# きょうから、しばらく、ずっと、行列の話 # その後は、行列しきの話なので、結局、一年は、残り全て、行列 (と、行列しき) の話 これまでは、2, 次元、3 次元の話だったので、成分は、実数だったが、本日からは、 一般の n 次元の話になるので成分は、複素数となる [定義] m,n \in N に対して、a_i,j \in C が与えられており a_11, a_12, .., a_1n A = ( a_21, a_22, .., a_2n ) = ( a_ij ) .. a_m1, a_m2, .., a_mn を、(m,n) 型行列と呼ぶ 行、列、i,j 成分という言葉は 2, 3 次元と同じ [注意] 以下では、成分は、一般に、複素数なので、成分が全て実数だった場 合は、特別な場合として断る。すなわち、実数成分からなる行列は、「実行列」 とよび、そうでない場合は、普通は複素数を成分とする行列となる。 [定義] A:(m,n) 型, B:(m',n') 型 def m=m', n=n' A = B <=> { a_ij = b_ij ( \forall i, j ) # 特別な行列 (m,1) 型 => m 項列(縦)ベクトル a_11 a_21 ( ... ) a_m1 (1,n) 型 => n 項行(横)ベクトル ( a_11 a_21 .. a_n1 ) # 高校までは、横ベクトルが普通だったが、大学では、縦ベクトルが普通 [定義](和、スカラー倍) A=(a_ij), B=(b_ij) : (m,n) 型, c \in C の時 A と B の和 A + B = ( a_ij + b_ij ) A の c によるスカラー倍 c A = ( c a_ij ) で、定義。 特に (-1)A を -A と書き A + (-B) = A-B と書く [定義](零行列) 成分が、全て 0 であるような特別な (m,n) 型の行列を (m,n) 型の零行列と呼び O_m,n で表す。 [定理] A + O = A A - A = O [定理] (A+B) + C = A + (B+C) A + B = B + A c(A+B) = cA + cB (c+d)A = cA + dA (cd)A = c(dA) 1A = A 0A = O # 成分同士を比較すれば当りまえ [定義] A : (l,m) 型 B : (m,n) 型 の時 積 AB を、(l,n) 型行列として以下のように定義する AB = ( c_jk ) c_jk = \sum_{j=1}^m a_ij b_jk ( i = 1,..,l, j = 1,..,n ) # A の列 m と、 B の行 m が同じであることに注意。 # A の列と B の行がが異る場合は、「積が定義されない」ことに注意 c_jk は、 A の j 行ベクトルと、B の k 列ベクトルの内積 すなわち、 ^t a_1 A = ( ^t a_2 ) ... ^t a_n B = ( b_1 .. b_m ) とすると c_jk = ( a_j b_k ) # ところが、成分が m の行列の行列の内積はまだ学んでいないで、 # ここでは、「結果」だけを示す。 ## 後に、m のベクトルの内積を定義した後で、また、これにふれる。 [注意] AB \ne BA # そもそも、AB が定義できても BA が定義できない可能性もある # 両方が定義されても、等しいという保証はない [定理] A = ( a_pq ) : (k,l) B = ( b_qr ) : (l,m) C = ( C_rs ) : (m,n) => (AB)C = A(BC) [証明] AB = ( \sum_{q} a_pq b_qr ) : (k,m) 型 (p,r) 成分 (AB)C = ( \sum_{r} ( \sum_{q} a_pq b_qr ) c_rs ) : (k,n) 型 (p,s) 成分 BC = ( \sum_{q} b_pq c_qr ) : (l,n) 型 (q,s) 成分 A(BC) = ( \sum_{q} a_pq ( \sum_{r} b_qr c_rs ) ) : (k,n) 型 (p,s) 成分 ここで、まず、二つの行列の次元が同じく (k,n) であることが確かめられる。 次に、(p,s) 成分を比較すると、これは、同じものを掛け算した要素の加える 順番が異るだけ。 有限なものの和は、交換しても結果がかわらないので、この二つのの和は等しい すなわち、両辺の成分が等しい 次元が等く、成分も全て等しいので、行列自身が等しいことが解る。 # 今日は、行列の始まりなので定義ばっかり.. ;-P [定義] (単位行列) (n,n) 型行列で、(i,i) (対角) 成分が 1 ( i = 1,..,n ) で、 その他の成分は 0 のものを n 次単位行列と呼び、E_n で表す。 E = ( \delta_ij ) 1 ( i = j ) \delta_ij = { 0 ( i \ne j ) # これをクロネッカーのデルタ記号と呼ぶ [定理] A : (m,n) E_m A = A A E_n = A # ここで、前からと後ろからでは、E の次元 (m と n) が異る事に注意 A = ( a_1, .., a_n ) # 行列を列ベクトルの並びだと考える 特に、 E_n = ( e_1, .., e_n ) e_i : n 項単位ベクトル # この話を詳しく話すと、ベクトル空間 ( 二年生で学ぶ ) になるが... [定理] A = ( a_ij ) : (l,m) B = ( b_ij ) : (m,n) に対し、B を B = ( b_1, .., b_n ) と列ベクトルの並びと思えば、 AB = ( Ab_1, Ab_2,.., Ab_n ) となる。 特に、 B = E_n とすると、 A = ( Ae_1, Ae_2, .., Ae_n ) 特に、 x_1 v = ( x_2 ) = x_1 e_1 + x_2 e_2 + .. + x_n e_n .. x_n [注意] 線型和の定義をしていなかったので、以下に定義 ベクトル a_1, a_2, a_n に対して、複素数 x_1, .., x_n を使って x_1 e_1 + x_2 e_2 + .. + x_n e_n の形にしたものを a_1, .. a_n の線型(一次)結合 と呼ぶ( x_1, .., x_n は、任意であることに注意 )。 [定義] (複素共役行列) A = ( a_ij ) に対して \bar{A} = ( \bar{a_ij} ) を、A の複素共役行列と呼ぶ [定理] \bar{\bar{A}} = A \bar{A+B} = \bar{A} + \bar{B} \bar{cA} = \bar{c}\bar{A} \bar{AB} = \bar{A}\bar{B} [定義] (転置行列) A : (m,n) 型 の縦横を逆にした (n,m) 行列を、A の転置行列といい ^tA で表す。 a_11, a_12, .., a_1n A = ( a_21, a_22, .., a_2n ) = ( a_ij ) .. a_m1, a_m2, .., a_mn の時 a_11, a_21, .., a_m1 ^tA=( a_12, a_22, .., a_n2 ) = ( a_ji ) .. a_1n, a_2n, .., a_nn となる。 [定理] ^t(^tA)) = A ^t\bar{A} = \bar{^tA} ^t(A+B) = ^tA + ^tB ^t(cA) = c^tA # ここまでは、普通に成分を比較するだけ ^t(AB) = ^tB ^tA # これは、注意、掛け算の順番が引っくり替る [証明] ( 最後のものだけ示す ) A = ( a_ij ) (i,j) 成分 B = ( b_ij ) (j,k) 成分 ^tA = ( a_ij ) (j,i) 成分 ^tB = ( b_ij ) (j,k) 成分 AB = ( \sum_{j} a_ij b_jk ) (i,k) 成分 ^t(AB) = ( \sum_{j} a_ij b_jk ) (k,i) 成分 ^tB ^tA = ( \sum_{j} b_jk a_ji ) (k,j) 成分 よって、左右の k,j 成分が等しいことが解る。 [定義] (区分け) # 一つの行列縦と横にいくつかに分割し、その分割したものをそれぞれ行列(小行列)と考える # すると、元の行列は、小行列を成分とした行列と考えることができる。 # この小行列を成分とした行列を元の行列の区分けと呼ぶ 例: 1 2 -1 0 A = ( 2 1 3 2 ) 1 2 3 4 の時 1 2 -1 | 0 A = ( 2 1 3 | 2 ) = ( A_11 A_12 ) ---------+--- A_21 A_22 1 2 3 | 4 と分けると、 A_11 = ( 1 2 -1 ) 2 1 3 A_12 = ( 0 ) 2 A_21 = ( 1 2 3 ) A_22 = (4) となる。 # 以下、区分けの一般論 [定理] A : (l,m) A_11, A_12, .., A_1q l_1 A = ( A_21, A_22, .., A_2q ) l_2 .. A_p1, A_p2, .., A_pq l_p m_1 m_2 m_q 個々の小行列 A_st : ( l_s, m_t ) 型 l_1 + l_2 + .. + l_p = l m_1 + m_2 + .. + m_q = m 同様に、 B : (m,n) B_11, B_12, .., B_1s m_1 B = ( B_21, B_22, .., B_2s ) m_2 .. B_r1, B_r2, .., B_rs m_r n_1 n_2 n_s 個々の小行列 B_st : ( m_s, n_t ) 型 m_1 + m_2 + .. + m_r = m n_1 + n_2 + .. + n_s = n とすると、 AB : (l,n) で、 C_11, C_12, .., C_1p m_1 AB= ( C_21, C_22, .., C_2p ) m_2 .. C_r1, C_r2, .., C_rp m_r l_1 l_2 l_p となり、 C_su = A_s1 B_1u + A_s2 B_2u + .. + A_sq B_qu となる。 [証明] まず、両辺の次元を確認すると、 左辺は、(l_s, n_u ) 次元 一方、右辺の一つの要素は、 A_si B_iu (l_s, m_i) (m_i, n_u) より (l_s, n_u ) であり、どれも (l_s, n_u ) 型なので、その和も (l_s, n_u ) 型 よって、両辺の型は等しい 次に、成分の比較を行う 議論を簡単にするために次のような記号を導入 i' = l_1 + l_2 + .. + l_{s-1} j' = m_1 + m_2 + .. + m_{t-1} k; = n_1 + n_2 + .. + n_{u-1} とし、 i = i' + α j = j' + β すると、 c_su の (α,β) 成分 = AB の (i,k) 成分 = \sum_{j=1}^m a_ij b_jk 一方、 A_st B_st の (α,β) 成分 = \sum_{h=1}^m_t a_{i'+α,j'+h} b_{j'+h,k'+β} = \sum{j=m_1+..,+m_{t-1}+1}^{m_1+..+m_k} a_ij b_jk よって、右辺の(α,β) 成分は、 \sum_{j=1}^m a_ij b_jk となり、一致する。 # なぜ、こんなに面倒なことをしたかというと、以下で、楽にするため 例 p=q=r=2 の時 A = ( A_11 A_12 ) A_21 A_22 B = ( B_11 B_12 ) B_21 B_22 であれば、 AB = ( A_11 B_11 + A_12 B_21 A_11 B_12 + A_12 B_22 ) A_21 B_11 + A_22 B_21 A_21 B_12 + A_22 B_22 となるので、簡単。 特に、A_21, B_21 が共に O の時 ( A_11 A_12 ) ( B_11 B_12 ) = ( A_11 B_11 A_11 B_12 + A_12 B_22 ) O A_22 O B_22 O A_22 B_22 更に、A_12, B_12 が共に O の時 ( A_11 O ) ( B_11 O ) = ( A_11 B_11 O ) O A_22 O B_22 O A_22 B_22 == 試験範囲 だいたい、第一章とその前 ( 少しだけに二章 ) 複素数 1 問 多項式 1 問 一章 2 問 二章 2 問 # より、詳しくは、最後の日 # 主に、計算問題 # 本日の内容は、計算問題にならなないので、試験に出せない