代数幾何 I 古津先生 (2008/06/12) # 少し(10 分くらい)遅刻した == # 二次元のクラーメル (行列式の応用) [定理] (クラーメルの公式) ad-bc\ne0 の時 a x + b y = e c x + d y = f の連立方程式は、 A = ( a b ) c d v = ( x ) y u = ( e ) f の時、 A v = u と表現でき、その時の解は、 x = \frac{|e b|}{|a b|} f d c d y = \frac{|a e|}{|a b|} b f c d と一意に定まる。 == [定義] (外積) a,b \in V^3 に対して、以下の条件を満すベクトル c がただ一つ定まる (1) c は、a, b 共に垂直 (2) a,b,c 右手系 (3) |c| は、a,b のなす平行四辺形の面積 # ただし、a,b が平行の時は、c = 0 となる。 これを、a,b の「外積(ベクトル積)」とよび、a \times b で表す。 # この概念は、「三次元固有の概念」であることに注意 !! [定理] (c a) \times b = c (a \times b) = a \times ( c b ) a \times b = - b \times a # 足し算は大変なので、あとでやる ( 成分でやるほうが簡単なので.. ) # 図形的な意味(平行四辺形の面積)でやっていると大変なので # !!! 外積は計算できるようにしておくこと [定理] ( 外積の成分表示 ) a a' u = ( b ), u' = ( b' ) c c' の時、 | b b' | b c' - c b' | c c' | u \tims u' = ( | c c' | ) = ( c a' - a c' ) | a a' | | a a' | a b' - b a' | b b' | proof) 右辺を v とすると、 (u, v) = .. = 0 すなわち、u と v は垂直。同様にして、u' とも垂直 u = e_1, u' = e_2 とすれば、 v = e_3 なので、右手系 # 右手系から左手系に移るには、途中で同一平面上になる必要がある # v の作り方から、v と u,u' が同一平面上になることはない u, u' の作る平行四辺形の面積を S とすると |S|^2 = |u|^2 + |u'|^2 - (u,u')^2 これを計算すると |S|^2 = |v|^2 となる。 以上により、三つの性質を満すので、v は、u と u' の外積 [定理] (a+a') \times b = (a \times b) + (a' \times b) a \times (b+b') = (a \times b) + (a \times b') proof) 成分の計算から明か # 次に、この外積を利用して、三つのベクトル a,b,c が作る平行六面体の体積を求める # この三つのベクトルは右手系とは限らないことに注意 # => 右手系と左手系では、符合が変る 右手系と左手系の違いに注意しながら、体積 V を計算すると V = S x d # S は a, b の作る平行四辺形 # d は、c から a,b に下した垂線の長さ = |a \times b| |c| |\cos{θ}| # θ は、S と b の為す角度 # |\cos{θ}| にするには、 # 右手系 0<θ< \pi (\cos{θ}>0) # 左手系 \pi<θ<2\pi (\cos{θ}<0) # で符合が変るため # 体積は常に正なので、絶対値を付ける 更に、θ を a \times b と c の為す角度とすれば、 (a\times b, c) = |a \times b| |c| \cosθ # この式は、a,b,c が右手系なら正、そうでなければ負になる となる。 # 今度は、これを利用して三次元の行列の行列式を計算する [定義] (三次行列の行列式) a_11 a_12 a_13 A = ( a_21 a_22 a_23 ) = ( a_1, a_2, a_3 ) a_31 a_32 a_33 の時、 (a_1 \times a_2, a_3) を 行列 A の「行列式」と呼び、 | a_11 a_12 a_13 | |A|, | a_21 a_22 a_23 |, det A, det(a_1,a_2,a_3) | a_31 a_32 a_33 | などで、表す。 # この値は、ベクトルが右手系か、左手系かによって符合が異なることに注意 [定理] a_1, a_2, a_3 のいずれか一つを交換すると符合が変る # 右手系と左手系が変るから [定理] det( a+a', b, c ) = det(a,b,c)+det(a',b,c) det( k a, b, c ) = k det( a, b, c ) # det の中身は、外積と内積だが、共に線型性を満すので | a_11 a_12 a_13 | | a_21 a_22 a_23 | = a_11 a_22 a_33 | a_31 a_32 a_33 | + a_12 a_23 a_31 + a_13 a_21 a_32 - a_11 a_23 a_32 - a_13 a_22 a_31 - a_11 a_23 a_32 # !!! 三次の行列式は計算できるようにしておくこと [定理] |AB| = |A||B| # これは、二次と同じように成立するが、計算が大変なのでやらない # 一般に n 次でも成立するし、その時の証明では抽象的に行う [定理] x_11 x_12 x_13 X = ( x_21 x_22 x_23 ) = ( x_1, x_2, x_3 ) x_31 x_32 x_33 とすると、 |AX| = det( A x_1, A x_2, A x_3 ) || |A||X| = |A| det( x_1, x_2, x_3 ) すなわち、T_A は、図形の体積を |det A| 倍する # 絶対値記号は、det A に符合が付くため == 直線l: x = x_1 _ t a と、点P(x_0)の距離は、 \frac{\sqrt{ |a|^2|x-x_0|^2 - (a,x_0-x_1)^2 }}{|a|} で表現できたが、外積を利用すると \frac{|a \times (x_0-x_1)|}{|a|} と簡単に表現することができる。 [定理] 直線と直線 l_1 : x = x_1 + t a l_2 : x = x_2 + t b の距離を考える。 空間内の直線の関係は、以下の三つ 交わる 平行 捻れの位置 (捻れの位置) の場合 l_1, l_2 に共に垂直で交わる直線を考え、その直線と交点を P(p),Q(q) とする p = x_1 + t a q = x_2 + s b と直交条件 (a, q-p) = 0 (b, q-p) = 0 から、t と s に関する連立方程式 (a,a) t - (a,b) s = ( a, x_2-x_1 ) (b,a) t - (b,b) s = ( b, x_2-x_1 ) が得られる。 # クラーメルの公式を利用したいので、まず係数行列行列式を考えると | (a,a) -(a,b) | = - { |a|^2 |b|^2 - (a,b)^2 ) | (a,b) -(b,b) | ここで、a,b が同一平面にないので、(そうでないと捻れの位 置にならない)これは、0 にならない。 よって、クラーメルの公式より、唯一つの解 t_0, s_0 が存在し、 P_0 ( x_1 + t_0 a ) Q_0 ( x_2 + s_0 b ) に対して | P_0 Q_0 | が求める長さ。 # 最初に与えた条件「PQ が l_1, l_2 に垂直」の条件は # もし、垂直できない点 Q' を考えると、直角三角形の辺の # 長さの性質より、PQ_0 < PQ' が成立するため x_2 - x_1 = c + t_0 a - s_0 b ここで、P_0 Q_0 = c とすると、c は、a,b と垂直なので、 (c, x_2-x_1) = (c,c) c = k a \times b とできる。そこから、 |c| = \frac{|(c,c)|}{|c|} = \frac{(c,x_2-x_1)}{|k|a\times b|} = \frac{(k a \times b,x_2-x_1)}{|k| |a\times b|} = \frac{(a \times b,x_2-x_1)}{|a\times b|} = \frac{\det(a,b,x_2-x_1)}{|a\times b|} と、計算できる。 == # 今後 この後は、行列の話ばかりをする。ただし、今度は、2, 3 次とは限らない高次 /抽象な場合をやる => 解らなくなったら 2, 3 次元に戻る 行列の話がおわったら、次は行列式で、その次に、再び、線型空間(いまやって いるV^2, V^3 の一般形)をやる。それは、一般の線型空間を考えるのに、一般 の行列がわかっていないと困るので.. 三次の行列式 外積 # 公式的な計算ができるように