代数幾何 I 古津先生 (2006/04/19) # 今日から、講義開始 == 複素数 # 今週と次週 N = { 1, 2, 3, .. } : 自然数全体 ( 0 を含めるかどうかは教科書次第 ) # 英語の「自然数」Natural から これは、掛け算、足し算に関して閉じているが、引き算すると困る Z = { 0, \pm 1, \pm 2, .. } : 整数全体 これで引き算は閉じたが、今度は割り算で困る Q = { p/q | p, q \in Z } : 有理数全体 これで、四則は Okay ( 0 で割る場合は例外 ) でも、今度は x^2 = 2 という方程式の懈がない R:実数 R - Q : 無理数 # 実際は、方程式の懈だけでは、無理数が埋まらない # => これには「基本列(コーシー列の)収束」の概念が必要だが、それは、微積で学ぶので、ここでは説明しない しかし、x^2 = -1 の解は、R に含まれない i を「i^2 = -1 を満すような数」と定義する i : 虚数単位 C:複素数全体 C = { a + b i | a, b \in R } C \ni \alpha = a + b i ( a, b \in R ) a を \alpha の「実部」と呼び、 Re \alpha で表す b を \alpha の「虚部」と呼び、 Im \alpha で表す # [注意] 虚部も実部もどちらも「実数」である。 +----------- C ---------+ | | | b \ne 0 | | | | +- R ---+ | 実数 <=> b = 0 | | b=0 | | 虚数 <=> a = 0 ( b \ne 0 ) | | +-+------+ | # b \ne 0 は人による | | | |純虚数 | | 虚数 <=> b \ne 0 | | |0| | | | | | | | | # 0 が純虚数か、どうかは定義次第 | | | | | | | +-----+-+ | | | | | | | | a=0 | | | +--------+ | +-----------------------+ ◎ 「代数の基本定理」 : 複素数係数の代数方程式の解は、複素数になる !! ◯ i^2 = -1 は i の定義 四則演算を定義する \alpha = a + bi, \beta = c + d i ( a, b, c, d \in R ) の時 (1/2) \alpha \pm \beta = (a \pm b) + (c \pm d)i (3) \alpha * \beta = ( ac - bd ) + ( ad + bc )i (4) \alpha/\beta (\beta\ne0) = \frac{a+bi}{c+di} = \frac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)((c-di)} # 分母分子に同じものをかけてよい # この (c-di) は名前がついているが後で説明 = \farc{(ac+bd)+(bc-ad)i}{c^2+d^2} = \farc{ac+bd}{c^2+d^2} + \farc{bc-ad}{c^2+d^2}i # b, d が 0 の時は、実数の計算になっているが、その場合は結果が一致する # => この定義は、実数の計算の「拡張」になっている # 以下、複素数に関る沢山の言葉の定義を行う [定義] 共役複素数 \alpha = a + b i に対して \bar{\alpha} = a - b i ( \alpha^* で表す本もある ) # ^* の形はただしいのでこちらでも良いが普通はbar を\alphaの「共役複素数」と呼ぶ [性質] 共役複素数の性質 Re \alpha = Re \bar{\alpha} = \frac{\alpha +\bar{\alpha}}{2} # 実部を元の複素数とその共役複素数で表現できる Im \alpha = - Im \bar{\alpha} = \frac{\alpha -\bar{\alpha}}{2i} # 虚部を元の複素数とその共役複素数で表現できる ◯ \alpha が実数 <=> \alpha = \bar{\alpha} \alpha が純虚数 <=> \alpha = - \bar{\alpha} [性質] 共役複素数と演算 (1) \bar{\bar{\alpha}} = \alpha # 二回 bar すると元に戻る (2) \bar{(\alpha\pm\beta)} = \bar{\alpha}\pm\bar{\beta} # 足し算と bar は交換できる (3) \bar{(\alpha\beta)} = \bar{\alpha}\bar{\beta} # 掛け算と bar は交換できる # どれも簡単だが、明らかではないので、一応、証明 ∵) \alpha\beta=(ac-bd)+(ad+bc)i なので、 \bar{\alpha\beta}=(ac-bd)-(ad+bc)i 一方 \bar{\alpha}\bar{\beta}=(a-bi)(c-di) =(ac-bd)-(ad+bc)i これは、\bar{\alpha\beta}に等しい。 (4) \beta\ne0 の時 \bar{\frac{\alpha}{\beta}}=\frac{\bar{\alpha}}{\bar{\beta} # 割り算と bar は交換できる ∵) 掛け算からすぐ出る 特に、a=1, b=0 の時 \frac{1}{\beta} = \frac{\bar{\beta}}{|\beta|} # ≧の下の = は一本省略する場合が、あるが、意味は変らない [定義] 絶対値 実数の時に|\alpha|が計算できたら、複素数でも計算したい \alpha の「絶対値」を |\alpha| とで表し、次の式で定義する。 |\alpha| = \sqrt{a^2+b^2} ここで、 \alpha\bar{\alpha}=(a+bi)(a-bi)=a^2+b^2 ≧ 0 \in R であることに注意 # a, b \in R なので a^2, b^2 > 0 となる この定義は、実数の定義と矛盾せず、拡張になっている 特に、\alphaが実数の時 b=0 より、 |\alpha| = \sqrt{a^2} = |a| となり、一致。 # なぜ、このような定義にするかは、後で述べる ◯ |\alpha| = \sqrt{a^2+b^2} = \sqrt{\alpha\bar{\alpha}} |\alpha|^2 = a^2+b^2 = \alpha\bar{\alpha} ◯ |\alpha| = 0 <=> \alpha=0 ∵) # (<=) は明らかだから (=>) を示す。 |\alpha| = 0 => a^2 + b^2 = 0 => a = b = 0 => \alpha = 0 # 実数の時にも |x| = 0 となる実数 x は 0 だけなので x = 0 ◯ |\alpha\beta| = |\alpha| |\beta| # 掛け算は、絶対値を分けてよい ∵) 両辺は共に実数なので、この等式を示す代りに、その二乗を示してもよい そこで、 |\alpha\beta|^2 = (|\alpha| |\beta|)^2 を示すことにする。 |\alpha|^2 = a^2 + b^2 |\beta|^2 = c^2 + d^2 |\alpha\beta|^2 = | ( ac - bd ) + ( ad + bc )i | = (ac-bd)^2 + (ad+bc)^2 = a^2c^2+b^2d^2 - 2acbd + a^2d^2+b^2c^2 - 2adbc = (a^2+b^2)(c^2+d^2) = |\alpha|^2 |\beta|^2 [注意] 足し算の場合は、分けられない ( 一致しない場合がある ) 一般に |\alpha+\beta| = |\alpha| + |\beta| とはならない # 偶然、等しくなる場合もあるのだが.. より、一般には、 ◯ |\alpha+\beta| \le |\alpha| + |\beta| |\alpha| -| \beta| \le |\alpha - \beta| # これを「三角不等式」と呼ぶ。この性質は後で示す。 である。 割り算は、分られる。 |\frac{\alpha}{\beta}| = \frac{|\alpha|}{|\beta|} # \beta \ne 0 の時 [例] 絶対値 | 3 + 2i | = \sqrt{3^2+2^2} = \sqrt{9+4} = \sqrt{13} |\frac{1-i}{1+i}| ( これは、二つ方法がある ) = |\frac{(1-i)(1-i)}{(1+i)(1-i)}| = # このどちらがよいかは、場合によるが、普通は、後の方法の方が簡単 == # ここまでの話は、Text p.253 付録に一部が書いてある。 # ここからは、複素平面の話 ( 高校では、「複素数平面」と習ったかもしれない ) 複素(数)平面 ( ガウス平面 ) # 複素数と平面の間に対応関係を考え、一つの複素数を平面上の一つの点で表現する 次の形で、複素数から平面への対応を考える。 複素数 平面 C -----------------------> R^2 \in \in \alpah = a + bi |--------> (a,b) # 複素数の全ての要素に対して、それに対応する平面上の点がある すると、この対応は、「1 対 1, 上への写像」になる [注意] f : A -> B が があるとき f が 1 対 1 の写像 <=> x \ne y => f(x) \ne f(y) f が上への写像 <=> B の任意の元(要素) z に対して、 f(x)=z を満す、A の元(要素) x が存在する # これらの用語は、「数学入門」で学ぶ この対応が「1 対 1, 上への写像」なので逆の対応も存在する # 平面の全ての点に対して、複素数の要素が対応する [複素平面上の名称] 原点 ( O (0,0) <-> 0 ) 実軸 ( x 軸のこと ) : 実数全体の集合 虚軸 ( y 軸のこと ) : 純虚数全体の集合 y:虚軸 | 2 |.......z = 3+2i | : | : ---+------------- x:実軸 O | 3 複素数の表す点 z = a + bi と、原点の距離は、OZ の長さになる これは三平方の定理より、|z| = \sqrt{a^2+b^2} (z の絶対値) となる。 # これは実数の時も同様だった。数直線上で、実数の表す点と原点(0) の距離が絶対値 特に、二点 \alpha = a+bi と \beta = c + di の距離 d は、二点 (a,b), (c,d) の間の距離になるので、 d = \sqrt{(a-c)^2+(b-d)^2} = |\alpha-\beta| となる。 # 二点間の距離を複素数で表現すると「簡単」になる !! ◯ 図形とマイナス・共役の関係 -\bar{\alpha} | \bar{-\alpha} | \alpha x | x | | | ----------------+--------------- | | x | x -\alpha | \bar{\alpha} この図形の性質を利用して、さっきの三角不等式を示す。 # 図形を利用した証明は、画けないので、省略 (_v_) 三角形を利用して証明するので三角不等式 複素平面を利用すると、「図より」で証明できるので、「楽」になる。 ◯ |\frac{\alpha}{\beta}| =\frac{|\alpha|}{|\beta|} (\beta\ne0) ◯ |\alpha+\beta| ≦ |\alpha| + |\beta| ( 「三角不等式」と呼ぶ ) ∵) (|α|+|β|)^2 = a^2 + b^2 + c^2 + d^2 + 2\sqrt{(a^2+b^2)(c^2+d^2)} |α+β|^2 = a^2 + b^2 + c^2 + d^2 + 2(ac+bd) # 不等式の両辺が正ならば、二乗して比較してよい ## 符号が違う場合は、場合わけが必要 !! # 大小関係を知るには、差の符号をみればよい # 実数の二乗は、常に 0 以上 二つを比較して、 \sqrt{(a^2+b^2)(c^2+d^2)} < (ab+cd) を示せばよいので、更に二乗して比較 (a^2+b^2)(c^2+d^2) - (ac+bd)^2 = (ad-bc)^2 > 0 となったので、元の不等式も成立する # 不等式の両辺を 2 乗する場合は、符号に注意 # これだけの計算を、図で簡単に示せた !!!! 複素平面のメリット : 図形の性質を、数で扱うことができる 例 C = { z | |z - \alpha| = r } これは、複素平面上の円周上の点 ( 中心が\alpha で、半径が r の円 ) となる。 円の内部だったら |z-\alpha| < r とする この樣に、図形が簡単に式で表現できる !! # ガウス平面を利用することによって、式と図形の都合の良い方法が選べるようになった。 == この後、偏角の話をするが、一度に沢山話をするt、大変なので、今日はここまで