代数幾何 I 古津先生 (2006/06/08) 行列と線型(一次)変換 # 今週は、平面の話をし、来週は、それを空間でもう一度、同じ話をする。 # この話では、まず、回転から入ることが多い 点 P = (x,y) を考え、その位置ベクトル OP = v = (x) とする y この点 P を原点を中心に、反時計周りにαの回転をすることを考える。 その回転した結果の点を P' = (x', y') として OP' = v' = ( x' ) y' とすると、 # これは、sin/cos の加法定理の所で議論しているはず x' = \cos{α} x - \sin{α} y y' = \sin{α} x + \cos{α} y # この結論が解らない人は、高校の教科書の加法定理の所を読み直す !! これの係数部分をぬきだして、次のように形式的に記述する (x') = ( \cos{α} -\sin{α} ) (x) y' \sin{α} \cos{α} y この係数を並べものを「行列」と呼ぶ。 # 角αの回転の行列 より一般的には、 ( a b ) ( x ) = ( a x + b y ) c d y c x + d y 特に、 A = ( \cos{α} -\sin{α} ) \sin{α} \cos{α} とすれば、 v' = A v となる。 [行列の用語] 列, 行、成分.. etc .. ( text p.18 参照 ) [定理] (線型性) A(x+y) = Ax + Ay A(cx) = c(Ax) # この性質は、このあと嫌になるほど、出てくる (重要 !!) ## ここで話を回転に戻して.. 同様にして、P' をβだけ回転した結果を P" とすると、 (x") = ( \cos{β} -\sin{β} ) (x') y" \sin{β} \cos{β} y' 特に、 B = ( \cos{β} -\sin{β} ) \sin{β} \cos{β} とすれば、 v" = B v' となる。 ここで、P を一挙に P" まで、回転させることを考えると... 同様にして.. (x") = ( \cos{α+β} -\sin{α+β} ) (x) y" \sin{α+β} \cos{α+β} y となる。 α回転してから、β回転しても、一挙に、α+β回転しても結果は変らないはず !! よって、 C = ( \cos{α+β} -\sin{α+β} ) \sin{α+β} \cos{α+β} とすれば、 C v = B (A v) ということになる。 そこで、 C = BA と定める (定義する)。 即ち、 (BA) v = B(A v) # この議論は、回転の図形の性質から導かれたが、より一般に、回転以外の場合の行列の場合の積を定義する、 [定義] 行列の積の定義 ( a b ) ( p q ) = ( ap+br aq+bs ) c d r s cp+dr cq+ds # 先程の「積」は、図形の性質から、後の「積」は、成分から定義している # この二つの定義が「矛盾」していると困るので、そこを確認する Proof) (矛盾していないことの証明) BA = ( \cos{β} -\sin{β} ) ( \cos{α} -\sin{α} ) \sin{β} \cos{β} \sin{α} \cos{α} = ( \cos{β}\cos{α}-\sin{β}\sin{α} -\cos{β}\sin{α}-\sin ) ... # 成分で積を計算 = ... # 加法定理を使って整理 = C よって、確かに、後の定義は、前の定義の一般化になっている。 よって、今後は、行列の積は、全て、成分の方の定義で考える。 [例] P を x 軸で線対称に写した先を P' とすると P = (x,y) の時 P' = (x,-y) となるので、 x = x = 1 x + 0 y y = -y = 0 x - 1 y より行列を使うと (x') = ( 1 0 ) (x) y' 0 -1 y となる。 [交換律は成立しない] [例] A : 角度 \pi/2 の回転とすると A = ( 0 -1 ) 1 0 B : x 軸に線対象な変換 ( 前例 ) とすると、 B = ( 1 0 ) 0 -1 そこで、AB, BA を計算すると... AB = ( 0 1 ) 1 0 # これは、y = x に対する線対称 (折り返し) BA = ( 0 -1 ) -1 0 # これは、y = -x に対する線対称 (折り返し) よって、 AB \ne BA # 行列の積は、交換できない !! 交換すると結果が変る !! [結合律は成立する] (AB)C = A(BC) proof) A = ( a b ), B = ( p q ), C = ( x y ) c d r s z w として、 (AB)C と A(BC) をそれぞれ計算して、比較すればよい。 # この規則を繰り返せば、四つ以上複数の積の場合でも、どこから初 # めてもよいことが解る。 # この計算は大変だが、2 x 2 なら書けるので書いた。一般にはΣを使う # ここまでは、行列、ここから線型変換の話 [定義] A : 行列 T_A : V^2 ----> V^2 変換 \in \in x |----> Ax # これは、写像だが、変換と呼んでいる このように定義された変換 T_A は、行列の性質 A(x+y) = Ax + Ay A(cx) = c(Ax) から、 T_A(x+y) = T_A(x) + T_A(y) T_A(cx) = c T_A(x) という性質 (線形性) を持つ これを、 T_A の線型性 と呼ぶ。 T_A は V^2 の線型変換である という。 [定義] (線型変換) T : V^2 --> V^2 が線型性 T(x+y) = T(x) + T(y) T(cx) = c T(x) を満すとき、T は V^2 の線型変換と呼ぶ T, S : 線型変換 => S・T = ST も線型変換 proof) 証明はほぼ明らかなので、省略 # 行列があれば、それから線型変換が決められたが、実は逆もいえる。 # つまり、線型変換 T があれば、それに対して、行列 A が存在し、T = T_A である。 proof) T を線型変換とする。 Te_1 = ( a ), Te_2 = ( b ) c c と置く。 すると、 \forall v ( \in V^2) v = x ( 1 ) + y ( 0 ) 0 1 x e_1 + y e_2 これより、 Tv = T(x e_1) + T(y e_2) = x T(e_1) + y T(e_2) = x ( a ) + y ( b ) c d = ( ax + by ) cx + dy = ( a b ) (x) c d y よって、 A = ( a b ) c d とすれば Ax = Tx この行列 A を 「T に対応する行列(T の行列)」となる、 線型変換 T からそれに対応する行列を求めるという問題は、良くでる問題 [定理] 一対一 { ( a b ) の形の行列 } <-> { V^2 上の線型変換 } c d \in \in A T_A [問 1] v = ( x ) を原点を中心に点対称な点に移す変換を T とすると.. y T v = ( - x ) - y よって、 A = ( -1 0 ) 0 -1 [問 2] T_B T_A = T_{BA} proof) (T_B T_A)x = (T_B (T_A x) = T_B (A x) = B (A x) = (BA) x = T_{AB}x [例] (射影子) ベクトル a に対して、v を射影した結果を v' とする。 この変換を行う変換を T とすると.. T : x |--> x' (a,x) ----- a = Tx (a,a) x' = sa (a, x-x') (a, x-sa) = 0 この変換を「射影子」とよぶ。 x' を x の a への射影 [定理] この射影子 T は線型 proof) T(x,y) = (a, x+y) = (a,x+y) ------ a (a,a) = ... # 内積は分られた。 同様に T(cx) = cT(x) も成立する。 [問 1] # 略 (_v_) # 今回だけ少し丁寧に.. A = ( a^2 ab ) ab b^2 [問 2] [射影子に関する性質] a, b \ne 0, (a,b) = 0 イ) T^2 = T, S^2 = S proof) 略 ロ) TS = ST = O proof) 略 ハ) Tx + Sx = x proof) 略 射影子の図形的な意味 a への射影子 ( 上から光があたった、影 ) もし、始めから、v が a に平行なら 変化せず もし、v が a に直交していたら 0 になってしまう。 # 以上は、図形の性質から I = 1 : V^2 -> V^2 \in \in x |---> x (恒等変換) 対応する行列を考えると.. x' = 1 x + 0 y y' = 0 x + 1 y より、 E = ( 1 0 ) (単位行列) 0 1 O=0 : V^2 -> V^2 \in \in x |---> 0 対応する行列を考えると.. x' = 0 x + 0 y y' = 0 x + 0 y より、 O = ( 0 0 ) (零行列) 0 0 == ポイント 線型変換の証明 対応する行列の求め方 射影子 # 今日は、平面だが、来週は、空間で同じ話をする