# 本日の内容で、ほぼ、行列式の話はほとんど終る。 # 今日やることが大切で、これによって、高次の行列式が計算できるようにな # る。 # まず、それをやるまえに、ちょっと準備 == 小行列式 定義(小行列式) A : (m,n) 型とする。 p 個の行と p 個の列を取り出して、作った p 次の正方行列を A の p 次小行列と呼ぶ。 [定理] A の p 次小行列は、mCp nCp 通りある [定理 2.10] A : (m,n) 型とする。 A の階数 r(A) は、 A の 0 でない小行列式の最大次数に等しい。 proof) A の 0 でない小行列式の最大次数を s(A) とする。 1) 標準系の場合を考える F(r) = ( E_r O ) O O r(F(r))=r であることに注意。 r+1 個以上を取ると、必ず、0 の列が含まれるので、その小行列式は 0 になる よって、最大次数は r 以下 一方、E_r の部分を取るとこれは 0 でなく、これの次数は r 即ち よって、最大次数は r 以上 すなわち、 s(A)=r よって、 s(A)=r(A) 2) 標準系以外の場合 # ここで、r(A) は、標準変形によって変化しない。よって、もし、s(A) が # 基本に変形によって変化しないのであれば、常に r(A)=s(A) が言えることになる。 # s(A) が、標準変形によって変らないことを示す。 1) P(i;c) (c\ne0) 適当な列を定数倍しても 0 かどうかには影響しない 2) Q(i,j) (i\ne j) 入れ替えただけなので、取る場所が変るだけ 3) R(j,i;c) # 行と列の中、列の方だけしめす。 # 列が示されれば、転置するだけで、行の方も示される。 第 i 列に 第 j 列の c 倍を加える A の 0 でない s(A) 次数の小行列の一つをΔとする 対応する RA の小行列式をΔ'とする # ここで変化したのは i 列だけであることに注意 a) Δに i が含まれていない場合 Δ=Δ' b) Δに i, j が共に含まれている Δ' = |R|Δ で、 |R|=1 なので、 Δ'=Δ c) Δに i がはいり、j が入らない場合 Δ'=Δ+cΔ_1 となる。よって、 Δ = Δ' - cΔ_1 \ne 0 すなわち、 Δ' と Δ_1 のどちらか一方は 0 でない。 以上により、Δ\ne0 ならば、Δ'\ne0 がしめされたので s(XA) >= s(A) ( X は基本行列 ) がいえた。 ところが、X が基本行列ならば、その逆行列の X^{-1} も基本変形 すなわち、 s(A) = s(X^{-1}(XA)) >= s(XA) よって、 s(A)=s(XA) s(A) は基本変形によって変化しないので、s(A)=r(A) [系 2.11] A : n 次行列 A:正則 <-> |A|\ne0 proof) A:正則 <-> |A|\ne0 A A | | v v r(A)=n <-> s(A)=n == <<行列式の展開>> [定義] A : n 次行列 第i行, 第j列を除いてできる n-1 次小行列を A の第 (i,j) 小行列式 と呼び、 \Delta_{i,j} # この記号は、ここだけで用いる 出あらわす。 これに符合(-1)^{i+j}を掛けたものを A の第 (i,j) 余因子 と呼び、 \~a_{i,j} で表す。 [定理 3.1] |A| = a_{1,j}\~a_{1,j} + a_{2,j}\~a_{2,j} + .. + a_{n,j}\~a_{n,j} # j 列に関する展開 ( j = 1,2,..,n ) |A| = a_{i,1}\~a_{i,1} + a_{i,2}\~a_{i,2} + .. + a_{i,n}\~a_{i,n} # i 行に関する展開 ( i = 1,2,..,n ) # 何が嬉しいか ? 右辺は、小行列なので、左辺より次数が一つ下っている # => 高次の行列式を計算するのに、次数を下げる方法を提供している !! proof) # 何時ものように、列に関してのみ説明する (j=1 の時) a_11 a_11 0 0 a_1 = ( a_21 ) = ( 0 ) + ( a_21 ) + .. + ( 0 ) .... .... .... ... a_n1 0 0 a_n1 なので、n 重なる線型性より |a_11 a_12 .. a_1n | | 0 a_12 .. a_1n | |A|= | 0 a_22 .. a_2n | + | a_21 a_22 .. a_2n | + .. | | | | | 0 a_n2 .. a_nn | | 0 a_n2 .. a_nn | i 行目 1 列目の要素を左上に移動したいので、行の交換を行う。 ただし、他の要素の順番は変更したくないので、上下に並んだ行を i-1 階利用して交換する 左上に要素がくれば、次数を下げらるので、 |A|=a_11Δ_11-a_21Δ_21+.. すると、負号として (-1)^{i-1} がでてくるが、(-1)^2=1 なので、 (-1)^{1+i} と考えてよい。 =a_11\~a_11+a_21\~a_21+.. (j>1 の時) # j=1 の場合の結果を利用したいので、j 列を前にもってくる # 同様に、他の要素の順序を変更したくないので、左右に並んだ列の交換の繰り返しで移動する。 j 列を 1 列目に移動すると j-1 回交換を行うので、(-1)^{j-1} 倍すればよい よって、.. (-1)^{j-1)|A|= a_1jΔ_1j .. |A|= (-1)^{j-1)a_1jΔ_1j .. = a_1j\a_1j .. [例] 単純に、展開すると、三次が四つでる。三次といえども四つも計算するのは いやなので、できるだけ0をふやす。その為に基本変形を利用する。特に R は、行列式 の値を変更しないので、どんどん利用する。 高次の行列式は、このように展開で、求める。 == # 以下、展開で良く利用する式が出てくるので、やっておく。 [定理 3.2] a_1j\a_1l + a_2j\~a_2l + .. + a_nj \~a_nl = \delta_{jl}|A| ( j, l = 1,2,..,n ) # ここで、l=j の時は、先の定理 3.2 と同じなので成立 # よって、これは、定理 3.2 の拡張になっている # よって、 l\ne j の時 0 になる事を示せばよい proof) j=l の時は、定理 3.2 と同じなので、成立する j\ne l の時 # これは、A の行列式と同じような形をしているので、 # よって、何かの行列式になっているのではないか ? # 良く考えてみると.. 元のj l 列目が j 列目の要素に置き換わっている ↓ ↓ (右辺) = | .. a_1j .. a_1j .. | 同じ要素を持つ列があるので、= 0 # この様に、余因子が並ぶ総和は、元の l 列目を係数の列に置き換えた行列の行列式になっているという性質はよく利用するので覚えておくように [定義] (余因子行列) \~a_11 \~a_21 .. \~a_n1 \~a_ji を要素とする行列 ~A = ( \~a_21 \~a_22 .. \~a_n2 ) \~a_n1 \~a_n1 .. \~a_nn # \~a の添字が (ij でなく.. ) 「ji」になっている事に注意 !! を余因子行列と呼ぶ \~AA = の ( i,k ) 成分は a_j1\~ak1 + .. = \delta_ik |A| A\~A = の ( l,j ) 成分は a_l1\~aj1 + .. = \delta_lj |A| よって、この結果をまとめると... [系 3.3] \~AA=A\~A = |A| E_n [系 3.4] A : 正則の時 A^{-1} = \frac{1}{|A|}\~A # 前期でやったように逆行列は、基本変形で解くことができたか # ここでは、行列式でも求めることができる # しかし、一般には、行列式を求めるのは計算が大変なので、普通はやはり、基本変形で行う。 # ただ証明の場合は、この形の方が便利な場合もあるので、これも身に付けておく == [定理 3.5] (クラメールの公式) 一次方程式系 Ax=b を考える A が n 次正方行列の時 x=A^{-1}b が唯一の答。 x = \frac{1}{|A|}\~Ab となるので、 x_i = b_1 \~a_11 .. すなわち、A の i 列目を b に置き換えた行列を A_i とすると x_i = \frac{|A_i|}{|A|} 計算ができる。 == 次回、クラーメル例をやって、行列式の話はおしまい。次回から線型空間の話をするが、 中間試験の範囲は、行列式まで