2005/06/30 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) # また、5 分遅れた.. §行列と線型写像 # 実 2 次行列と平面の線型変換には、対応関係があった。これを一般に拡張することを考える C^n = { n 項列ベクトル } としたとき [定義] C^n から C^m への写像 T が線型性を持つとは T(x+y) = T(x)+T(y) T(cx) = cT(x) が成立すること [定義] A:(m,n) 行列に対して、 T_A(x) を Ax で定義する [定理] T_A は 線型写像 証明 : 略 (定義を満すことをチェック) [定理] \forall T : C^n -> C^m に対して \exist A : (m,n) 行列, st. T = T_A prof) e_1, .., e_n を n 項列単にベクトルとする a_i = Te_i とし、A = (a_i) とする。 すると T(e_i) = a_i = Ae_i ここで、任意の n 項列ベクトル x = (x_i) を考えると、 x = \sum_{i=1}^n x_i e_i # この形は、今後も良く利用する ! すると T_A(x) = T_A(\sum_{i=1}^n x_i e_i) = \sum_{i=1}^n x_i T_A(e_i) = \sum_{i=1}^n x_i T(e_i) = T(\sum_{i=1}^n x_i e_i) = T(x) よって任意の x に対して T_A(x) = T(x) より、 T_A = T [注意] { (m,n) 型の行列 } <--(one-to-one)--> { C^n -> C^m : 線型写像 } \in \in A <---------------------------> T_A [定理] T : C^n -> C^m <-> A (m,n) 型 S : C^m -> C^l <-> B (n,l) 型 の時 S・T : C^n -> C^l の線型写像 <-> BA : (l,m) 型と対応する prof) # 証明すべき内容は # S・T が線型写像であること # S・T に対応する行列が BA であること # の二点あるが、それを同時に示す。 T=T_A, S=T_B である。 T_B・T_A = T_{BA} を示す T_B・T_A(x) = T_B(T_A(x)) = T_B(Ax) = B(Ax) = (BA)x = T_{BA} # [注意] 二つの線型写像の合成は、行列の積に対応する # 実は、これが成立するように、BA を定義した !! [定義] 特に m = n の時に { n 次行列 } <-(1-to-1)-> { C^n の変換 } # A から A の写像を A の変換と呼ぶ [定理] A が正則の時 T_{A^{-1}} = T_A^{-1} prof) T_A^{-1}・T_A = T_A・T_{A^{-1}} = T_E = I : 恒等変換 [定理] T_A が逆変換をもつならば、A は正則 prof) # T_A の逆変換が、線型写像であることが分かれば、後は簡単 T_A^{-1} = S とする x, y \in C^n に対して x' = Sx y' = Sy とすると、 T(x') = T_A(S(x))=x T(y') = T_A(S(y))=y となる。 この状態で、 S(x+y) = S(T(x')+T(y')) = S(T(x'+y')) = x' + y' S(cx) = S(cT(x')) = S(T(cx')) = cx' つまり、S は線型写像。 よって、 S = T_B となる行列 B があり、 T_B・T_A = T_A・T_B = I || || || T_{BA} T_{AB} T_E となる。 つまり、B = A^{-1} であり、A は正則。 # これまでの議論は、複素数の世界で議論したが、実数の世界でもまったく同じく成立する R^n = { n 項実列ベクトル } { (m,n) 型実行列 } <--(1-to-1)--> { R^n -> R^m : 線型写像 } { n 次実行列 } <--(1-to-1)--> { R^n の線型変換 } n = 2, 3 の時に V^2, V^3 に対応 # ここらへんは、1 章でやった。 # 線型写像の話は、来年 ( Text では 4 章 ) で沢山やるが、今年は、あまりしない == § 基本変形 # 基本変形で、rank を計算したり、逆行列を求めたり、連立方程式を解くことができる # 非常に重要なので、きっちりと身に付けること !! # 基本変形は、まず、三つの基本行列を理解することから始まる。 [定義] ( 3 種類の基本行列 ) P_n(i,j) ( i \ne j ) Q_n(i;c) ( c \ne 0 ) R_n(i,j;c) ( i \ne j ) P_n(i,j) の定義 ( 間に合わないので、Text p.46, 47 参照 !! ) [定理] P_n(i,j) P_n(i,j) = E prof) ( 0 1 )( 0 1 ) = ( 1 0 ) 1 0 1 0 0 1 よって、正則。 # P 型の逆行列は P 型 Q_n(i;c) の定義 ( 間に合わないので、Text p.46, 47 参照 !! ) [定理] Q_n(i;c) Q_n(i,c^{-1}) = E よって、正則。 # Q_n 型の逆行列は Q_n 型 R_n(i;c) の定義 ( 間に合わないので、Text p.46, 47 参照 !! ) [定理] R_n(i,j;c) R_n(i,j,-c) = E prof) (1 c)(1 -c) = (1 0) 0 1 0 1 0 1 よって、正則。 # R_n 型の逆行列は R_n 型 # 基本行列を、左、あるいは右からかけるという行為が、「基本操作」 [定義] 基本変形 ( 6 種類 = 左右(2) x 三つの基本行列(3) ) (左1) # P_n(i,j) を左からかける 第 i 行と第 j 行を入れ替える (左2) # Q_n(i;c) を左からかける 第 i 行を c 倍する (左3) # R_n(i,j;c) を左からかける 第 i 行に第 j 行を c 倍した結果を加える (右1) # P_n(i,j) を右からかける 第 j 列と第 i 列を入れ替える (右2) # Q_n(i;c) を右からかける 第 i 列を c 倍する (右3) # R_n(i,j;c) を右からかける 第 j 列に第 i 列を c 倍した結果を加える # 左と右では、列と行、i と j が入れ替わるだけ # 「操作」と「基本行列の掛け算」が『対応している』ということが重要 !! [定理] A に基本変形を何度か適用した結果が B だとすると、 B から基本変形を繰り返すと A に戻るということを意味する prof) A が基本操作で B に移るということは、 B = PAQ P, Q は基本行列の組み合わせ とかけるること意味する。ところが、基本行列自身や その積は、正則なので、P{-1}, Q{-1} が存在し A = P^{-1}BQ^{-1} となることを意味する。 基本行列(の積)の逆行列も基本行列(の積)なので、これは、基本操作で B から A が作れることを意味する。 # 以下、基本変形がよく出てくるが、良く間違える例として、 # A を基本変形した結果を B とするときに # A = B # と書く人がいるが、これは「間違い」 # A → B # と書こう [定義] A=(a_ij) に対して、 『(p,q)をかなめとして、左から第 q 列を掃き出す』 という操作は次のように定義される。 1) 第 p 行を a_{pq} でわる # 左から Q_n(q,\frac{1}{a_{pq}}) をかける 2) 第 i 行を 第 p 行の -a_{iq} 倍を加える # 左から R_n(i,p;-a_{iq}) をかける \forall i \ne p # この結果、q 列目は、e_p に等しくなる。 [定義] 同様にして、 『(p,q)をかなめとして、上から第 p 行を掃き出す』 も定義される ( 基本行列は、右からかける ) [定理] A : n 次行列 \exist X, s.t. XA=E ならば、A は正則 # 定義は、 XA=AX=E となる X の存在 # 実は、一方だけで Okey という話 prof) n に関する帰納法による n=1) XA=(x_11)(a_11)=E=(1) よって、 x_11 a_11 = 1 よって、 a_11 \ne 0 かつ x_11 = a_11^{-1} よって、 AX=(a_11)(a_11^{-1})=(1)=E n=k+1) ( n = k の時は成立するとする ) A \ne O なので、0 でない成分がある そこで、行と列の入れ換えを使って、1,1 成分が 0 でないようにする。 更に、第 1 行と第 1 列を共に掃き出した行列を B とする。 A -> B これまでの操作は、基本変形なので、ある基本行列の積 P, Q があり、 B = PAQ とかけることがわかる。 つまり、 A = P^{-1}BQ^{-1} 一方 B は 1 0 .. 0 B=( 0 ) . A_1 0 の形である。 ここで、Q^{-1}XP^{-1} を考えると Q^{-1}XP^{-1} = ( u | {}^tZ ) --+------- y | X_1 となる。 Q^{-1}XP^{-1} B = Q^{-1}XP^{-1}PAQ = E なので、B は逆行列をもち、それはQ^{-1}XP^{-1} ところが、Q^{-1}XP^{-1} B を計算すると Q^{-1}XP^{-1} B = ( u | {}^tz A_1 ) ---+----------- y | X_1A_1 となる。これが、E_{k+1} に等しいので、 X_1 A_1 = E_k である。 ここで、帰納法の仮定より、 A_1 は正則 したがって、 B = ( 1 | 0 .. 0 ) ---+------- 0 | ..| A_1 0 | も正則 A = P^{-1}BQ^{-1} なので、 A も正則 == # 時間があるので、ちょっと別の話 # 定理 2.7 の <= は証明したが => は後回しだった。これを残りの時間にやる 対称区分け A = ( A_1 | ) -----+-----+- | A_2 | -----+-----+--- | A_3 ... A_n で、 A 正則 <-> \forall j [ j A_j 正則 ] prof) (=>) A^{-1} = ( X_{pq} ) # 同様な区分け とすると、 E = AA^{-1} = ( A_i X_{ij} ) なので、成分同士を比較して A_j X_{jj} = E より、同様に、A^{-1}A X_{jj} A_j = E よって、 A_j は正則 # 反対は、rank を使うと簡単だったのだが、別に対称区分けをつかっても Okey == # ちょっと、お話 rank の計算はできるようしておいた方が良いな.. 三次の行列式は計算できるようにしておいた方が良いな.. # とりあえずは、ここまで..