2007/07/05 # 今日から、新しい話 # いままでと同様、行列は行列という意味で続きなのだが、サイズが大きくなる == [定義] (行列) m, n \in N = { 1, 2, 3, .. } a_ij \in C ( i=1,2,..,m, j=1,2,..,n ) # a_ij は、mn 個数ある a_11, a_12, .., a_1n A = ( a_21, a_22, .., a_2n ) = ( a_ij ) .. a_m1, a_m2, .., a_mn を、(m,n) 型行列と呼ぶ # いまでの平面の行列は、(2,2) 型、空間の行列は (3,3) 型 # (a_ij) は、成分の形をサボった表現 : この場合は、何型かを明示する必要がある 横の並びを「行」、縦の並びを「列」と呼ぶ 順番に 一行、二行、一列、二列となる # 行、列、i,j 成分という言葉は 2, 3 次元と同じ # これまで、成分は、実数ものしか考えなかったが、今後は、複素数のものを考える [定義] (実行列) a_ij \in R の時、実行列と呼ぶ # 以前の平面、空間の行列も実行列 [定義] (等しい) 行列 A, B が等しい <=> A, B が同じ型でかつ、成分が全て等しい場合 # 型が違えば、無条件に異る行列として扱う 行列 A, B が等しい場合 A = B で表す。 [定義] (ベクトル) (m,1) 型の行列 a_11 v = ( a_21 ) ... a_m1 を m 項列(縦)ベクトルと呼ぶ (1,m) 型の行列 u = ( a_11, a_21, ..., a_1m ) を m 項行(横)ベクトルと呼ぶ # 高校では、横ベクトルを使うが、大学では主に縦ベクトルのみ (たまに横も使う) # 以下、ベクトルも特殊な行列と考えることができるので、以下、行列の話をしながら同時にベクトルの話もかねてしまう。 [定義] (和) # 形が異る場合は、和は定義されない A, B : (m,n) 型 A = (a_ij) B = (b_ij) に対して ( a_ij + b_ij ) を、A と B の和と呼び A + B で表す。 # これは、2 次や 3 次と同じ ( 成分は、複素数になっているが.. ) [定義] (定数倍) 行列 A = (a_ij) : (m,n) 型 c \in C に対して、 ( c a_ij ) を、A の c 倍と呼び cA で表す。 特に、 (-1)A = -A A+(-B)= A-B と書く # これも、2 次や 3 次と同じ ( 成分は、複素数になっているが.. ) # 以下、特別な行列の話 [定義] (零行列) 成分がすべて 0 であるような(m,n)型の行列を (m,n) 型零行列 と言い、 O_{m,n} ( = O ) で表す。 # 以下、当りまえのことが続く [定理] O+A=A A-A=O [定理] (A+B)+C=A+(B+C) A+B=B+A c(A+B)=cA+cB (cd)A=c(dA) 1A=A 0A=O # 成分同士をみれば、複素数の結合律、交換律を利用していることが解る # 複素数の性質を利用すれば、当りまえ # 和と、定数倍は簡単だが、積はちょっと大変 [定義] (行列の積) A = ( a_ij ) : (l,m) 型 B = ( b_ij ) : (m,n) 型 に対して、 # これまでは、2, 3 次の正方行列だったので、いつでも積が計算できた # 一般の場合は、常に定義されるわけではない # ここでは、A 行の個数と、B の列の個数が同じでなければ定義されない 積 AB = ( c_ij ) : (l,n) 型 を、 c_ik = \sum_{j=1}^m a_ij b_jk = a_i1 b_1k + a_i2 b_2k + .. + a_im b_mk で定義する。 [例] (3,4) 型と(4,2) 型の積 a_11 a_12 a_13 a_14 b_11 b_12 ( a_21 a_22 a_23 a_24 ) ( b_21 b_22 ) a_31 a_32 a_33 a_34 b_31 b_32 b_41 b_42 a_11b_11+a_12b_21+a_13b_31+a_14b_41 a_11b_12+a_12b_22+a_13b_32+a_14b_42 = ( a_21b_11+a_22b_21+a_23b_31+a_24b_41 a_21b_12+a_22b_22+a_23b_32+a_24b_42 ) a_31b_11+a_32b_21+a_33b_31+a_34b_41 a_31b_12+a_32b_22+a_33b_32+a_34b_42 # 結果の項目をみると、aの左の添字とbの右の添字が、その結果の項目のそれぞれ左と右の添字になり。間の二つの数字は、それぞれ一緒に動く # !!! 行列の積が計算できるようにしておくこと !! [注意] AB があっても BA があるとは限らない AB, BA があっても、同じ型とは限らない [例] A : (3,4) 型、 B : (4,3) 型 => AB は (3,3) 型 BA は (4,4) 型 # AB と BA が同じ型になるのは、A, B が共に正方の場合のみ AB,BA が同じ型でも等しいとは限らない # 2, 3 次でも同様な例を紹介した # AB を BA に換る場合は、できるかどうかを確認してから !! [定理] A:(k,l), B:(l,m), C:(m,n) の時 (AB)C = A(BC) # すなわち、型も等しく、成分も等くなる # => だから、どっちからやってもよい [証明] # まず、型からチェックする 左辺: AB : (k,l) × (l,m) なので、積が定義できて (k,m) 型 (AB)C : (k,m) × (m,n) なので、積が定義できて (k,n) 型 右辺: BC : (l,m) × (m,n) なので、積が定義できて (l,m) 型 A(BC) : (k,l) × (l,n) なので、積が定義できて (k,n) 型 よって、型は等しい。 # 次は、要素 A = ( a_pq ), B = ( b_qr ), C = ( c_rs ) AB = ( d_pr ), BC = ( f_qs ) とすると、 d_pr = \sum_{q=1}^l a_pq b_qr f_qs = \sum_{r=1}^m b_qr c_rs となる。 (AB)C = ( e_ps ), A(BC) = (gf_ps ) とすれば、 e_ps = \sum_{r=1}^m d_pr c_rs = \sum_{r=1}^m (\sum_{q=1}^l a_pq b_qr) c_rs g_ps = \sum_{q=1}^l a_pq f_qs = \sum_{q=1}^l a_pq ( \sum_{r=1}^m b_qr c_rs ) ここで、この和は、有限個の和なので、順番を変えても構わない ( 無限の和は、順番を換ると困ったことになることがある ) e_ps = \sum_{r=1}^m (\sum_{q=1}^l a_pq b_qr c_rs ) g_ps = \sum_{q=1}^l (\sum_{r=1}^m a_pq b_qr c_rs ) これは、同じ項目 a_pq b_qr c_rs が異る順番で加えているだけ # 行列の積の証明では、\sum (Σ:シグマ)が沢山でてくる # => 慣れる !! # => m,n を具体的なもの ( 2, 3 ) で、やってみる !! [定理] A(B+C) = AB+BC (B+C)A = BA+CA AO = O, OA=O # 型が違うかもしれないので注意 ( AO=OA とは限らない !! ) [証明] # 大変なので、一番上だけやる A=(a_pq) : (l,m) 型 B=(b_qr) : (m,n) 型 C=(c_qr) : (m,n) 型 とすると、 B+C = ( b_qr + c_qr ) よって、 A(B+C) = \sum_{q=1}^m a_pq ( b_qr + c_qr ) = \sum_{q=1}^m ( a_pq b_qr + a_pq c_qr ) = \sum_{q=1}^m a_pq b_qr + \sum_{q=1}^m a_pq c_qr = AB + AC [定理] c(AB)=(cA)B=A(cB) [証明] # これも一方だけ A=(a_pq) : (l,m) 型 B=(b_qr) : (m,n) 型 より、 AB = \sum_{q=1}^m a_pq b_qr よって、 c(AB) = c \sum_{q=1}^m a_pq b_qr = \sum_{q=1}^m c a_pq b_qr = \sum_{q=1}^m (c a_pq) b_qr = (cA)B # \sum の扱い [定義](単位行列) (n,n) 型で (i,i) 成分が 1 # 1 は n 個数 その他の成分が全て 0 # 0 は n^2 - n = n(n-1) 個 のものを、 n 次単位行列 と呼び、 E_n ( = E ) 又は 1_n ( = 1 ) で表す # I_n ( = I ) で表すこともある ( 本によって異るので注意 ) で表す 1 0 0 .. 0 E_n = ( 0 1 0 .. 0 ) 0 0 1 .. 0 | | | \ | 0 0 0 .. 1 = ( δ_{ij} ) # ここで、ちょっと、記号の定義 [定義] (クロネッカーのδ) 1 ( i = j の時 ) δ_{ij} = { 0 ( i \ne j の時 ) # cf. ディラックのΔ関数 : これは後で出てくる [定理] A : (m,n) 型 の時、 A E_n = A, E_m A = A [証明] # これも、前の方だけやっておく A E_n の (p,r) 成分は、\sum_{q=1}^n a_pr δ_qr ところが、δ_qr は、q=r の時だけ、1 でその他の場合は 0 なので結局、 \sum_{q=1}^n a_pr δ_qr = a_pr δ_rr = a_pr これは、A の (p,r) 成分。 任意の p, q に関して、成分が等しい ( し、元々型も等かったので.. ) 両辺は等しい [定義] 行列 a_11, a_12, .., a_1n A = ( a_21, a_22, .., a_2n ) .. a_m1, a_m2, .., a_mn を、縦ベクトル v_1, v_2, .., v_n が並んでいるのでこれを利用して、 A = ( v_1, .., v_n ) と同じ。 # 三次の行列の時に、三本の縦ベクトルで行列を表した # 同様に、列ベクトルの並びでも表現することがある ( が、あまり使わない ) 特に、単位行列 E_n は、単位ベクトルの並びとなる。 すなわち、 E_n = ( e_1, e_2, .., e_n ) この e_1, .., e_n を n 項単位ベクトルと呼ぶ [定理] A : (l,m) 型 B = ( v_1, .., v_n ) : (m,n) の時 AB = ( A v_1, .., A v_n ) となる。 # 2, 3 次の時にやったものと同じ [証明] # 積の定義から明らかなので、証明はしないが練習になるのでやる 特に、B=E_m の時、 A = ( A e_1, A e_2, .., A e_m ) となる。 == # 次は線型結合 n 項列ベクトル x_1 v = ( x_2 ) .. x_n は、 v = x_1 e_1 + x_2 e_2 + .. + x_n e_n と表せる。 # これは、単位ベクトルの定義と計算で簡単に確かめられる。 # このように、幾つかのベクトルをスカラー倍したものを一般的に定義する [定義] ( 線型結合/一次結合 ) n 項列ベクトル v_1, v_2, .., v_k に対して、 x_1 v_1 + x_2 v_2 + .. + x_k v_k ( x_i \in C ) を、 v_1, v_2, .., v_k の線型(一次)結合と呼ぶ [定義] ( 複素共役行列 ) A = ( a_ij ) に対して \bar{A} = ( \bar{a_ij} ) を A の 複素共役行列 という。 [定理] \bar{\bar{A}} = A \bar{A+B} = \bar{A} + \bar{B} \bar{cA} = \bar{c}\bar{A} \bar{AB} = \bar{A}\bar{B} [定義] ( 転置行列 ) (m,n) 型行列 A の縦横を逆にした (n,m) 型行列を A の転置行列 とよび、 ^tA で表す [例] a_11, a_12, .., a_1n A = ( a_21, a_22, .., a_2n ) = ( a_ij ) .. a_m1, a_m2, .., a_mn の時 a_11, a_21, .., a_m1 ^tA = ( a_12, a_22, .., a_m2 ) = ( a_ji ) .. a_1n, a_2n, .., a_mn [定理] ^t(^tA) = A ^t\bar{A} = \bar{^tA} ^t(A+B) = ^tA + ^tB ^t(cA) = c^tA ^t(AB)=^tB^A # 最後のものは良く間違えるので注意 [証明] # 最後のもののみ # 省略 == 後、一度で、前期試験、講義で習った内容までが全部範囲 => 第二節 計算問題が殆んど、最後の答まで出せるように もっと具体的な内容は、来週また報せる