前回 行列式の定義を行った 今回から行列式の性質と計算の方法 例3: |cA| = c^n |A| # [注意] |cA| = |c| |A| とする間違いが多いが問題 # |A+B| = |A| + |B| とする間違いも多い !! proof) |cA| = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma (c a_{1,\sigma(1)})..(c a_{n,\sigma(n)}) = c^n \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma a_{1,\sigma(1)}..a_{n,\sigma(n)} = c^n |A| 問 イ) | a_1 | | a_2 | = sig \sigma a_{1,n} a_{2,n-1} .. a_{n,1} | .. | | a_n | よって \sigma = ( 1 2 .. n ) n n-1 . 1 よって、 sgn \sigma = +1 ( n = 4m, 4m+1 ) = -1 ( n = 4m+2, 4m+3 ) 問 ロ) | a b c | | b c a | | c a b | # ここは、三次なので、いままのでやり方でもよいが、今回は敢て、新しい # 定義でやると... = a^3 + b^3 + c^3 - 3abc # これから、重要な定理をやるので、しっかり身に付けて欲しい [定理 2] |^tA| = |A| # これは覚えるのは簡単だが、応用は広い。これができると、行の性 # 質をしめせば列の性質がすべてそのままこれを利用して出てくるか # ら。 proof) |A| = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma a_{1,\sigma{1}}..a_{n,\sigma{n}} 1.2 イ) より = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma^{-1} a_{1,\sigma{1}}..a_{n,\sigma{n}} # 加える順番は変るかもしれないが、足す者は変っ # ていないので、総和としては同じ = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma a_{\sigma{1},1}..a_{\sigma{n},n} なぜなら \sigma^{-1} = ( 1 2 .. n ) \sigma^{-1}(1) \sigma^{-1}(2) .. \sigma^{-1}(n) = ( \sigma(1) \sigma(2) .. \sigma(n) ) 1 2 n なので = |^tA| かけ算の順番を変更しただけなので # 次の二つも重要で、いつもセットになっている [定理 2.2] ( n 重線型性 ) イ) det(a_1,..,a_j+a_j',..,a_n) = det(a_1,..,a_j,..,a_n) + det(a_1,..a_j',..,a_n) ロ) det(a_1,.., c a_j,..,a_n) = c det(a_1,..,a_j,..,a_n) proof) 定義から明かなので省略 [定理 2.3] (交代性) \tau \in S_n の時 det(a_{\tau{1}},a_{\tau{2}},..,a_{\tau{n}}) = sgn\tau det(a_1,a_2,..,a_n) # [注意] 2.2 ロ) は、基本変形の Q によって、定理 2.3 は P によっ # て、行列式の値がどのように変るかを示している。 proof) 左辺 = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma a_{1,\tau{\sigma{1}}}..a_{n,\tau{\sigma{n}}} = \sum_{\sigma \in S_n} sgn \tau sgn \tau sgn \sigma a_{1,\tau{\sigma{1}}}..a_{n,\tau{\sigma{n}}} なぜなら sgn \tau sgn \tau = 1 = sgn \tau \sum_{\sigma \in S_n} sgn (\tau\sigma) a_{1,\tau{\sigma{1}}}..a_{n,\tau{\sigma{n}}} なぜなら sgn \tau sgn \sigm = sgn (\tau \sigm) = sgn \tau \sum_{\sigma \in S_n} sgn (\tau\sigma) a_{1,\tau{\sigma{1}}}..a_{n,\tau{\sigma{n}}} = sgn \tau \sum_{\tau\sigma \in S_n} sgn (\tau\sigma) a_{1,\tau{\sigma{1}}}..a_{n,\tau{\sigma{n}}} なぜなら 1.2 ロ) = sgn\tau det(a_1,a_2,..,a_n) # 交代性質からすぐにでる定理がある [系 2.4] A の二つの列が一致すれば |A| = 0 # これは列に関する定理だが、転置の定理があるので、同様に行でも言える |A| = det(a_1,..,a_i,..a_j,.., a_n) で a_i = a_j とする \tau = (i,j) とすれば、 = sgn \tau det(a_1,..,a_i,..a_j,.., a_n) = - det(a_1,..,a_j,..a_i,.., a_n) ところが a_i = a_j であるので、 = - det(a_1,..,a_i,..a_j,.., a_n) = - |A| すなわち、 |A| = - |A| なので、 |A| = 0 [系 2.5] A のある列に他のある列の定数倍を加えて作られる行列の 行列式は |A| # これは、列についてであるが、当然行でも成立する # これは、基本変形の R に相当することに注意 proof) 第 i 列目に j 列目の c 倍を加えるとする det( a_1, .., a_i + c a_j, .., a_j, .., a_n ) = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) + det( a_1, .., c a_j, .., a_j, .., a_n ) # 定理 2.2 (イ) = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) + c det( a_1, ..,a_j, .., a_j, .., a_n ) # 定理 2.2 (ロ) = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) + c 0 # 定理 2.3 = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = |A| # これで、基本変形の P,Q,R の性質がわかったので、これを利用した # 行列式の計算方法が考えらるようになる、その内容は、来週やるの # で、ここまでで、来週の準備ができたことになる == # ここまでで、行列式が、定理 2.2 と定理 2.3 を満すことがわかったが、実 # は、その逆、すなわち、この二つが成立するような式は、ほとんど行列式 ( # 実は行列式の定数倍 ) しかないことがわかる。 [定理 2.6] n 個列ベクトルの組 x_1, .., x_n に対応して F(x_1,..,x_n) を 対応させる写像 F が、n 重線型性と交代性を満すならば、それは F(e_1,..,e_n)det(x_1,..,x_n) となる。 proof) x_i = \sum_{i=1}^{n} x_{i,j} e_i ( j = 1..n) とする。 F(x_1,..,x_n) = F(\sum_{i=1}^{n} x_{i,1} e_i,\sum_{i=1}^{n} x_{i,2} e_i,.., \sum_{i=1}^{n} x_{i,n} e_i) F の線型性質より、 = \sum_{i_1=1}^{n}\sum_{i_2=1}^{n}..\sum_{i_n=1}^{n} x_{i_1,1}x_{i_2,2}..x_{i_n,n} F(x_1,..,x_n) ところが、F の交代性より、i_1, .., i_n の中に同じものがあれば 0 になる。 したがって、i_1, .., i_n が互いに異なる場合だけを考えればよい。 すなわち、 \sigma = ( 1 2 .. n ) \in S_n i_1 i_2 .. i_n とすれば、 = \sum_{\sigma \in S_n} x_{\sigma{1},1}..x_{\sigma{n},n} F(e_{\sigma{1}}, .., e_{\sigma{n}}) 再び、F の交代性質を利用すると F(e_{\sigma{1}}, .., e_{\sigma{n}}) = sgn \sigma F(e_1,..,e_n) F(e_1,..,e_n) は共通なので、外に出すと = F(e_1,..,e_n) \sum_{\sigma \in S_n} sgn \sigma x_{\sigma{1},1}..x_{\sigma{n},n} F(e_{\sigma{1}}, .., e_{\sigma{n}}) 後の項は、|A| ではないが、|^tA| になっている。 すでに|A|=|^tA| なので、 = F(e_1,..,e_n) |A| [例 4] (バンデルモンドの行列) | 1 1 .. 1 | | x_1 x_2 .. x_n | = \Pi_{i 他の講義で利用する # 次の定理も大変重要 # 足し算は分られないが、かけ算は分けられる [定理 2.7] |AX| = |A| |X| # これを真面目に、定義にもどってやると大変な計算になってしまう # そこで、定理 2.6 を上手く利用してその計算をさぼる proof) X=(x_1,..,x_n) として F(x_1,..,x_n) = det(Ax_1,..,Ax_n) = |AX| とする。 すると A の線型性と、det の線型性から、F 自身が線型性を持つ 更に det の交代性から、F の交代性がでる 線型性を持つので、 F(x_1,..,x_n) = F(e_1,..,e_n)|X| ところが、 F(e_1,..,e_n) = det(Ae_1,..,Ae_n) = det(a_1,..,a_n) = |A| すなわち、 F(x_1,..,x_n) = |A||X| となる。 # 特別な場合の行列式は簡単なので、それをいくつかやる。 [定理 2.8] A = ( A_11 A_12 ) # 対称区分け O A_22 or A = ( A_11 O ) # 対称区分け A_12 A_22 の時 |A| = |A_11| |A_22| proof) まず、 A = ( A_11 O ) A_21 E という、特別な場合を考える |A| = \sum_{\sigma \in S_{n+m}} ... となるが、後半の m 項目は、対角要素(1)を選ばないと0 になる。 すなわち、 \sigma = ( 1 .. m, m+1,.., m+n ) i_1 .. i_m, m_1,.., m+n # m 以後は、すべて上下が同じ場合 以外では、0 になる。 よって、はじめから \sigma \in S_n と考えてよい すると、この式は、 |A_11| となる。 一方、A_22 = X = (x_1,..,x_n) とすれば、 F(x1,..,x_n) = |A| ここで、x_1, .., x_n の上の要素が全て 0 なので、これは、 線型性と交代性を満す よって、 |A| = F(x_1,..,x_n) = F(e_1,..,e_n) |X| = |A_11| |X| = |A_11| |A_22| # ということで、この形になれば、行列式が簡単に計算できる [系 2.4] イ) | a_11 a_12 .. a_1n | | 0 a_22 .. a_2n | | .. | | 0 a_n2 .. a_nn | = a_11 | a_22 .. a_2n | | .. | | a_n2 .. a_nn | ロ) 上三角行列 | a_11 a_12 .. a_1n | | 0 a_22 .. a_2n | | .. | | 0 .. .. a_nn | = a_11 a_22 .. a_nn # この形が、基本変形での目的 == 11/12 の中間テスト 行列式まで (from は未定)