代数幾何 I 古津先生 (2008/07/10) [基本変形] # 基本変形は、重要 !! ## 前期の試験で rank/逆行列が出る ## 後期の試験でも出る == [定義](基本変形) 基本変形とは、基本行列を (3 種類) を左右からかけること ( 合計 6 通り ) # もちろん、これだけはなんのことか解らない。基本行列を説明する [定義](基本行列) # 基本行列は、すべて正方行列 基本行列は次の三種類 1) P_n(i,j) ( i \ne j ) # 単位行列とちょっとだけ変っている ( 二箇所異なる ) # 単位行列の i 行と j 行 ( i 列と j 列 ) を交換した結果 (左 1) 第 i 行と第 j 行を交換 (右 1) 第 i 列と第 j 列を交換 [定理] P_n(i,j)^{-1} = P_n(j,i) = P_n(i,j) なので、P_n は正則 2) Q_n(i;c) ( c \ne 0 ) # 単位行列とちょっとだけ変っている ( 一箇所異なる ) # 単位行列の i,i 成分を c にしている (左 2) 第 i 行が c 倍 (右 2) 第 i 列が c 倍 [定理] Q_n(i;c)^{-1} = Q_n(i;1/c) なので、Q_n は正則 3) R_n(i,j;c) ( i \ne j ) # 単位行列とちょっとだけ変っている ( 一箇所異なる ) # 単位行列の i,j 成分を c にしている # ここで c \ne 0 という条件をつけてもよいが # c = 0 で正則にはなるので.. # でも、 c = 0 の場合は、これは単位行列なので意味がない # (左 3) 第 i 行目に j 行目の c 倍を加える (左 3) 第 j 行目に i 行目の c 倍を加える # ここで、注意 # これまでは、「行と列」の入れ換えだけだったが、 # R の場合は、i と j を交換する必要がある # # Q の場合も i と j を交換してもよいが意味がないので.. [定理] R_n(i,j;c)^{-1} = R_n(i,j;-c) [定理] 基本行列は全て正則で、しかもその逆行列も基本変形(だけでなく、同じ種類)になる # [注意] 基本変形は 6 種類 # 左からかける場合は、行の操作となる # 問題によって、全ての操作が使える場合と、特別な操作だけしかしてはいけない場合がある # rank の計算 : 6 種類全部使ってよい # 逆行列の計算 : 行の基本変形だけしかつかってはいけない == [基本変形による行列の変換] 行列 A に基本変形を行って行列 B に変換できる場合 A :~~~~> B と書く。 この操作は可逆なので、 A :~~~~> B ならば B :~~~~> A である。 [掃き出し] A : (m.n) 型 「(p,q) をかなめとして、左から q 列を掃き出す ( 右から p 列を掃き出す )」 # (p,q) をかなめにするには、(p,q) 成分が 0 だと困る # 0 の場合は、他の行や列と交換を行い、0 じゃないようにする # # それもできなければ、操作は「終り」になっている。 (1) (p,q) 成分を 1 にする Q_m(p,\frac{1}{a_{p,q}}) を左からかける (2) 第 i 行から第 p 行の a_{i,q} 倍を引く ( \forall i \ne q ) R_m(i,p;-a_{i,q}) を左からかける # 左基本変形しか使えないばあいは、ここで終り # 右基本変形も利用できれば続く (3) 第 j 列から第 q 列の a'_{p,j} 倍を引く ( \forall j \ne p ) R_m(q,j;-a'_{p,j}) # ここでは、右からなので、_n になっている事に注意 を右からかける # 列が、単位ベクトルの形になっていれば # 列の操作をやっても、その操作をする列の 1 の成分の行以外は変化しない # 成分が 1 の行は、かなめのある列以外は、全部 0 になる [定理] A n:次 \exist X: n 次 s.t. XA = E ( or AX = E ) -> A は正則 # この定理は都合により、今回は結果を示すのみ。証明は省略 # # 教科書をみてください [定理] A : (m,n) 型の時、 基本変形を何回か行って標準形にできる E_r | O F_{m,n}(r) = ( ----+--- ) O | O しかも r は、変形によらない。 proof) # これは、具体的に、変形する手順を作ってしまう A = O の時、 O = F_{m,n}(0) なので既に標準形 A \ne O の時、 必要ならば、行や列の交換を行い、 (1,1) 成分を 0 でなくすることができる 左から 第 1 列 / 右から 第 1 行を掃き出す すると、 1 | 0 .. 0 A = ( --+------- ) 0 | ..| A_1 0 | となる。 A_1 = O の時、 A = F_{m,n}(1) なので既に標準形 A_1 \ne O の時、 必要ならば、行や列の交換を行い、 (2,2) 成分を 0 でなくすることができる 左から 第 2 列 / 右から 第 2 行を掃き出す すると、 1 0 | 0 .. 0 0 1 | 0 .. 0 A_1 = ( ----+------- ) 0 0 | .. | A_2 0 0 | となる。 以下、A_2 に対しても A_1 と同様な操作を行う。 A の行、列の数は有限なので、必ず、この操作は終了するので、いつかは、標準変形が可能 # よって、基本変形により、標準形にはできたが、 # 今度は、その結果が、操作に拘らず同じ形になることを示す 今、 |~~~~> F_{m,n}(r) A |~~~~> F_{m,n}(s) とする ( s >= r と仮定する )。 基本変形は可逆なので、これは、 F_{m,n}(r) |~~~~> F_{m,n}(s) を意味する。 すなわち、 P F_{m.n}(r)Q = F_{m,n}(s) となる。 そこで、P, Q を行と列が r の処で区分けして、以下の形で計算をする P_11 | P_12 E_r | O Q_11 | Q_12 E_s | O ( -----+----- ) ( ----+--- ) ( -----+----- ) = ( ----+--- ) P_21 | P_22 O | O Q_21 | Q_22 O | O P_11 Q_11 | P_11 Q_12 = ( ----------+---------- ) P_21 Q_11 | P_21 Q_12 これから、 P_11 Q_11 = E -- 1 P_21 Q_11 = O -- 2 P_11 Q_12 = O -- 3 P_21 Q_12 = F(s-r) -- 4 ところが、 1 と先の定理より P_11, Q_11 は正則 これと、2, 3 より P_21 = Q_12 = O よって、4 より F_(s-r) = O すなわち、 s-r = 0 なので、 s = r # この r は、基本変形のやり方に因らないので、これに名前を付ける [定義] (rank) A が基本変形により F_{m,n}(r) に変更できた時に、この r を行列 A の ランク (階数) と呼び、 rank A と表す。 # 当然のことながら、「与えられた行列の rank を求めよ」という問題がある [例] 0 2 4 2 A = ( 1 2 3 1 ) -2 -1 0 1 A |~~~> F_{3,4}(2) なので、 rank A = 2 # 今回は、rank の問題があるので、これが計算できるようにしておくこと !!! # 基本変形は、いずれも同じなので、身に付ける # 対角要素が 0 なら、他の処からもってくる # 対角要素が 1 でないなら、行を割れ # 対角要素が 1 なら、それをかなめに列と行を掃き出せ [定理] A:n 次 A: 正則 <-> rank A = n # 前に「行列式が 0 でなければ正則」をやったが、それと同じ位重要な定理 proof) (->) rank A = r とする 基本行列の積 P,Q ( 正則 ) を考えると P A Q = F_{n,n}(r) とできる。 左辺は仮定より正則な行列 ところが n < r とすると、右辺は、少くても n 列目が 0 ベクトルになる ここで、0 ベクトルを列に含む行列は、正則であかったので、 右辺は正則でない。 正則な左辺と正則でない右辺が等しいあるので、これは矛盾 したがって、 n = r (<-) PAQ = F_{n,n}(n) = E_n よって、 A = P^{-1}EQ^{-1} = P^{-1}Q^{-1} よって、 A は正則 [定理] A が正則ならば、左(右)だけで、標準形(E_n) にできる。 # 正則でない場合は、定義にあるように左右の両方を使わないと標準形にできない可能性があるが、正則の場合は、左と右のどちらか一方だけで、標準形にできる。 proof) 仮定より PAQ = E_n である。 左右から Q^{-1} をかけると、 Q^{-1}PAQQ^{-1} = Q^{-1}E_nQ^{-1} よって Q^{-1}PA = E_n 即ち、左だけで、標準形にできた。 # 左右から P^{-1} をかければ、「右」の場合も示せる # これは、「正則の場合だけ」であることに注意 # この定理を利用すれば、逆行列を基本変形で求めることができるようになる。 A:正則 とすると、 \exist P : 基本行列の積 s.t. PA = E_n ( P = A^{-1} ) ここで、行列 (A | E) に対して、P をかければ、 (PA | PE) = (E_n|P) これを利用すると、次の逆行列の求め方が得られる。 [逆行の求め方] (A|E_n) を考える 「左基本変形」のみで、(E|P) の形に変形 この時、 P = A^{-1} となる。 [例] 1 2 3 A = ( -2 -3 -4 ) 2 2 4 # [注意] 列(右)の操作はつかってはならない # 行(左)の操作だけでやる !! 1 2 3 | 1 0 0 ( -2 -3 -4 | 0 1 0 ) 2 2 4 | 0 0 1 # 列の操作が使えないので右の方向にけせない # 上から下、下から上の方向 (行の操作) だけで行う 1 0 0 | -2 -1 1/2 ( 0 1 0 | 0 -1 -1 ) 0 0 1 | 1 1 1/2 # これも出来るようにしておくこと !! この方法は、 3 次に拘らず、利用できる !! == 来週は、連立方程式と試験の話