区分け 行列に幾つかの縦線と横線を書き入れて、要素を分割してみる 3 列 1 列 2 行 1 2 -1 | 0 A = ( 2 1 3 | 2 ) --------+-- 1 行 1 2 3 | 4 のような形で線を書き入れると A_11 = ( 1 2 -1 ) 2 1 3 A_12 = ( 0 ) 2 A_21 = ( 1 2 3 ) A_22 = ( 4 ) とすれば A = ( A_11 A_12 ) A_21 A_22 と複数の行列に分割できることになる。 より一般的に行うと、 A = ( a_ij ) : ( l, m ) 型 の時、 横線は p-1 本 ( 1 \le p \le l ) 縦線は q-1 本 ( 1 \le q \le m ) 本引けば、 m_1列 m_2列 m_q列 l_1 行 A_11 A_12 .... A_1q A = l_2 行 ( A_21 A_22 .... A_2q ) .. .. l_p 行 A_p1 A_p2 .... A_pq ) となり、 l = l_1 + .. + l_p m = m_1 + .. + m_q A_st は、( l_s, m_t ) 型 となる。 これと、B = ( b_ij ) : ( m, n ) 型 を区分けしたものを掛け算することを考える。 掛け算が巧く行くように、区分けも工夫すると、 n_1列 n_2列 n_r列 m_1 行 B_11 B_12 .... B_1r B = m_2 行 ( B_21 B_22 .... B_2r ) .. .. m_q 行 B_q1 B_q2 .... B_qr ) m = m_1 + .. + m_q n = n_1 + .. + n_r B_su は、( m_s, n_u ) 型 となる。 B の行の区分けは、掛け算が巧く行くように、A の列の区分けと同じにする必要がある B の列の区分けは、別になんでもよい ( もちろん、結果には反映されるが.. ) AB = C = ( c_ij ) : ( l, n ) 型 とし、 n_1列 n_2列 n_r列 l_1 行 C_11 C_12 .... C_1r C = l_2 行 ( C_21 C_22 .... C_2r ) .. .. l_p 行 C_p1 C_p2 .... C_pr ) l = l_1 + .. + l_p n = n_1 + .. + n_r C_su は、( l_s, n_u ) 型 とすれば、 [定理] C_su = A_s1 B_1u + A_s2 B_2u + .. + A_sq B_qu # この証明は、ちゃんとやると面倒なので、今年は省略 # 証明が知りたいならば、教科書を視る [例 1] p = q = r = 2 A_11 | A_12 B_11 | B_12 ( -----+----- ) ( -----+----- ) A_21 | A_22 B_21 | B_22 A_11 B_11 + A_12 B_21 | A_11 B_12 + A_12 B_22 = ( ----------------------+---------------------- ) A_21 B_11 + A_22 B_21 | A_21 B_12 + A_22 B_22 となる。 特に、 A_21 = B_21 = O の時 A_11 | A_12 B_11 | B_12 A_11 B_11 | A_11 B_12 + A_12 B_22 ( -----+----- ) ( -----+----- ) = ( ----------+---------------------- ) O | A_22 O | B_22 O | A_22 B_22 更に、A_11 = B_12 = O の時 A_11 | O B_11 | O A_11 B_11 | O ( -----+----- ) ( -----+----- ) = ( ----------+---------ー- ) O | A_22 O | B_22 O | A_22 B_22 [例2] A : (m,n) 型 A = ( A_11 | A_12 | .. | A_1n ) = ( a_1, a_2, .., a_n ) 縦ベクトルをならべたときの行列の表現は、区分けの一種だった 区分けが便利な場合 => 要素に 0 が沢山ある場合。 => 計算が楽になる イ) 1 -1 | 0 0 2 1 | 0 0 0 -2 | 0 0 0 1 | 0 0 ( ------+------- ) ( ------+------- ) = 0 0 | -2 3 0 0 | 1 1 0 0 | 1 1 0 0 | 2 -3 ロ) 2 0 0 -1 0 0 ( 0 -1 0 ) ( 0 2 0 ) 0 0 3 0 0 1 # 対角行列同士の掛け算は、対角要素の積だけを考える === # ここまでは、正方行列でなかったが、以下は正方行列だけを考える [定義] 正方行列 (n,n) 型行列を n 次 (正方) 行列と呼ぶ # 平面の行列は 2 次行列、空間の行列は、3 次の行列 [定義] トレース A (a_ij) : n 次行列 の対角成分の和を A の固有和(トレース) といい Tr A tr A 等で表す Tr A = a_11 + a_22 + .. + a_nn = \sum_{i=i}^n a_ii # 行列で、和差積は定義したが割り算も定義したい # 実数なら定義できるのに.. 行列では一般にはうまくゆかない [問 1] A = ( 1 2 ) に対して、AX = E, YA = E となる、X, Y は存在しない 3 4 [証明] AX = E となる X = ( x_ij ) が存在するとすると、掛け算を 行い、成分を比較すると、 AX = ( x_11 + 2x_21 x_12 + 2x_22 ) = ( 1 0 ) 2x_11 + 4x_21 2x_12 + 4x_22 0 1 より、 x_11 + 2x_21 = 1 x_12 + 2x_22 = 0 2x_11 + 4x_21 = 0 2x_12 + 4x_22 = 1 ところがこの連立方程式を満す x_ij は存在しない (矛盾) # Y も同様 [問 2] A = ( 1 2 ), B = ( 1 2 ) に対し、 0 0 2 4 AX = B となる 2 次行列 X は存在しない YA = B となる 2 次行列 Y は無限に多く存在する [証明] X = ( x_ij ), Y = ( y_ij ) とすれば、 AX = ( x_11 + 2 x_21 x_12 + 2 x_22 ) \ne B 0 0 YA = ( y_11 2 y_11 ) = B= ( 1 2 ) y_12 2 y_22 3 4 より、 y_11 = 1 y_21 = 2 y_21, y_22 に関する条件はでない => なんでもよい すなわち、 Y = ( 1 y_12 ) # y_12, y_22 は任意 2 y_22 なので、Y は無数に存在する。 [問 3] n 次行列 A のある列がすべて 0 ならば XA = E となる X は存在しない [証明] A = ( a_1, .., a_n ), a_i = 0 とする XA = ( Xa_1,.., X_ai,.., Xa_n ) = ( Xa_1,.., 0,.., Xa_n ) ところが E には 0 となる列は存在しないので \ne E このように、色々と不便なので、条件をつけて、割り算ができるようにする [定義] n 行列 A に対して XA=AX=E となる行列 X が存在するとき A は正則 といい X は A の逆行列 と呼ぶ。 # 正則/逆行列はよくつかうので、是非覚えているように !! [定理] A が正則なら逆行列はただ一つ [証明] X, Y が共に A の逆行列ならば X = XE = X(AY) = (XA)Y = EY = Y よって、X=Y となるので、一つ。 このように、A の逆行列は一つしかないので、記号をよういし A^{-1} で表す。 [定理] A : 正則 => A^{-1} : 正則 であり (A^{-1})^{-1} [証明] AA^{-1}=A^{-1}A=E よって、定義より A^{-1} : 正則であり、(A^{-1})^{-1} [定理] A, B : 正則 => AB も正則であり、(AB)^{-1} = B^{-1}A^{-1} # 順序が逆になることに注意。これも間違い安い # 転置の時も逆順になったが、こちらも注意 [証明] # B^{-1}A^{-1} が逆行列だということなので、実際にかけてみる (AB)(B^{-1}A^{-1}) = A(B(B^{-1})A^{-1} = A(E)A^{-1} = AA^{-1} = E (B^{-1}A^{-1})(AB) = B(A(A^{-1})B^{-1} = B(E)B^{-1} = BB^{-1} = E よって、左からかけても右からかけてもE になるので、 正則 かつ、 逆行列が(B^{-1}A^{-1}) [問 1] A : 正則 => \bar{A}, ^tA : 正則 [証明] \bar{A}\bar{A^{-1}} = \bar{AA^{-1}}=\bar{E}=E \bar{A^{-1}}\bar{A} = \bar{A^{-1}A}=\bar{E}=E よって、 \bar{A} は正則で、\bar{A}の逆行列は # t も同様 # 転置と逆、複素共役と逆は交換してよい、実は、転置と複素も交換してよかった # 次は二次行列の逆行列の公式を考える [問 2] A = ( a b ) が正則になるための条件は ? c d X = ( x_ij ) として、 AX = ( ax_11 + bx_21 ax_12 + bx_22 ) = E = ( 1 0 ) cx_21 + dx_21 cx_12 + dx_22 0 1 より、 ax_11 + bx_21 = 1 ax_12 + bx_22 = 0 cx_21 + dx_21 = 0 cx_12 + dx_22 = 1 この連立方程式は、上の二つと下の二つに分られる 連立方程式に解があることが条件。 上の式で考えると、これは、二つの直線の方程式で、定数項目が違うので傾きが同じか違うかのどちらか。 傾きが同じならば、直線は平行になって交わらないので解ないとなる。 よって、この連立方程式が解をもつ条件は、平行でないこと、すなわち ad-bc \ne 0 下の二式も同様 結局、A が正則であるための条件は ad-bc \ne 0 となる 更に、具体的に X を求めてみると、これは連立方程式を解くだけなので、 x_11 = \frac{d}{ad-bc} x_12 = \frac{-b}{ad-bc} x_21 = \frac{-c}{ad-bc} x_22 = \frac{a}{ad-bc} となり、 X = \frac{1}{ad-bc} ( d -b ) -c a となる。 これを左からかけてもやはり E になることは確認できるので、結局 X が A の 逆行列になっていることが理解る。 以上をまとめると A が正則であることの条件は ad-bc 逆行列の公式は、 X = \frac{1}{ad-bc} ( d -b ) -c a # 2 次の公式は覚えておく # 3 次以上は後でやるが、大変なので公式 == 1 : ユ(計算) 1 : \sqrt{-1} (計算) 2 : 内積、外積、射影子 (計算) 1 : |A| (計算) 1 : 一般の A (示せ) # 先週/今週の話題 #?? 計算用紙を配るが、計算用紙は回收しない 答だけあっていればよい(やり方は問わない)