代数幾何 I 古津先生 (2008/04/17) # 最初は高校の復習 ## ただ、ここらへんは、「解っているもの」として扱うので、ここできっちり抑えておくこと ベクトル a = PQ 方向と大きさを持つ 出発点は特にきまっていないので、 色々なベクトルを、同じ方向と大きさを持てば、同じベクトルとみなす ただし、出発点に拘りたい場合は、 矢印の出発点を「始点(P)」、お尻の部分の点を「終点(Q)」と呼ぶ 零ベクトル 大きさが 0 方向は「ない」 特別なベクトル # 色々と例外扱いしなければならないので不便だが # あるのだからしかたがない 始点と終点が同じベクトル 0 = PP = QQ 平面ベクトルや空間のベクトルは図形にかけるので、「幾何ベクトル」と呼ぶ # 成分が 4 つ以上になったり、複素数になったりすると図に描けない !! # 図にかけるので、「幾何」ベクトル == [定義] V^2 : 平面ベクトル全体の集合 V^3 : 空間ベクトル全体の集合 # ここまでは、ベクトルを定義しただけ # 今度はベクトルの演算(操作)を考える a, b \in V^3 に対して、 点 P を取り、b の始点 Q を a の終点 Q と重ねることにより a = PQ b = QR と、点 R が定まる。 この時、 a + b の和 a + b を PR と定める。 [定理 1.1] a + b = b + a (a+b) + c = a + (b+c) a + 0 = a [proof] (1) # 平行四辺形の性質 ( つまり「図形の性質」) を利用する 先の P, Q, R に対して、PR が平行四辺形の対角線になるように S を定める すると、平行四辺形の性質より、対辺の長さ(と方向)が同じなので、 PR = PQ + QR = a + b = PS + SR = b + a (2) a, b, c を辺とする四面体を考える 後は図形の性質から.. (3) a = PQ = PQ + QQ = a + 0 # これは、証明できなくても、「成り立つ」とおもって使ってよい [定義] a = PQ に対して、PQ の「逆ベクトル」と呼び -a で表す a + (-b) を a-b と書く [定理] a + (-a) = 0 [定義](定数倍) # 平面、空間では、定数倍といっても実数倍しか考えてないことに注意 a \in V^3, c \in R に対して、a の c 倍を定める # c が正、負、零の三つの場合に分けて考える c>0 の時 c a は、a と同じ方向で大きさが c 倍 c<0 の時 c a は、a と逆の方向で大きさが |c| 倍 c=0 の時 c a は 0 ベクトル # 実数ならば何でもよいので \sqrt{2} 倍なども考える # 一般のベクトルの場合も、最初に、和と定数倍を定義してから始める # 今回はその一番簡単な場合 # これも、高校と同じだったので、出てくる性質も同じ [定理 1.2] c ( a + b ) = c a + c b (c + d) a = c a + d a (cd) a = c (d a) [proof] (1) a + b できる三角形と、c 倍した三角形 (相似形) を考える => 三角形の相似の性質から (1) が出る (2), (3) => 直線上の図を書き込んで確認する # ここまでは座標を考えなかったが、ここから座標を入れる # 本当は、色々な座標が入れられるのだが、今は面倒なので、一つだけ入れて、変えない # 「直交」も、当然のようだが、実は、直交でない座標を扱うことがあるので、一応、明言する ## 後で、本当に色々な座標を扱うが、一年生の間は、今回いれる座標一つだけを考えればよい。 空間に「直交座標系」を一つ固定する。 点 P の座標を ( x_1, y_1, z_1 ) 点 Q の座標を ( x_2, y_2, z_2 ) 点 P' の座標を ( x_1', y_1', z_1' ) 点 Q' の座標を ( x_2', y_2', z_2' ) で、 PQ = P'Q' の時、 x_2 - x_1 = x_2' - x_1' y_2 - y_1 = y_2' - y_1' z_2 - z_1 = z_2' - z_1' が言える。 ベクトルは移動できるので、P(始点), Q(終点) は一つに定まらないが、 その座標の差は、定まるので、それを用いて、ベクトルを表す。 即ち、 x_2 - x_1 a = ( y_2 - y_1 ) z_2 - z_1 という形で表す。それぞの座標の差を、このベクトルの成分と呼ぶ # 大学では、ベクトルは縦で表すことに注意 ( ここは高校と異なる !! ) # 次は位置ベクトルの話 { 空間の点 } ----> V^3 \in \in P x (x,y,z) |---> OP = ( y ) z # ただし、O は原点 (0,0,0) に対応している 空間の点 P とベクトル OP が一対一で、上への対応になっている この時、P に対応するベクトル OP を P の位置ベクトルと呼ぶ x x' a = ( y ), b = ( y' ) の時、 z z' x + x' a + b = ( y + y' ) z + z' t x t a = ( t y ) t y となる。 # 証明は、それぞれ軸への射影を考える [定義] 単位ベクトル 以下の特別なベクトルを単位ベクトルと呼ぶ 1 0 0 e_1 = ( 0 ), e_2 = ( 1 ), e_3 = ( 0 ), 0 0 1 任意の x \in V^3 は、これらの単位ベクトルの一次(線型)結合として 一意的に表すこことができる # 「一意的に」とい言葉は、大学では、「一通り」の意味 (proof) x a = ( y ) とすれば、 a = x e_1 + y e_2 + z e_3 である。 z [定義] (線型独立) <<平面の場合>> 零ベクトルでないベクトル a, b \in V^2 が平行でない時、 a, b は線型(一次独立) [別表現] a = OP, b = OQ としたときに、O,P,Q が一直線上にない時 # この表現だと、零ベクトルを区別しなくてもよいので便利 <<空間の場合>> 零ベクトルでないベクトル a, b, c \in V^3 が同一平面の矢印で表示されない時 a, b, c は線型(一次独立) [別表現] a = OP, b = OQ, c = OR としたときに、O,P,Q, R が同一平面上にない時 [例] e_1, e_2, e_3 は独立 [定義] (線型従属) 線型独立でないときには「線型従属」であると呼ぶ [定理] a, b, c が独立ならば、 \forall x \in V^3 は u a + v b + w c の形で、一意に書くことができる。 # これの証明は今は面倒なので、後回しにする [問 1] a = OP, b = OB, PQ の中点を M としたとき OM = (a+b)/2 である。 (proof) # これは図形の性質から明かだが、敢て、今回学んだことだけで示す OM = OP + PM = OP + 1/2 PQ = OP + 1/2 ( b - a ) = (a + b)/2 # どの部分が何処に出ていたかを確認しよう !! [問 2] 三角 P,Q,R の重心を G としたとき、 OP = a, OQ = b, OR = c ならば OG = ( a + b + c ) / 3 (proof) # これも高校で学んだことだが、忘れていたらこの時に覚える !! # こちらは、今日学んだことだけでやろうとすると、ちょっと面倒 # そこで、幾何学の知識をちょっと利用する # => G が、 MR を 1 対 2 に分割するという性質を利用すると簡単 OG = OM + MG = OM + 1/3 MR = OM + 1/3 ( OR - OM ) = 2/3 OM + 1/3 OR = 2/3 ( 1/2 ( a + b ) ) + 1/3 c = ( a + b + c ) / 3 [定義] (長さ) ベクトル a の 長さ/大きさ/ノルム を || a || または | a | で表す。 # ノルムの時は || a || を、長さ/大きさの時は | a | を使う事が多い # これらはどちらも同じと考えてよい ( ここでは区別する必要がない ) [定理] x a = ( y ) の時、 |a| = \sqrt{x^2+y^2+z^2} z # proof: 三平方の定理から [定義] (内積) a と b との交角 \thita ( 0 \ge \thita \ge \pi ) とする時 a と b の内積を |a| |b| \cos{\thita} で定義する。 実は余弦定理より = 1/2 { |a|^2 + |b|^2 - |a-b|^2 } なので、こちらを定義とする場合もある # こちらだと「角度」がいらない 内積は、 (a, b) で表す。 # a ・ b というやりかたもあるが、この講義では上の形 [定理] (a, a) = |a|^2 [定理] x x' a = ( y ), b = ( y' ) z z' の時、 (a, b) = x x' + y y' + z z' である。 [定理] \cos{\thita} = \frac{(a,b)}{|a| |b|} [定義] a, b が直交する ( a 垂直 b ) <-> \cos{\thita} = 0 <-> (a,b) = 0 [定理 1.3] |(a,b)| \ge |a| |b| |a+b| \ge |a| + |b| c(a,b) = (c a, b) = (a, c b) (a, b_1 + b_2) = (a, b_1) + (a, b_2) (a_1 + a_2, b) = (a_1, b) + (a_2, b) (a,b) = (b,a) [問] 1 a = ( 1 ) との交角が \pi/6 1 1 b = ( 1 ) との交角が \pi/4 4 x である、長さ 1 のベクトル a = ( y ) を求めよ。 z [答] (まず、上記の三つの条件を式で表現すると..) (a,x) = |a| |x| \cos{\pi/6} (b,x) = |b| |x| \cos{\pi/4} |x| = 1 これより、 x + y + z = \sqrt{3} 1 \sqrt{3}/2 = 3/2 x + y + 4z = \sqrt{18} 1 \sqrt{2}/2 = 3 x^2 + y^2 + z^2 = 1 が成立するので、これから x, y, z を求める。 # 二次の項があるので、一次方程式ではないが、変数個数も 3 , 式も 3 なので答がでそう。 # まず、上の一次の式を利用して.. ( このような時は低次の式からやるのが良い) z = 1/2 x + y = 1 三つ目の式から、z, y, を消すと x^2 - x + 1/8 = 0 これから x = (2 \pm \sqrt{2})/4 y = (2 \mp \sqrt{2})/4 答は二つ。 == [まとめ] まだ、ここまでは高校と同じ内容。 大事なのは、「表現」と「言葉」 [伝言] コンピュータ概論 来週から、 1211 で行う Note-PC を毎回もってくる