「成分表示」と呼ぶ。 \VTVec{a}{b}{c} を縦ベクトル、(a,b,c) を横ベクトルと呼ぶ。 # 縦ベクトルと横ベクトルは同じ構造をもっている。 # 大学では、普通縦、( なぜなら、行列を左からかけるのに都合がよい ) ベクトルの和の成分表示 \VTVec{a}{b}{c} + \VTVec{x}{y}{z} = \VTVec{a+x}{b+y}{c+z} ベクトルの定数倍の成分表示 c\VTVec{x}{y}{z} = \VTVec{cx}{cy}{cz} def 位置ベクトル ベクトルの始点を原点 O ( <= 座標を决めると必ずある ) にした場合 その時の終点に対して、そのベクトルを「位置ベクトル」と呼ぶ 位置ベクトルの成分は、それが対応する点の座標と同じ # 点を一つを决めると、その点に対応する位置ベクトルが定まる # ベクトルを一つ决めると、そのベクトルを位置ベクトルとする点が一つ定まる def 単位ベクトル # 通常は、長さが 1 のベクトルという意味なのだが.次のような特別な # ベクトルを意味することがある ( 状況におうじて使い分ける ) V^3 において、 \Vec{e_1} = \VTVec{1}{0}{0} \Vec{e_2} = \VTVec{0}{1}{0} \Vec{e_3} = \VTVec{0}{0}{1} V^2 において、 \Vec{e_1} = \VDVec{1}{0} \Vec{e_2} = \VDVec{0}{1} def 線型(一次)表示 # 「一次」と「線型」は全く同じ意味で、どちらでもよいのだが、この本では、「一次」より「線型」の方がメジャー v^3 の全てのベクトル \Vec{v} = \VTVec{x}{y}{z} に対して、 = \VTVec{x}{0}{0} + \VTVec{0}{y}{0} + \VTVec{0}{0}{z} = x\VTVec{1}{0}{0} + y\VTVec{0}{1}{0} + z\VTVec{0}{0}{1} = x\Vec{e_1} + y\Vec{e_2} + z\Vec{e_3} とかける。 def (線型(一次)結合) ベクトル a, b, c と実数 x, y, z に対して xa + by + zc をベクトル a, b, c の「線型(一次)結合」と呼ぶ def (線型独立) a_1, a_2, .., a_n のどの一つでも残りの線型結合で表せないとき a_1, a_2, .., a_n は、「線型独立」とよぶ def (線型従属) 線型独立でなければ、線型従属 # 以下、幾何学的な定義 ( テキストと同じ )。上は厳密な/一般的な定義 n = 2 のとき a, b が平行 => a, b は線型従属 <= ( a, b, が 0 でなければ成立 ) # 0 は、向きがないので、微妙 n = 3 のとき a, b, c が同一平面上 <=> a, b, c は線型従属 def (ベクトルの長さ) x = (a,b) の時、 |x| = \sqrt{a^2+b^2} x = (a,b,c) の時、 |x| = \sqrt{a^2+b^2+c^2} # ベクトルの長さも「ノルム」で定義する。これを |a| で表すか ||a|| で表すかは好みの問題 ## テキストでは ||a|| と書くが、講議では |a| を使うので注意 !! def (ベクトルの内積) ベクトル a と b のなす角度(交角)を \thita (0 \le \thita \le \pi ) とするときに、 |a||b|\cos{\thita} = \frac{1}{2}(|a|^2+|b|^2-|b-a|^2) を、ベクトル a, b の「内積」とよび a ・ b あるいは (a,b) で表す。 # 記号は色々あるので、一つだけでなく他の表現にもなれること ## 線型空間の話は、2 年以降で、色々な場面で使うが、記号が異る可能性がある 定理 (ベクトルの内積の成分表示) 二次元 x = (a,b), y = (a', b') の時 (x,y) = aa' + bb' 三次元 x = (a,b,c), y = (a', b',c') の時 (x,y) = aa' + bb' + cc' def (直交) a と b が直交するときに a \prep b と書く 定理 a \prep b <=> (a,b) = 0 定理(シュラワルツの不等式) (a,b) \le |a||b| # \cos{} の絶対値は、1 以下なのであたりまえ 定理(三角不等式) |a+b| \le |a| + |b| # 三角形の辺の関係から、 定理 c(a,b) = (c a, b) = (a, c b) # ベクトル a,b の成分が実数の場合。a, b の成分が複素数の時は話がちょっと違う (a, b+c) = (a, b) + (a, c) (a+b,c) = (a, c) + (b, c) (a,b) = (b,a) 定理(平行四辺形の面積) 二つのベクトルが作る平行四辺形の面積 S を考える ベクトルの交角を \thita とすれば S = |a||b|\sin{\thita} = |a||b|\sqrt{1-\cos^2{\thita}} = \sqrt{|a|^2|b|^2-(|a||b|\cos^2{\thita})^2} = \sqrt{|a|^2|b|^2-(|a||b|\cos^2{\thita})^2} = \sqrt{|a|^2|b|^2-(a,b)^2} 特に、a, b が平面ベクトルで、a=(x_1,y_2), b=(x_2,y_2) と 成分表示できる場合は S=|x_1y_2-x_2y_2| となる。 == §平面ベクトルと平面図形 # 以下、話題を平面ベクトルに限定して議論を行う ## 以下の話題は、今週だけで終らず、次ぎの週に続く def (平面上の直線のベクトル表示) 直線 l の方程式 a x + b y + c = 0 # a, b, c は実数、x, y は (x,y) が 直線 l 上の点の座標となっていることに注意 を考える。 直線 l 上の点 P_1 を考え、その位置ベクトル \Vec{OP_1} = \Vec{x_1} l 上の P_1 以外の点を P_2 \Vec{P_1P_2} = \Vec{a} l 上の任意の点を P とし、その位置ベクトル \Vec{OP} = \Vec{x} すると、 P が l 上 <=> \Vec{PP_1}=t\Vec{P_1P_2} ( \exist t \in R ) ∴ x - x_1 = t a ∴ x = x_1 + t a この最後の形式を、「直線のベクトル表示」と呼ぶ。 ベクトル a を、直線 l の「方向ベクトル」と呼ぶ。 # 方向ベクトルは色々ある (a が l の方向ベクトルならば、a の 0 以外の定数倍は、全て、 l の方向ベクトル) ことに注意 定理 ( 直線のベクトル表示と成分 ) p = (x,y), p_1 = (x_1,y_1), p_2 = (x_2,y_2) l : p = p_1 + t ( p_2 - p_1 ) より、 x-x_1 = t(x_2-x_1) y-y_1 = t(y_2-y_1) よって、( t を消去して.. ) \frac{x-x_1}{x_2-x_1} = \frac{y-y_1}{y_2-y_1} # 分母が 0 になる場合があるので、注意 (x-x_1){y_2-y_1) = (y-y_1)(x_2-x_1) としてもよい。 問 1 の イ) 2 x + 3y = 4 直線上の異る 2 点をとってくる P_1(2,0), P_2(-1,2) # 点の取りかたらは、色々ありうることに注意 これから、答 (x,y) = (2,0) + t (-3,2) 問 2 の ロ) 答 y = -2 定理 ( 直線の式のもう一つの表し方 : 法線ベクトルを使った直線のベクトル表示 ) l : ax+by=c とする、これと平行で原点を通る直線の式は l_0 : ax+by=0 a=(a,b), x=(x,y) とすると、 l_0 = (a,x) = 0 l = (a,x) = c この最後の形も、「直線のベクトル」表示となる この a を l の「法線ベクトル」と呼ぶ 定理 ( 直線と点の距離 ) # 直線の表現が三つあるので、それぞれの形での距離を求める l と、l 上のない点 P との距離 P から l への垂線を引き、その脚を P' とすると l と P の距離 = |PP'| となることに注意 [1] 今、 l = x = x_1 + ta とすれば OP = x_0 OP' = x_0' また、l \prep P'P なので、 (a, x_0-x_0' ) = 0 P' \in l より x_0' = x_1 + t a ( t \in R ) これらより、 (a , x_0 - x_1 - t a) = 0 なので、 t = \frac{(a,x_0-x_1)}{(a,a)} よって、 x_0' = x_1 + \frac{(a,x_0-x_1)}{(a,a)} a ここで、 d = |x_0 - x_0'| = | x_0 - x_1 - \frac{(a,x_0-x_1)}{(a,a)} a | = \sqrt{ (x_0 - x_1 - \frac{(a,x_0-x_1)}{(a,a)} a, x_0 - x_1 - \frac{(a,x_0-x_1)}{(a,a)} a) } # ここで (a,a) = |a|^2 という性質を利用している = ... = \frac{\sqrt{}a|^2|x_0-x_1|^2-(a,x_0-x_1)^2}}{|a|} [2] 今、l : (a,x) = c とすると x_0 - x_0' = s b ( s \in R ) P' \in l より ( b, x ) = c ∴ (b, s_0-sb) = c ∴ s = \frac{(b,x_0)-c}{(b,b)} ∴ x_0' = x_0 - \frac{(b,x_0)}{(b,b)}b ∴ d = | x_0 - x_0' | = \frac{|(b,x_0)-c|}{|b|} [3] 今 l : ax+by=c とすると P(x_0,y_0) の公式は d = \frac{|a x_0 + b y_0 - c|}{\sqrt{a^2+b^2}} # [3] は、[2] から簡単に出る # 状況におうじて、この [1] から [3] の内の一つを利用する == # 「0 ベクトルは、全てのベクトルと平行」としてもよいが、今度は、「0ベクトルが全てのベクトルに対して、垂直」とするときに困る。 == # ここで、教科書と、ちょっと順番を変更する 平面上の図形 : 円、楕円、放物線、双曲線 ( 一般的な二次曲線 text p.161-162 ) == [連絡事項] # 履修科目の再度の変更は、来週の木曜日まで ( Network Only )