2005/11/24 代数学幾何学及び演習 I (古津先生) クラーメルの公式 連立方程式を Ax=b とするとき x=A^{-1}b =\frac{1}{|A|}\~Ab A の j 列目を b に入れ替えたものを Aj とすれば、 x_j = \frac{|Aj|}{|A|} となる # これは、連立方程式を解く公式だが、実際の計算には使わない ## 既に、学んだ、掃き出し法の方が速い。 文字を含んだ式の公式を作る場合などに利用できる [例] a,b,c が互いに異る場合 x + y + z = 1 ax + by + cz = d a^2x + b^2y + c^2z = d^2 の時 1 1 1 A = ( a b c ) a^2 b^2 c^2 これは、バンデルモンドの行列式なので |A| = (a-b)(b-c)(c-a) \ne 0 |A| が 0 でないので、A は正則となり、クラーメルが使える 1 1 1 A1= ( d b c ) d^2 b^2 c^2 となり、 |A1| = (d-b)(b-c)(c-d) よって、 x = \frac{|A1|}{|A|} = \frac{(d-b)(b-c)(c-d)}{(a-b)(b-c)(c-a)} y, z も同様 == 以上で、後期の内容は終り。 以下は、章末問題を行う。 [章末問題] 問 1 イ) x -1 0 0 .. 0 |A_{n+1}| = | 0 x -1 0 .. 0 | 0 0 x 0 .. 0 ...................... 0 0 0 x -1 an an-1 a1 a0 = (-1)x|A_n| + (-1)^{n+1}an |Bn| ここで Bn は、下三角行列で、対角要素が、全て -1 なので、 |Bn| = (-1)^n よって = x|An| + an # つまり、漸化式ができた。 ## 後は、一般形を考えて、帰納法で証明する。 |A0| = a0 |A1| = | x -1 | = a0x+a1 a1 a0 .. よって、 |An| = a0x^n + a1x^{n-1}+ .. + a_n と予想できる。 後は、帰納法 # サイズの大きな ( n に関係するような.. ) 行列式の一般形の計算は、 # 一つ次数を落し、漸化式を作って、帰納法を適用するのが原則 問 1 ロ) x a1 a2 .. an | a1 x a2 .. an | a1 a2 x .. an ............ a1 a2 an x # これは、 x を順番に入れ替えているだけなので、各々の行の要素の和は等しい # 各々の列の和の値が等しい場合 # その場合は、「全部の列の和を求める」のが定石 ## そこで、一列目に他の列を加える ### この基本操作は、行列式の値を変えないことに注意 x + a1 + .. + an a1 a2 .. an | x + a1 + .. + an x a2 .. an | x + a1 + .. + an a1 x .. an ............ x + a1 + .. + an a2 x すると一列目は、同じなので、基本変形で同じ要素を括りだす 1 a1 a2 .. an (x + a1 + .. + an) | 1 x a2 .. an | .......... 1 a2 x # ここで、実際は、x + a1 + .. + an が 0 だと基本行列は使えない # のだが、その場合は、何れにせよ、 0 になるので、上の式は、0 でない場 # 合も 0 の場合も成立するので、場合分けが不要 ここで、 j 列に第 1 列の -a_{j-1} 倍を加えると、次のようになる。 1 0 0 .. 0 (x + a1 + .. + an) | 1 x -a1 0 .. 0 | 1 a2-a1 x-a2 0 .. 0 .......... 1 a2-a1 a3-a2 x-an 後半は、下三角行列なので、 (x + a1 + .. + an)(x-a1)(x-a2)..(x-an) となる。 # x に a_1 を代入すると |A| が 0 になるので、|A| が (x-a_1) で割切れるとやってゆく方法もある。 ハ) 1+x^2 x 0 0 0 .. 0 |Cn| =| x 1+x^2 x 0 0 .. 0 | 0 x 1+x^2 x 0 .. 0 ........................... 0 0 0 0 x 1+x^2 # 二つ位ならば、そのまま展開した方がよい # 特に文字列の場合は、その文字の値が 0 になるかどうかによって場合わけ必要になるので、大変 = (-1)^2 (1+x^2)|C_{n-1}| + (-1)^3x | x 0 0 .. 0 | | x 1_x^2 x .. 0 | | ............... | | 0 0 0 1+x^2| = (1+x^2)|C_{n-1}| - x(-1)^2x|C_{n-2}| = (1+x^2)|C_{n-1}| - x^2|C_{n-2}| # 漸化式が出たので、漸化式をといてもよいし、帰納法でもよい。 帰納法でやるには、一般形を予測する必要がある |C1| = 1+x^2 |C2| = 1+x^2+x^4 |C3| = 1+x^2+x^4+x^6 よって、 |Cn| = 1 + x^2 + .. + x^{2n} 後は、帰納法 ## |C_n| = (1+x^2)|C_{n-1}| - x^2|C_{n-2}| ## より ## |C_n| - |C_{n-1}| = x^2 ( |C_{n-1}| - |C_{n-2}| ) ## よって、 ## |C_n| - |C_{n-1}| = x^{2n-4}( |C_2| - |C_1| ) ## = x^{2n} ## よって、 ## |C_n| = 1 + .. ニ) 0 a^2 b^2 1 a^2 0 c^2 1 b^2 c^2 0 1 1 1 1 0 = (c-a-b)(c+a+b)(c-a+b)(c-b+a) = -(a+b+c)(a+b-c)(b+c-a)(c+a-b) 問 2 イ) # 4 次の交代行列の一般形 | 0 a b c | = (af-be+cd)^2 -a 0 d e -b -d 0 f -c -e -f 0 proof) 実際に展開して両辺を比べる 問 2 ロ) A : n 次元の交代行列 n : 奇数 |A| = 0 proof) 定義より {}^tA = -A よって、 |{}^tA| = |-A| ここで、 |{}^tA| = |A| |-A| = (-1)^n|A| より、(n が奇数なので..) |A| = -|A| これより、 |A| = 0 # n が偶数の時には、|A| が何かの平方数になることが解る。 ## これは、3 年生になってもやらないかも .. 問 3 イ) A, B : n 次元 | A B | = |A+B| |A-B| B A を示せ。 proof) 基本操作より # 第 i 行目に第 i+n 行目を加える | A+B B+A | B A 基本操作より # 第 j 列目を第 j+n 列目から引く | A+B 0 | B A-B = |A+B| |A-B| 問 3 ロ) A, B : n 次元 | A -B | = | |A+iB| |^2 ( = | det(A+iB) |^2 ) B A を示せ。 proof) 基本操作より # 第 k 行目に第 k+n 行目の i 倍を加える | A+iB -B+iA | B A 基本操作より # 第 n+j 列目に第 j 列目の -i 倍を加える | A+iB 0 | B A-iB = |A+iB||A-iB| = |A+iB| \bar{|A+iB|} (where A,B は実要素) = | |A+iB| |^2 # 元々、実要素の行列式なので、結果は実数になるに決っている。 == 来週は、この続き その次は、試験 ( 試験がおわったら今年は終り ) 来年は 1 月に、講議があるので、その時に残りの演習問題をする