代数幾何 I 古津先生 (2006/06/21) # 今日の話題は、2 次の行列式 # 来週 3 次の行列式をするが、より一般に n 次の行列式は、後期の後半で行う == [定義] 2 次の行列 A = ( a b ) に対して ad-bc を A の「行列式」と呼び、 c d | a b |, |A|, det A c d で表す ( 行列式は、英語で detaminant ) とくに、二つのベクトル x = ( a ), y = ( b ) c d とするときに、 det(x,y) も行列式 # 以下、行列式の様々な性質 [定理] x, y が線型独立ならば、det(x,y) \ne 9 # 対偶を証明する [証明] x = ( a ), y = ( b ) c d とする。 x, y が従属 <-> \exist k s.t. x = k y <-> a = kb, c = kd -> ad-bc = (kb)d - b(kd) = 0 <-> det(x,y) = 0 よって、 x, y が従属 -> det(x,y) = 0 逆に、 det(x,y) = 0 <-> ad-bc=0 <-> a:c = b:d (成分の比が等しい) <-> x // y ( x, y は平行 ) <-> x, y は従属 以上により、対偶が示せたので、元の命題も正しい [定理] det(x,y) = - det(y,x) [証明] 左辺 = det(x,y) = ad-bc = - ( bc-ad ) = - det(y,x) [定理] det(x+x',y) = det(x,y)+det(x',y) # (前の)足し算は分けることができる # 後ろも当然同様にして示せる [証明] # それぞれ成分を指定して、計算してみればよい [定理] det(k x,y) = k det(x,y) # (前の)掛け算は、外に出せる # 後ろも当然同様にして示せる [証明] # それぞれ成分を指定して、計算してみればよい # これは、「線型性」 # 後の部分は、前後をひっくりかえして、外にだし、また引っくりかえせばよい [定理] |AB| = |A||B| # 行列の積も分けられる !! # この性質は、他にない重要な性質なので、是非覚える !! [証明] # それぞれ成分を指定して、計算してみればよい # この式を利用して、文字列の式に関する公式(因数分解)を導くことができる。 [注意!!] |A+B| は必ずしも |A| + |B| とはならない !! # 行列の積はわけられる # 前のベクトルの和はわけられる # だけど、行列の和はわけられない !! [定理] ベクトル x, y の作る平行四辺形の面積 S は S = |ad-bc| だった、よって、今回の行列式を利用すると、 S = | det(x,y) | となる。 # det(x,y) は正にも負もなる。符号はどのように決るか ? [例] det(e_1,e_2) = 1 > 0 det(e_1,-e_2) = -1 < 0 det(e_1,-e_1) = 0 この結果から、 x から y へと計った角度が、0 〜 \pi なら正、\pi 〜 2\pi は負 となることが予想され、実際にそうなる。 # 厳密には、中間値の定理をつかって示す必要があるが、ここではやらない == [定理] u = (x_1), v = (x_2), X = ( u, v ) = ( x_1 x_2 ) とする y_1 y_2 y_1 y_2 この時、 AX = A(u,v) = (Au, Av) # 注意。これは内積と同じ記号だが、今回は内積でない [証明] # 成分を比較する [例] これから、 |AX| = det(Au,Av) || |A||X| = |A| det(u,v) よって、 |A| = \frac{det(Au,Av)}{det(u,v)} これを図形的に解釈すると、 元の u,v がつくる面積を S とすると、u,v が T_A に変換された先の図形の面積が | det A | 倍になる det A は、線型変換 T_A によって、面積が何倍になるかを表している # 後期で、いっぱんの連立方程式と行列式の関係を学ぶが.. [例] (後期で学ぶクラーメルの公式の一番単純な形) 連立一次方程式 a x + b y = d c x + d y = f は ad-bc \ne 0 の時、唯一の解をもち、 x = \frac{ | e b | }{ | a b | } | f d | | c d | y = \frac{ | a e | }{ | a b | } | c f | | c d | [証明] 実際に計算してもとめる # 実際の計算は、これでやらない方がよいが、抽象的な計算の場合はこっちがよい 特に、 u = ( a ), v = ( b ), w = ( e ) c d f とすれば、u, v は独立の時 x u + y v = w と一意に表現できることをいみしている。 また、 A = ( a b ), q = ( x ) c d y とすれば、 Aq = w を表している。 == 外積 ( ベクトル積 ) # <=> 内積 (スカラー積) # 外積は、空間ベクトル(三次元ベクトル)のみ定義される [定義] 外積 ( ベクトル積 ) u, v \in V^3 で、u, v が独立 ( 独立でない場合は定義が異る ) の時 \exist 1 w \in V^3 s.t. 1) u 垂直 w, v 垂直 w e # これで方向は決るが向きが決らない(二択) 2) u, v, w は、右手系 # これで向きも決る # 後は、長さが定義されればよい 3) |w| = ( u, v の張る平行四辺形の面積 ) この w を u, v の外積とよび u × v で表す u, v が線型従属ならば、w は 0 で定義する [定理] u × v = - ( v × u ) [証明] u × v = w とすれば、定義より、 u, v, w は右手系 これから、 v, u, w は左手系 よって、 v, u, -w は右手系 また、 -w は、u, v と直交し |-w|=|w|=u,v の作る平行四辺形の面積 となるので、 -w は v, u の外積となる [定理] k(u × v) = ku × v = u × kv [証明] # k が正の時には当りまえなので、負の場合を考える w = u × v とすれば、 u, v, w は右手系 ka, v, w は左手系 ( k<0 なので..) ka, v, kw は右手系 あとは、直交性と、長さをそれぞれ調べれば良い # kw が、ku と v 外積の三つの条件を満す。 # 正の場合は、ずっと右手系なので簡単 # 左の部分も同様 # 外積と成分の関係を考える a a' u = ( b ), v = ( b' ) c c' の時、 | b b' | | c c' | b c' - c b' u × v = ( | c c' | ) = ( c a' - a c' ) | a a' | | a a' | a b' - b a' | b b' | となる。 [証明] # この結果が外積の三つの条件をみたすかどうかを調べればよい 1) 直交しているかどうかは、内積を計算して 0 になることを示す 3) |w|^2 を計算してみればよい。 |w|^2 = |u|^2|v|^2 - (u,v)^2 = |u|^2|v|^2 - (|u|^2|v|\cos)^2 = |u|^2|v|^2 (1-\cos^2) = |u|^2|v|^2 \sin^2 = |S|^2 2) 右手系かどうか ( 真面目にやると大変なので例で確認する ) e_1 × e_2 = e_3 よって、右手系 # 右手系から左手系に移すには、途中0になる必要がある (中間値の定理) が、その場合は、独立が崩れる。したがって、独立を保ったまま、右手系から左手系に移ることはできない。 [定理] u × ( v_1 + v_2 ) = u × v_1 + u × v_2 # 前も分配できる [証明] # 成分を比較 # 途中で、行列式の分配を利用する [定理] 空間上の三つのベクトル u, v, w を考えると u, v, w が作る平行六面体を考えることができる この平行六面体の体積 V を考えると V = | (u × v, w) | u × v と w のなす角度をθとする V は底面積 × 高さで求められるので V = | u × v | (|w| |\cosθ|) = | (u × v, w) | となる。 三つのベクトルが作る四面体の体積は、V の 1/6 となる !! == 残り ( 三次の行列式 ) は、次回やる 後で、一般の n 次の計算をやる。 n 次の計算には、2, 3 次を使うので、計算できるようにしておくこと !! # 今年は、rank までゆかない