代数幾何 I 古津先生 (2006/11/15) # 今日から、新しい話(行列式)なのだが、今日は、更に、今日だけの特別な話(置換群) # 行列式を定義するには、置換群の話が必要 # ただ、置換群の話は、まともにすると大変だし、来年、まとめてやる # => よって、行列式の説明に最小限度の内容しかやらない == A : n 個の元からなる集合 ( = { 1, 2, .., n } ) # 要素は別に数である必要はない ( a, b, c.. でも、一郎、二郎.. # でもよい ) が、面倒なので、とりあえず、これだと思ってやる [定義] A 上の 1 対 1 の変換を n 文字の置換と呼ぶ \sigma : A -> A : 1 対 1 上への写像 [例] 1 2 3 4 5 ↓ 2 1 4 5 3 : 置換の結果は、元の文字の並べ替えになっている n 文字の置換の種類は何通りか ? => 置換が異れば、置換の結果が異なる 置換の結果は、元の文字の並べ替なので、 nPn = n! となる。 [定義] S_n = {n 文字の置換} [定義] \sigma \in S_n の時 \sigma{1}=i_1, \sigma{2}=i_2, .., \sigma{n}=i_n である時、 \sigma = ( 1 2 .. n ) i_1 i_2 .. i_n で表現する。 [例] ( 1 2 3 ) = ( 3 1 2 ) 2 3 1 1 2 3 # 上の 1, 2, .., n は、どの順番でも良い # 上下の関係が i と \sigam{i} の対応さえあっていればよい [例] S_3 は 3! = 6 個の要素を持つ ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) 1 2 3 1 3 2 2 1 3 ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) 2 3 1 3 1 2 3 2 1 [例] S_4 は、4! = 24 個の要素をもつ => プリントを配布する [定義] ( 1 2 .. n ) 1 2 .. n を恒等(単位)置換と呼び、 1_n で表す。 [定義] \sigma の逆変換を、\sigma の逆置換と呼び \sigma^{-1} で表す。 \sigma = ( 1 2 .. n ) i_1 i_2 .. i_n の時 \sigma^{-1} = ( i_1 i_2 .. i_n ) 1 2 .. n となる。 # 単に、上と下を交換しただけ [例] \sigma = ( 1 2 3 ) 2 3 1 の時、 \sigma^{-1} = ( 2 3 1 ) = ( 1 2 3 ) 1 2 3 3 1 2 # 答は、上下を引っくりかえしただけでよいが、普通は上を順番に並べる [定義] 二つの置換 \sigma, \tau の合成を \sigma, \tau の合成と呼び \tau\sigma で表す。 # 順番が逆になるのは、関数の合成なので.. [例] \sigma = ( 1 2 3 ) 2 3 1 \tau = ( 1 2 3 ) 1 3 2 の時、 \tau\sigma = ( 1 2 3 ) 3 2 1 \sigma\tau = ( 1 2 3 ) 2 1 3 となる。 # \tau\sigma \ne \sigma\tau であることに注意 # 行列と同様、逆にすると異なる結果になる !! [定理] (\sigma\tau)\low = \sigma(\tau\low) 1_n\sigma = \sigma1_n = \sigma \sigma\sigma^{-1}=\sigma^{-1}\sigma=1_n # これらは写像の合成の話なので、当りまえ [定義] S_n を n 次対称群と呼ぶ # この詳しい内容は、2 年生でやるので、省略 # 行列式の話をするため、S_n の必要な性質だけを話す [定理 1.2] イ) \sigma が S_n 全体を重複なく動く時 \sigma^{-1} も S_n 全体を重複なく動く ロ) \tau \in S_n を一つ固定する \sigma が S_n 全体を重複なく動く時 \tau\sigma, \sigma\tau も S_n 全体を重複なく動く # 来週で \sum{\sigma\in S_n} f(\sigma) という形のものを考えたい # イが言えれば、 \sum{\sigma\in S_n} f(\sigma^{-1}) も、「足す # 順番が異なるだけ、同じ結果になる」ことがいえるので、嬉しい。 # 同様にロ言えれば、 # \sum{\sigma\in S_n} f(\tau\sigma) = \sum{\sigma\in S_n} f(\sigma) # となる。 (proof) イ) J : S_n ---------> S_n \in \in \sigma |---> sigma^{-1} を考えると J は、 1 対 1 : なぜなら、「元が異なる場合は、結果が異なる」から 上への対応 : なぜなら、変換で、1 対 1 なら、自動的に上への対応になるから となる。 ロ) L_{\tau}(\sigma) = \tau\sigma R_{\tau}(\sigma) = \sigma\tau とすれば、 1 対 1 かつ 上への対応 ( 上記と同じ ) # 次に、隅置換、奇置換の話をしたいので、更に、きごうを導入する [定義] n 文字の置換で、2 つの文字 ( i 番目と j 番目 ) を交換し、 他の n-2 文字を動かさないようなものを「互換」とよぶ。 # 互換は、書くのが大変なので、省略きごうを導入する i と j の互換 ( 1 2 .. i .. j .. n ) 1 2 .. j ...i .. n を、 (i,j) で表す。 # この形だと n が解らないが、それは、文脈で理解する 特に、 (i,j)(i,j)=1_n なので、 (i,j)^{-1} = (i,j) # 互換の逆置換は、自分自身 [定理] S_n の任意の元は、互換の積で表せる # 互換の例として、 # (1,i) の形 # (i,i+1) の形 # などで表すという方針でやる (proof) # 証明を厳密にやると大変なので、方針だけやる # 基本は、帰納法 (k=1 の時) S_1 = { ( 1 ) } 1 これの唯一の要素 1_n は、0 個の互換の積と考える もし、「0 個の互換の積」がきにいらなければ、n=2 もやる (k=2 の時) S_2 = { ( 1 2 ), ( 1 2 ) } 1 2 2 1 ( 1 2 ) = (1,2)(1,2) # 0 個の互換と考えてもよい 1 2 ( 1 2 ) = (1,2) 2 1 (k=n の時、k=n-1 を仮定) \sigma = ( 1 2 .. n ) \in S_n i_1 i_2 i_n とする。 # 場合分けして (i_n = n の時) \sigma' = ( 1 2 .. n-1 ) \in S_{n-1} i_1 i_2 .. i_{n-1} よって、 \sigma' = \tau_1\tau_2..\tau_k ところが、\tau_i は n を変更しないので、 \simga = \tau_1\tau_2..\tau_k (i_n \ne n の時) # ここらへんから多少省略 \sigma = ( 1 2 .. m .. n ) i_1 i_2 .. n .. i_n (i_n = 1 の時) \sigma = ( 1 2 .. n ) i_1 i_2 .. 1 なので (1, n)\sigma = ( 1 2 ... n ) i_n i_2 ... n よって、 (1,n)\sigma = \tau_1\tau_2..\tau_k 両辺から (1,n) をかければ \sigma = (1,n)\tau_1\tau_2..\tau_k # i_n = 1 の場合に拘ったのは (1,j) を考えたいから (i_m = 1 の時) # かなり省略 (n,m)\sigma が 上記の形で (n,m) が、(1,n)(1,m)(1,n)なのでできる [定理 1.3] S_n \ni σ は何個かの語幹の積で表現されるが、偶数個か奇数個かは σによって定まる。 proof) # 差積Δを使う : 前期にやった !! Δ(x_1, .., x_n ) = Π ( x_i - x_j ) i j ) とすると... Δ^τ と Δ を比較すれば、丁度 (x_i-x_j) の部分だけが交換されるので、-1 が一つ出る # 他の部分は入れ替えると同じものになるか # 二つずつ一緒に符号が変る ここで、σが二つの互換の積で表現されたとする。すなわち、 σ = τ_1 .. τ_k = ρ_1 .. ρ_l となったとき、 Δ^σ = Δ^{τ_1 .. τ_k} = (-1)^k Δ = Δ^{ρ_1 .. ρ_l} = (-1)^l Δ なので、 (-1)^k Δ = (-1)^l Δ よって、 k , l の偶奇性は一致する # 置換を互換の積で表す方法は沢山あるが、偶数個か奇数個かはどちらか一方になる [定義] # この符号は、置換毎に定まるので、これを置換の符号と呼ぶ \sigma が偶数個の互換積で表させる場合は、偶置換 sgn \sigma = +1 \sigma が奇数個の互換積で表させる場合は、奇置換 sgn \sigma = -1 # [注意] sgn\sigma は \pm 1 であり「+, -」、「正、負」はどれも誤り # 必ず、「+1」、「-1」で答えるように !!!! [定理 1.4] sgn 1_n = +1 sgn \sigma^{-1} = sgn \sigma sgn \sigma\tau = (sgn \sigma) (sgn \tau) # 積は分けて良い proof) \sigma = \tau_1\tau_2..\tau_k とすると sgn \sigma = (-1)^k 一方、 \sigma^{-1} = \tau_k...\tau_2..\tau_1 なので、 sgn \sigma^{-1} = (-1)^k = sgn \sigma \tau = \low_1\low_2..\low_l とすれば、 sgn \tau = (-1)^l ここで、 sgn \sigma\tau = sgn \tau_1\tau_2..\tau_k\low_1\low_2..\low_l = (-1)^{k+l} = (-1)^k (-1)^l = (sgn \sigma)(sgn \tau) [問 1] n=3 の場合は略 n=4 の場合は、プリントを配る [問 2] n>1 の時、S_n の偶置換、奇置換の個数は n!/2 proof) \tau = (1,2) \in S_n とすれば、 L_{\tau} : S_n -----> S_n \in \in \sigma |--> \tau\sigma 偶 奇 奇 偶 となる。 つまり、偶置換の個数と奇置換の個数が同じ。 [問 3] \sigma = ( 1 2 .. n-1 n ) n n-1 .. 2 1 の符号を考える。 # なぜ、n が 4 の倍数で考えると簡単になるかは、本当に考えて欲しい # ここでは、既に、答が解っているで、天下り的に与える。 (n=4m の時) \sigma = ( 1 2 .. 2m 2m+1 .. n-1 n ) n n-1 .. 2m+1 2m .. 2 1 となる。 # 全体が偶数なので、真中はない ので、 = (1 n)(2 n-1)..(2m 2m+1) となるので、 sgn \sigma = (-1)^{2m} = 1 (n=4m+1 の時) \sigma = ( 1 2 .. 2m 2m+1 2m+2 .. n-1 n ) n n-1 .. 2m+2 2m+1 2m-1 .. 2 1 となる。 # 全体が偶数なので、真中がある。 ので、 = (1 n)(2 n-1)..(2m 2m+1) となるので、 sgn \sigma = (-1)^{2m} = 1 # 最初普通に考えると n が偶数 (2k) と奇数 (2k+1) にわけたくなるが、 # 更に、k が偶数か奇数かによって答が違うので、結局 4 通りで分ることなる (n=4m+2 の時) \sigma = ( 1 2 .. 2m+1 2m+2 .. n-1 n ) n n-1 .. 2m+2 2m+1 .. 2 1 となる。 # 全体が偶数なので、真中はない ので、 = (1 n)(2 n-1)..(2m+1 2m+2) となるので、 sgn \sigma = (-1)^{2m+1} = -1 (n=4m+1 の時) \sigma = ( 1 2 .. 2m+1 2m+2 2m+3 .. n-1 n ) n n-1 .. 2m+3 2m+2 2m+1 .. 2 1 となる。 # 全体が偶数なので、真中がある。 ので、 = (1 n)(2 n-1)..(2m+1 2m+2) となるので、 sgn \sigma = (-1)^{2m+1} = 1 まとめると 4 で割って、 割切れるか 1 あまれば、+1 2 または 3 余ったら -1 となる。 == 置換の話は来週利用するが、その後は、二年生になるまで使わない。 来週は、行列式の定義の話から始まる。