行列式の話が少しだけ残っているのでそれをやる 行列式の話で重要なのは、「行列式の展開」これを使って次元を下げることができる 行列式の値を計算するには、これが重要 => text p. 87 問レベルは解けるように !! 残りの話題 行列式を使って、逆行列が定義できる 行列式を使って、特別な場合の連立方程式を求めることができる。 # 章末問題は、時間が余ったときに少しずつやる == 例 a,b,c を互いに異なる数とする。 x + y + z = 1 a x + b y + c z = d a^2 x + b^2 y + c^2 z = d^2 すると、係数行列 A の行列式歯、次のようになる | 1 1 1 | |A|= | a b c | = Δ(a,b,c) = (c-b)(c-a)(b-a) \ne 0 | a^2 b^2 c^2 | # ヴァンデルモンドの行列式なので、直に計算できる [注意] クラメルの公式が利用できるためには、係数行列の行列式が 0 でないこと クラメルの公式により x = \frac{|A_1|}{|A|} y = \frac{|A_2|}{|A|} z = \frac{|A_3|}{|A|} ただし、 | 1 1 1 | |A_1|= | d b c | = Δ(d,b,c) = (c-b)(c-d)(b-d) | d^2 b^2 c^2 | | 1 1 1 | |A_2|= | a d c | = Δ(a,d,c) = (c-d)(c-a)(d-a) | a^2 d^2 c^2 | | 1 1 1 | |A_3|= | a b d | = Δ(a,b,d) = (d-b)(d-a)(b-a) | a^2 b^2 d^2 | == # ここから新しい章 # 線型空間/線形空間/ベクトル空間は同じ意味 [定義] (線型空間) 集合 V が次の 2 条件 [I] [II] を満す時に、V を複素線型空間と呼ぶ。 # C-線型/線形/ベクトル空間 / C 上の線型空間 # V は単なる集合なので、そもそも、和とか定数倍もないので、それ # を導入することから始まる。 # [I] は和に関する条件 [II] はスカラー倍に関する条件 [I] V の二つの元 x, y に対して、「和」とよばれる第三の元(x+y \in V) が 定まり、以下を満す。 (1) (x+y)+z = x+(y+z) (2) x+y = y+x (3) 零ベクトルと呼ばれる特別な元(0) が唯一つ存在し、 0+x=x ( \forall x \in V ) を満す。 (4) \forall x \in V \exist1 x' \in V s.t. x + x' = 0 この x' を、x の「逆元」と呼び、「-x」 で表す。 # これらの条件は「和」として利用できる条件を列挙した [II] x \in V, a \in \C に対して、 x の a 倍 ( ax \in V ) と 呼ばれる元が定まり、以下を満す。 (5) (a+b)x = ax + by (6) a(x+y) = ax + ay (7) (ab)x = a(bx) (8) 1x = x # この (1) 〜 (8) が、線型空間の公理 # この公理を満すものは全部線型空間とするので、ベクトル空間のよ # うにみえないものも線型空間になる。 # ここでは、\C(複素数) で話をしているが、\R(実数) でも全く同じ議論がで # きるここでは、いちいち \C と \R と断る代りに、この二つを代表して K で # 表すことにする。 [線型空間の例] 例 1 : V = { x } : 元が一つしかない集合 # これに次のように和とスカラー倍を導入すれば線型空間になる # 元は、なんでも良い 和 : x + x = x スカラー倍 : a x = x このような定義をすれば、(1) 〜 (8) を満す。 # これは簡単だが、結構、色々な所ででてくる # もっと単純な集合として空集合が考えられるが、条件 (3) で、少く ても零元がないとだめなので、空集合は線型空間にならない 例 2 : V^3 = { 空間ベクトルの全体 } V^2 = { 平面ベクトルの全体 } => 実線型空間の例 # これは普通のベクトル空間 例 3 : C^n = { n 項複素列ベクトル全体 } R^n = { n 項実列ベクトル全体 } ( K^n = { n 項 K- ベクトル全体 } ) => K-線型空間 # n>1 であればベクトル空間的だが n=1 の場合もベクトル空間となる 例 4 : V=M_{m,n}(K) = { (m,n) 型 K-行列全体 } => K-線型空間 # 成分は、ベクトルではなく行列だが、これもベクトル空間 例 5 : V = { x \in K^n | Ax = 0 } # 連立方程式 Ax=0 の解の集合なので「解集合」と呼ぶ # V 上の和、スカラー倍は、K^n のものをそのまま利用する # V は K^n の部分空間になっている # # これは「部分空間」の典型的な例だがまだ、「部分空間」をやっていないので、詳しくはその時に説明 例 6 : P(K) = { f(x) | K-係数の一変数多項式 } # これの和、スカラー倍は、普通に多項式の和、多項式の定数倍を採用する # すると、その和、スカラー積に対して、線型空間になる。 # これは多項式の集合なので、ベクトルとはかなり形が違うが、やはり、公理を満す以上は、ベクトル空間と見做せる。 P_n(K) = { f(x) を P(K) の要素で、n 次以下 } => K-線型空間 # P_n(K) は P(K) の部分空間の例になっている 例 7 : V = { T | A -> K; 写像 } # これは写像の集合 # これは、普通には和やスカラー倍が定義されていないが次のような形で、和とスカラー倍を導入すれば、線型空間になる [和] T, S \in V の時 (T+S)(x) = T(x) + S(x) [スカラー倍] T \in V, a \in K (aT)(x) = a T(x) に関して、K-線型空間になる。 特に A が区間 K = R 連続関数に限定 などとしても、それぞれ、実線型空間になる # 集合をもってきて、それに上手く、和とスカラー倍が導入でいれば、線型空間になる # 集合によって、導入できない例もある ( cf. 空集合 ) # 和や、スカラー倍の入れかたが複数の場合もありうる 例 8 : V = { {a_n} : 実数列 } {a_n} + {b_n} = { a_n + b_n } c{a_n} = { c a_n } -> 実線型空間 V_0 = { {a_n} : 収束列 } -> 実線型空間 # 収束する数列の和も収束する # 数列の要素が複素数になれば、複素線型空間になる 例 9 : V = { {x_n} , x_{n+k} _ a_{k+1} x_{n+k-1} + .. + a_1 x_{n-1} + a_0 x_0 = 0 (a_n \ne 0) } # 漸化式を満すような数列の集合 : 漸化式の解集合 -> 実線型空間になる 例 10 : V = { y = f(x) | y^(n) + a_{k-1}(x) y^(n-1) + .. + a_1(x) y' + a_0(x)y = 0 ( a_n(x) \ne 0 ) } # k 階斉次線型微分方程式の解集合 # 対象は、ベクトルじゃないような物も扱うが、普通は通常の K^n を考える # -> 実は K^n だけを考えれば済むという話になっているがこれは先の話 == [定義] V, V' : K-線型空間 T : V -> V' 写像が次の式を満す時、T を V から V' への「線型写像」と呼ぶ T(x+y) = T(x) + T(y) T(c x) = x T(x) [定理] T : V->V' : 線型写像, S:V'->V'' : 線型写像 => ST : V -> V'' : 線型写像 proof) ST(x+y) = S(T(x+y)) = S(T(x)+T(y)) = S(T(x))+S(T(y)) = ST(x) + ST(y) ST(ax) = S(T(ax)) = S(a T(x)) = a S(T(x)) = a ST(x) # 線型写像の証明は、まいかい、このパターンが多い [定義] T_1, T_2 : V->V' : 線型写像 に対して、 和 (T_1+T_2) を (T_1+T_2)(x) = T_1(x) + T_2(x) とする。 # ここで、V' が線型空間なので、この定義が意味を持つことに注意 すると、 和 (T_1+T_2) は V から V' への線型写像 proof) (T_1+T_2)(x+y) = T_1(x+y) + T_2(x+y) = T_1(x) + T_1(y) + T_2(x) + T_2(y) = T_1(x) + T_2(x) + T_1(y) + T_2(y) = (T_1+T_2)(x) + (T_1+T_2)(y) (T_1+T_2)(a x) = T_1(a x) + T_2(a x) = a T_1(x) + a T_2(x) = a ( T_1(x) + T_2(x) ) = a (T_1+T_2) (x) よって、線型写像 # これもワンパターン [定義] (線型変換) V から V への線型写像を、V の線型変換(一次変換)と呼ぶ [定義] (同型写像) V から V' への線型写像 \phi が 一対一かつ、上への写像 であるとき、 \phi は V から V' への 同型写像 / 同型対応 と呼ぶ。 [定義] (同型) V と V' の間に同型対応があれば、V と V' は互いに「同型」であるといい V \equiv V' で表す。 [定理] 同型は、同値関係 # 注意 # 同値関係とは次の三つを満す関係の事 # 1) V = V (反射律) # 2) V = V' -> V' = V (対称律) # 3) V = V', V' = V'' -> V' = V'' (推移律) proof) 1) 1_V : V -> V : 恒等変換 \in \in x |--> x とすれば、1_V は同型対応なので、 V と V は、同型 2) \phi : V -> V' : 同型対応 とすれば \phi の逆写像 \phi^{-1} \phi^{-1} : V -> V' : 同型対応 は、V' から V の同型対応になるので、V' と V は同型 3) \phi : V -> V' : 同型対応 \phi' : V' -> V'' : 同型対応 とすれば、この二つの対応の合成 \phi' \phi が、V から V'' への同型対応になる。 [同型の例] [例 11] \phi : M_{m,n}(K) -----------> K^{mn} \in \in A = (a_mn) |-------> a_1 ( a_2 ) .. a_n は、一対一、上への写像で、しかも線型 よって、 M_{m,n}(K) \equiv K^{mn} [例 12] V^3 = { 空間ベクトル全体 } R^3 = { 3 項目実列ベクトル全体 } V^3 -----> R^3 \in \in x v |----> ( y ) z よって、 V^3 \equiv R^3 # 前期に散々やったように、V^3 と R^3 は、ほぼ区別しない # で使っていた ( 同一視していた ) のは、このような「同 # 型」の関係があったから 同様にして、 V^2 \equiv R^2 # 後からわかるようにこうやって、色々な線型空間が K^n と同型にな # るので、K^n だけを考えれよいということが解る == # ちょっと時間が余ったので、章末問題を一つだけやる p.90 1 イ) | x -1 0 .. 0 | | 0 x -1 .. 0 | | 0 0 \ \ | | | 0 | | x -1 | | a_n .. a_0 | 一列で展開すると、 = x | .. | _ a_n (-1)^{n+2} | | 以下、帰納法になる = .. = a_0 x^n + a_1 x^{n-1} + .. + a_{n-1} x + a_n