代数幾何 I 古津先生 (2006/12/21) # 最初の演習の続き ( 1 問だけのこってた.. ) 11. S_n \ni \sigma :-> A_{\sigma} (\sigma{i},i} 成分が 1 ( i = 1..n ) 他は 0 [例] \sigam = ( 1 2 3 4 ) 2 3 3 1 の時、 A_{\sigam} = ( 0 0 0 1 ) = ( e_{\sigma{1}, .., e_{\sigma{4} ) 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 となる。 イ) A_{\sigam} は直交行列 # 直交行列は、実ユニタリ行列のこと。 # 成分は、すべて 0 と 1 すなわち、実数なので、ユニタリを示せばよい A_{\sigam}^*A_{\sigam} = E を示せばよい。 # ちなみに、A_{\sigam} が実ベクトルなので、A^* = ^tA であることに注意 A_{\sigam} は元々、単位縦ベクトルの並びなので、随伴(つまり転置)を取ると、 単位横ベクトルの並びになる。 A_{\sigam}^*A_{\sigam} e_{\sigma(1)} e_{\sigma(2)} = ( ... ) ( e_{\sigma(1)},..,e_{\sigma(n)} } e_{\sigma{n)} = ( ( e_{\sigma{i)}, e_{\sigma{j)} ) = ( \delta_{i,j} ) = E ロ) A_{\sigma}A_{\tau}=A_{\sigma\tau} # ロを示す前に、ちょっと準備 B = ( b_{i,j} ), A_{\tau}, \tau \in S_n の時、 BA_{\tau} = ( b_{\tau(1)}, b_{\tau(2)}, .., b_{\tau(n)} ) # つまり、A_{\tau} は、列を入れ替える行列になっている。 A_{\sigma}A_{\tau} = (e_{\sigma(1)},e_{\sigma(2)},..,e_{\sigma(n)})A_{\tau} # ここで、上の性質を考えると、A_{\tau} は行を入れ替える。すなわち = (e_{\sigma\tau(1)},e_{\sigma\tau(2)},..,e_{\sigma\tau(n)}) よって、 = A_{\sigma\tau} ハ) |A_{\sigma}| = sgn \sigma # まず、互換の場合を示す \sigma = ( i,j ) の、 A_{\sigma} = ( e_1, .., e_j, .., e_i, .. e_n ) ↑ ↑ i 行目 j 行目 よって、 |A_{\sigma}| = det( e_1, .., e_j, .., e_i, .. e_n ) = - det( e_1, .., e_i, .., e_j, .. e_n ) # i 列目と j 列目を交換したので -1 が前に出る = - |E| = -1 = sgn \sigma # 互換の sgn は、-1 なので.. [一般の場合] # 一般の置換は、互換の積に表せる \sigma = \tau_1 \tau_2 .. \tau_k A_{\sigma} = A_{\tau_1} A_{\tau_2} .. A_{\tau_k} よって、 |A_{\sigma}| = |A_{\tau_1}| |A_{\tau_2}| .. |A_{\tau_k}| # 行列 = sgn\tau_1 sgn\tau_2 .. sgn\tau_k = sgn \tau_1 \tau_2 .. \tau_k = sgn \sigma == # 今日のこのあとは、代機とは無関係に、卒業演習の紹介 三山崩し (ニム) 7, 5, 3, の小石の山を作る。 そこから、石を取って行く ( 山を崩す ) ので、三山崩し プレイヤーは二人 ( 三人以上だと、問題が面倒になるので.. ) [規則] 交互にプレイする 一つの山から 1 個以上の石を取る ( 上限はない ) 最後の 1 つを取った者が勝ち ( 正規形 ) # 最後をとったものが負けというルール ( 逆形 ) もある # 逆形の方は、卒研で行うので、今日は正規形 ○ この問題は、確率要素がないので、必勝手順がある この問題は、 先手必勝 (×) 後手必勝 (○) (良形) か ? より、一般に、 ( l, m, n ) はどっち ? という問題を考える 実は、(7,5,3) は、実は先手必勝 どのような場合に、先手必勝になるかを考えてみよう。 # [注意] # 先手必勝 => 「いい加減にうってもよい」という意味ではなく、「つねに良い手をえらべばかてる」の意味 # 後手必勝 => 相手が何をうってもかてるてがある # どうかんがえるか ? (0,0,0) ○ # すでに、先手は負けている (l,0,0) × # 全部とれば先手の勝ち (l,l,0) ○ # まねっこができるので、後手の勝ち (l,m,0) × # 数が違うので、数をそろえれば良い。よって先手の勝ち (1,1,1) × (2,1,1) × (2,2,1) × (2,2,2) × (l,l,m) × # 同じものが二つある場合は、残りの山を全部取ればよい 三つとも異なる場合だけが問題 # 一番簡単な場合を考える (1,2,3) (2,2,1) (3,2,0) -> (2,2,0) (0,2,1) (3,1,1) -> (0,1,1) (3,0,1) (1,2,1) -> (1,0,1) ↑全部○ よって ↑全部× よって ↑全部○ということに.. # 全部、しらみつぶしでやってもよいが、大変なので、すこし系統的に考えてみる [ゲームの性質] 1. (0,0,0) は ○ ( 正規形なので.. ) 2. ○ -> ○ となる手はない ( ○の定義より ) 3. × -> ○ となる手はある ( ×の定義より ) 4. □ -> ○ ならば、□は ○ 5. □ からどうやっても×しかでない場合は、実は□は○ # ゲームの話しだが、やっぱり数学的にできるので.. [定理 1] (m,n) に対して、(l,m,n) が ○ になる l が、ただ一つ存在する proof) # まず、唯一性を示す (l,m,n) ○ (l',m,n) ○ (l>l')とする。 (l,m,n) -> (l',m,n) とできるが、これは「○ -> ○」なので、矛盾。 # 次に存在 ( m + n に関する帰納法による ) 0) m + n = 0 の時は、(0,0,0) なので、存在する p) m + n = p の場合 (l,m,n) の内、m,n から石をとり、m'+n' とすると、 その結果として m'+n' は、p より小くなるので、 (l,m',n') が○となる l が、それぞれ存在する ( 帰納法の仮定 ) (l_1, m-1, n) ○ (l_2, m-2, n) ○ (l_m, m-m, n) ○ (l_{m+1}, m, n-1) ○ (l_{m+n}, m, n-n) ○ このような l_k とはことなる最小の数を l とすると、実は、 (l,m,n) が○ を示す。 proof) (l,m-i,n) × (なぜなら (l,m-i,n) は×だった ) (l,m,n-i) × (なぜなら (l,m,n-i) は×だった ) (l',m,n) × l'=l_i ( 1 <= i <= m -> (l_i,m-i,n) が○ l'=l_{m+i} ( 1 <= i <= n ) -> (l_i,m-i,n) が○ 定義 (l.m,n) が○の時 l = m ^ n とする。 [定理 1.2] m ^ n <= m + n proof) 0 ^ 0 = 0 m + n >= 1 の時 m ^ n = l <= m + n 系 | m - n | <= m ^ n proof) (l.m,n) が ○なら (m,l.n), (n,l.m) も○ よって、 m = l ^ n m < l + n n = l ^ m n < l + m よって、 |m-n| <= l [定理 1.3] ( 単位元 ) 0 ^ m = m m ^ 0 = m proof) (m,m,0), (m,m,0) は○ 系 m ^ m = 0 [定理 1.4] ( 交換法則 ) m ^ n = m ^ n [定理 1.5] (逆元) n,n に対して l ^ m = n となる l が唯一つある。 proof) m ^ n = l とおくと ( l, m, n ) は○ ( n, l, m ) は○ よって、 l ^ m = n [定理 1.6] (結合律) ( l ^ m ) ^ n = l ^ ( m ^ n ) # 証明はできるが、面倒なので、今回はサボる # 定理 1.1 - 1.6 より ( Z_{>0} ^ ) は、加法群 ## 群にかんする話題は、来年以降、学ぶ ## ここまでやっても、なかなか法則性がみえないので、ちょっと具体例をやってみる 0^1 = 1 1^1 = 1 2^1 = 3 3^1 = 2 # なんとなく、規則性質がみえてきたので、それを帰納法で証明してしまう !! [定理 1.7] p = 2n の時 p ^ 1 = p + 1 p = 2n + 1 の時 p ^ 1 = p - 1 proof) # n に関する帰納法 0,1) n = 0,1 の時は、上記の具体例で O.K n) q = 2(n+1) とする q+1 = q-1, q, q+1 のいずれか (q,q,1) ×なので、 q ではない 仮定より 2n^1 = 2n+1 よって、 (2n+1,2n,1) は○ よって、 (2n+1,2n+2,1) は× つまり、 ( q-1, q, 1) は× よって、 q-1 でない よって、 q^1 = q+1 (q+1)^1 = q (2n_3)^1 = 2n+2 # 三つ山が異なっても、残りが一つが 1 なら、必勝法がわかった # 同様に 2 の場合も考える # 具体的な例を考えて、規則性を探し、帰納法で証明 0^2 = 2 1^2 = 2 2^2 = 0 3^2 = 1 4^2 = 6 5^2 = 7 6^2 = 4 7^2 = 5 [命題] p = 4n, 4n+1 p^2 = p+2 p = 4n+2, 4n+3 p^2 = p-2 # 証明は、帰納法で 演算表を作ると.. ^ | 0 1 2 3 --+-------- 0 | 0 1 2 3 1 | 1 0 3 2 2 | 2 3 0 1 3 | 3 2 1 0 ここで、{0.1} は閉じている (部分群になる), {0,1,2,3} は閉じている。 # {0,1,2} は駄目であることに注意 この規則を一般化すると... [定理 1.8] i) { 0, .., 2^n-1 } は部分群 ii) p < 2^n の時 p ^ 2^n = p + 2^n 系 2^m + 2^n = 2^m + 2^n ( m \ne n ) = 0 ( m = n ) # ここまでくれば、そろそろ ^ の正体がみえてくるが.. その説明は来週 !! # !! この問題は、当然試験にでない