代数幾何 I 古津先生 (2006/12/06) 前回、最後に、「小行列式」をやった == [定理 2.10] A : (n,m) 型 A の階数は A の 0 でない小行列式の最大次数に等しい # これを利用して、rank を計算することはないが、証明の中で、 # rank の定義代りに、こちらを利用することがある。 即ち、rank A = r = r(A) とすると、 A の r 次小行列式で 0 でないものが存在し、r より大きい次数の小行列式は全て 0 proof) A の 0 でない小行列式の最大次数を s(A) とおく r(A)=s(A)を示せばよい。 (1) A が標準形の時 A = F_{m,n}(r) なので、 左上隅の部分は E_r となり、これは行列式は 0 でない 一方、r より多くとると、必ず、0 列あるいは 0 行を含める 必要があるので、行列式は 0 になってしまう。 よって、 s(A) = r = r(A) (2) A 標準形でない時 r は基本変形で変らない ことは既に示してある s も基本変形で変らない ことが示めせれば、全ての場合で r(A) = r(F_{m,n}) = r = s(F_{m,n}) = s(A) となるので、証明が済んだことになる。 そこで、 s も基本変形で変らない事を示す。 基本変形は 6 つあるので、その全てで示す。 A の中から、0 でない小行列Δを取る A を基本変形した結果が B の時、B に対する小行列Δ'が取れる事を示す (2-1) 列(行) の順序を入れ替える もし、交換される i, j が共に Δの中の場合 Δ' = -Δ \ne 0 もし、交換される i, j が共に Δの外の場合 Δ' = Δ \ne 0 もし、交換される i が Δの中で j がΔの外の場合 Δ' として、i 番目ではなく、移動した j 番目取る Δ' = \pm Δ \ne 0 つまり、A で 0 でないΔがとれれば、B でも 0 でないΔ'が取れるので s(B) >= s(A) が言える。 (2-2) ある行(列) i に 0 でない数をかける もし、i がΔに入っている場合は、Δ' が線型性を持つので Δ' = c Δ = \ne 0 もし、i がΔに入っていない場合 Δ' = Δ = \ne 0 (2-3) ある行(列) i に j 行(列) の 0 でない数倍を加える もし、i がΔに入っていない Δ' = Δ = \ne 0 もし、i がΔに入っていて j も入っている Δ' は Δに基本変形した形になるわけだから Δ' = Δ = \ne 0 もし、i がΔに入っていて j が入っていない Δ', Δ の i 行(列)目を j 行(列) に置き換えたものを Δ_1', Δ_1 とする。 Δ' は、Δ の i 番目違いものなので、 Δ_1' = Δ_1 となる。 これを利用して、考えると、 Δ' = Δ + cΔ_1 となる。 すなわち、 Δ = -Δ' + cΔ = -Δ' + cΔ' ここで、左辺は、0 でないので、右辺の一方は 0 でない。 したがって、結局 s(B) \ge s(A) 基本変形は、可逆なので、 s(A) \ge s(B) よって、 s(A)=s(B) [系 2.11] A : n 次正方行列 A : 正則 <-> |A| \ne 0 proof) A : 正則 <-> r(A) = n <-> s(A) = n <-> |A| \ne 0 # 2.10 はそれほど使わないが、2.11 は良く利用する == 行列式の展開 # これは非常によく使う # これを使えば 5 次の行列式は、4 次で利用して計算できる。4 次 は 3 次、 # 3 次 は 2 次と次元を落して行けば、どんな次数の行列式も計算できる。 [定義] A = (a_ij): n 次 第 i 行、第 j 列を除いてできる n - 1 次小行列式を A の第 (i,j) 小行列 ( 後で証明の都合で Δ_{i,j} で表すが一般的でない ) といい、それに符号(-1)^{i+j} を掛けたものを A の第 (i,j) 余因子と呼ぶ( \~a_ij で表す ) [定理] A ( a_ij ) : n 次とすると |A| = a_1j \~a_1j + a_2j \~a_2j + .. + a_nj \~a_nj ( j = 1 .. n ) ( 第 j 列に関する行列式の展開 ) |A| = a_i1 \~a_i1 + a_i2 \~a_i2 + .. + a_in \~a_in ( i = 1 .. n ) ( 第 i 行に関する行列式の展開 ) proof) # 行列式は転置しても変らないので、ここでは、一方(列の展開)だけを示す。 [j = 1 の時] 1 列目のベクトルを a_11 a_11 0 0 ( a_21 ) = ( 0 ) + ( a_21 ) + .. + ( 0 ) .. .. .. .. a_n1 0 0 a_n1 と、複数のベクトルの和で表す。 すると、行列式には線型性があるので、 |A| = | a_11 a_12 .. a_1n | | a_21 .. | | .. | | a_n1 a_nn | = | a_11 a_12 .. a_1n | | 0 .. | | .. | | 0 a_nn | + | 0 a_12 .. a_1n | | a_21 .. | | .. | | 0 a_nn | ... + | 0 a_12 .. a_1n | | 0 .. | | .. | | a_n1 a_nn | それぞれ、行の交換を利用して、一列目の 0 でない要素が、一番上にするには、 隣合う行の交換をそれぞれ 0, 1, .., n-1 回行うと、 = | a_11 a_12 .. a_1n | | 0 .. | | .. | | 0 a_nn | - | a_21 .. | | 0 a_12 .. a_1n | | .. | | 0 a_nn | ... (-1)^{n-1} | a_n1 a_nn | | 0 .. | | .. | | 0 a_12 .. a_1n | # これは定理 2.9 の形 = a_11 Δ_11 - a_21 Δ_21 + .. (-1)^{n-1}a_n1 Δ_n1 ここで、1 = (-1)^2 なので、両辺にかけて = a_11 (-1)^{1+1}Δ_11 +(-1)^{2+1} a_21 Δ_21 + .. (-1)^{n+1}a_n1 Δ_n1 = a_11 \~a_11 + a_21 \~a_21 + .. + a_n1 \~a_n1 よって、示せた。 [一般の j>1 の時] j=1 の場合の結果を利用したいので、 j 列目を一番前にもって来る。そのために、n-1 回 の列の交換をすれば |A| = (-1)^{j-1} | a_1j .. | | a_2j .. | よって、[j=1 の場合] の結果を利用し、 = (-1)^{j-1} ( a_1j (-1)^{1+1}Δ_1j +(-1)^{2+1} a_2j Δ_2j + .. (-1)^{n+1}a_nj Δ_nj ) 全体に (-1)^2 をかけて = ( a_1j (-1)^{1+j}Δ_1j +(-1)^{2+j} a_2j Δ_2j + .. (-1)^{n+j}a_nj Δ_nj ) = a_1j \~a_1j + a_2j \~a_2j + .. + a_nj \~a_nj # !! 4 次、 5 次の行列式は計算できるようにしておく [例] Δ = | 3 -2 5 1 | | 1 3 2 5 | | 2 -5 -1 4 | | -3 2 3 2 | これを、(2,1) 成分を要に第一列を掃き出す # R の変形をしても行列式が変らない !! Δ = | 0 -11 -1 -14 | = 1 × (-1)^{2+1} | -11 -1 -14 | | 1 3 2 5 | | -11 -5 -6 | | 0 -11 -5 -6 | | 11 9 17 | | 0 11 9 17 | 2 行目で展開すると Δ = = 1 × (-1)^{2+1} | -11 -1 -14 | | -11 -5 -6 | | 11 9 17 | # 符号を忘れることが多い !! (毎年、多いので注意!!) # 本当は 4 つの項目が出るのだが、係数が 0 となるものが三つある # ので、結局、一つだけのこることになる。 多重線型性を利用して、係数を外に出す。 = -11 | 1 1 14 | | 1 5 6 | | 1 9 17 | = -11 | 1 1 14 | | 0 4 8 | | 0 8 3 | 第一列で展開 = -11 ・(-1)^{1+1}・1 | 4 -8 | | 8 3 | = -836 # 行列式の時は 「=」で結んでよい # それ以外の場合は、「→」で結ぶ ( 「=」で結んだら減点 !! ) | 3 -5 2 10 | | 2 0 1 -3 | | -2 3 5 2 | | 4 -2 -3 2 | # 掃き出してから、展開すると、個数が減る処がポイント # => 考えなしに展開すると、数がふえて大変 # 変数を含む場合は、無理に、掃き出さない # => 無理に掃き出そうとすると未知数を含む割り算がでるので大変 # => 未知数を含む場合は、一つじゃなくても展開できるようにしておく