代数幾何 I 古津先生 (2006/10/25) 一次方程式系 Ax = c (1') ( \~A\~x = 0 (1'') で、 c = 0 の時、斉次方程式 Ax = 0 (4) を考える。 [定理 5.7] m - n の時、(4) が自明でない解を持つ <-> A が正則でない [proof] 自明でない解を持つ <-> 自由度 n - rank A >= 1 <-> rank A <= n - 1 <-> A が正則でない [定理 5.8] A : n 次正方行列 A : 正則 <-> 「x\ne0 -> Ax \ne 0」 [proof] Ax = 0 は自明でない解を持たない <-> A は正則 ( 定理 5.7 ) [定義] A x = c (1') にに対し A x = 0 (4) を、 (1') に対応する斉次方程式 と呼ぶ。 [定理 5.9] (1') の解 x_0 を固定すると、(1') の任意の解法 x_0 + (4) の解 の形である。 [proof] # 証明する内容は、 # 上記の形が、解になること # と # 解が上記の形になること # の二つあることに注意 y を (4) の解とすると A(x_0+y) = Ax_0 + A(y) = c + 0 = c よって、x_0+y は (1') の解 # よって、上記の形は解になった x を (1') の解とし、 x - x_0 = y とする。 すると、 A(y) = A(x-x_0) = Ax - Ax_0 = c - c = 0 よって、 y は (4) の解 x = x_0 + y # よって、解は、上記の形になった # 自由度の計算は n - rank A なので、定数項は無関係 # ただ、定数項目次第では、解なし(不能)になる可能性はある。 ## 解があれば、自由度は、定数項に無関係に等しい == [内積] x, y \in C^n の時の内積を考える # 内積の定義方法は二つある # 角度を使う => これは n 次元では難しい # 成分を使う => こっちで拡張することにする # \bar{\vec{x}} と\vec{\bar{x}} は区別するのは面倒なので同じ意味だと思う x, y の内積 (x,y) を次のように定義する ( 複素成分であることに注意 ) x_1 x = ( ... ) x_n x_1 y = ( ... ) y_n の時、 \bar{y_1} (x,y) = {}^t x \bar{y} = ( x_1, .., x_n ) ( .. ) \bar{y_n} = x_1\bar{y_1} + x_2\bar{y_2} +..+ x_n\bar{y_n} = \sum_{i=1}^n x_i\bar{y_i} = (x,y) = x・y # \bar を忘れると、ベクトルの長さが負になったりする ## 「長さ」が負になるのは、可笑しいので、変であることに気が附かねればならない !! V^2, V^3 の場合の定義も同じ [定理 6.1] (x+x',y) = (x,y)+(x',y) (x,y+y') = (x,y)+(x,y') (cx,y) = c(x,y) (x,cy) = \bar{c}(x,y) # \bar が出ることに注意 (x,y) = \bar{(y,x)} # \bar が出ることに注意 # この二つは間違え易い # 内積で、y 側は \bar が付くので、忘れないようにする (x,x) >= 0 (x,x) = 0 <-> x = 0 [proof] (x,x) = \sum_{i=1}^n x_i\bar{x_i} = \sum_{i=1}^n |x_i|^2 >= 0 [定義] ||x|| = |x| = \sqrt{(x,x)} = \sqrt{ |x_1|^2 + |x_2|^2 + .. + |x_n|^2 } を x の 長さ/ノルム と呼ぶ # || || の時、ノルム、 | | の時に長さと呼ぶことが多い [定理 6.2] ( 有名かつ、よく利用する不等式 ) イ) |(x,y)| <= |x| |y| ( シュバルツの不等式 ) ロ) |(x,y)| <= |x| |y| ( 三角不等式 ) [proof] (イ) まず、y が 0 の場合を考える この場合は、両辺が 0 なので、等号が成立する 次に y \ne 0 の場合を考えると \forall a, b \in C に対して 0 <= |ax+by|^2 = (ax+by, ax+by) = |a|^2|x|^2 + a\bar{b}(x,y)+\bar{a}b(y,x) + |b|^2|x|^2 ここで、a = |y|^2, b = -(x,y) を代入すると、 # 上記の不等式は、どんな a,b に関しても成立するので # 上記の特別な a, b でも不等式が成立する 0 <= |y|^4|x|^2 - |y|^2\bar{(x,y)}(x,y) - (x,y)|y|^2\bar{(x,y)} + |(x,y)|^2|y|^2 = |y|^4|x|^2 - |y|^2|(x,y)|^2 両辺を |y|^2 ( > 0 ) で割れば 0 <= |x|^2|y|^2 - |(x,y)|^2 移項して、 |(x,y)|^2 <= |x|^2|y|^2 両辺とも正なので平方根をとっても不等号はかわらないので、 |(x,y)| <= |x||y| (ロ) |x+y|^2 = |x|^2 + (x,y) + \bar{(x,y)} + |y|^2 <= |x|^2 + 2|(x,y)| + |y|^2 # この複素数の性質は後で示す <= |x|^2 + 2|x||y| + |y|^2 # (イ)より <= (|x|+|y|)^2 両辺とも正なので平方根をとっても不等号はかわらないので、 |x+y| <= |x| + |y| # ここで、さっき利用した複素数の性質を示す z + \bar{z} <= 2 |z| [proof] z = x + yi とすれば、 z + \bar{z} = (x+yi) + (x-yi) = 2x <= 2|x| <= 2\sqrt{x^2+y^2} = 2|z| # この不等式は、あっちこっちで(解析の方でも)出てくるので覚える !!! [定義] (x,y) = 0 の時、x と y は 直交する と呼ぶ # 複素係数のベクトル同士の角度というのは良くわからないが、 # とにかく内積が 0 なら、「直交」と呼ぶことにする [問1] |x+y|^2 + |x-y|^2 = |x|^2 + (x,y) + (y,x) + |y|^2 + |x|^2 - (x,y) - (y,x) + |y|^2 = 2(|x|^2 + |y|^2) # この問題は、この展開ができるかどうか ? をきいているだけ [問2] (x,y) = 0 => |x+y|^2 = |x|^2 + |y|^2 # x と y が直交すれば、ピタゴラスの定理が成立する # => は言えるが、<= は言えるかどうか解らない [proof] (=>) |x+y|^2 = |x|^2+|y|^2+(x,y)+(y,x) = |x|^2+|y|^2 (<=) |x+y|^2 = |x|^2+|y|^2+(x,y)+(y,x) = |x|^2+|y|^2 + 2 Re (x,y) よって、 Re (x,y) = 0 # 実は、この式が、|x+y|^2=|x|^2+|y|^2 の必要十分条件 # (x,y) = 0 => Re(x,y) = 0 はいえるが逆はいえない x,y が実ベクトルなら逆がいえるが、複素ベクトルの時は逆がいえない。 [問3] x, y \in R^n ならば (x,y) = 1/4 ( |x+y|^2-|x-y|^2 ) (proof) |x+y|^2-|x-y|^2 = 4 Re(x,y) = 4(x,y) ( x,y \in R^n なので..) # Re (x,y) = 1/4 ( |x+y|^2-|x-y|^2 ) は常に成立 ( x,y \in C でも成立 ) [定理] A : (m,n) 型、x \in C^n, y \in C^m とすると、 (Ax,y) = (x, {}^t\bar{A}y ) 逆に、 (Ax,y) = (x,By) ( \forall x, y ) => B = {}^t\bar{A} [proof] (左辺) = {}^t(Ax)\bar{y} = {}^tx{}^tA\bar{y} = {}^tx\bar{\bar{{}^tA}y}} = (x, \bar{{}^tA}y ) = (右辺) 逆に、 (Ax,y) = (x,By) とすると、 (x,\bar{{}^tA}y) = (x,By) ( 上の結果 ) より (x,(\bar{{}^tA}-B)y) = 0 ここで、 x = (\bar{{}^tA}-B)y とすれば ((\bar{{}^tA}-B)y,(\bar{{}^tA}-B)y) = 0 |(\bar{{}^tA}-B)y|^2 = 0n よって、 (\bar{{}^tA}-B)y = 0 (\forall y) よって、 \bar{{}^tA} - B = 0 すなわち \bar{{}^tA} = B [定義] 行列 A に対して \bar{{}^tA} を A^* で表わし、随伴行列と呼ぶ [定理] (A^*)^* = A (A+B)^* = A^* + B^* (cA)^* = \bar{c}A^* (AB)^* = B^*A^* # この随伴行列を利用して次の二つの行列を定義する ( 共に正則 ) [定義] A : n 次正方行列の時、 A = A^* ならば A はエルミート行列であると呼ぶ。 特に A が実エルミート行列の場合、A を実対称行列と呼ぶ。 <=> (Ax,y) = (x,Ay) (\forall x, y) A = (a_ij) とすると A^* = (\bar{a_ji}) となる A がエルミート行列ならば、これらの成分が等しいので a_ij = \bar{a_ji} ( \forall i, j ) 特に、対角成分は、 a_ii = \bar{a_ii} ( \forall i ) すなわち、 a_ii は実数 A が実対称行列の時は、 a_ij = a_ji ( A = {}^tA ) となる。 # この行列に関して、色々やるのは、来年になっている # エルミートとユニタリは、正規行列なので、対角化ができるという話を来年する # 今年は、名前だけ覚える [定義] A^*A = E の時、A をユニタリ行列と呼ぶ 実ユニタリ行列を、直交行列と呼ぶ [定理] A : ユニタリ => A は正則 (proof) A^{-1} = A^* A, B : ユニタリ => AB : ユニタリ (proof) (AB)^*(AB)=B^*A^*AB = B^*EB = B^*B = E A : ユニタリ => A^{-1} : ユニタリ (proof) (A^{-1})^* A^{-1} = (A^{*})^* A^{-1} = A A^{-1} = E AA^* = E # A^*A = E <-> {}^tA\bar{A} = E # なので、定義として右辺を利用することもある # ユニタリ行列は、積がユニタリで、E も入っているので、群になる # この話は、来年度以後やる == ユニタリの必要十分条件が、三つある、次回はその話 次回で 2 章を終えて、来週からは 3 章の行列式にはいり