代数幾何 I 古津先生 (2006/05/25) # 今迄、多項式。今日から線型代数 線型(形)代数 内容 ベクトル 行列 # 来年も続きをやる # 今年は、ベクトルを少し、後は行列 # 来年も、ベクトルをやってから、行列をする ベクトル 平面ベクトル 空間ベクトル # ベクトルは他にもやるが一年の間はこれしかしない # 暫くは高校の復習 二つの点 始点 P と終点 Q が決ると、それに対してベクトルが決る # P から Q へ引いた矢印になる。 ベクトルは、「長さ (大きさ)」 と「向き」を持つ もし別のベクトル P'Q' があったとき 長さと向きが等しい場合 ベクトル PQ = ベクトル P'Q' と考える。 スカラ これまで扱ってきた数 ( 向きを持たない大きさだけのもの ) をベクトルに対してスカラと呼ぶ 零ベクトル 始点と終点が同じベクトル 大きさが 0 向きはないかどちらを向いていると考えてよい。 V^2={平面ベクトル全体の集合} V^3={空間ベクトル全体の集合} ベクトル a とベクトル b の和 a の終点と b の始点を一致させたとき、a の始点から b の終点へのベクトルを a と b の和と呼ぶ # 和は三角形の辺の形になるが、平行な場合は、直線になる 定理 [1.1] (和の性質) a + b = b + a ( 交換法則 ) # 証明は図を使って行う ( a + b ) + c = a + ( b + c ) ( 結合法則 ) a + 0 = a 逆ベクトル a = PQ に対して、 QP を a の逆ベクトルと呼び - a で表す。 # -a は和に関して、a の逆元になっている。 a + ( -a ) = 0 となる。 a + ( -b ) を a - b を書く ( これが引き算の定義 ) # 次ぎは掛け算 # ベクトルに関係する掛け算は、幾つかある ( スカラ積、内積、外積 [ベクトル積] ) # 今回は、スカラ積をやる。 c \in R に対して、 c a を c > 0 の時 a の向きをかえず、大きさを c 倍する c < 0 の時 a の向きを 180 度変えて、大きさを -c 倍する。 c = 0 の時 ca は 0 ベクトルになる。 0 a = 0 c 0 = 0 定理 [1.2] c (a+b) = ca + cb # 三角形の相似を使う (c+d)a = ca + da (cd)a = c(da) # 直線上の話 # ここら辺は、高校で学んだ # ここまでは、座標がなかった。平面でも空間でも成立 # ここから、座標を入れる a = PQ とし、P = (x1,y1,z1), Q = (x2,y2,z2) とすると p = x2-x1 q = y2-y1 r = z2-z1 の三つは、P (始点) の位置に関係なく一定。 例えば、 a = PQ = P'Q' で、P' = (x1',y1',z1'), Q' = (x2',y2',z2') とすると p = x2'-x1' q = y2'-y1' r = z2'-z1' となる。 この p, q, r を a の成分と呼び p a = ( q ) r の形で記述する。 # 高校までは、横にかいたが、大学では縦にかく # 上記は、空間だが、平面は、z を削るだけ (位置ベクトル) ベクトルの始点が原点となるような特別なベクトルを考える p a = ( q ) r の時、Q の座標は ( p, q, r ) となる。 x 逆に、点 P ( x,y,z ) に対して、ベクトル v = ( y ) を P の位置ベクトルと呼ぶ z 定理 ( 和の成分表示 ) p p' a = ( q ), b = ( q' ) r r' の時 p + p' a + b = ( q + q' ) r + r' t p t a = ( t q ) t r R^3 から V^3 への対応を考える R^3 -------------> V^3 \in x P (x,y,z) |-> OP = ( y ) z p A (p,q,r) <-| a = ( q ) r 逆もあるので、この写像は 1 to 1 [定義] (単位ベクトル) 次の三つの特別なベクトルを単位ベクトルと呼ぶ 1 0 0 e1 = ( 0 ), e2 = ( 1 ), e3 = ( 0 ) 0 0 1 # これが「基底になる」というのは来年の話 # 平面場合は二つ x v \in V^3 = ( y ) に対して z v = x e1 + y e2 + z e3 となる。 [定義] (線型[一次]独立) # 平面の場合 a, b, が平行でないときに線型独立 # この定義は、0 ベクトルの扱いが難しいので言い替える <=> a = OP, b = OQ とする O, P, Q が一直線上にない時に独立 # こちらなら、0 ベクトルがあっても問題ない # 空間の場合 a, b, c が同一平面上のベクトルで表示できない時 <=> a = OP, b=OQ, c = OR O, P, Q, R が同一平面上にない時に独立 線型独立でない時に線型従属と呼ぶ [定理] a, b, c : 線型独立 => \all v \in V^3 \exist 1 x, y, z \in R s.t. v = x a + y b + c z # 存在のほうは面倒だが、一意は簡単 # 一次方程式系の話になる 問 三角形 OPQ があり PQ の中点を M とする a = OP b = OQ とすると OM = (a + b)/2 となる。 [証明] PQ = b - a PM = 1/2 PQ = (b-a)/2 OM = OP + PM = a + (b-a)/2 = (a+b)/2 問 三角形 PQR の重心を G とすると、 OG = ( a + b + c )/3 [証明] # 平面幾何学の性質を利用すると、G は P から QR の中点 M へ結んだ線を 2 : 1 に分割するということが解る ( これは、解っているものとする ) OM = ( a + b ) / 2 PG = 2/3 PM = 2/3 (OM - OP) = 2/3 ( (b+c)/2 - a ) OG = OP + PG = ベクトルの長さ ( 本によっては、ノルムと呼ぶ ) |a| または ||a|| で表す # 本では、||a|| だが講義では、|a| を使うことも多い # ベクトルの長さは成分がわかっていれば、ピタゴラスの定理から解る p a = ( q ) の時 ||a|| = \sqrt{p^2+q^2+r^2} r p a = ( q ) の時 ||a|| = \sqrt{p^2+q^2} # 次は向き(角度)、内積の話 二つのベクトル交角を \theta とするとき、 |a| |b| \cos{\theta} = 1/2 { |a|^2 + |b|^2 - |b-a|^2 } を、二つのベクトル a, b の内積と呼び (a,b) とか a・b で表す ( この講義では、 (a,b) を使う ) [定理] (内積と長さ) (a,a) = |a|^2 [定理] (内積の成分表示) a = ( p ), b = ( p' ) q q' の時 a = pp'+qq' p p' a = ( q ), b = ( q' ) r r' の時 a = pp'+qq'+rr' [証明] 内積の定義の 1/2 { |a|^2 + |b|^2 - |b-a|^2 } に代入して整理するだけ \cos{\theta} = (a,b) / (|a| |b|) 特に a と b が直交 <-> (a,b) = 0 で定義 # 0 ベクトルは全てのベクトルと直交する [1.3] |(a,b)| <= |a||b| (シュワルツワルトの不等式) # これらは、これから、色々な形で出て来るが、これが最初の形 |a+b|<=|a|+|b| ( 三角不等式 ) c (a,b) = (ca, b) = (a, cb) # これは来年ちょっと違う定義になる (a,b1+b2) = (a,b1) + (a,b2) (a1+a2,b) = (a1,b) + (a2,b) (a,b) = (b,a) # これも、来年ちょっと変る # 下の方は、成分表示すれば明らかなので、上だけ証明する [証明] (a,b) = |a| |b| \cos{\theta} なので |(a,b)| = |a| |b| |\cos{\theta}| 所が |\cos{\theta}| <= 1 よって、 |(a,b)| <= |a| |b| 等号が成立するのは、a, b が一直線上の時 |a+b| <= |a| + |b| は、和の定義から、三角形の辺の長さを比較する ( だから三角不等式 ) 等号が成立するのは、a と b が同じ方向と向きの時 # 同じ方向でも向きは二つある # 上は、同じ方向だけでよいが、下は向きも等しい必要がある [問] a 1 1 x = ( b ), y = ( 1 ), z = ( 1 ) c 1 4 1 = |x|^2 = a^2 + b^2 + c^3 (x,y) = |x||y|\cos{\pi/6} a + b + c = 1 \sqrt{3} \sqrt{3}/2 = 3/2 (x,z) = |x||y|\cos{\pi/4} a + b + 4c = 1 3\sqrt{2} \sqrt{2}/2 = 3 よって、 c = 1/2 a = (2 \pm \sqrt{2})/4 b = (2 \mp \sqrt{2})/4 これから、 (2 \pm \sqrt{2})/4 x = ( (2 \mp \sqrt{2})/4 ) 1/2 # 答は二つになる。 定理 [1.4] 二つのベクトルの作る a, b が作る平行四辺形の面積を S とすると S = |a| |b| \sin{\theta} となっているので、 S^2 = |a|^2 |b|^2 \sin^2{\theta} = |a|^2 |b|^2 ( 1 - \cos^2{\theta} ) = |a|^2 |b|^2 - |a|^2 |b|^2\cos^2{\theta} = |a|^2 |b|^2 - (a, b)^2 よって、 S = \sqrt{|a|^2 |b|^2 - (a, b)^2} # 三角形の面積はこの半分 # 成分の場合 a = ( p ), b = ( p' ) q q の時、 S^2 = |a|^2|b|^2 - (a,b)^2 = (p^2+q^2)(p'^2+q'^2) - (pp'+qq')^2 = (pq'-p'q)^2 よって S = |pq'-p'q| # この半分が、三角形の面積なので、三角形の面積は、ベクトルの成分がわかれば簡単に計算できる。 問 P1 (x1,y1,z1) P2 (x2,y2,z2) P3 (x3,y3,z3) の時、この三点が作る三角形の面積Sは... a = P1P2, b = P1P3 とすれば、 2S = \sqrt{|a|^2|b|^2 - (a,b)^2} x2-x1 x3-x1 a = ( y2-y1 ), b = ( y3-y1 ) z2-z1 z3-z1 なので、代入して整理すると.. (2S)^2 = .. = 略 == 次回 直線と平面 1. 平面上の直線 2 点 (P1, P2) が与えられれば直線 l が決る OP1 を x1 OP2 を x2 P1P2 を a とそれぞれ、置いて、これを用いて、直線 ( 上の点の位置ベクトル ) を表す l 上の任意の点 P ( 位置ベクトルは x ) とすると P1P = t P1P2 ( t \in R ) = t a x = OP = OP1 + P1P2 = x1 + t a 直線 l をこの形に表現したものを l の ベクトル表示 助変数表示 パラメータ表示 と呼び t を助変数 (パラメータ) とよぶ a を平行ベクトル # a は一意でないので、問題を解く時は適当に選ぶ # |a| = 1 となるように選ぶと都合がよいことが多い 成分が解っている時 v = ( x ), x1 = ( x1 ), x2 = ( x2 ) y y1 y2 を使って、上記の式に代入すると (y - y1)/(y2-y1) = (x-x1)/(x2-x1) となり、これは、普通の直線の式 # 暫く ( 3 週間位 )、この話をして、その後行列をやる