代数幾何 I 古津先生 (2008/06/05) # 前回の話 {二次行列} --> { V^2 の線型変換 } \in \in A |--> T = T_A これは、逆もいえる T_A から A を得るには、T(e_1) と T(e_2) を計算すれば良い A = ( T(e_1), T(e_2) ) # 今回は、これの 3 次元(空間版) # 空間の話をするために、まず、空間の線型変換の話から考える == [定義] (空間の線型変換) V^3 の変換 T が、 T(x+y) = Tx + Ty T(c x) = c Tx を満す時に T を V^3 上の「線型変換」と呼ぶ。 # この条件は、平面の時と同じ # => これからも何どもでてくる [定義] (三次行列) a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) a_31 a_32 a_33 # 次元が上ると要素が多くなるので大変 [定義] (行列とベクトルの積) x v = ( y ) の時、 z a_11 x + a_12 y + a_13 z Av = ( a_21 x + a_22 y + a_23 z ) a_31 x + a_32 y + a_33 z [定義] (行列と行列の積) b_11 b_12 b_13 B = ( b_21 b_22 b_23 ) = ( b_1, b_2, b_3 ) b_31 b_32 b_33 の時、 c_11 c_12 c_13 AB = ( c_21 c_22 c_23 ) = ( A b_1, A b_2, A b_3 ) c_31 c_32 c_33 とすれば、 c_ik = \sum_{j=1}^3 a_ij b_jk となる。 # 数が多くなっても、\sum を利用すれば、毎回同じ # 実は、平面の時も \sum でかけるし、また、平面の時にやったことは \sum で成立 [定理] (空間版) AB(x) = A(Bx) A(BC) = (AB)C [定理] (空間版) A(x+y) = Ax + Ay A(cx) = cAx [定理] T_A x = A x とすれば、 T_A は線型変換 # 平面と同様、線型変換と、行列が対応する {三次行列} --> { V^3 の線型変換 } \in \in A |--> T = T_A || (T e_1, T e_2, T e_3 ) # 単位ベクトルの取りかたは、右手系と左手系がある # どちらを選んでも同じ ( 決めておく必要はある ) # 図を書く時には変ってくる # テキストでは、右手系なので、講義でも右手系を採択する [線型変換の例] 原点に関する点対称 T x = - x に対応する行列は、 -1 0 0 A = (T e_1, T e_2, T e_3) = ( 0 -1 0 ) = -E 0 0 -1 # 三角形を変えない変換は、線型変換 z 軸の回り角αの回転 ( x 軸から y 軸の方向を正とする ) \cos α T e_1 = ( \sin α ) 0 -\sin α T e_2 = ( \cos α ) 0 0 T e_3 = ( 0 ) 1 より、 \cos α -\sin α 0 A = ( \sin α \cos α 0 ) 0 0 1 となる、 # 右手系の時の回転は、 # e_1 が e_2, e_2 が e_3, e_3 が e_1 になる方向を正の回転の方向 # と决めることが多い x 軸の回りの回転 1 0 0 A = ( 0 \cos α -\sin α ) 0 \sin α \cos α y 軸の回りの回転 \cos α 0 \sin α 0 A = ( 0 1 0 ) -\sin α 0 \cos α 0 [定義] (ベクトルへの射影子) a \in V ( \ne 0) a への射影子 T T x = \frac{(a,x)}{(a,a)}a # 平面の時とまったく同じ ( ベクトルが二つあるというだけなので.. ) # 考え方も式も同じ (図形が変っていない) [定義] (平面へ射影子) u, v \in V : 線型独立 S を u, v の張る平面への射影子 # 原点を通って、u, v の張る平面 x' を u, v の張る平面への正射影 # u, v だと表現が大変なので、u, v に垂直な法線ベクトルを利用する 上記の平面法線ベクトルを a とすると、 S x = x - \frac{(a,x)}{(a,a)}a = x - T a # この式は、点と平面の距離の計算と同じ == [例] 次の行列に対応する線型変は何か ? (イ) -1 0 0 ( 0 1 0 ) 0 0 -1 e_1 -> - e_1 e_2 -> e_2 e_3 -> - e_3 これは、 y 軸に関する、線対称 あるいは y 軸の回りの 180 度の回転 (ロ) 省略 ( x 軸に関する回転なので.. ) (ハ) 0 1 0 ( 0 0 1 ) 1 0 0 e_1 -> e_3 e_2 -> e_1 e_3 -> e_2 # これは、回転くさい # 回転ならば、軸(動かないもの)があるはず。.. e_1 + e_2 + e_3 を考えてみると... e_1 + e_2 + e_3 -> e_1 + e_2 + e_3 と変化しない ( これが軸だ.. ) # 回転なので、軸がわかれば、あとは、回転の量 三度回転すれば、元に戻る 回転角度は、-120 ( か、 240 ) # よって結論 x = y = z を中心に -120 (240) 度の回転 == [射影子の行列] p a = ( q ) ( \ne 0 ) \in V^3 への射影子 T の行列を考える r A = ( T e_1, T e_2, T e_3 ) a T e_1 = \frac{(a,e_1)}{(a,a)}a = \frac{a}{a^2+b^2+c^2} ( b ) c よって、 a^2 ab ac A = \frac{1}{a^2+b^2+c^3} ( ab b^2 bc ) ac bc c^2 [平面への射影子の性質] a, b, c (\ne 0) \in V^3 が互いに直交する T : a への正射子 S : b, c の張る平面への正射子 # a は、b, c の張る平面の法線ベクトルになっていることに注意 T x = \frac{(a,x)}{(a,a)}a S x = x - \frac{(a,x)}{(a,a)}a (1) T^2 = T, S^2 = S # これは、図を描けば当りまえだが、式でもやっておく T^2 x = T(T x) = \frac{(a,T x)}{(a,a)}a = \frac{(a,\frac{(a,a)}{(a,x)}a)}{(a,a)}a = \frac{(a,a)}{(a,x)}\frac{(a,a)}{(a,a)}a = \frac{(a,a)}{(a,x)}a = T x # S^2 の方も同様 (2) TS=ST=O # これも図形から明かなのだが、やはり、計算でやってみる S x = x - T x なので TS x = T ( S x ) = T ( x - T x ) = T x - T^2 x = T x - T x = 0 # 射影子の話は、一般的な形で、後期後半にもう一度やる == # 残りの時間で行列式の話 # 真面目にはなしをすると、大変なので、実際には、後期の後半でまとめてやる ## 一般論を展開すると、要素が多いので大変。今回は、平面と空間だけでやる [定義] (行列式) A = ( a b ) = ( u, v ) c d の時、 ad - bc を A の「行列式」と呼び、 | a b |, |A|, det A, det(u,v) c d などで表す。 # 二次元だと、「襷掛け」となる # +が一つ、−が一つ # 三次元だと、 # +が三つ、−が三つ # 次元があがると、どんどん、複雑になる [定理] u, v が独立 <-> det(u,v) det(u,v) = - det(v,u) # 反対称性 det(u+u',v) = det(u,v) + det(u',v) # 和が外にでる det(c u,v) = c det(u,v) # 定数倍が外に出る # この二つの性質は、前のベクトルに対する線型性を意味する # 更に、上記の反対称性を利用すれば、後のベクトルに対して、線型性がいえる [定理] ( 行列式の積が分けられる ) |AB| = |A| |B| # この性質は、行列式と大変重要な性質 # これは、二次元だけでなく一般の n 次元で成立する # 一般の n 次元で、まじめにやると大変なので、今回の 2 次元だけ真面目にやって、いか n 次元は、省略する この ad-bc = |A| という式は以前にでてきた 実は、ベクトル u,v の作る平行四辺形の面積が、実は |ad-bc| = | |A| | |A| の図形的な意味は、u,v の作る平行四辺形の面積に符合のついたもの 符合はどうやって決るのか ? u と v の関係で決る e_1 と e_2 で考えると (e_1, e_2) = 1 (e_1, -e_2) = -1 なので、 e_1 から e_2 の角度は 90 度なので正 e_1 から -e_2 の角度は 270 度なので負 と考えることができる 一般に u, v の為す角度が 0 から 180 なら正 180 から 360 なら負 # 行列式のもう一つの図形的解釈 X = (x_1, x_2) とすると、 |AX| = | A(x_1,x_2) | = | (Ax_1, Ax_2) | || = det( A x_1, A x_2 ) |A||X| = |A| det(x_1,x_2) これから、 |A| は、x_1 と x_2 の作る平行四辺形の面積 と A x_1 と A x_2 の作る平行四辺形の面積 の比 # すこしいい加減だが # 全ての図形は、三角形の組み合わせで表すことができる ( 円なども !! ) |A| は、A で図形を移した時の面積の拡大率を表す # ただし、正負があるので、絶対値を付てのはなし == # 次に「ベクトル積」をやるが、ちょっと面倒なので、次回に回す # 注意として、「ベクトル積」は「三次元だけの考え方」であることを述べておく