基底と次元 K^n ( R^n または C^n ) \in e_1, .., e_n : 単位ベクトル とすると、K^n の任意の要素 x_1 x \in K^n = ( x_2 ) ... x_n に対して、 x = x_1 e_1 + x_2 e_2 + .. + x_n x_n と、 「線型結合」で記述できる。 # これの一般化の話 [定義] V : K-線型空間 a_1, a_2, .., a_n \in V に対して c_1 a_1 + .. + c_n a_n ( c_1, .., c_n \in K ) を a_1, .., a_n の「線型結合」 と呼ぶ。 # 次は、これを等式で結んだ式を考える [定義] c_1 a_1 + .. + c_n a_n = 0 を「線型関係」と呼ぶ # これは方程式になっているので、解があるかどうかが気になる。 # 実は、この方程式は常に解を持つ # => 全部 0 にすればよい # この解は恒にあるので自明 この方程式の解のうち c_1 = c_2 = .. = c_n = 0 を、 「自明な線型関係」 と呼ぶ。 [定義] 自明でない線型関係があるとき a_1, .., a_n は「線型(一次)従属」であるとよぶ 自明でない線型関係がないとき a_1, .., a_n は「線型(一次)独立」であるとよぶ # 互いに排反事象になっている !! [例] e_1, .., e_n \in K^n は線型独立 これは V^2, V^3 での独立/従属の一般形になっている # この話は、今後なんども出てくるので、これの性質を調べておく [定理 3.1] a_1, .., a_n が線型従属 <-> \exist p \in { 1, .., k } s.t a_p が他の k-1 個のベクトルの線型結合で表せる。 proof) (=>) 定義より c_1 a_1 + .. + c_n a_n = 0 で自明でないものがある。 # つまり c_1, .., c_n の中で 0 でないものがある そこで、 c_p \ne 0 とすると、移項して、 c_p a_p = - c_1 a_1 - .. - c_{p-1} a_{p-1} - c_{p+1} a_{p+1} - c_n a_n とできる。ここで c_p \ne 0 なので、両辺を c_p で割り、 a_p = - \farc{c_1}{c_p} a_1 - .. - \farc{c_{p-1}}{c_p} a_{p-1} - \farc{c_{p+1}}{c_p} a_{p+1} - \farc{c_n}{c_p} a_n となる。 (<=) 仮定より a_p = b_1 a_1 + .. + b_{p-1} a_{p-1} + b_{p+1} a_{p+1} + b_n a_n 移項して、 b_1 a_1 + .. + b_{p-1} a_{p-1} + (-1) a_p + b_{p+1} a_{p+1} + b_n a_n = 0 これは ( a_p の係数 -1 が 0 でないので.. ) 自明でない解を持つ [定理 3.2] a_1, .., a_n : 線型独立 a : a_1, .., a_n の線型結合で表せない => a, a_1, .., a_n は線型独立 proof) c_1 a_1 + .. + c_n a_n + c a = 0 とする。 c \ne 0 とすると、 a = - \frac{c_1}{c} a_1 - .. - \frac{c_n}{c} a_n となり、矛盾。 よって、c = 0 すると、 c_1 a_1 + .. + c_n a_n = 0 ここで、仮定より a_1, .., a_n が独立なので、 c_1 = .. = c_n = 0 しかない。 よって、上と合せて c_1 = .. = c_n = c = 0 なので、 線型独立 # こうやって、線型独立なベクトルをふやして行くことができる # 次は、線型結合の合成みたいなもの [定理 3.3] c が b_1, .., b_n の線型結合 各々の b_i が a_1, .., a_k の線型結合 ( \forall i ) => c は a_1, .., a_k の線型結合 proof) c = \sum_{i=1}^l c_i b_i b_i = \sum__{i=1}^k b_ij a_j と表せるので、 c = \sum_{i=1}^l c_i (\sum__{i=1}^k b_ij a_j) = \sum_{i=1}^l (\sum__{i=1}^k c_i b_ij ) a_j # この三つは後で良く利用する == # 前回やったように、線型空間にも色々あるが、それを大きく分類する # 考え方を導入する [定義](次元) V に有限個のベクトルが存在して V の任意のベクトルが、 これらの線型結合で表せる時 V は有限次元 と呼ぶ。 有限次元でない場合は、「無限次元」と呼ぶ。 # 無限次元の時の方が問題 # -> 難しいので、来年度やる # -> 今年は、次元が有限の場合しかやらない # 無限の方が色々面白いということもあるのだが.. # 次元を有限とすると、前回やったもので対象外のものが幾つかでてくる [定義] V の有限個のベクトル e_1, .., e_n が次の二条件を満すとき e_1, .., e_n は 「V の基底」と呼ぶ 1) e_1, .., e_n は線型独立 2) V の任意のベクトルが e_1, .., e_n の 線型結合で表せる # 基底が本当にあるかどうかは、次にすぐやる [注意] 表し方が一通り 表し方が二通りだったとする x = b_1 e_1 + .. + b_n e_n = c_1 e_1 + .. + c_n e_n 引き算すると、 (b_1-c_1) e_1 + .. + (b_n-c_n) e_n = 0 ここで、e_1,..,e_n は独立なので、自明な場合しかない b_i-c_i = 0 よって、 一通り # 表現が一通りであることは、書いてないが、それはこの定義から # 出てくるし、今後も利用する == # 後でシュミットの直交化などで、順番が問題になることがあるので # その話をしておく 基底といった時には、ベクトルの順番も考える { e_1, .., e_n } = { e_n, .., e_1 } であるが、 基底 \ne と考える。 [定理 3.4] V \ne { 0 } の時 e_1, .., e_r ( r は 0 でもよい ) が線型独立ならば、これに何個かのベクトルをつけ加えて基底にできる # { 0 } は、そもそも基底が存在しない.. proof) V は有限次元 a_1, .., a_k が存在して V のベクトルは a_1, .., a_k の線型結合で表せる V の全てのベクトルが e_1, .., e_r の線型結合で 表すことができる時 e_1, .., e_r は定義により基底 表すことができない時 実は、 a_1, .., a_n の中で表せなものがある ∵ 表せるとすると、3.3 より、任意のベクトルが e_1, .., e_r で表すことができる -> 矛盾 そこで a_1 が表されないようなものとする。 すると、 e_1, .., e_r, a_1 も線型独立。 => 一個ふえた これを繰り返して、表せるようになるまでやる なお、a_i は k 個しかないので、有限でおわる # a_i が全部入れば、必ず表される # => 通常は、全部じゃなくて途中で止る [系 3.5] V \ne { 0 } であれば、基底が存在する # 実は、基底があれば、その取り方は、無数にある # -> この後、証明するように、取りかたは無数にあっても本数は一定に定まる。 # 以下、その事を証明したいので、その準備を行う [定理 3.6] \phi : V -> V' : 同型対応 の時 a_1, .., a_k \in V が線型独立 => \phi (a_1), .., \phi(a_k) も線型独立 a_1, .., a_k \in V が線型従属 => \phi (a_1), .., \phi(a_k) も線型従属 proof) c_1 a_1 + .. + c_n a_n = 0 を線型関係とする。 これを\phi で写して、線型性を利用して分ると c_1 \phi(a_1) + .. + c_n \phi(a_n) = 0' ( 0' は V' の零ベクトル ) すなわち、これは V' の線型関係。もちろん、\phi^{-1} で戻すこともできる 一方で自明でない解があれば、他方でも自明でない解があるので、 従属性が必要十分条件になっている。 同様に独立性も必要十分条件。 [定理 3.7] V が n 個のベクトルからなる基底を持てば V と K^n は同型 proof) を V の基底とすれば、 x = x_1 e_1 + .. + x_n e_n ( 一通り !! ) なので \phi : V -----------------------> K^n \in \in x = x_1 e_1 + .. + x_n e_n |--> x_1 ( x_2 ) .. x_n という対応を考えると、 一対一写像 上への写像 線型性が成立 がそれぞれ、解るので、この \phi は同型対応 # これで、ほぼ、準備は終り [3.8] K^n に対応して n 個より多くのベクトルは線型従属である。 特に n \ne m => K^n と K^m は同型でない proof) a_1, .., a_m \in K^n とする 斉次一次方程式 x_1 a_1 + .. + x_n a_n = 0 を考えると、これは、 未知数の個数 m 個 式の個数 n 個 係数行列を A=(a_1, .., a_n) とすると、 自由度 = m - rank A > 0 すなわち、 自明でない解がある よって、 a_1, .., a_m は従属 # これで、前半が示せた ( 次は、後半 ) いま K^m と K^n が同型とすると、同型対応 \phi が存在 e_1, .., e_m \in K^m とすると、[3.6] より \phi(e_1), .., \ph(e_m) が独立。一方、前半より、これは従属、すなわち矛盾。 よって、K^m と K^n が同型ならば m = n ということになる。 # やっと準備が終った [定理 3.9] K-線型空間 V が n 個数のベクトルからなる基底を持てば、n 個よ り、多くのベクトルは線型従属である。特に、V の任意の基底は n 個のベクト ルよりなる。 proof) [3.7] より、 \phi : V -> K^n : 同型対応 a_1, .., a_m ( m>n ) を取ると、 \phi ( a_1 ), .., \phi ( a_m ) は [3.8] より従属よって、a_1, .., a_m も従属 # こで、前半はできた V が m 個のベクトルからなる基底をもてば K^m == V == K^m より、[3.8] より m=n # 本数が決っているのでそれに名前を付ける [定義] V の基底を含むベクトルの個数 n を V の次元 ( dimension ) と呼び dim V で表す。 # 最初に無限次元と有限次元に大きく分類した # 無限次元も更に分類できるのだが、有限の場合は、この次元で分類する # 以下、前回やった線型空間の次元を調べてみる 例 1 これは、基底がないのだが、ないことを 0 本と考えて dim {0} = 0 と决める 例 2 V^2, V^3 の次元は、それぞれ 2 と 3 dim V^2 = 2 dim V^3 = 3 例 3 K^n, K dim K^n = n が基底になる。 dim K = 1 例 4 V = M_m,n(K) == K^{mn} なので dim M_m,n(K) == mn 別の表現で、 E_ij = ( e_ij ), e_kl = 1 ( k=i, j=l の時 ) / 0 (その他) # ij 要素だけ 1 で残りは 0 の行列 を考えると、 は V の基底になる。これは mn 個あるので次元も mn 例 5 A \in M_mn(K) V = { x \in K^n | Ax=0 } dim V = n - rank A # 前期にやった、連立方程式の不定のパターンのベクトルの本数 # => 実はこのベクトルが自動的に、基底にもなっている 例 6 P(K), P_n(K) この中から、有限個の要素を取り出すと、その要素の次数の最大 値を k とすれば、k より大きい次数の要素はこれらで表すことができない 詰まり有限の基底が存在しないので無限次元 一方、P_n(K) の場合は、 1, x, .., x^n が基底になるので、n+1 次元 == 次回は、例の続きをし、その後次元の様々な性質を行う。