代数幾何 I 古津先生 (2006/11/29) 行列式の定義を、置換を利用して行った ややっこしいが、一般に n の場合はしょうがない 行列式の性質として、 n 重線型性 交代性 をやった。 # 実は、この「逆みたい」なことをやる # n 重線型性と交代性が成立すれば、ほとんど、行列式 ( 実は行列式のスカラー倍 ) == [定理 2.6] x_1, .., x_n : n 項列ベクトル F(x_1,..,x_n) が、 n 重線型性 交代性 を満せば、 F(x_1,..,x_n) = F(e_1,..,e_n) det(x_1,..,x_n) (12) となる。 proof) x_j = \sum_{i=1}^n x_{ij} e_i ( j = 1 .. n ) と表せる。 F(x_1,..,x_n) = F(\sum_{i_1=1}^n x_{i_1,1} e_i, .., \sum_{i_n=1}^n x_{i_n,n} e_i ) n 重線型性より、 \sum_{i_1=1}^n..\sum_{i_n=1}^n x_{i_1,1}..x_{i_n,n} F(e_{i_1},..,e_{i_n}) ここで、 F(e_{i_1},..,e_{i_n}) を考える。 もし、この、i_1,..,i_n の内、同じものがあれば、これは交代性より 0 となる。 逆に言えば、F(e_{i_1},..,e_{i_n}) が 0 でないのは、i_1,..,i_n が異なる 場合だけである。 # i_1 〜 i_n は n 個あり、全て異なるので、i_1 〜 i_n は 1 〜 n が全部でてくる。 よって、 ( 1 2 .. n ) = \sigma \in S_n i_1 i_2 .. i_n となる すなわち、上記の式は、 \sum_{\sigma \in S_n} x_{\sigma{i},1}..x_{\sigma{n},n} F(e_{\sigma(1)},..,e_{\sigma(n)}) となる。 F(e_{\sigma(1)},..,e_{\sigma(n)}) を考えると、交代性より sgn \sigma F(e_1,..,e_n) となる、すなわち、上記の式は \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma x_{\sigma{i},1}..x_{\sigma{n},n} F(e_1,..,e_n) これは、行列式の定義と微妙に異なる ( x の添字が逆 )。これは、転 置の行列式になっているが、先週学んだように、転置しても行列式の値 は変らないので、これは、 F(e_1,..,e_n) det(x_1,..,x_n) に等しい。 # 教科暑によっては、この形で行列式を定義するものもある。 # 即ち、F が多重線型性と交代性を満す時に、det(A) = F(A)/F(E) とする [例] (バンデルモンドの行列式) | 1 1 .. 1 | | x_1 x_2 .. x_n | (※) | x_1^2 x_2^2 .. x_n^2 | = Δ(x_1,..,x_n) (差績) | .. | | x_1^{n-1} x_2^{n-1} .. x_n^{n-1} | # これは、 n 変数の多項式 # 証明は帰納法でもよいが、ここでは、剰余(因数)定理を用いて証明する proof) i < j とする x_i = x_j ならば、(※)の左辺 i 列目と j 列目が等しいので、0 となる すなわち、左辺は、(x_i-x_j) で割切れる ( 剰余定理 ) i,j は任意なので、左辺は、差績で割ることができる。 次に次数を比較すると、左辺の次数は、n(n-1)/2 であり右辺の次数も同じである よって、商は定数項 更に、x_2 x_2^1 .. x_n^{n-1} の項目の次数を比較すると、共に 1 左辺は sgn 1_n 左辺は、差績の績で、左側だけの項を取らないといけない。 結局、左辺=右辺 # これは、良く使うので、覚えておくように !! # 次の定理もよく利用する。 [定理 2.7] |AX| = |A| |X| # 2 次では、具体的にやってみせた # 3 次では、大変なのでサボった # n 次では、重要なので、やってみる。証明は二通り示す。 proof) [その 1] ( 定理 2.6 を利用する方法 ) X=(x_1,..,x_n) とする。 この時、 F(x_1,..,x_n) = det(A x_1,..,A x_n) # これの左辺は |AX| とする。 すると、この F は 多重線型性 交代性 を満すので、定理 2.6 より F(x_1,..,x_n) = F(e_1,.,e_n) det(x_1,..,x_n) ところが、 F(e_1,..,e_n) = det(Ae_1,..,Ae_n) = |A| よって、 |A||X| = |AX| proof) [その 2] (問題 : 行列式の定義に基いて証明する) AX = B = (b_ij) とする。 |AX| = |B| = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma b_{1,\sigma(1)}b_{21,\sigma(2)}..b_{n,\sigma(n)} (行列式の定義) =\sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma (\sum_{j_1=1}a_{1,j_1}x_{j_1,\sigma(1)}).. (\sum_{j_n=1}a_{1,j_n}x_{j_n,\sigma(n)}) = \sum_{j_1}^n..\sum_{j_n}^n a_{1,j_1}..a_{n,j_n} (\sum_{j_1=1}x_{j_1,\sigma(1)}).. (\sum_{j_n=1}x_{j_n,\sigma(n)}) # ここでも、行列式みたいなものが出てくる ここで、 j_1,..,j_n の中で同じものがあれば、0 になってしまうので 0 でないものは、 \tau = ( 1 .. n ) j_1 .. j_n としたときの、 sgn \tau |X| # この問を一人でやらせるとなかなかできない(レポートにしてもだめ) # 以下、行列式の計算に利用する性質を学ぶ [定理 2.8] 対称区分けをしてみた結果次のようになったとする A = ( A_11 | A_12 ) または、 ( A_11 | O ) ------+----- ------+----- O | A_22 A_21 | A_22 の時、 |A| = |A_11| |A_22| # 基本変形で、左下に 0 を集めれば、行列式の計算が簡単になる proof) ( 一方の場合は、他方の場合の転置で、転置の行列式は同じだから一方だけを示す ) まず、A_22 = E_n の場合を考える m n A = (a_ij) = ( A_11 | 0 ) ------+--------- A_21 | 1 0 .. 0 | 0 1 . 0 | 0 0 .. 1 ここで、 |A| = \sum_{\sigma \in S_n) sgn \sigma a_{1,\sigma{1}} だが、後の方は、\sigma が次のような特別な場合以外は、0 になってしまう。 \sigma = ( 1 .. m m+1 .. m+n ) i_1 i_m m+1 .. m+n # m + 1 以後は、変化しない これは、S_m の要素と考えてよい よって、上の式は |A| = \sum_{\sigma \in S_m) sgn \sigma a_{i,\sigma{i}} これは、定義により、 |A_11| に等しい。 即ち |A| = |A_11| = |A_11| 1 = |A_11| |E_n| となるので、A_22 が E_n の時は示せた。 A_22 が一般の時、 A_22 = X = ( x_1,..,x_n ) の時、 F(x_1,..,x_n) = | A_11 O | | A_22 X | とすると、 F(x_1,..,x_n) は多重線型性と、交代性を満す ( なぜなら、 X の上は O なので、x_i を上の要素まで含めて考えても、成分が 0 なので、和に影響しない ) よって、定理 2.6 より F(x_1,..,x_n) = F(e_1,..,e_n) det(x_1,..x_n) = |A_11| |X| # 前半でやった よって、一般の場合も示せた。 # これによって、行列式の次数を下げることができるので、大変便利 # 更に、これの特別な次の場合も便利 [系 2.9] イ) | a_11| a_12 .. a_1n | | ----+-------------- | = | 0 | a_22 .. a_2n | a_11 | a_22 .. a_2n | | .. | .. | | .. | | 0 | a_n2 .. a_nn | | a_n2 .. a_nn | ロ) | a_11 a_12 .. a_1n | | 0 a_22 .. a_2n | = a_11 a_22 .. a_nn | .. 0 .. | | 0 0 0.. a_nn | (上三角行列) # cf. 以前に対角行列の行列式は学んだ == # 次に、行列式と rank の関係をやりたいが、時間がないので、準備だけ [定義] ( p 次小行列 ) A : (m.n) 型とする 行と列から、それぞれ p 個の行と、列を選び、その行、列に所属する要素だけを抜き出す => p 次行列ができる p 次行列式の個数は、行と列の取りかたが色々 ( mCp, nCp ) あるので、沢山 ( mCp \times nCp 個 ) ある。 [例] A = ( a_11 a_12 a_13 a_14 ) : (3,4) 行列の 2 次行列は 18 個ある a_21 a_22 a_23 a_24 a_31 a_32 a_33 a_34 a_41 a_42 a_43 a_44 # 具体的な例は省略 ## 「具体的なものを並べる」ことは「場合分け(虱つぶし)」の練習になる # これを何に使うかというと、次の定理のために利用する # => また、逆行列式を計算するにもやる [定理] A の rank は、A の小行列式の中で 0 でない最大の次数に等しい == 来週は、上記の定理の証明のあと、具体的な行列式の計算方法を学 => そのためには、[系 2.9] を使えるようにしておくこと !! 621C