代数幾何 I 古津先生 (2006/12/14) # 前回、 問 3 までやったので、今回は問 4 から 問 4 f(x_0,..,x_{n-1}) = | x_0 x_1 .. x_{n-1} | | x_{n-1} x_0 .. x_{n-2} | | .. | | x_1 x_2 .. x_0 | = \Pi_{\alpha^n=1} (x_0 + \alpha x_1 + \alpha^2 x_2 + .. + \alpha^{n-1}x_{n-1} ) = g(x_0,..,x_{n-1}) を示す。 ここで、右辺の意味 \alpha^n=1 となる \alpha は n 個ある ( 1 の n 乗根 ) \alpha = e^{\frac{2\pi k}{n}i} ( k = 0, .., n - 1 ) よって、右辺は、n 次式になる。 (proof) 第一列に 第二列の \alpha 倍 第三列の \alpha^2 倍 ... 第n列の \alpha^{n-1} 倍 を加えると、 | x_0 + \alpha x_1 + .. + \alpha^{n-1}x_{n-1} x_1 .. x_{n-1} | | x_n + \alpha x_0 + .. + \alpha^{n-1}x_{n-2} x_2 .. x_{n-2} | | .. | | x_1 + \alpha x_2 + .. + \alpha^{n-1}x_{n-2} x_0 .. x_0 | すると、 二行目は、一行目の \alpha 倍 三行目は、一行目の \alpha^1 倍 .. n 行目は、一行目の \alpha^{n-1} 倍 となっているので、共通因子 ( (1,1) 成分 ) で括りだせる | 1 x_1 .. x_{n-1} | (x_0 + \alpha x_1 + .. + \alpha^{n-1}x_{n-1}) | \alpha x_2 .. x_{n-2} | | . | | \alpha^{n-1} x_0 | 同様にして、他の要素にかんしても括りだせるので f = h g となっていることがわかる。 f の次数も g の次数も共に n なので、h の次数は 0 すなわち、h は定数 c。 x_0 の係数を比較すると、f も 1, g も 1 なので、c = 1 すなわち f = g が言えた。 問 5 | x i 1 -i | | -i x i 1 | | 1 -i x i | | i 1 -i x | [答] 一列目に他の列を全て加えると、 | x + 1 i 1 -i | | x + 1 x i 1 | | x + 1 -i x i | | x + 1 1 -i x | 二、三、四行から一行目を引くと | x + 1 i 1 -i | | 0 x-i i-1 1+i | | 0 -2i x-1 2i | | 0 1-i -i-1 x+i | 一列目で展開し | x-i i-1 1+i | (x+1) | -2i x-1 2i | | 1-i -i-1 x+i | 三列目を一列目を加えて | x+1 i-1 1+i | (x+1) | 0 x-1 2i | | x+1 -i-1 x+i | 三行目から一行目を引けば | x+1 i-1 1+i | (x+1) | 0 x-1 2i | | 0 -2i x-1 | 一列目で展開すると (x+1)(x+1) | x-1 2i | | -2i x-1 | よって、 (x+1)^3(x-3) [別解] 問 4 より n = 4 x_0 = x x_1 = i x_2 = 1 x_3 = -i とし、 \alpha = 1, i, -1, -i とすればよい。 問 6 n 個の点 (x_1,y_1) ,.., (x_n,y_n) で、x_1, .., x_n が相異なるとする この時、 曲線 y = a_0 + a_1 x + .. + a_{n-1} x^{n-1} で、この n 点を通るものが唯一つ存在する。 (proof) 曲線は、(x_i,y_i) を通るので、a_i に関する次の n 個の連立方程式 が成立しなければならない。 a_0 + a_1 x_1 + .. + a_{n-1} x_1^{n-1} a_0 + a_1 x_2 + .. + a_{n-1} x_2^{n-1} .. a_0 + a_1 x_{n-1} + .. + a_{n-1} x_{n-1}^{n-1} この係数行列 A を考えると |A|=| 1 x_1 .. x_1^{n-1} | | 1 x_2 .. x_2^{n-1} | | .. | | 1 x_{n-1} .. x_{n-1}^{n-1} | これは、バンデルモンドの行列式を転置したもの よって、 |A| = \Pi (x_i-x_j) ( 差積 ) ここて、仮定より、x_i \ne x_j なので、|A| \ne 0 すなわち、係数行列の行列式は 0 でない。 よって、上記の連立方程式は、一意の解を持つ # cf. 二章のこともでている なお、この時の答は、 (a_i) = A^{-1} (x_i) となる。 問 7 a, b, c, d は 0 でない実数 a x - b y - a z + b u = 1 b x + a y - b z - a u = 0 c x - d y + c z - d u = 0 d x + c y + d z + c u = 0 の解を求める。 [答] (クラメールの公式を利用する) 係数行列 A を考える a -b -a b A = ( b a -b -a ) c -d c -d d c d c また、定数ベクトル 1 b = ( 0 ) 0 0 まず |A| を求める。 三列目に一列目を加え、四列目に二列目を加える | a -b 0 0 | |A| = | b a 0 0 | | c -d 2c -2d | | d c 2d 2c | = | a -b | | 2c -2d | | b a | | 2d 2c | = 4(a^2+b^2)(c^2+d^2) = 0 # 仮定より、a,b,c,d いずれも 0 でないので.. # よって、クラーメルが使える }A_1| = det (b,a_2,a_3,a_4) = | 1 -b -a b | | 0 a -b -a | | 0 -d c -d | | 0 c d c | 二行目に四行目を加えて | 1 -2b -a b | | 0 2a -b -a | = 2a(c^2+d^2) | 0 0 c -d | | 0 0 d c | 同様に }A_2| = det (a_1,b,a_3,a_4) = -2a(c^2+d^2) }A_3| = det (a_1,a_2,b,a_4) = -2b(c^2+d^2) }A_4| = det (a_1,a_2,a_3,b) = 2b(c^2+d^2) よって、クラメールの公式より x = \frac{|A_1|}{|A|} = \frac{a}{2(a^2+b^2)} = -z y = \frac{|A_1|}{|A|} = -\frac{b}{2(a^2+b^2)} = -u が得らえる。 問 8 平面に直線が 3 本ある l_1 : a_1 x + b_1 y = c_1 l_2 : a_2 x + b_2 y = c_2 l_3 : a_3 x + b_3 y = c_3 係数行列 A と拡大行列式 \~A はそれぞれ、次のようになる。 a_1 b_1 A = ( a_2 b_2 ) a_3 b_3 a_1 b_1 c_1 \~A = ( a_2 b_2 c_2 ) a_3 b_ c_3 この時 |\~A| = 0 とは [答] 仮定より、a_i, b_i は共に 0 にならない ( なったら、直線にならない ) ので、 rank A > 0 逆に、 |\~A| = 0 より rank \~A < 3 一般に、 rank A <= rank \~A なので、この条件の元に、場合わけする。 rank A rank \~A a) 1 1 b) 1 2 c) 2 2 a) の場合 rank \~A = 1 より、l_1 = l_2 = l_3 (一致) よって、自由度 1 の解を持つ b) の場合 rank A = 1 より、l_1 // l_2 // l_3 # これは、二線が等く、他の一本と平行の場合も含む c) の場合 唯一つの解 (x_0,y_0) を考えると l_1,l_2,l_3 は一点で交わる # これは、二線が等く、他の一本と交わるの場合も含む # じゃあ、|\~A| \ne 0 の時は.. ? 問 9 一直線上にない 3 点 P_i = (x_i, y_i, z_i) ( i = 1, 2, 3 ) を通る 平面の方程式は、 | x y z 1 | | x_1 y_1 z_1 1 | = f(x,y,z) | x_2 y_2 z_2 1 | | x_3 y_3 z_3 1 | (proof) この 3 点を通る平面は一つしかない。 したがって、この式が、その平面の方程式であればよい。 # まず、これが、平面の方程式であることを確認する。 これを、一行目に関して展開すると、 | y_1 z_2 1 | f(x,y,z) = | y_2 z_2 1 | x - .. + | y_3 z_3 1 | となり、たしかに、これは、x,y,z に関する一次式なので、これは平面の方程式。 # 次に、これらが、3 点を通ることを調べる f(x,y,z) に P_1 を代入すると、一行目と二行目がひとしくなるので 0 よって、P_1 を通る、同様にして、P_2, P_3 も通るので、これが求める方程式であることがわかる。 # 三点を通る平面の方程式は、上記の行列式で (一応..) 答 # 具体的に数値がほしければ、行列式を計算する # 具体的な数値がはいっているときには、あまり役にたたないが、変数の時はこの形が便利 問 10 A : n 次整数行列とする A:正則で、A^{-1} も整数行列 <=> |A| = \pm 1 (proof) (=>) 行列式の計算は、積と和と差だけなので、A の要素が全て整数ならば、|A| は整数。 一方 AA^{-1} = E であり、 |AA^{-1}| = |E| = 1 || |A| |A^{-1}| ところが、|A| も |A^{-1}| も整数なので積が 1 となるものは \pm 1 しかない。 (<=) |A| = \pm 1 \ne 0 なので A は正則 A の小行列式 \~a_{i.j} も全て整数 余因子行列 \~A は整数行列 A^{-1} = \frac{1}{|A|} \~A となるので、A^{-1} の係数が全て整数 == 来週は、問 11 から、これが終ったら 2 章の問題をやるが、これは全部はおわらないので、適当に選んで行う。 試験の話も、来週と、来年に。 行列式の計算ができるように !!