2005/05/26 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) [前回の内容] 平面ベクトル 直線のベクトル表示の話 点 O を原点、直線 l 上の一点 P_1 の位置ベクトルを x_1 とし、 直線上の任意の点 P の位置ベクトルを x 直線と平行なベクトルを a, 垂直なベクトルを b とする すると x = x_1 + ta (x-x_1,b) = 0 と二つの書方で、直線を表現できる # 前回とちょっと違うか書き方だが、まあ、意味は同じ [今回の内容] # 前半と後半は違う話 Text の §3 から (平面の回転と、行列、線型変換) # この話は、直交座標系が必要 直交座標系 OXY を考える Y | P (x,y) | / |/ --+------ X O | 点 P を原点 O を中心に\alpha だけ回転させた点 P' を考える # 本来ならば、P=(x,y) に対して、P'(x',y') の x',y' を x,y で表す必要があるが面倒なので.. OP と OX のなす角度を \beta |OP| = r とすると、 OP = (x,y) = (r\cos{\beta}, r\sin{\beta}) また、OP' は、OP を更に、\alpha だけ回転させているので、結局、 OX と OP' なす角度は \alpha + \beta よって、 OP' = (x',y') = (r\cos{\alpah+\beta}, r\sin{\alpha+\beta}) # 普通は、この図から、加法定理を導くので、この図で、加法定理を用いるのは望ましくないのだが... まあ、横着して.. = (r\cos{\alpha}\cos{\beta} - r\sin{\alpha}\sin{\beta}, r\sin{\alpha}\cos{\beta} + r\cos{\alpha}\sin{\beta} ) となることを考えると、 = ( \cos{\alpha}x - \sin{\alpha}y, \sin{\alpha}x + \cos{\alpha}y ) この式を = ( \cos{\alpha} -\sin{\alpha} ) ( x ) \sin{\alpha} + \cos{\alpha} y と表し、この前の部分を A で表現する。 def ( 行列とベクトルの積 ) A = ( a b ) と v = ( x ) の積 A x を ( ax+by ) で定義 c d y cx+dy つまり x' = A x となる # 行列の成分の呼び名前の話 A = ( a b ) c d の時に、 この A を 二行二列の行列、あるいは、二次の正方行列と呼ぶ 横に並んだ成分を上から下へ 一行 ( a b ) のこと 二行 ( c d ) のこと とよび、 縦に並んだ成分を左から右へ 一列 ( a ) のこと c 二列 ( b ) のこと d とよぶ。 # ここらへんは高校で学んでいる人は学んでいる 定理 (線型性 : 行列は次の性質を満す) A(x+y) = (Ax) + (Ay) A(cx) = c(Ax) (prof) # 略 ( 成分同士の比較を行えばよい ) def ( 行列の和と定数倍 ) A = ( a b ), B = ( p q ) c d r s に対して、 A + B = ( a+p b+q ) c+r d+s kA = ( ka kb ) kc kd と定める。 # 今度は、行列のかけ算を定義したいので、少し準備 P を一度 \alpha だけ回転した点を P'、更にP' を\beta だけ回転した点を P" とする x' = ( \cos{\alpha} -\sin{\alpha} ) x \sin{\alpha} \cos{\alpha} A x" = ( \cos{\beta} -\sin{\beta} ) x' \sin{\beta} \cos{\beta} B = ( \cos{\alpha+\beta} -\sin{\alpha+\beta} ) x \sin{\alpha+\beta} \cos{\alpha+\beta} C ここで、OP" = B(A x) = (BA)x となるように、BA を定義するには、行列 BA の積を 次のように定義すればよい def (回転の行列の積) 上記の A, B に対して、上記の C を A, B の積 BA と定義する def (行列の積) A = ( a b ), B = ( p q ) c d r s に対して、 A B = ( ap+br aq+bs ) cp+dr cq+ds と定める # 回転の場合の一般化になっている # 各自試すこと !! [定義] (逆行列) 行列 A に対して AB = ( 1 0 ) となる場合 0 1 B を A^{-1} と書き「逆行列」と呼ぶ # 逆行列は常にあるとは限らない 特に、 A = ( a b ) c d のとき A^{-1} = \frac{1}{ad-bc} ( d -b ) -c a となる ( 二次行列の逆行列の公式 ) == # 行列と図形的な意味 ( 1 0 ) は、 x 軸に対する対称変換 0 -1 ( -1 0 ) は、 y 軸に対する対称変換 0 1 ( -1 0 ) は、 原点 O に対する対称変換 0 -1 # 行列をかけ算することは、平面上の点の移動を意味する。どのような移動になるかは、行列によって異る ! # 線型変換 def 次のような二つの性質を満す変換を「線型変換」とよぶ A を行列とすると、次のような性質があった A(x+y) = Ax + Ay cA(x) = A(cx) def V^2 (平面ベクトル) 上の変換 T_A を考える T_A V^2 ---> V^2 in in x |----> Ax すると、この定義から、T_A は次ぎのような性質がある T_A(x+y) = T_A(x) + T_A(y) cT_A(x) = T_A(cx) def V^2 上の変換 T が T_A(x+y) = T_A(x) + T_A(y) cT_A(x) = T_A(cx) を満すとき、この T を「線型(一次)変換」と呼ぶ。 # 線型変換 / 一次変換 # この講議では、線型変換の話が沢山でてくる [定理] S, T が線型変換ならば、その合成 S・T も線型変換 # 以下、合成S・Tを単に ST と書く [定理] T_A は線型変換 [定理] ( 上の定理と逆に.. ) T が V^2 上の線型変換ならば、\exist A : 二次行列があり s.t. T = T_A # つまり、V^2 上の線型変換と二次行列は一対一に対応している !! (prof) e_1, e_2 を V^2 の単にベクトルとし、 Te_1 = ( a ), Te_2 = ( b ) c ( d ) になったとする。 ここで、V^2 の任意の要素 v は、e_1 と e_2 の線型和で書けた よって、 v = xe_1 + ye_2 ここで、 T(x) = T(xe_1 + ye_2) = xT(e_1) + yT(e_2) = x ( a ) + y ( b ) c d = ( ax+by ) cx+dy # 「V^2 の線型変換に対応する行列を求めよ」という問題が良くでる # この場合は、この証明と同様、e_1, e_2 の行き先を調べればよい == def (正射影) a を 0 でないベクトルとする V^2 \ni x に対して a と平行なベクトル x' で、 x - x' が a と直交する x' を x の a への「正射影」と呼ぶ。 # x から a へ垂線をおろし、その交点が決れば、x' が決るので、対応関係が一意であるのは、(図形的な意味から..) 当然 def (射影子) T : V^2 ---> V^2 in in x |----> x' ( x の a への正射影 ) となるような変換 T を V^2 の 「a への射影子」とよぶ # このような射影子はどのような写像だろうか ? 射影子の条件は次の二つ x' = t a (a, x-x' ) = 0 この二つから、t を求めると ( a, x - ta ) = 0 より t = \frac{(a,x)}{(a,a)} よって、 x' = \frac{(a,x)}{(a,a)} a つまり、射影子 T は、 T x = \frac{(a,x)}{(a,a)} a で定義される。 # T の線型性は、内積の線型性から出てくるので.. T は線型変換。そこで、T に対応した行列を求めてみる v = (a,b) として、|v| = 1 のものを考えてみる T に対応する行列 A を求めてみると Te_1 = \frac{(a,e_1)}{(a,a)} a = ( a^2 ) ab Te_2 = \frac{(a,e_2)}{(a,a)} a = ( ab ) a^2 よって、 A = ( a^2 ab ) ab a^2 となる。 == # 教科書的にはここまでだが、+αとして、平面ベクトルに関する性質を説明する 直線 l 上の二点を A, B ( OA = a, OB = b ) とすると、l 上の点 P にたいして OP = OA + tOB = a + t ( b - a ) = (1-t)a + tb ( t \in R ) # これも直線の方程式 または、 OP = pa + qb ( p+q=1 ) でも同じ。 [定理] (中点の式) 特に、 p=q=\frac{1}{2} の時、 pa + qb ( p+q=1 ) は、 ABの中点 となる。 同様に [定理] (内分点, 外分点の式) AB を m:n に内分する点 t = \frac{m}{m+n} = q \frac{n}{m+n} = p AB を m:n に外分する点 t = \frac{m}{m-n} = q \frac{-n}{m-n} = p [定理] (線分 AB の式) pa+qb ( p+q=1, p\ge 0, q \ge 0 ) あるいは pa+qb ( p+q=1, 0 \le p \le 1 ) でもよい ( もちろん、q を縛ってもよい ) == [定理] ( 三角形の内部及び周上の点 ) pa+qb ( 0 \le q + q \le 1 0 \le p \le 1 0 \le q \le 1 ) # これは、過剰な条件 ( 六つも指定している ) # 普通は三角形の三つの辺に対してそれぞれ条件をつければよいので、三つでよいはずだ。 # よって、例えば、次のような条件で十分 q + q \le 1 0 \le p 0 \le q # いずれかの等号が成立すれば、周上の点 [定理] (平行四辺形の内部) pa+qb ( 0 \le p \le 1 0 \le q \le 1 ) # ベクトルの線型和で、点を表し、その係数を制限することによって、図形を表現することができる !! == 応用 ( 三角形 ABC の内部の点 ) などもできる [定理] (円の方程式) 点 P_0 ( x_0 ) を中心とし、半径 r の円の上の点 P ( x ) は、 |x-x_0|=r で表現される。 内部の場合は、 |x-x_0| \le r で Okey [定理] (楕円の方程式) 二点 P_1, P_2 を焦点とする楕円の方程式 |x-x_1| + |x-x_2| = a # 二つの焦点からの距離の和が一定 # ベクトルとして扱うには、長さでは都合がわるいので、内積の形にしたい # 長さを二乗すれば、内積の形になるが、円は一度二乗するだけで内積になるけど、楕円や双曲線は、更に二乗しないとだめ [定理] (双曲線の方程式) 二点 P_1, P_2 を焦点とする楕円の方程式 ||x-x_1| - |x-x_2|| = a # 二つの焦点からの距離の差が一定 # 高校までは、焦点の座標として、x 軸上の (a,0) と (-a, 0) の特別な場合しか学んでいないが、ここでは、任意の二点を焦点としてよい。ただし、方程式は複雑になる。 [定理] (放物線) 焦点 P_1 と準線 l ( P_2 を通り b に垂直 ) からの距離が等しいので # |P_1P| = P と l の距離 |x-x_1| = \frac{|(b, x-x_2)|}{{|b|} # これらの図形の方程式に関しては、来年学ぶ == [本日のまとめ](ポイント) 二次行列 二次行列とベクトルの積 行列同士の積