代数幾何 I 古津先生 (2006/06/14) # 今回は、空間の線型変換 # 先週やった、平面の線型変換を、空間にしただけ # だいたい、先週とおなじ話をもう一度する == # 線型変換の定義をもう一度する。 [定義] (空間の線型変換) T : V^3 の変換 が、 T(x+y) = T(x) + T(y) T(c x) = c T(x) を満す時、V^3 の「線型変換」と呼ぶ。 [例] * 原点に関する対称移動 x :-> -x * z 軸の周りに角αの回転 # z 軸が手前にむいているとすれば、要するに平面の回転と同じ [定理] T, S : 空間の線型変換 => S・T も空間の線型変換 [証明] 前回の平面の場合とまったく同じ ( ∵ 前回、平面の性質を利用していない ) # 行列表現を考えると、成分の個数が、3 x 3 = 9 個になる a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) = ( a_ij ) a_31 a_32 a_23 # ( a_ij ) という形式は、成分を全部書くのは大変なので、一般形を a_ij として書いたもの ( これは 1 x 1 ではなく、状況に応じて、 n x m になる ) これを 3 次行列と呼ぶ ( 前回の平面の場合は、2 次行列 ) x v = ( y ) z b_11 b_12 b_13 B = ( b_21 b_22 b_23 ) = ( b_ij ) b_31 b_32 b_23 の時、 a_11 x + a_12 y + a_13 z A v = ( a_21 x + a_22 y + a_23 z ) a_31 x + a_32 y + a_33 z AB = ( c_ij ) # ( c_ij ) は 3 次行列 で、 c_ik = \sum_{j=1}^3 a_ij b_jk ( i = 1, 2, 3, k = 1, 2, 3 ) と、それぞれ掛け算を定義する。 [定理] (AB)v = A(Bv) (AB)C = A(BC) [定理] A(v+u) = A(v)+A(u) A(c v) = c A(v) [証明] # 一番面倒な、 (AB)C = A(BC) だけを示す。 A = (a_ij), B = (b_ij), C = (c_ij) とし、 AB = ( d_ij ), (AB)C = ( e_ij ) BC = ( f_ij ), A(BC) = ( g_ij ) とする。 目的は、 e_ij = g_ij である。 仮定より、 d_ik = \sum_{j=1}^3 a_ij b_jk また、 e_il = \sum_{i=1}^3 d_ik c_kl =\sum_{k=1}^3 (\sum_{j=1}^3 a_ij b_jk) c_kl =\sum_{j=1}^3 ( \sum_{j=1}^3 a_ij b_jk c_kl ) 同様に、 f_ik = \sum_{k=1}^3 b_jk c_kl また、 g_il = \sum_{j=1}^3 a_ij f_jl =\sum_{j=1}^3 a_ij ( \sum_{k=1}^3 b_jk c_kl ) =\sum_{j=1}^3 ( \sum_{j=1}^3 a_ij b_jk c_kl ) となる。 共に、3 x 3 = 9 個の和なので、順番を交換すれば、 e_il = g_il となる。 # 上記の証明は、次元に関らないので、以下、一般の場合も同様に証明可能 [定理] T_A : V^3 の変換 T_A (v) = A v は、線型変換 ∵ 平面と同様 [定理] T : V^3 の線型変換 => \exist A:三次行列 s.t. T = T_A [証明] # 「平面と同様」としてもよいが、復習のために、もう一度やる。 e_1, e_2, e_3 を V^3 の単位行列とし、 a_11 T e_1 = ( a_12 ) a_13 a_21 T e_2 = ( a_22 ) a_23 a_31 T e_3 = ( a_32 ) a_33 とすれば、V^3 の任意のベクトル x v = ( y ) z は、 v = x e_1 + y e_2 + z e_3 となるので、 T(v) = T(x e_1 + y e_2 + z e_3) = x T(e_1) + y T(e_2) + z T(e_3) a_11 x + a_12 y + a_13 z = ( a_21 x + a_22 y + a_23 z ) a_31 x + a_32 y + a_33 z a_11 a_12 a_13 x = ( a_21 a_22 a_23 ) ( y ) a_31 a_32 a_23 z ここで、 a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_23 とすると、 = Ax = T_A(x) よって、 T = T_A # これは、平面の時と同じだが、同様に、具体的な A の求め方にもなっていること注意 == 空間の座標系は二つある y ^ | +---> x に対し、z 軸が、手前にくる ( 右手系 ) か奥にゆく (左手系 ) かのどちらか。 以下では、右手系でのみ考える。 [例] 原点に対する対称移動 T -1 T(e_1) = - e_1 = ( 0 ) 0 0 T(e_2) = - e_2 = ( -1 ) 0 0 T(e_3) = - e_3 = ( 0 ) -1 よって、T = T_A となる A は、これを並べて、 -1 0 0 A = ( 0 -1 0 ) 0 0 -1 となる。 [例] z 軸の周りに角α回転 \cos{α} T(e_1) = - e_1 = ( \sin{α} ) 0 -\sin{α} T(e_2) = - e_2 = ( \cos{α} ) 0 0 T(e_3) = - e_3 = ( 0 ) 1 よって、T = T_A となる A は、これを並べて、 \cos{α} -\sin{α} 0 A = ( \sin{α} \cos{α} 0 ) 0 0 1 となる。 == [定義] (ベクトル[直線]への射影) ベクトル a に対し、ベクトル v から、次の条件 v' を求める変換を考える v' = t a (a, v-v' ) = 0 # これは、平面と同じ、なぜなら、二本のベクトルなので、結局、両方とも、ある平面にはいっていしまうから。 # 一応、復習のために、もう一度やる。 上を、下に代入して整理し、t を求めると、 (x-ta,a) = 0 より、 t = \frac{(a,x)}{(a,a)} よって、 x' = \frac{(a,x)}{(a,a)} a すなわち、 T x = \frac{(a,x)}{(a,a)} a ちなみに、これは線型変換になっている # 普通に証明してもよい (上記参照) し、内積が線型性を持つことを利用してもよい [定義] (平面への射影) 平面 P 上の独立な二つのベクトル a, b を考え、任意のベクトル v に対し v' = t a + s b v-v' は、a, b (が張る平面 P) に垂直 となる v' を考える時、 S : v :-> v' を a, b (が張る平面 P) への射影子と呼ぶ。 # これは、平面では考えられないので、空間側で新しい概念 P に垂直なベクトルを a とすれば、 x - x' = t a (a,x') = 0 となるので、これから、 S x = x - \frac{(a,x)}{(a,a)}a が得られる。 # 以下、Text の問 [問 1] イ) -1 0 0 A = ( 0 1 0 ) 0 0 -1 # 任意の行列 A に対して、T_A は線型変換にはなるが、A には色々ある # 具体的に A が与えられたときに、T_A がどのような図形的意味があるかを考える。 ## A には色々あるので、中には、図形的には、わけのわからない変換が沢山あるが.. が、どのような図形の変換に対応するかを考える。 まず、単位ベクトルがどこに移るかを考える。 A e_1 = -e_1 A e_2 = e_2 A e_3 = -e_3 このことから、y は変らないので、y 軸が、「移動の軸」になっていることが解る。 x, z の符号が変るので、「移動の軸」に対する、対称移動、あるいは、180 度の回転になる。 すなわち、 y 軸に関する線対称 または、 y 軸に関する 180 度の回転 となる ( 答は、どちらでもよい ) [問 1] ロ) 1 0 0 A = ( 0 \cos{α} -\sin{α} ) 0 \sin{α} \cos{α} 同様に、e_1, e_2, e_3 の変換結果を考える 1 A e_1 = ( 0 ) = e_1 0 0 A e_2 = ( \cos{α} ) \sin{α} 0 A e_3 = ( \sin{α} ) \cos{α} よって、x 軸は移動しないので、これが、軸。y, z に関しては、回 転となっているので、結局、 x 軸に関するαの回転 となる。 # [注意] 同様にして、y 軸での回転もついでにやってみると \cos{α} 0 \sin{α} A = ( 0 1 0 ) -\sin{α} \cos{α} # これで、x,y,z 軸に関する回転の変換をすべて紹介するので、「覚えておく」こと [問 1] ハ) 0 1 0 C = ( 0 0 1 ) 1 0 0 C e_1 = e_3 C e_2 = e_1 C e_3 = e_2 よって、x, y, z の内動かない軸はない。 しかし、良くみると、 1 1 C ( 1 ) = ( 1 ) 1 1 1 となっている、即ち、この ( 1 ) が移動の軸 1 更に、このベクトルと平行で、原点を通る l ( x = y = z ) を考えると、l 上の点が移動しないので l が軸となる。 更に、e_1, e_2 e_3 の挙動をみると、C によって、3 度うごかすと、同じ所に戻る。 すなわち、C は l の周りに、時計回りに 1/3 回転、すなわち、反時計周りに -120 度すなわち、240 度の回転となる。 [問 2] a v = ( b ) ( ただし、|v|^2 = a^2 + b^2 + c^2 = 1 ) c の時、v への射影子に対応する行列を求める a^2 T e_1 = ( ab ) ac ab T e_2 = ( b^2 ) bc ac T e_3 = ( bc ) c^2 なので、 a^2 ab ac A = ( ab b^2 bc ) ac bc c^2 となる。 [問 3] a, b, c は互いに直交で、0 でないベクトル T は a への射影子 S は、b, c がはる平面 ( a に垂直 ) への射影子 すなわち、 Tx = \frac{(a,x)}{(a,a)}a Sx = x - \frac{(a,x)}{(a,a)}a = x - Tx の時、 イ) T^2 = T, S^2 = S であることを示す。 [証明] ( T^2 = T ) # これは前回と同じ T^2 x = T ( T x ) = T ( \frac{(a,x)}{(a,a)}a ) = \frac{(a,x)}{(a,a)}\frac{(a,a}{(a,a)}a = \frac{(a,x)}{(a,a)}a = T x ( S^2 = S ) S^2 x = S ( S x ) = S x - TS ( x ) = ( x - T x ) - T ( x - T x ) = x - T x - Tx + T^2 x = x - T x - Tx + T x = x - T x = S x ロ) (TS = SX = O) TS(x) = T(x-Tx) = Tx -T^2x = Tx -Tx = 0 ST(x) = Tx-T(Tx) = Tx -Tx = 0 ハ) Sx = x - Tx より x = Sx + Ts # ここで、b と c が直交していることはつかっていない # つかっているのは、a と b, a と c だけなので、b と c は独立だけでよい # 線型変換に対応する行列の求めかた # e_1, e_2, e_3 の変換先を調べるだけ == 次回は、行列式の話