2005/06/09 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) 今日は、平面ベクトル、空間ベクトルの最後 # 話は、三つに分れる。 行列式と外積 § 2 次の行列式 2 次の行列 A = ( a b ) を、二つのベクトル x = ( a ), y = ( b ) で、A=(x,y) で表現する c d c d def 行列 A = ( a b ) に対して、 ad-bc を A の行列式 ( determinant ) と呼ぶ。 c d これを、 |A| とか | a b |, detA, det(x,y), det ( a b ) c d c d 等で表す。 [定理] x, y が独立 <=> det(x,y) \neq 0 prof) x と y が平行 <=> ad=bc なので # 注意、実際は、x, y のどちらかが 0 ベクトルの時は、別に考える必要が、あるが、これは簡単に確かめることができる。 [定理] det(x,y) = -det(y,x) prof) | b a | = bc-ac = -(ac-bd) = - | a b | d c c d [定理] det(x_1+x_2,y) = det(x_1,y) + det(x_2,y) # 線型代数の話では、よく出てきるパターン prof) # 計算する [定理] det(c x,y) = c det(x,y) # 上の性質は、第一成分に関してだが、第二成分に関しては、第一成分と第二成分を交換すればよい、 prof) # 計算する [定理] |AB|=|A||B| # 「掛け算が外に出る」というのは、線型空間の世界では珍しい性質。他では、余り、見当たらない # 証明は、単に、計算した結果を比較するだけ。ただ、三次でこれをするのは大変なので、二次の所だけ、真面目にしておく prof) B = | p q | r s とすると.. |AB| = | ap+br aq+bs | cp+dr cq+ds # これらの、性質は、全て三次でも成立するが、成分同士の比較で証明しているので、 # 計算内容が異る == # 行列式の図形的な性質を考える。 ベクトル x, y が作る平行四辺形の面積 S を求めると、 S = | det(x,y) | となることが解る。 det(x,y) の正負を考えてみる。 det(e_1, e_2)=1 なので、x から y への角度を \thita とすると、 0 < \thita < \pi で det(x,y) は正 \pi < \thita < 2\pi で det(x,y) は負 となる。 # \thita = n \pi の時には、x と y は線型従属になってしまう [定理] x = ( a ), y = ( c ) とし、B = (x,y) b d とすると、 AB = A(x,y) = (Ax,Ay) となる。 # この性質は、要素同士を比較し確認すること !! よって、 |AB| = det(Ax,Ay) = |A| |B| = |A| det(x,y) つまり、 |A| = \frac(det(Ax,Ay)}{det(x,y)} # 分母が 0 にならないかを気にする必要がある # x, y を独立とれば Okey これは、 「x, y がはる平行四辺形の面積は、T_A によって、変換された結果、 |A| 倍になる」 ということを示す。 [定理] 一般に、変換 T を表す行列は、座標によって、異る行列で表現される しかし、どのような座標を変換を行なっても、T によって、変換された図形の面積比 は、同じである。つまり、 変換 T -- A ---> |A| \ \ \neq || \ B ---> |B| # A と B は異るかもしれないが、|A| = |B| が必ず成立する !! # 第三章で、行列式の応用で、連立方程式の応用をやる ( 後期 ) がその簡単な例として、二次元の場合について説明する。 [例] |A| \ne 0 とする a x + b y = e c x + d y = f は、 A = ( a b ), p = ( a ), q = ( b ), v = ( x ), u = ( e ) c d c d y f とすれば、 xp + yq=c とか、 Av = u と表すことができる。 この時、この連立方程式を満す解は、一組あり x = \frac{det(v,q)}{det{p,q}} y = \frac{det(p,v)}{det{p,q}} となる。 prof) 連立方程式を解けばよい。 == §外積(ベクトル積) # 三次元の独特な概念 [def] (ベクトル積) a, b \in V^3 : 線型独立 に対して、以下を満す c \in V^3 がただ一つ存在する 1) c は、a, b 共に垂直 2) a, b, c は右手系 3) |c| は、a, b で張られる平行四辺形の面積 # 独立なベクトル二つを取ると、平面が一つきまる。 # 法線の方向は、二つある、二つの目の条件がこれを選択する # 向きが決ればあとは、大きさを指定するだけ。三つ目の条件がこれ。 このような c を a \times b で表す。 a, b が線型従属の時 a \times b = 0 とする。 # これは、上の条件と矛盾しないだろうか ? # a, b が線型従属だと、平行四辺形はつぶれて、面積は 0 になる # これは、3) の条件から、大きさが 0 になるので、これは矛盾していない # 逆に 0 ベクトルだと、方向はどうでもよいので 1), 2) には矛盾しない # => よって、このような定義で問題ない [定理] ( a, b \in V^3, c \in R ) a \times b = - (b \times a) c (a \times b) = (ca) \times b = a \times (cb) [定理] ( ベクトル積の成分表示 ) a a' x = ( b ), y = ( b' ) c c' の時、 |b b'| c c' z = ( |c c'| ) a a' |a a'| b b' とすれば、 x \times y = z となる。 prof) # これが、ベクトル積の三つ条件を満すことを示すだけ 1) (x, z) = ..= 0 # y に関しても同様 2) x=e_1, y=e_2 とすると、z = e_3 となるので、 x, y, z は右手系 x, y が独立ならば、e_1 e_2 から、x, y まで、途中で、 従属にならず、変形できるが、その間は、従属にならない ( = 0 でない ) ので、符号が変らない つまり、右手系は右手系のまま 3) 平行四辺形の面積を S とすると ( 以前やったが.. ) S^2 = |a| |b| - (a,b)^2 なので、これを展開して、整理すると... = | x\times y |^2 となる。 [定理] a \times ( b_1 + b_2 ) = a \times b_1 + a \times b_2 == def [x,y,z で張られる平行六面体] 三つの互いに独立なベクトル x, y, z が作る、平行六面体を 「x,y,z で張られる平行六面体」 と呼ぶ。 # x, y, z が直交すれば、直方体になる # 更に、x,y,z の長さが等しければ、立方体になる。 [定理] 三つのベクトル a, b, c の張る平行六面体の体積を V とすると、 V = | (a \times b, c) | が成立する。 prof) c と a \times b の交角を \thita とする ( 0 \le \thita \le \pi ) すると、a b を底面とするときの高さ h は、 h = |c| |\cos{\thita}| となる # \cos{\thita} は負になる可能性があることに注意 よって、 V = |a \times b| |c| |\cos{\thita}| = | (a \times b, c ) | == § 3 次の行列式 a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_33 に対して、 a_11 a_1 = ( a_21 ) a_31 a_21 a_2 = ( a_21 ) a_31 a_31 a_3 = ( a_21 ) a_31 とすれば、 A = ( a_1, a_2, a_3 ) となるこの時 ( a_1 \times a_2, a_3 ) を、A の行列式と呼び |A| a_11 a_12 a_13 | a_21 a_22 a_23 | a_31 a_32 a_33 det A det( a_1, a_2, a_3 ) a_11 a_12 a_13 det( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_33 で表す。 [定理] det(a_1, a_2, a_3 ) の二つのベクトルを交換すると、 -1 倍 prof) ベクトルを入れ替えても、平行六面体の体積は変化しない。 よって、大きさは変らないが、二つをいれかえると、右手系は、左手系に 左手系は、右手系に変るので、符号が変る。 [定理] det(a_1,a_1', a_2, a_3) = det(a_1, a_2, a_3) + det(a_1', a_2, a_3) prof) 定義が外積と内積からなり、共に線型性質があるので.. [定理] det(c a_1, a_2, a_3) = c det(a_1, a_2, a_3) prof) 定義が外積と内積からなり、共に線型性質があるので.. [定理] ( 行列式の具体的な形 ) a_11 a_12 a_13 | a_21 a_22 a_23 | a_31 a_32 a_33 = a_11 a_22 a_33 + a_12 a_23 a_31 + a_13 a_21 a_32 - a_11 a_23 a_32 - a_12 a_21 a_33 - a_13 a_22 a_31 # これは、たすきがけで、覚える !! ## 四次以上は大変なので、覚えられない [定理] |AB| = |A||B| prof) 上の式を使って、左辺と右辺を比較すればよいが、計算が大変なので略 # 各自やってみよ !! # 二次の時と同じように、三次でも... [定理] x_1 x_2 x_3 u_1 = ( y_1 ), u_2 = ( y_2 ), u_3 = ( y_3 ) z_1 z_2 z_3 とし、 U = (u_1, u_2, u_3) とすれば、 AU = A(u_1, u_2, u_3) = (A u_1, A u_2, A u_3) となる。よって、 |AU| = det(A u_1, A u_2, A u_3) = |A||U| = |A|det(u_1, u_2, u_3) よって、 |A| = \frac{det(A u_1, A u_2, A u_3)|{det(u_1, u_2, u_3)} # 例によって、この三つのベクトルは、独立とする つまり、変換前と変換後の三つのベクトルがなす平行六面の体積の比が、|A| であることを意味する。 よって、三次元の変換 T でも、座標系によって、異る行列に対応するが、その行列の 行列式の値は、座標系にかかわらず、同じ値となる。 == [例] 二直線が同一平面上にない捻れの位置にある場合 # 空間の二直線は # 同一平面上 # 平行でない # 一点で交わる # 平行 # 交わる点がない # (同一直線) # 同一平面にない # 捻れの位置 # と関係が分類できる l_1 : x = x_1 + t a l_2 : x = x_2 + s b の両方に直交する直線 l がただ一つ存在するので、 P : l と l_1 の交点 Q : l と l_2 の交点 とすれば、P,Q は l_1, l_2 上の点なので、 P: p = x_1 + t a Q: q = x_2 + s b となり、また、PQ が l_1, l_2 と直交するので、 (q-p,a)=0 (q-p,b)=0 これを連立して、s, t 連立方程式 (a,a)t-(a,b)s=(a,x_2-x_1) (b,a)t-(b,b)s=(b,x_2-x_1) ここで、係数からなる行列の行列式を取ると、 |(a,a) -(a,b)| = - (|a|^2|b|^2-(a,b)^2) (b,a) -(b,b) となる。ところが、a,b は線型独立 ( l_1, l_2 は捻れの位置 ) なので、 |a|^2|b|^2-(a,b)^2 \ne 0 よって、一組の解 s,t が存在する。 特に、この PQ で最短距離になる。 最短距離の式は、時間がないので、各自確認のこと !! ( Text にある ) == # 来週からは行列の話