代数幾何 I 古津先生 (2006/05/17) == [定理] ユークリッドの互除法 # 今日は、これを、多項式同士の場合でやるが、整数同士でやれば、整数の最大公約数も同様にして求めることができる。 f(x), g(x) \in K[x] ( K \ne Z ) に対して、 \exist m \in N \exist q(x), q_1(x), q_2(x), .., q_{m+1} \in K[x] \exist r(x), r_1(x), r_2(x), .., r_m \in K[x] s.t. f(x) = g(x)q(x) + r(x) ( deg r < deg g : 余りの定義 ) g(x) = r(x)q_1(x) + r_1(x) ( deg r_1 < deg r ) r(x) = r_1(x)q_2(x) + r_2(x) ... r_{m-3}(x)=r_{m-2}(x)q_{m-1}(x)+r_{m-1} ( deg r_{m-1} < dig r_{m-2} ) r_{m-2}(x)=r_{m-1}(x)q_{m}(x)+r_{m} ( deg r_m < dig r_{m-1} ) r_{m-1}(x) = r_m(x)q_{m_1}(x) となり、 r_m(x) は f と g の最大公約数 # なぜ、このような r_m が存在するか ? # r_{i+1} と r_i の次数を比較すると必ず、r_{i+1} の方が、次数が減る # 元々の r の次数が有限なので、次数がへれば、いつかは 0 になる。すなわち、割切れることになるので、その割切れた時が r_m となる。 [証明] r_m が g と f の最大公約数になっていることを示す 上記の式を下からみると、r_{m-1} は r_m の倍数になっていることが解る 次に、r_{m-2} も r_m の倍数なので、同様に繰り返すと、結局、 f も g も r_m の倍数なので、r_m はすくなくても f と g の公約数 一方、h を f, g の公約数とすると、r_m は h の倍数にな るので、結局、r_m は公約数のなかで最もおおきいもの、す なわち、最大公約数となる。 [例] f(x) = x^6+1, g(x) = x^3-2x^2+x-2 の時 # ユークリッドの互除法で解く f(x) = g(x) q(x) + r(x) q(x) = x^3+2x^2+3x+6 r(x) = 13x^2 + 13 g(x) = q_1(x) r(x) + r_1(x) q_1(x) = \frac{1}{13}x - \frac{2}{13} r_1(x) = 0 よって、r(x) = 13x^2 + 13 が答。 [注意] 最大公約数は 0 以外の定数倍でも良いので x^2 + 1 でも良い最大項の係数が指定されていない限り、どれを選ん でもよいが、もし、指定されていたら、それに合せる必要がある [定理] h(x) を f, g の最大公約数とするとき h(x)=f(x)p_1(x)+g(x)p_2(x) ( \exist p_1, p_2 \in K[x] ) # この定理は、先週の定理の特別 ( 2 個 ) の場合 上記の例では、 13x^2+13 = f(x)-g(x)q(x) つまり、 p_1(x) = 1 p_2(x) = -q(x) の場合。 [例] f(x)=5x^6+7x^5+8x^4+2x^3-14x-8 g(x)=x^5+x^4+x^3-3 # ユークリッドの互除法で解く f(x) = g(x) q(x) + r(x) q(x) = 5x + 2 r(x) = x^4+x-2 # 割切れなかったので、次へ続く g(x) = q_1(x) r(x) + r_1(x) q_1(x) = x + 1 r_1(x) = x^3 - x^2 + x - 1 # 割切れなかったので、また続く r(x) = q_2(x) r_1(x) + r_2(x) q_2(x) = x + 1 r_2(x) = x - 1 # まだまだ、割切れない r_1(x) = q_3(x) r_2(x) + r_3(x) q_3(x) = x^2 + 1 r_3(x) = 0 # やっと、割切れたので、最後に割った r_2 が答 最大公約数 r_2(x) = x - 1 # また、さっきの定理が成立するかどうかを確認してみる。 x - 1 = r_2(x) = r(x) - r_1(x)q_2(x) = r(x) - {q(x)-r(x)q_1(x)}q_2(x) = -g(x)q_2(x) + r(x){1 + q_1(x)q_2(x)} = -g(x)q_2(x) + {f(x)-g(x)q(x)}{1 + q_1(x)q_2(x)} # 結局、f(x) と g(x) で表せる [例] f(x)=x^4+1 g(x)=x^3+1 f(x) = g(x) q(x) + r(x) q(x) = x r(x) = -x + 1 # 割切れなかったので、次へ続く g(x) = q_1(x) r(x) + r_1(x) q_1(x) = -x^2 - x - 1 r_1(x) = 2 # 割切れなかったので、また続く r(x) = q_2(x) r_1(x) + r_2(x) q_2(x) = -\frac{1}{2}x + \frac{1}{2} r_2(x) = 0 # やっと、割切れたので、最後に割った r_1 が答 最大公約数 r_1(x) = 2 ここで、最大公約数は定数倍してもよいので、2 で割って、答えを 1 としてもよい。 # 互除法によって、最大公約数を求めることもできる。 # 同様にして整数でも最大公約数も得られる ## 毎年、前期試験で問題が出るので、きっちり演習で解けるようにしておく [定義] ( 最後の例のように.. ) 最大公約数が定数の時、f と g は互いに「素」であるという == # ここまでで、互除法の話はおわりで、これいこうは、多項式の解の話 [定義] ( n 次代数方程式 ) f(x) : n 次多項式 \in C[x] # これ以降は、係数は、全て C f(x) = 0 を n 次 ( 代数 ) 方程式 と呼ぶ \alpha が、 f(\alpha) = 0 の時、\alpha を f(x)=0 の根 (解) と呼ぶ。 # 2 次方程式は、解の公式を既に、高校までで学んでいる # 3 次, 4 次も難しいが解の公式がある # しかし、「5 次以上の方程式の解の公式がない」ことが証明されている # つまり、一般には 5 次以上の方程式は解けない # もちろん、特別な場合は解くことができるが、だいたいの場合は無理 # それでも、「解がある」ことが示せる。それが次の「代数学の基本定理」 # ちなみに、「微分積分学の基本定理」もあり、それは、「積分して微分すると元に戻る」 # この代数学基本定理の証明はテキストの最後にのっているが、面倒なので講義ではしない [定理] (代数学の基本定理) f(x)=0 は少くても一つの根をもつ [系] f(x) = a_n(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)..(x-\alpha_n) と分解できる [証明] 代数の基本定理を繰り返し適用すればよい # この \alpha_i の内、同じものが複数含まれることがある この分解に現れる x-\alpha の個数を根 \alpha の重複度(ちょうふくど/じゅうふくど)という 重複度 1 の根を 単根(たんこん) 重複度 k の根を k 重根(じゅうこん) [定理] ( 根と係数の関係 ) 方程式 f(x) = a_n x^n + a_{n-1}x^{n-1} + .. + a_1 x + a_0 = 0 の根を \alpha_1, .., \alpha_n とすると、 \alpha_1 + .. + \alpha_n = -\frac{a_{n-1}}{a_n} \alpha_1\alpha_2 + \alpha_1\alpha_3 + .. + \alpha_{n-1}\alpha_n = -\frac{a_{n-2}}{a_n} ... \alpha_1\alpha_2 .. \alpha_n = -\frac{a_0}{a_n} # ここまでは、f(x) の係数は、複素係数の場合で考えてきたが、次は、実係数の場合 特に、f(x) \in R[x] の時、 [定理] f(x)=0 が虚根 \alpha が根であれば、(\alpha の共役複素数) \bar{\alpha} も根 [証明] f(x) = \sum_{k=0}^n a_k x^k, a_k \in R とおくと、\alpha は f(x)=0 の根なので、 f(\alpha)=0 この両辺の共役複素数をとれば、 0 = \bar{f(\alpha)} = \bar{\sum_{k=0}^n a_k \alpha^k} ところが、共役複素数は、積や和と交換できるので、 = \sum_{k=0}^n a_k \bar{\alpha}^k} = f(\bar{\alpha}) すなわち、 f(\bar{\alpha}) = 0 なので、 \bar{\alpha} も根。 以上により、f(x) は複素数 \alpha の根をもてば \bar{\alhpa} も根 とこところが、 (x-\alpha)(x-\bar{\alpha}) = x^2 + 2 Re \alpha x + |\alpha|^2 \in R[x] なので、結局、 [定理] f(x) \in R[x] は、実数の範囲内で、一次 ( 根自身が実数 ) 式 及び、二次式 ( 根が複素根の場合 ) の積に分解される。 [例] 1 の n 乗根 |\alpha|^n = 1 なので、|\alpha^n| = |\alpha|^n = 1 より |\alpha| = 1 よって、 |\alpha| = 1 ( |\alpha| は実数なので、実数で、n 乗して 1 になるのは 1 しかない ) 絶対値が 1 の複素数は、次のように表すことができた \alpha = e^{i\thita} = \cos{\thita} = i \sin{\thita} よって、 e^{i n\thita} = 1 より、 n\thita = 2k\pi ( k \in Z ) より、 \thita = \frac{2k\pi} ( k \in Z ) # ここで、根の個数が、無限にあるように見えるが.. # k = n の時は、k = 0 と同じになるので結局.. 実は、異るのは、 k = 0, 1, .., n - 1 の n 通りで、全て異るの、全て単根 すなわち、 1 の n 乗根は e^{i\frac{2k\pi}{n}} ( k = 0, 1, .., n - 1 ) ( \cos{\frac{2k\pi}{n}} + i \sin{\frac{2k\pi}{n}} ) となる。 # 1 の n 乗根を図示化すると、全て、単位円上に現れる # 少くても、1 は根なので、1 を含み、単位円上を中心角を n 分の # 一等分した点が根となる。 [例] x^12 = 1 の根 ( これは 5 次以上だが、この場合は解ける ) \pm 1, \pm i, \pm \frac{\sqrt{3}{2}} \pm \frac{1}{2}i ( 符号同順 ) \pm \frac{1}{2} \pm \frac{\sqrt{3}{2}} ( 符号同順 ) == 来週は、多変数の多項式の話 ( 対称式、基本対称式、差積 ) などをやったらベクトルに入る