2005/07/07 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) 先週から、基本変形を学んでいる 基本行列 3 種類 左右からかける 合計 6 種類 これができると.. 階数(rank : ランク)、逆行列、一次式、行列式 等を求めることができる。 == 定理 4.2 A : (m,n) 型 とすると、基本変形を繰り返すと次のような形に変形可能 基本変形 A ---------> F_{m,n}(r) = ( E_r | O ) ----+--- O | O このとき、r は、A にのみ決る。 # 前半は、「標準形にできる」こと、後半は、「標準形は唯一」ということ この F_{m,n}(r) のことを、「(階数)標準形」と呼ぶ prof) [前半] A=O ならば、A=F_{m,n}(0) なので、満たしている。 A\ne O の場合 行、列の交換により、(1,1) 成分を \ne 0 にできる。 そこで、(1,1) をかなめとして左右から、第 1 行、第 1 列 を掃き出す。 すると、次のようにして、A' にできる 基本変形 A ------> ( 1 | 0 .. 0 ) = A' ---+------- 0 | ..| A_1 0 | A_1 = O ならば、 A' = F_{m,n}(1) なので Okey A_1 \ne O ならば、 行、列の交換により、(2,2) 成分を \ne 0 にできる。 そこで、(2,2) をかなめとして左右から、第 2 行、第 2 列 を掃き出す。 すると、次のようにして、A' にできる 基本変形 A ------> ( 1 0 | 0 .. 0 ) = A" 0 1 | 0 .. 0 -----+------- 0 0 | .. | A_2 0 0 | 以下同様 [後半] 基本変形 A -------> F_{m,n}(r) = F(r) 基本変形 -------> F_{m,n}(s) = F(s) # これは、同時に # 基本変形 # A <------- F_{m,n}(r) = F(r) # 基本変形 # <------- F_{m,n}(s) = F(s) # も意味することに注意 とする。 一般性を失うことなく、r \le s としてよい。 すると、 \exsit P : m 次正方行列、\exsit q : n 次正方行列、 s.t. P F(r) Q = F(s) である。 ここで、次のような区分けを考える r m-r r P_11 | P_12 P = ( -----+----- ) m-r P_21 | P_22 r n-r r Q_11 | Q_12 Q = ( -----+----- ) n-r Q_21 | Q_22 そして、両辺の積を考えると.. P F(r) Q = ( P11 Q11 | P11 Q12 ) P21 Q11 | P21 Q12 = F(s) = ( E_r | O ) O | * よって P11 Q11 = E_r P11 Q12 = O P21 Q11 = O P21 Q12 = * ところが、最初の式より、P11, Q11 は正則であるので 二行目から Q12, P21 が共に O になることがわかる。 よって、 P21 Q12 = O = * よって、 r = s この定理で、A によって定まる r を「階数(rank:ランク)」と呼ぶ。 # Rank と同じ定義の数は、色々ある [例] # Rank を求める問題を作ったので、解けないと困る !! 0 2 4 2 ( 1 2 3 1 ) -2 -1 0 1 の Rank を計算する。 基本変形を行うと 左 P_3(1,2) 左 R_3(3,1;2) 右 R_4(1,2;-2) 右 R_4(1,3;-3) 右 R_4(1,4;-1) 左 Q_3(2;\frac{1}{2}) 左 R_3(3,2;-3) 右 R_4(2,3;-2) 右 R_4(2,4;-1) 1 0 0 0 ( 0 1 0 0 ) = F_{3,4}(2) 0 0 0 0 と、標準系にできるので、1 の個数を数えて r = rank A = 2 であることが解る。 [例] 1 1 a b ( 1 2 2a 1 ) 2 1 1 a+b 基本変形を行うと 1 0 0 0 ( 0 1 0 0 ) = B 0 0 1-a 1+b-2b となる。ここで、場合分けを行う。 a) 1-a=0 1+a-2b = 0 の時、つまり a=1 b=1 の時は、残りの要素は全て 0 なので、 B = F_{3,4}(2) となり、 rank A = 2 b) それ以外 基本変形 B -------> F_{3,4}(3) なので、 rank A = 3 結局、 答 rank A = 2 ( a = b = 1 の時 ) = 3 ( その他 ) # 成分に未知数が入ってくると場合分けが必要なことに注意 !! # 基本は、みな同じだが、工夫をすると簡単になる場合もある。 [例 3] ( text p.71 問 4 ) # まず、下準備として、 右 R_n(i,1:1) ( 2 \le i \le n ) A -> B とする。 [場合分け] (1+(n-1)x \ne 0 の時) 右 Q_n(1,\frac{1}{1+(n-1)x}) 右 R_n(1,i;-x) ( 2 \le i \le n ) 左 R)n(i,1,-1) B -> C [場合分け] (1-x=0 の時) C=F_{n,n}(1) よって、 rank A = 1 (1-x \ne 0 の時) rank A = n (1+(n-1)x = 0 の時) 左 R(1,i;1) ( 2 \le i \le n ) 0 0 0 .. 0 B' = ( 0 1 x .. x ) 0 x 1 .. x 0 x .. x 1 B' では、1+(n-1)x = 0 より 1+(n-2)x \ne 0 なので B' -> F_{n,n}(n-1) よって、 rank A = n - 1 以上により、 答 rank A = 1 ( x=1 ) = n-1 ( x=-frac{1}{n-1} ) = n ( その他 ) # この問題は章末問題なので、難しい 定理 [4.3] A : n 次 A : 正則 <-> rank A = n 証明 # 上の定理により PAQ = F(r) ( P,Q は正則 ) とかける (=>) A が正則ならば PAQ = F(r) も正則 よって、 n = r # もし、r < n なら、r + 1 列は 0 ベクトル、一つでも 0 なベクトルがあったら、正則になれない !! (<=) PQA = F(n)=E_n よって、 A=P^{-1}Q^{-1} よって、A は正則 [注意] A は基本行列の積で表すことができる。 # 勝手な正則行列は、基本行列の積で表すことができる !! 定理 [4.4] 左(右)基本変形 A が正則 <-> A ------------> E prof) (<=) rank A = n [4.3] より A は正則 (=>) [4.3] より PAQ = E ( P,Q は正則 ) より Q(PAQ)Q^{-1}=QEQ^{-1} より QPA = E [注意] A^{-1}=QP 定理 成分 P_n(i,j) 0,1 Q_n(i,c) 0,1,c = \frac{a_11} R_n(i,j;c) 0,1,c = - a_{ij} よって、 A が実行列 <=> A^{-1} が実行列 A が有理行列 <=> A^{-1} が有理行列 # 逆行の求め方 (A|E) を左操作だけで基本変形すると (QPA|QPE) = (E|PQ) = (E|A^{-1}) となるので、これで、逆行列が計算できる # 基本操作として、「左からかける = 行同士の操作」の操作しかできないことがポイント # もし、最終的に左側を E にできなければ、実は、逆行列がなく、その時には、正則でもない。 [例] 1 2 3 A = ( -2 -3 -4 ) 2 2 4 の逆行列を求めることを考える 1 2 3 | 1 0 0 (A|E) = (-2 -3 -4 | 0 1 0 ) 2 2 4 | 0 0 1 を変形し、 左 R_3(2,1;2) 左 R_3(3,1;-2) 左 R_3(1,2;-2) 左 R_3(3,2;2) 左 Q_3(3;\frac{1}{2}) 左 R_3(1,3;1) 左 R_3(2,3;-2) 1 0 0 | -2 -1 \frac{1}{2} (E|A^{-1}) = ( 0 1 0 | 0 -1 -1 ) 0 0 1 | 1 1 \frac{1}{2} となるので、 -2 -1 \frac{1}{2} A^{-1} = ( 0 -1 -1 ) 1 1 \frac{1}{2} [注意] 標準形への変形では、左でも右でも使って良い rank の計算では、どちらも使える 逆行列を求める場合は、左しか使えない ( 右は使っちゃだめ !! ) == [試験範囲] 複素数 多項式 平面、空間ベクトルの内積、外積 3 x 3 の行列式 rank の計算 基本的なものだけで Okey