代数幾何 I 古津先生 (2006/10/05) # 何をやっていたかというと... 一次方程式系 Ax = c (1) あるいは、これと同値な \~A\~x = 0 (1') を、基本変形を利用して、解くことを考える。 \~A ---(行の基本変形)---> \~B ただし、最後の列以外との「列の交換」は認める ( 変数の交換になる ) # \~B への変形までは、前回行った。 r 個 1 0 b_{1,r+1} ... b_{1,n} d_1 1 b_{2,r+1} ... b_{2,n} d_2 \~B = ( .. ... 0 1 b_{r,r+1} ... b_{r,n} d_r 0 0 d_{r+1} ... d_{m} # ここで、 r = rank A この変換により、 \~Bx = 0 (2') を考えると、この解は、(1'), (1'') と同じである。 実は、(1') より (2') の方が解きやすい。実際に、この (2') を方程式の形に書き換えると.. x_1 + b_{1,r+1}x_{r+1} ... + b_{1,n}x_r = d_1 x_2 + b_{2,r+1}x_{r+1} ... + b_{2,n}x_r = d_2 .. ... x_r + b_{r,r+1}x_{r+1} ... + b_{r,n}x_r = d_r 0 = d_{r+1} ... 0 = d_{m} となる。 a) d_{r_1} から d_{m} に 0 でなりものがある場合 => 不能 # 解の個数は 0 であり、「解なし」でもよい b) d_{r_1} から d_{m} が、全て 0 => 次のような解となる x_1 = -b_{1,r+1}α_{r+1} ... + b_{1,n}α_r + d_1 x_2 = -b_{2,r+1}α_{r+1} ... + b_{2,n}α_r + d_2 .. ... x_r = -b_{r,r+1}α_{r+1} ... + b_{r,n}α_r + d_r x_{r+1} = α_{r+1} .. x_{n} = α_{n} ここで、 b-1) r = n の時 解は一通りに定まる。 # 解の個数は 1 b-2) r < n の時 解は、 α_{r+1} から α_{n} の n - r の自由度がある # 解の個数は無限 # 高校では、「不定」としたが、大学では上記の形にしないと駄目 次のベクトルの形の表現でもよい x_1 d_1 b_{1,r+1} b_{1,n} x_2 d_2 b_{2,r+1} b_{2,n} ... ... ... ... x=( x_r )=( d_r ) - α_1( b_{r,r+1} ) - .. - α_n ( b_{r,n} ) x_{r+1} d_{r+1} 1 0 ... ... ... ... x_{n} d_{n} 0 1 # ここまでが、定理 5.3 == 例 1. 0 3 3 -2 -4 \~A = ( 1 1 2 3 2 ) 1 2 3 2 1 1 3 4 2 -1 # 途中、3 列と 4 列を交換した上で 1 0 0 1 -7 \~B = ( 0 1 0 1 -2 ) 0 0 1 0 -1 0 0 0 0 0 # rank A は 3 ということが解った。 # ここで、3 列と 4 列の交換を行ったことを思い出しながら、元の方程式に戻すと x_1 + x_3 = 7 x_2 + x_3 = -2 x_4 = -1 なので、x_3 = α_3 とすれば、 x_1 = 7 - α_3 x_2 = -2 - α_3 x_3 = α_3 x_4 = -1 となる。 例 イ) 1 2 3 4 \~A = ( 2 1 3 0 ) -2 3 1 1 # これから、基本変形を使って、\~B を求めると.. 1 0 1 -4/3 \~B = ( 0 1 1 8/3 ) 0 0 0 -29/3 # これを元の方程式に戻すと x_1 + x_3 = -4/3 x_2 + x_3 = 8/3 0 = -29/3 <- 有得ない 不能 ( 解なし ) 例 ロ) 1 -1 0 -2 \~A = ( 3 -1 1 -2 ) 2 -1 2 -1 0 1 -1 1 # これから、基本変形を使って、\~B を求めると.. 1 0 0 -1/3 \~B = ( 0 1 0 5/3 ) 0 0 1 2/3 0 0 0 0 # これを元の方程式に戻すと x_1 = -1/3 x_2 = 5/3 x_3 = 2/3 これは、解が唯一つの例 例 ハ) 1 2 -2 1 3 2 \~A = ( 2 1 2 0 1 3 ) -2 -3 2 -1 2 1 # これから、基本変形を使って、\~B を求めると.. # 途中、3 列目と 4 列目の交換が必要になる。 1 0 0 2 6 6 \~B = ( 0 1 0 -2 -11 -9 ) 0 0 1 0 19 14 # 途中、3 列目と 4 列目の交換をしたことを考慮しながら元の方程式にすると.. x_1 + 2 x_3 + 6 x_5 = 6 x_2 - 2 x_3 -11 x_5 = -9 x_4 19 x_5 = 14 x_3 = α, x_5 = βとおけば、答は x_1 = 6 - 2 α - 6 β x_2 = -9 + 2 α -11 β x_3 = α x_4 = 14 - 19 β x_3 = β == [系 5.3] (1) が解を持つ <-> rank A = rank \~A proof) rank A = rank B = r rank \~A = rank \~B 1 | | 1 r 個 | * | * \~B = ( .. | | ) 1 | | ----------+-------------+----- | | d_{r+1} 0 | 0 | ... | | d_m この \~B の rank を計算してみる。 # rank の計算は列の掃き出しも使えるので、* の部分は掃き出せる 1 | | 1 r 個 | 0 | 0 rank\~B = rank( .. | | ) 1 | | ----------+-------------+----- | | d_{r+1} 0 | 0 | ... | | d_m ここで、 a) d_{r+1} 〜 d_m の中に 0 でないものがある => rank ~B = r + 1 \ne r この時、解なし b) d_{r+1} 〜 d_m は全て 0 => rank ~B = r この時、解がある よって、同値であることが解る [系 5.4] m = n で、 A: 正則ならば、(1) はただ一つの解を持つ proof) A : 正則より rank A = n rank \~A <= min(n,n+1) = n よって rank A = rank \~A 即ち、自由度 n - r = 0 となるので、ただ一つの解 == [定義] 斉次一次方程式 定数項 c = 0 の場合の方程式 A x = 0 (4) # 一般に方程式は、解があるかどうか割らからないのだが... (4) は必ず、 x = 0 という解を持つ。 この解を (4) の自明な解と呼ぶ [定理] x_1, .., x_k が (4) の解ならば、 a_1 x_1 + a_2 x_2 + .. + a_k x_k も (4) の解 proof) A ( a_1 x_1 + a_2 x_2 + .. + a_k x_k ) = a_1 A x_1 + a_2 A x_2 + .. + a_k A x_k ところが、x_1, .., x_k が (4) の解なので、 A x_1 = .. = A x_k = 0 よって、 = a_1 0 + .. + a_k 0 = 0 よって、解 [定理 5.5] (4) において、 rank A = r ならば、 (4) は n - r 個の特別な自明でない解 x_{r+1} + .. + x_n を持ち、 (4) の任意の解は、上記の線型結合 上記の解は、線型独立 proof) 定理 5.2 (これは斉次方程式でも成立することに注意) より - b_{1,r+1} - b_{1,n} x = α_{r_1} ( ... ) + .. + α_n ( ... ) 1 0 0 0 ... ... 0 1 となり、ここのベクトルを x_i とおけば、確かに線型結合で表される またこれらのベクトルは、r+1 〜 n の部分から 線型独立であることがわかる また、α_i = 1, α_j = 0 ( i \ne j ) とすれば、x_i が解になる [系 5.6] n > m ならば (4) は自明でない解を持つ proof) rank A <= min ( m, n ) = m < n よって、 自由度 n - r = n - m > 0 [定理 5.7] n = m の時 A が正則でない <=> (4) が自明でない解を持つ proof) A が正則でない <=> rank A < n <=> 自由度 n - r > 0 <=> 自明でない解を持つ [定理 5.8] n = m の時 A が正則 <=> ( x \ne 0 => Ax \ne 0 ) proof) [定理 5.7]の対偶を取れば A が正則 <=> 自明でない解を持たない <=> ( x \ne 0 => Ax \ne 0 ) [定理 5.9] (1') の解 x_0 を固定すると、(1) の任意の解は、x_0 に (4) を 加えることによって得られる。 proof) まず、y を (4) の解とすると、 A ( x_0 + y ) = A x_0 + A y = c + 0 = c よって、 x_0 + y は、(4) 解 逆に、x を (1) の解とし、y = x - x_0 とすると、 A ( x - x_0 ) = A x - A x_0 = c - c = 0 よって、y は、(4) の解となる。 x = x_0 + y となる。 == 方程式は、代入でも解けるが試験の時には、\~B も要求するので、ちゃんと、 基本変形を利用した方程式の解法を身に付けておくこと == 来週は、内積に入る