代数幾何 I 古津先生 (2006/09/27) # 前期の復習の話から 後期の話は、全部行列の話 本日の内容 : 前期、行列の話で残った部分から。 来週からは、基本変形の話 ( 共は、その前まで ) == 正方行列の話をしていた ( 正方行列は、行と列のサイズが同じ行列 ) A=(a_i.j) : (n,n) 型 a11 .. a1n = ( ) an1 .. ann 更に、区分けの話をしていたのだが、その中で、対称区分けを考える 対称区分け : 区分けの中で、縦の区分けも横の区分けも共に、同じ分割をする => 結果的に、小行列は、全て正方行列になる。 # 正方行列の場合は、この対称行列をよく利用する # 行列式 / 逆行列 定理(縦、横はそれぞ二つに分けた場合) A = ( A11 | A12 ) を A の対称区分けとする O | A22 # 左下の小行がたまたま O (ゼロ行列) になった # 要素に 0 が多い場合は、問題が簡単になる この時、 A11, A22 : 正則 => A も正則になり A^{-1} = ( A11^{-1} | -A11^{-1}A12A22^{-1} ) O | A22^{-2} となる。 proof) A と、上記の式をかけてみれれば E (単位行列) になる ( 実際に計算する ) ことを確認すればよい。 # 実は、逆もいえるが、現段階の知識では難しいので後回し 定理 A = ( A1 | O | .. | O ) O | A2 | .. | O .... O | O | .. | Ap が対称区分けの時 A1 .. Ap が正則 => A も正則 で、 A^{-1} = ( A1^{-1} | O | .. | O ) O | A2^{-1} | .. | O .... O | O | .. | Ap^{-1} # 0 が沢山あると、逆行列は簡単にもとめることができる proof) (=>) 掛けて、単位行列になる (<=) 前の定理の <= が証明できていれば、それを繰り返し使うだけ # A12 が O の場合を考えればよい。 定義 ( 対角成分 ) A = ( a_ij ) の時、 a_ii ( i = 1,..,n ) を対角成分と呼ぶ 定義 ( 対角行列 ) 対角成分以外が全て 0 の時、対角行列と呼ぶ # A を縦横に n 個の区分けを行う ( 小さい行列は、成分が一つの行列になる) と対称区分けになっているので、上記の定理が適用できることに注意 定理 A = ( a_ij ), B = ( b_ij ) が共に、対角行列ならば、 AB = BA proof) AB = ( a_ij b_ij ) という、対角行列になる。 個々の成分は、複素数のかけ算なので、交換可能 よって、 = (b_ij a_ij ) = BA 定理 対角行列 A : 正則 <=> a_ii \ne 0 ( \forall i ) proof) (<=) 先程の性質から (=>) 一個でも 0 があると、正則にならないから # 更に特別な場合 定義 (スカラー行列) cE の形をした行列をスカラー行列と呼ぶ。 定理 (cE)X = cX X(cE) = cX よって、スカラー行列は、全ての行列と交換可能 # 実は、この逆も言える 定理 AX = XA ( \forall X ) => \exist c \in C s.t. A = cE proof) A = ( a_ij ) とする どんな行列とも交換可能なので、次のような特別な行列 E_pq を考える E_pq : (p,q) 成分は、1 だが、それ以外は 0 すると、A E_pq = E_pq A である。 これを詳しくみると A E_pq = ( 0 .. a1p 0 .. 0 ) 0 .. a2p 0 .. 0 ... 0 .. anp 0 .. 0 q 列 となる。 一方、 E_pq A = ( 0 0 .. 0 ) 0 0 .. 0 aq1 aq2 .. aqn p 行 0 0 .. 0 この二つが等しいので、成分を比較すると、 api = 0 ( i \ne p の時 ) = ajp ( i = p ) ajq = 0 ( j \ne q の時 ) = ajp ( j = q の時 ) ということで、対角成分以外は、全て 0 になることが判る。 また、app = aqq となるので、任意の p, q について考えると、 対角成分は全て等しい 対角成分以外は全て 0 よって、対角成分を c とすれば、 A = cE すなわち、スカラー行列である。 # 全ての行列だけでなく、全ての Epq と交換可能なだけで、スカラーになる # 以下は、前期でやったが、よく利用するので、もう一度説明する 定義 (固有和 : トレース) A : n 次正方行列で、 A = (a_ij) の時、 A の対角成分の和を A の対角和(トレース)と呼び、Tr A で表わす Tr A = \sum_{i=1}^n a_ii 定理 Tr (cA) = c Tr(A) Tr (A+B) = Tr(A) + Tr(B) Tr (AB) = Tr(BA) # 注意 Tr(AB) は必ずしも Tr(A)Tr(B) と等しくならない。 # 最後の式の証明は、前期に、具体的な 3 次元の行列で示したが、今回は一般的に示す proof) A = ( a_ij ) : ( m,n ) 型 B = ( b_ij ) : ( n,m ) 型 とし、 AB = C = ( c_ij ) : (m,m) 型 とすれば、 c_ii = \sum_{j=1}^m a_ij b_ji となる。 この時、 Tr (AB) = \sum_{i=1}^m c_ii = \sum_{i=1}^m ( \sum_{j=1}^m a_ij b_ji ) 一方、 BA = D = ( d_ij ) : (n,n) 型 とすれば、 d_ii = \sum_{i=1}^m b_ji a_ij となる。 この時、 Tr (BA) = \sum_{j=1}^n _ii = \sum_{j=1}^n ( \sum_{i=1}^m b_ji a_ij ) ここで、 a_ij, b_ij は複素数なので、交換可能 また、和が有限和なので順番も交換してよい # 和の項目が無限の場合は、交換してよいとは限らないことに注意 !! よって、 Tr(AB)=Tr(BA) [定義] (冪乗) A : 正方行列の時、 AA = A^2 AAA = A^3 A .. A = A^k k 個 とする。 [定理] A^k A^l = A^{k+l} (A^k)^l = A^{kl} [定理] AB = BA の時 (AB)^k = A^k B^k # 証明は帰納法で行う # l が自然数の時はよいが、l が負の整数ならどうするか ? # => この場合は、正則の場合だけ考える。 [定理] A : 正則の時 A^0 = E A^{-k} = (A^{-1})^k とする。 # この様に定義すれば、上記の定理も、整数の場合で成立する == # 以前、線型変換と行列の関係をのべたが、こんどは、線型写像と行列の関係を学ぶ § 行列と線型写像 [定義] C^n = { n 項列ベクトル } T : C^n --> C^m : 写像 # 以前は n = m なので、変換だった.. が、次の性質 ( 線型性 : 何ども出て来たあれ ) T(x+y) = T(x) + T(y) T( c x ) = c T(x) をみたすとき、 T は C^n から C^m の線型写像と呼ぶ [定理] A : (m,n) 型 T_A : C^n --> C^m を T_A(x) = Ax で定義すれば、T_A は、線型写像 proof) 略 [定理] \forall T : C^n --> C^m : 線型写像 \exist! A : ( m,n ) 行列 s.t. T = T_A proof) # 実際に A をもとめてしまおう。 e_1 ,..,e_n : n 項単位ベクトル とし、 T(e_j) = a_j ( \forall j ) として、 A = ( a_1, .., a_m ) とすれば、この A は、(m,n) 行列になる。 ここで、 T_A(e_j) = Ae_j = a_j = T(e_j) であることに注意し、T = T_A を示すために、C^n の要素の全ての要素 x に対し T(x) = T_A(x) を示せればよい。 実際、 \forall x = ( x_1 ) ( \in C^n ) x_2 .. x_n に対し、 x = \sum_{j=1}^n x_j e_j となるので、 T_A(x) = T_A(\sum_{j=1}^n x_j e_j) = \sum_{j=1}^n T_A( x_j e_j) = \sum_{j=1}^n x_j T_A(e_j) = \sum_{j=1}^n x_j T(e_j) = \sum_{j=1}^n T( x_j e_j) = T(\sum_{j=1}^n x_j e_j) = T(x) すなわち、 T_A = T また、A の一意性は、A の作り方から明か。 [定理] T=T_A S=T_B C^n ------> C^m -----> C^l \ / *------------------* S・T の時 S・T = T_(BA) proof) S・T(x) = S(T_A(x)) = T_B(T_A(x)) = B(Ax) = (BA)x = T_(BA)(x) [定理] A : n 次正則 T_A C^n -----> C^n \ / *---* T_{A^{-1}} proof) T_A ・ T_{A^{-1}} = T_{AA^{-1}} = T_E = I よって、 T_{A^{-1}} は T_A の逆変換 == R^n = { n 項実列ベクトル } R^2 = V^2 R^3 = V^3 == 来週 : 創立記念日で休み / 再来週 : 基本変形