# 前回は内積と、ユニタリ行列の話をした # 今回はユニタリ行列の性質から [定理 6.4] A : n 次正方行列の時、以下は同値 イ) A はユニタリ行列 ロ) |Ax| = |x| (\forall x) # A はベクトルの長さをかえない ハ) (Ax,Ay) = (x,y) (\forall x,y) # A は内積をかえない ニ) A = ( a1, a2, .., an) とすると ( ai, aj ) = \delta_{i,j} proof) これらが全て同値だということを示したい。 量が多いので、まず、方針から [方針] ロ) -> ハ) ^ / \ v イ) ^ | v ニ [イ) => ロ)] |A x|^2 = (Ax,Ax) = (x,A^*Ax) = (x,A^{-1}Ax) = (x,Ex) = (x,x) = |x|^2 よって、 |Ax| = |x| [ロ) => ハ)] |x+y| = |x|^2 + (x,y) + \bar{(x,y)} + |y|^2 || || || |A(x,y)| = |Ax|^2 + (Ax,Ay) + \bar{(Ax,Ay)} + |Ay|^2 よって、 2Re(x,y) = 2Re(Ax,Ax) 同様に、 |ix+y| = |ix|^2 + i(x,y) - i\bar{(x,y)} + |y|^2 || || || |A(x,y)| = |Aix|^2 + i(Ax,Ay) - i\bar{(Ax,Ay)} + |Ay|^2 よって、 2Im(x,y) = 2Im(Ax,Ax) すなわち、(x,y) と (Ax,Ay) の Re と Im が等しいので、 (x,y) = (Ax,Ay) [ハ) => イ)] 0 = (Ax,Ay) - (x,y) = (x, (A^*A-E)y) (\forall x,y) # この時、(A^*A-E)y = 0, A^*A-E = 0 は前回やったので よって、 A^*A = E [イ) => ニ)] イ) <-> ^tA\bar{A} = E a_1 <-> ( a_2 )( \bar{a_1} \bar{a_2} .. \bar{a_n} ) = E .. a_n # 区分けして小行列の積を計算する (a_1)(\bar{a_1}) (a_1)(\bar{a_2}).. (a_1)(\bar{a_n}) <-> ( (a_2)(\bar{a_1}) (a_2)(\bar{a_2}).. (a_2)(\bar{a_n}) = E .. (a_n)(\bar{a_1}) (a_n)(\bar{a_2}).. (a_n)(\bar{a_n}) # 行列の積が内積の形にかける (a_1,a_1) (a_1,a_2) .. (a_1,a_n) <-> ( (a_2,a_1) (a_2,a_2) .. (a_2,a_n) ) = E .. (a_n,a_1) (a_n,a_2) .. (a_n,a_n) # 成分同士を比較すると.. (a_i,a_j) = \delta_{i,j} [定理 6.4'] A : n 次実正方行列 イ) A は直交行列 ... proof) 6.4 とほぼ同様 ( 複素数の部分が不要になるだけ.. ) 直交行列の例 平面の回転 A = ( \cos{\thita} -\sin{\thita} ) \sin{\thita} \cos{\thita} を考えると、 A^* = ( \cos{\thita} \sin{\thita} ) -\sin{\thita} \cos{\thita} よって、 A^*A = E すなわち、回転行列は、直交行列 問い 1 ( 二次直交行列の種類 ) A = ( a, b ) c, d に対して A^*A = E = ( a^2 + c^2, ab + cd ) = ( 1 0 ) ab + cd, b^2 + d^2 0 1 AA^* = E = ( a^2 + b^2, ac + bd ) = ( 1 0 ) ac + bd , c^2 + d^2 0 1 これから、要素同士を比較すると、連立方程式を作ることができる。 a^2 + c^2 = 1 b^2 + d^2 = 1 a^2 + b^2 = 1 c^2 + d^2 = 1 ab + cd = 0 ac + bd = 0 これらより、 A = ( \cos{\thita} -\sin{\thita} ) \sin{\thita} \cos{\thita} # 原点を中心に \thita だけ回転移動する か、 A = ( \cos{\thita} \sin{\thita} ) \sin{\thita} -\cos{\thita} # 原点を通り、x 軸との角度が \thita/2 となる直線に関する線対称移動する 問 2 A : (m,n) 型 の時 1) A^*A, AA^* は、エルミート ( X がエルミートとは X^* = X のこと ) proof) 実際、 (A^*A)^* = A^*(A^*)^* = A^*A (AA^*)^* = (A^*)^*A^* = AA^* よって、エルミート 2) A^*A, AA^* の対角成分は正または 0 proof) A = (a_{ij)) とすると、 A^* (b_{ij)) ただし、 b_ij = \bar{a_ji} この時 A^*A = (c_ij) とすれば、対角成分 c_{ii} = \sum_{j=1}^m b_ij a_ji = \sum_{j=1}^m \bar{a_ji} a_ji = \sum_{j=1}^m |a_ji|^2 >= 0 同様に、AA^* も言える # ここらへんの話をさらに、細かく議論すると、半正値エルミートなどの話になるが、これは、4, 5 章で学ぶので、来年に回す == 合同変換 [定義] 空間または平面の変換で、二点間の距離を変化させない変換 # この定義は、次元をもっと高く設定しても成立するが、ここでは判り易く、2, 3 次元で議論する cf. 回転や、平行移動などが、その例 [注意] これは、線型変換とは限らない ( cf. 平行移動 ) T_0 : 原点を動かさない合同変換とする # 実は、T_0 は線型変換であることが、以下で示される。 そして、直線上の P,Q,R を考え、その T_0 による変換結果を P',Q',R' を考える P,Q,R は、直線上の変換なので PQ + QR = QR T_0 は合同変換なので、 P'Q' + Q'R' = Q'R' よって、 P',Q',R' は一直線上にある ことが解る。 即ち、直線 l 上点は、T_0 によって、他の直線 l' に移動することが解る いま、点 P の位置ベクトルを x とし、P を T_0 で写した点 P' の位置ベクトルを x' とすれば、T_0 は、ベクトルの変換とみなすことができる。 更に c を実数とし、cx を位置ベクトルとする点を Q, その T_0 の像を Q' とすれば x // cx より OP // OQ よって、 OP' // OQ' また、 |cx| = c|x| よって、 |OQ'| = c|OQ| よって、 T_0(cx) = c T_0(x) # これで、線型性の一つが出た また、x, y \in V^3 をとり OP = x, PQ = y とすれば、 OQ = x + y となるが、P,Q をそれぞれ変換した点 P',Q; を考えると、 OP = OP' PQ = Q'P' OQ = OQ' となるので、 T(x+y)= T(x)+T(y) となる。 # これで、線型性の性質が示された よって、T_0 は線型変換 T_0 に対応する行列を A とすれば、 T_0(x) = Ax T_0 は長さを替ないので A はユニタリ ( ここでは実数なので、直交行列 ) となる T_1 : 平行移動とする 原点 O の像を O' とし a = OO' とする。 すると、 T_1(x) = x + a となる。 T : 一般の合同変換 原点 O の像を O' とし a = OO' とする。 T_1(x) = x + a とすれば、 T_0 = T^{-1}T ( T_1^{-1}(x) = x - a は原点を移動しない よって、 \exist A : 直交行列 s.t Tx = Ax よって、 T(x) = T_1 T_0 (x) = T_1 ( Ax ) = Ax + a ( アイフィン変換 ) # これは線型変換でない # いまやっているのは、線型代数なので、線型でないのはいや # 合同変換を線型変換として扱うために工夫をする \~x = ( x ) 1 # これを、非斉次位置ベクトルと呼ぶ \~A = ( A | a ) ---+--- 0 | 1 とすると、 \~A\~x = ( Ax + a ) 1 = ( Tx ) 1 = \~T(x) となり、行列の掛け算で、合同変換が表現できることがわかる。 # 合同変換は、必ず、逆変換を持つので、その話をする。 [定理 1] y = T(x) = Ax + a y - 1 = Ax x = A^{-1}(y - a) = A^{-1}y - A^{-1}a よって、 T^{-1}x = A^{-1}x - A^{-1}a (合同変換) また、 \~B = ( A^{-1} | - A^{-1}a ) -------+---------- 0 | 1 とすれば、これは、\~A の逆行列 ( 実際にかけると E になる ) # 次は合成の話 Tx = Ax + a Sx = Bx + b とすると、 \~A = ( A | a ) --+-- 0 | 1 \~B = ( B | b ) --+-- 0 | 1 一方、 ST x = S( Ax + a ) = B( Ax + a ) + b = BAx + Ba + b 対応する行列は \~(ST) = ( BAx | Ba + b ) -----+-------- 0 | 1 で、これは、 \~S \~T に等しい。 # 合同変換群 == [定義] 運動 : 合同変換の特殊な形 # 一般の合同変換では、図形が裏返る可能性がある 合同変換 T が図形を裏返さないとき、その T は運動であるという 平行移動は運動 T = T_1 T_0 より T : 運動 <-> T_0 : 運動 <-> |A| > 0 # 前期に、右手系を右手系に移すのは、その変換の行列式が正の時 [定義] T_0 が原点を動かさない運動の時、回転と呼ぶ。 # これは、回転の新しい定義 # この定義と以前の定義が、実は矛盾せず、一致する 先ず |A| = \pm 1 であることに注意 平面の回転を考えるとこれは、二次直交行列であった。 これに |A|=1 の条件加えると、 ( \cos{\thita} -\sin{\thita} ) \sin{\thita} \cos{\thita} だけが残る よって、平面の運動は、 \cos{\thita} -\sin{\thita} a \~A = ( \sin{\thita} \cos{\thita} b ) 0 0 1 # このように下に、 0 0 1 が並ぶ行列は、一般に「アフィン変換」となる == 7 章の章末問題の用語は、期末に行うので、次回は 8 章の行列式