2005/06/02 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) # 前回、と前々回は平面ベクトルの話だが、今回から、空間のベクトルの話 # Text p.10 # 空間ベクトルと平面ベクトルでは違うことも多いが、共通の部分も多い。 # 共通の部分に関しては、平面ベクトルの話を参考にする。 空間の直線に関しても、平面と同様次の性質がある 点 P_1, P_2 を通る直線 l にたいして、l 上の点 P は、 x = x_1 + ta ( where a = x_2 - x_1 ) # この式は、平面でも空間でも同じ形であることに注意 !! # 成分表示すると.. x x_1 a ( y ) = ( y_1 ) + t ( b ) z z_1 c となり、 # 成分で表記すると、z 成分が一個増えるだけ また、これから、t を消去すれば、 \frac{x_2-x_1}{a} = \frac{y_2-y_1}{b} = \frac{z_2-z_1}{c} という空間での直線の方程式が得られる。 直線のもう一つの表現方法 ( 法線ベクトルを利用する方法 ) は、 (x-x_1,b) = 0 又は (x,b) = (x_1,b) = d で表現されたが、これは、そのままでは空間の直線にはならない。 => 空間で同じ方程式が、実は、平面の方程式になってしまう !! == 直線は、(平面でも空間でも) 二点で定まる 平面は、三点必要。 平面 p 上に点 P_1, P_2, P_3 があり、ベクトル b = P_1P_2, c = P_1P_3 が独立 ( つまり、 b と c が平行でない ) とすると、平面上の点 P に対して、 P_1P = sb+tc で表現できる。 # 平面ベクトルでは、直線の方程式が二つ。空間ベクトルでは、直線の方程式は一つしか # 表現方法がないが、平面の表現方法が複数出てくる。 [ベクトルを使わない平面の方程式] x a x = ( y ), b = ( b ) z c に対して、 ax+by+cz = d が平面の方程式。 [平面の交わる角度] 平面 S, S' の交角(こうかく)は次のように定義される S, S' の法線ベクトルを b, b' したとき、 b と b' の交角を S と S' の交角と呼ぶ。 Col. b, b' が直交すれば、S, S' も直交していると言う [平面と点の距離] 平面 S と、点 P_0 の距離を求める。 P_0 の位置ベクトルを x_0, S の法線ベクトルを a, P_0 から S への垂線の脚を P_0', その位置ベクトルを x_0' S の方程式を (x,a)=d とする。 # 条件は、二つ (x_0',a)=d x_0-x_0'=t a # この式は、実は、直線と点の距離を求める時と全く同じ式 # だから、解き方も全く同じ よって ( 途中はスキップ ) \frac{|(x_0,a)-d|}{|a|} # これは、平面での直線の式とまったく同じ 特に、平面の方程式が ax+by+cz=d の形で与えられているとすると、 \frac{|ax_0+by_0+cz_0|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}} # これは、平面の場合の式に、z 成分を追加した形になっている !! [直線と平面の交角] 平面 S と直線 l が直交していない場合 l を含み S と直交した平面 S' が一つだけある # l が S と直交していると、l を含む直線は、全て S と直交する。 # S' は、 l の各々の点から S へ卸した垂線の全体とすればよい S と S' の交わり部分、あるいは、l から S への垂線の足 の集合は S 上の直線となるので、これを l' とする。 def. l と l' の交角を、S と l の「交角」と呼ぶ。 l と S の「交角」を、l の方向ベクトル a と、S の法線ベクトル b を使って、 次のように表現できる。 # 途中の導く式は、省略 \sin{\thita} = \frac{|(a,b)|}{|a||b|} == [空間の行列] ( Text p.20 ) def. [空間の線型変換] V^3 の変換 T が、次の性質を満す場合に、 T を線型(一次)変換と呼ぶ。 T(x+y)=T(x)+T(y) cT(x)=T(cx) [定理] T, S : 線型変換 => S・T も線型変換であり、これを ST で表す。 (prof) S・T(x+y) = S(T(x+y)) = S(T(x)+T(y)) = S・T(x) + S・T(y) S・T(cx) = S(T(cx)) = S(cT(x)) = cS(T(x)) = c S・T(x) # 線型変換であることを示す方法は、常に、この二つをチェックするだけ !! [例] Tx = -x は、線型変換 prof) T(x+y) = -(x+y) = (-x)+(-y) = T(x)+T(y) T(cx) = -(cx) = c(-x) = cT(x) [例] z 軸の囘りに角度 \alpha だけ回転させる変換 prof) # 図形の性質から.. 和を回転させても、定数倍を回転させても、和、定数倍の関係は変らないから... !! # この「証明」は、直観(図形)的な証明になっていることに注意 !! # 図形の形を崩さない変換は、どれも線型変換になる !! == # 行列の掛け算 ( Text P.21 ) def. [ベクトルと行列の積] a_11 a_12 a_13 x_1 A = ( a_21 a_22 a_23 ), x = ( x_2 ) a_31 a_32 a_33 x_3 に対して、行列 A とベクトル x の積 Ax を次の形で定義する a_11 x + a_12 y + a_13 z Ax = ( a_21 x + a_22 y + a_23 z ) a_31 x + a_32 y + a_33 z def. [行列の和] a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_33 b_11 b_12 b_13 B = ( b_21 b_22 b_23 ) b_31 b_32 b_33 にたいして、二つの行列の和 A+B を次の式を使って a_11+b_11 a_12+b_12 a_13+b_13 A+B = ( a_21+b_21 a_22+b_22 a_23+b_23 ) a_31+b_31 a_32+b_32 a_33+b_33 と定義する def. [行列の定数倍] a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_33 に対して ca_11 ca_12 ca_13 cA = ( ca_21 ca_22 ca_23 ) ca_31 ca_32 ca_33 def. [行列の積] a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_33 b_11 b_12 b_13 B = ( b_21 b_22 b_23 ) b_31 b_32 b_33 に対して c_11 c_12 c_13 AB = ( c_21 c_22 c_23 ) c_31 c_32 c_33 ただし、 c_ik = \Sum_{j=1}^{3} a_ij b_jk # いずれの場合も、二次の場合の拡張になっている !! [定理] (AB)x = A(Bx) (AB)C = A(BC) A(x+y) = Ax+Ay cA(x) = A(cx) == 線型変換 [定理] \forall A : 3 次行列 T_a : V^3 -> V^3 \in \in x :-> Ax は線型変換 prof) 略 [定理] 上と逆に \forall T : V^3 の線型変換とすると \exsts A : 3 次行列 s.t. T = T_A prof) ( 考えかたは、二次元の場合とまったく同じ ) e_1, e_2, _e_3 : V^3 の単位ベクトルとし、 a_11 Te_1 = (a_12) a_13 a_21 Te_2 = (a_22) a_23 a_31 Te_3 = (a_32) a_33 とあなるとする。 x_1 \forall x = ( x_2 ) \in V^3 に対して x = x_1e_1+x_2e_2+x_3e_3 x_3 なので、 T(x) = ... = A(x) となるので、 T = T_A [注意] 座標系を取るとき e_1 をまず取る e_2 は、反時計囘りに 90 に取る ( 直交するものは二つあるがその内の一つを取る ) e_3 空間では、右手系で取る # 数学では、どちらでも意味は変らないが、物理学などでは意味があるので注意 [線型変換に対する行列の例] [例 : 原点に対称] Tx = -x の場合 -1 Te_1 = ( 0 ) 0 0 Te_2 = ( -1 ) 0 0 Te_3 = ( 0 ) -1 よって、 -1 0 0 A = ( 0 -1 0 ) 0 0 -1 [例 : z 軸の囘りの回転] \cos\alpha -\sin\alpha 0 A = ( \sin\alpha \cos\alpha 0 ) 0 0 1 # 単位行列がどこに移りかを考え、その写った先のベクトルの成分を並べると、行列の成分ができあがる == [射影子, 正射影] a を 0 ベクトルでないベクトルとする ( a \ne 0 ) ベクトル x と a の始点を揃え、x の終点から、a へ垂直に卸した足を h とし、 この共通の始点を始点とし、足を終点とするベクトルを x' で表す。 この時 T : x :-> x' は線型変換。 prof) x = ta (x-x',a)=0 より、 (x-ta,a)=0 よって、 t=\frac{(x,a)}{(a,a)} だから、 Tx = x' = \frac{(x,a)}{(a,a)}a これが、線型性を満すのは明らか。 def. この T を a への「射影子」, x' を x の a への「正射影」と呼ぶ # この場合の式は、平面とまったく同じであることに注意 !! # 空間の場合は、平面への正射影もある。 [平面への射影子、正射影] S を平面、a を S の法線ベクトルとする。 ベクトル x の始点を、平面 S の点 P_0 にした時の終点を P とし、 P から、S へ垂直に卸した垂線の足を P' とし、PP' を x' で表す。 この時、 T : x :-> x' は、線型変換になる。 prof) (x',a)=0 x-x'=ta より ( 途中を省略して.. ) Tx=x'=x-\frac{(x,a)}{(a,a)}a def. この時 x' を x の S への正射影 T を S への正射子 と呼ぶ。 問 1 i) e_1, e_2, e_3 の移した先を考えると.. Te_1 = -e_1 (符号をかえる) Te_2 = e_2 (そのまま) Te_3 = -e_3 (符号をかえる) となるので、これから、 「y 軸に対して対称」 あるいは、 「y 軸の囘りに 180 回転」 が答えになる。 問 1 ro) e_1, e_2, e_3 の移した先を考えると.. ... x 軸囘りに角度 \alpha だけ回転させる変換 問 1 ha) # ちょっと、ややっこしい e_1, e_2, e_3 の移した先を考えると.. Te_1 = e_3 Te_2 = e_1 Te_3 = e_2 # 順番が変っている。 となるので、つまり、 1 1 T ( 1 ) = ( 1 ) 1 1 は、動かない点だとだと解る。 # このような点を探し出すのは、ちょっと、経験が必要 !! ## 動いていない点が、あれば、それの集合が「軸」であることが解るので.. このように動かない点の集合は、直線となり、 l : x = y = z となる。 l からみれば、e_1 -> e_3 -> e_2 -> e_1 という変換は、時計囘りの「回転」になっていることが解る。 三回回転させると元に戻るので、l を中心に時計囘りに 120 度逆回転していることになる よって、この変換は、 l を中心に、反時計囘り -120 度回転 あるいは、 l を中心に 240 度回転 する変換ということになる。 # 最後の問題なぞは、経験がないと、なかなか解らない。 # 後で、固有ベクトルというのをやると、経験に頼らずに、これらのことが解る == 次回で、§ 1 の話を全部終りにする予定