代数幾何 I 古津先生 (2006/06/28) # 前回まで |a b| = ad-bc c d 外積 u,v \in V^3. w = u × v \in V^3 # 外積と内積の違い : 外積は、ベクトルになるが、内積はスカラーになる 外積の性質 1) u ↓ w, v ↓ w 2) u, v, w は右手系 # この 1), 2) で、方向と向きが決る 3) |w| = u, v の脹る平行四辺形の面積 # 平行六面体の体積 == 3 次元の行列の行列式 a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) = ( v_1, v_2, v_3 ) a_31 a_32 a_33 ^^^^ ^^^^ ^^^^ v_1 v_2 v_3 の時に、 ( v_1 × v_2, v_3 ) を A の行列式 と呼び、 | a_11 a_12 a_13 | | a_21 a_22 a_23 |, |A|, det A, det(v_1,v_2,v_3) | a_31 a_32 a_33 | で表す。 # 成分で表示することもできるが、それは後で行う。 [定理] det(v_1,v_2,v_3) は v_1,v_2,v_3 の脹る平行六面体の体積 × \pm 1 (符号) # 符号はどうなるか ? 単位ベクトルで考える ( e_1 × e_2, e_3 ) = 1 # 独立性、すなわち、途中で、行列式が 0 にならないように「連続的」に移動すれば、右手系は右手系に移動し、その場合の符号は変わらない。 符号は、右手系なら +1, 左手系なら -1 になる [定理] v_1,v_2,v_3 の内二つの順序を交換すると、 det(v_1,v_2,v_3) は、符号が変り、大きさは変らない # ∵ 交換しても、作る平行六面体は同じなので、体積は変らない # 交換した場合は、右手系が左手系に変るので符号が変る [例] det(v_2,v_1,v_3) = - det(v_1,v_2,v_3) [定理] det( v_1+v_1', v_2, v_3 ) = det( v_1, v_2, v_3 ) + det( v_1', v_2, v_3 ) [証明] det( v_1+v_1', v_2, v_3 ) = ( (v_1+v_1')× v_2, v_3 ) # 行列式の定義 = ( v_1 × v_2 + v_1' × v_2, v_3 ) # 外積は分けられる = (v_1×v_2, v_3) + (v_1'×v_2, v_3) # 内積は分けられる = det( v_1, v_2, v_3 ) + det( v_1', v_2, v_3 ) [定理] det( c v_1, v_2, v_3 ) = c det( v_1, v_2, v_3 ) [証明] det( c v_1, v_2, v_3 ) = ( (c v_1)× v_2, v_3 ) # 行列式の定義 = ( c (v_1 × v_2), v_3 ) # 外積は外に出せる = c (v_1×v_2, v_3) # 内積は外に出せる = c det( v_1, v_2, v_3 ) # この話の詳しい話題は後期に学ぶ # 行列式の成分表示を考える det( v_1, v_2, v_3 ) | a_21 a_22 | | a_31 a_32 | a_13 = ( ( | a_31 a_32 | ), ( a_23 ) ) | a_11 a_12 | | a_11 a_12 | a_33 | a_21 a_22 | = a_11 a_22 a_33 + a_12 a_23 a_31 + a_13 a_21 a_32 - a_11 a_23 a_32 + a_12 a_21 a_33 + a_13 a_22 a_31 # 項目は六つあることに注意 ( 2 次の時は、 2 つだった ) # 右下がりの場合は + の符号を、左下がりの場合は - の符号を付ける # !! 行列式の計算ができること !! => 前期試験に出す [例] | 1 2 3 | | 2 3 4 | = -4 | 3 4 9 | # 後期は、もっと多次元の行列式をやるが、多次元は次元を下げて、 # 2, 3 の行列式にしてから、解くので、これができないと話になら # ない [定理] |AB| = |A| |B| # 証明は計算が大変なので、証明の方針だけのべる ## 方針は、両側を成分表示し、計算した結果を比較するだけ ## 書くのは大変なので省略 # 教科書に「多少複雑な計算」とあるが、その場合は、「とっても計算が大変」ということ # 将来は、n 次元でやることになるが、それを成分でやると大変なの # で、成分を使わない方法で、証明する。 # [Q] 行列式って何 ? # [A] 定義は、外積と内積で定義される。意味を考えると、体積に符号をつけたもの # 数学の色々な所で、行列式がでてくるので、ここでしっかり覚えておくこと # cf. 重積分の変数変換 # 行列の掛け算もできること !! == # 行列 A に対応する平面間の線型変換 T_A は、面積を |det T_A| 倍 # した、空間の場合はどうか ? x_11 x_12 x_13 X = ( x_21 x_22 x_23 ) = ( u_1, u_2, u_3 ) x_31 x_32 x_33 とすると、 AX = A( u_1, u_2, u_3 ) = ( A u_1, A u_2, A u_3 ) なので、 |AX| = det( A u_1, A u_2, A u_3 ) || |A||X| = |A| det( u_1, u_2, u_3 ) すなわち、 |A| = \frac{det( A u_1, A u_2, A u_3 )}{det( u_1, u_2, u_3 )} # 行列 A に対応する空間間の線型変換 T_A は、体積を |det T_A| 倍する [例] 平面上の直線の関係は、三つ ( 同じ, 交わる, 平行 ) あるが、空間上では更に、「捩れの位置」が加わる。 [定義] 二つの直線 l_1, l_2 が同一平面にないとき、l_1 と l_2 は捩れの位置にあるという。 l_1, l_2 が捩れの位置にあるとし、次のような形であるとする l_1 : x = x_1 + t a l_2 : x = x_2 + t b # これから l_1, l_2 間の距離や、それらに共に垂直な直線を求める l_1, l_2 が捩れの位置にあれば、a, b は独立 # a, b が独立でないということは、平行だということなので l_1, l_2 も平行になっていしまう。 よって、 |a|^2|b|^2 - (a,b)^2 \ne 0 l_1 上の点を P, l_2 上の点を Q とした時、その位置ベクトルは、 p = x_1 + t a q = x_2 + s b と表現できる。 P,Q を結ぶ直線 l が、l_1, l_2 と直交である条件は、 l ↓ l_1, l ↓ l_2 より、 (p-q,a)=0 (p-q,b)=0 ここで、 p-q = x_2 - x_1 - ta + sb なので、これを代入すると (x_2 - x_1,a)= t(a,a)-s(a,b) (x_2 - x_1,b)= t(a,b)-s(b,b) これは、t, s に関する連立方程式 これが唯一の解を持つには、傾きが等しくないことを示せばよいが、これは (a,a)(b,b)-(a,b)(a,b) が 0 にならないことだが、これは、上記ですでに確認してあるので、0 でない よって、上の連立方程式は唯一の解をもつので、その結果を t_0, s_0 をとすれば、 p_0 = x_1 + t_0 a q_0 = x_2 + s_0 b となる。この位置ベクトルが表す点をそれぞれ P_0, Q_0 とすれば |P_0Q_0| が l_1, l_2 の距離 # 実は、この p_0, q_0 が、l_1, l_2 上の点で、互いに最短距離にある点 # => よって、|P_0Q_0| が l_1, l_2 の距離 # [証明] (背理法) # 上記と異る点 P_1Q_1 が最短と仮定する。 # すると、P_1 と Q_1 のどちらかは垂線の足になっていない ( なっていたとすると P_0, Q_0 に一致してしまう。これはこの条件を満す唯一の解だったので..) # 垂線でない方の点(P_1) とすると、Q_1 から l_1 へ下した点を P_1' とすれば、三角形 P_1Q_1P_1' は直角三角形で、P_1Q_1 は斜辺すなわち、|P_1'Q_1| < |P_1Q_1| となる、これは、矛盾 # 次に直線を求める c = P_0Q_0= (x_2+s_0b)-(x_1+t_0a) とすると x_2 - x_1 = c + t_0a - s_0b c ↓ a, c ↓ b より ( c, は a, b の外積と同じ方向 ) ( c, x_2 - x_1 ) = ( c, c + t_0a - s_0b ) = (c,c) + t_0(c,a) - s0(c,b) = (c,c) 一方、 c = k a × b より |c| = \frac{|(c,c)|}{|c|} = \frac{|(c,x_2-x_1)|}{|k||a×b|} = \frac{|(k(a × b),x_2-x_1)|}{|k||a×b|} = \frac{|det(a,b,x_2-x_1)|}{|a×b|} となる。 == # 別のクラスで、以下の計算の略証をしたので、それもやっておく a,b,c \in V^3 の時 | (a,a) (a,b) (a,c) | | (b,a) (b,b) (b,c) | = det(a,b,c)^2 | (c,a) (c,b) (c,c) | [証明] 成分表示して、あとは両辺を計算した結果を比較する # 別の方針 # A=(a,b,c) とすれば、与式は、|{}^tAA| = |{}^tA||A| で表現できる # ところが、|{}^tA|=|A|=det(a,b,c) なので、与式は det(a,b,c)^2 # この方法ならば、簡単だが思い付くのは大変なので、まずは、「展開」で、できるようにしておく # 兎に角、行列の計算ができるようにする。 == ここまでで、一章の内容はおわり。来週からは、もっと一般の行列 ( 次元が 2, 3 より大きな n でやる )