代数幾何 I 古津先生 (2006/09/28) 前期試験の内容は、そのまま、足して 2 で割るわけではないので、心配しないように.. # 少し復習 行列の話になっていた。 (試験にも出したが..) 基本変形によって、階数を求める方法を学んだ。 実は、この基本変形は、本日行う、逆行列を求めるためにも利用される。 更に、この後の連立方程式の解法と、その後の行列式の値の計算にも使う # 都合 4 個所 # 後期は、基本変形が解っていないと、大変こまったことが起きる ## 前回の階数の計算で身に付かなかった人は、今日、しっかり身に付けること [復習] 基本変形 基本行列というものがあった ( 3 種類 ) これは、いずれも、正則 これを左右からかけるという作業が、基本変形 3 (行列の種類) × 2 ( 右、左 ) で、合計 6 種類の基本変形がある [三つの基本行列] 1) P_n(i,j) ( ただし、 i \ne j ) # P_n の _n は、P_n が ( n, n ) 型の正方行列 # cf. Text p.46 P を左からかけると、 i 行目と j 行目を交換する P を右からかけると、 i 列目と j 列目を交換する 2) Q_n(i;c) ( ただし、 c \ne 0 ) # cf. Text p.47 Q を左からかけると、 i 行目が c 倍される Q を右からかけると、 i 列目が c 倍される 3) R_n(i,j;c) ( ただし、 i \ne j ) # cf. Text p.47 R を左からかけると、 i 行目に j 行目の c 倍が加えられる R を左からかけると、 j 列目に i 列目の c 倍が加えられる これらの基本行列は、どれも正則なので、どれも逆行列をもち、 P_n(i,j)^{-1} = P_n(i,j) # 自分自身 Q_n(i;c)^{-1} = Q_n(i;c^{-1}) R_n(i,j,c)^{-1} = R_n(i,j;-c) 即ち、基本行列の逆行列も基本行列 !! # ここまでで、一応、復習は終り [定理 4.3] A : n 次 A : 正則 <-> rank A = n proof) まず、 \exist P, Q : 正則, s.t PAQ = F(r) である。 (=>) A:正則より、PAQ = F(r) も正則 ところが F(r) が正則になるためには、全ての要素が 0 となる行や列があってはならない ( もし、そのような列、あるいは行があると、正則にならない ) したがって、このような F(r) は F(r) = E_n = F(n) の時のみである。 すなわち、 n = r (<=) n = r なので、F(r)=F(n)=E_n である。 即ち、 PAQ = E ここで、P,Q は正則なので、その逆行列を両辺からかければ A = P^{-1}EQ^{-1} = P^{-1}Q^{-1} すなわち、A は、正則な行列 P^{-1}, Q^{-1} の積なので正則 [定理 4.4] A : 正則ならば、左 (右) 基本行列だけで、 A を単位行列にできる また、その逆も成立する。 proof) \exist P,Q : 正則行列 ( これは、実は、基本行列の積 ) s.t PAQ = E ここで、左から Q, 右から Q^{-1} をかけると QPAQQ^{-1} = QEQ^{-1} すなわち QPA = E となる、すなわち、左から基本行列をかけるだけで、単位行列にできる # 同様に P, P^{-1} をかけることにより、右変形の方も示せる なお、逆の場合は、定理 4.3 より示せる。 [系] A : 正則 <=> A は基本行列の積 proof) 定理 4.2 の証明で A = P^{-1}Q^{-1} となるが P, Q が基本行列の積で、しかも、その逆行列も基本行列なので、結局 A は基本行列の積 [系] A^{-1} = QP より、A が実行列ならば、A^{-1} も実行列 proof) QP の要素は、要素の和や積や定数倍なので、元が実数なら、結果も実数 # 同様に、要素が有理数場合も成立 ## ただし、整数の場合は成立しない。なぜなら割り算が含まれているから [逆行列の求め方] # 講義では、逆行列の求め方を幾つか学ぶが、結局「使う」のは、こ # れから説明する方法。この方法がみにつかないと大変 !! ## 更に、逆行列を求めてから解く必要がある場合があるので、その場合も困る A:正則 とする # 逆行列は、正則の場合だけ求める (A E) : (n, 2n) 型 に対して QP (A E) = ( QPA QPE ) = ( E QP ) = ( E A^{-1} ) となるので、この性質を利用する すなわち、 行の基本変形 (A E) :-------------> ( E B ) となったら、 B = A^{-1} となる。 # A が正則ならば、この方法が使えるが、A が正則かどうかわからなかったらどうするか ? A が正則でない場合もとりあえず、試してみる。 正則の時 => A が E にできるので、B を A^{-1} にできる 正則でない時 => A が E にできないので、正則でないことが解る # つまり、正則かどうかの判定と逆行列の計算が一緒に行える ## 正則でなかった場合は、ちょっと作業が無駄になるが.. # 「行の変形しか使えない」ことに注意 [例] 1 2 3 A = ( -2 -3 -4 ) 2 2 4 を考える。 1 2 3 1 0 0 (A E) = ( -2 -3 -4 0 1 0 ) 2 2 4 0 0 1 とし、左側を E にするように基本変形 ( 行の変形 ) を行う R(2,1;2) 1 2 3 1 0 0 ---------> ( 0 1 2 2 1 0 ) R(3,1;-2) 0 -2 -2 -2 0 1 R(1,1;-2) 1 2 3 -3 -2 0 ---------> ( 0 1 2 2 1 0 ) R(3,1;2) 0 0 2 2 2 1 Q(3;1/2) 1 2 3 -3 -2 0 ---------> ( 0 1 2 2 1 0 ) 0 0 1 1 1 1/2 R(1,1;-2) 1 0 0 -2 -1 1/2 ---------> ( 0 1 0 0 -1 -1 ) R(3,1;2) 0 0 1 1 1 1/2 よって、 -2 -1 1/2 A^{-1} = ( 0 -1 -1 ) 1 1 1/2 となる 1 2 3 -2 -1 1/2 1 0 0 AA^{-1} = ( -2 -3 -4 ) ( 0 -1 -1 ) = ( 0 1 0 ) 2 2 4 1 1 1/2 0 0 1 # 本当に、逆行列になっているかは、元の行列にかけて単位行列にな # るかどうかを確かめればよい ## [重要] 逆行列を計算したら、必ず確かめる !! ## [重要] 行の操作のみで行う。列の操作は使ってはだめ [例] 1 3 2 A = ( 2 6 3 ) -2 -5 -2 # 略 3 -4 3 A^{-1} = ( -2 2 1 ) 2 -1 0 [連立方程式の解法(一次方程式系)] # 高校までは、解が一つに定まらない場合は、「不定」で、それ以上は追及しなかった # 大学では、きちんと解の範囲 ( 解空間 ) までも求める必要がある ## 連立方程式の問題に、「不定」と答えたら「点数がなくなってしまう...) 連立一次方程式 変数(未知数) が n 個 式が m 個 を考える ( 以下の (1) 式 )。 a_11 x_1 + a_12 x_2 + .. + a_1n x_n = c_1 (1) { a_21 x_2 + a_22 x_2 + .. + a_2n x_n = c_2 ... a_m1 x_m + a_m2 x_m + .. + a_mn x_n = c_m これに対して、次のような行列、やベクトルを考える a_11 + a_12 + .. + a_1n A = ( a_21 + a_22 + .. + a_2n ) : 係数行列 ... a_m1 + a_m2 + .. + a_mn c_1 c = ( c_2 ) : 定数ベクトル .. c_n x_1 x = ( x_2 ) : 変数ベクトル .. x_n \~A = ( A c ) : 拡大係数行列 \~x = ( x ) : 拡大変数ベクトル(?) -1 を利用すると、元の (1) と同じ意味で Ax = c (1') \~A\~x = 0 (1'') が言えるしまた、同様にして、P が正則の時 P\~A\~x = 0 (1'') も同じである。 # 正則行列を左からかけるということは、ようするに、行の基本変形を行うということ # ただし、行だけだと困ることがあるので、列の操作もしたい !! # 最後の列 ( 係数の列 ) を除く列の交換だけは許す # ただし、この操作は、「変数の交換」を意味するので、最後に答を求めるときに、「変数の交換」が行われていることを思い出して、きちんと対応付けを行う必要がある。 よって、 左(行の)基本変形と最後の列以外の列の交を何度か行って、簡単な形 \~B にする その簡単な形 \~B は次のような形 r 個 1 | b_1r+1 b_1r+2 .. b_1n | d_1 \~B = ( 1 | b_2r+1 b_2r+2 .. b_2n | d_2 ) .. | ... 1 | b_rr+1 b_rr+2 .. b_rn | d_r --------+-----------------------+---- | | d_r+1 O | 0 | .. | | d_m ただし、r = rank A # 本当に、\~B の形に書き換えられるかどうかを調べる必要がある proof) まず、もし、\~B が作れたならば r = rank A を示す proof) \~B の最後の列を取り除いた行列を B とする # Er| * # B = ( --+--- ) # 0 | 0 \~A ---> \~B ならば、これは、同じ変形を行い # この基本変形は、行の変形、あるいは、B に存在しない最後の列以外の列の交換なので、結果的に .. A ---> B ---> F_m,n(r) となるので、 r = rank A 次に、このような \~B が作れることを示す ( 厳密には帰納法による ) A = O なら Ok A \ne 0 なら (1,1) 成分を 0 でないようにし、(1,1) を要に、第1 列を掃き出す。そして、右下の要素を A_1 とする。 以下、A_1 に関しても同様に行う。(これを厳密に適用すると帰納法) このように \~B の形で簡単になったのだが、この後どうするか.. は来回の話 == [注意] 逆行列の場合は、行の基本変形しか行わない 基本変形を身に付ける !! 連立方程式の場合は、最後以外の列の交換も許される rank の時には、行も列も大丈夫 行列式の場合は、行も列も使えるが、途中で、係数が出てくる どの場合も、基本変形を利用すること問題が解けるが、問題によって、注意する・が異なることに注意 !!