# 線型空間の話をしていた # 代機 B では、有限次元のものしか扱わない # 線型空間には、基底があり、有限次元の線型空間の次元は、この基底の個数 [例 7] A : 集合 V : { T : A -> K } A が無限集合の時 1 ( x = a ) T_a(x) = { 0 ( x \ne a ) とすると、 { T_a | a \in A } は線型独立 よって、V は無限次元 A が有限集合 { a_1, .., a_n } とする。 は基底 よって dim V = n proof) 線型独立は明か # よって、T_{a_i} で張れることを示す T \in V の時 T(a_j) = c_j (\for all j) とすると T = c_1 T_{a_1} + .. + c_n T_{a_n} と、線型和で表現できる # 関数全体の集合も大切なのだが、無限次元なので、今年は対象外 [例 8] # 数列で、初項を 0 で始めるか 1 から始めるかは、流儀と状況により決る # Text では 0 で始めることが多いので、ここでも 0 から始めることにする V = { {a_n} : 実数列 } に対して、 e_0 = { 1, 0, 0, .. } e_1 = { 0, 1, 0, .. } e_2 = { 0, 0, 1, .. } ... とする。 # この数列は、全て、収束する ( なぜなら、ある n 以後は、0 になるので、 # どれも 0 に収束する ) { e_1, e_2, .. } は線型独立 よって V は無限次元 ここで、 W : { {a_n} \in V | 収束列 } とすると、 e_i \in W なので、 W も無限次元 # 収束する数列も無限次元なので、これも今年は対象外 [例 9] # こまで、無限次元で、対象外だったので、有限次元の例 V = { {x_i} | k 次元の漸化式で定義 } [k 次元の漸化式] x_{n+k} + a_{k-1}x_{n+k-1} + .. + a_0 x_n = 0 まず、 e_0 〜 e_{k-1} を考えるとこれらは、この漸化式を満すので V の要素 これらは、互いに独立なのも明か # 0 〜 k-1 項目を考えると、一つだけ 1 で、他は 0 なので、 # 0 から線型和で 1 を作ることができない関係上、独立とな # る。 逆に、V の要素は、は、最初の k 個が分れば、決ってしまうので、 が基底。 [例 10] 線型微分微分方程式の解集合 # 微分方程式は、初期値をきめれば、解が一意に決ることが解るのだが、それ # は微分方程式論で学ぶので、ここではふれない f_i = \frac{d^i y}{d^i x}(0) = \delta_{i,j} とすれば、 が基底となる # この最後の例は、微分方程式の内容をかなりしらないと理解できないかもし # れないので、その時にもう一度考えよう。 ここまでで、前回の残り、次の話は「基底の話」 基底の取りかたは、無限通りある。 V : K-線型空間とし、二つの基底 E, F を考える E = F = V は n 次元なので V^n と同型になるので、同型対応が存在し、 \phi : V -> K^n 同型対応 ( E による ) \psi : V -> K^n 同型対応 ( F による ) となる。 当然、K^n から K^n への変換 \phi \psi^{-1} を考えると これは、K^n から K^n 同型対応で、あり、これは、行列が対応する この行列を P とすると、 \phi \psi^{-1} = T_P であり、P は正則 この P を「E -> F の基底の取り換え行列」と呼ぶ # [注意] この基底の取り換え行列を求めよという問題がよくでるので身に付けておく !!! # 以下、取り換え行列の求め方 x = x_1 e_1 + x_2 e_2 + .. + x_n e_n \in V = y_1 f_1 + y_2 f_2 + .. + y_n f_n となる ( これは、E,F が基底だから )。 一方、 P = ( p_ij ) とすると、 x_1 y_1 (x_2) = P (y_2) .. ... x_n y_n となる。 よって、特に x=f_i の場合を考えると y_1 0 .. .. ( y_i ) = ( 1 ) .. .. y_n 0 となると、 x_1 0 p_{1i} .. ... .. (x_2) = P ( 1) = ( p_{i} ) .. ... .. x_n 0 p_{i} よって f_i = p_1i e_1 + .. + p_ni e_n ... (3) # この関係式 (3) をもって、取り換え行列の定義にする場合もある 逆に、基底 E= と、正則行列 P から (3) 式より f_1, .., f_n を决めれば F= は基底になる。 proof) f_1, .., f_n が独立をしめせばよい # 本当は、基底というために、独立と、張ることの二つを示 # す必要があるが、すでに次元が n であることがわかってい # るので、独立なベクトルが n 個あったら、その時点で、基 # 底になってしまう ## 独立であることを示すには、自明な線型独立しかないことを示せばよい c_1 f_1 + .. + c_n f_n = 0 とする、(3) より c_1 (\sum_{j=1}^n p_ij e_j ) + .. = 0 # 足し算は順番をかえても構わないので、順番を変更して、ベクトルをまとめてやる (c_1 p_11 + .. + c_n p_1n)e_1 + .. = 0 ここで、 P (c_i) = (d_i) とすると、これは、 d_1 e_1 + .. + d_n e_n = 0 を意味し、これは、自明な関係 d_1 = .. = d_n = 0 しかない。 更に、P が正則なので、逆行列を両辺にかければ c_1 = .. = c_n = 0 よって、独立 # E->Fのかわりに、F->E を考えた場合、その変換行列は、P^{-1}となる。 # 今度は基底が三つあったらどうなるか ? G= : V の基底 とし、 F->G の取り換え行列を Q とすれば、 E->G の取り換え行列は PQ V から K^n への同型対応を \kai とすれば、 \phi \kai^{-1} = (\phi \psi^{-1} ) ( \psi \kai^{-1} ) = T_P T_Q = T_{PQ} [例] K^n の基底 E_n = { e_1, .., e_n } は自然な基底となる 一方、p_1, .., p_n を独立とすると、 E = は基底になる。 F -> E の取り換え行列を考えると、式(3)より p_1i P_i = ( p_2i ) ... p_ni となるので、 P = ( p_1, .., p_n ) となる。 [問 1] K^3, 1 2 1 E=< (0), (1), (1) > 1 0 1 3 4 3 F=< (-1), (1), (-2) > 4 8 6 # これは、直接求める方法と、例を利用する方法の二つがある ## が、結局同じことになる。 <答> (3) より、 3 1 (-1) = P_11 (0) + .. + 4 1 # 結局連立方程式になるので、それを解けばよい # ただ、まとめると、逆行列の計算になる まとめると F = E P となる。よって、 P = E^{-1} F となる。がこれは、「例」の結果から得られる。 # 問 1 の形で、簡単にもとめられる場合も多いが、この形で解けない場合もある # それが問 2 の問題 x_1 V = { (x_2) | x_1 + x_2 + x_3 = 0 } x_3 を考えると、 1 1 E = < (-1), ( 0) > 0 -1 0 1 F = < ( 1), ( 1) > -1 -2 は共に、基底となるので、この基底の取り換え行列を考える (3) より連立方程式がたてられるので、それで解くと P = ( -1 -1 ) 1 2 となることが解る。 # この場合は、逆行列のやりかたでは解けない !! # 逆行のやりかた以外に、これの方も解き方を覚える !! == # 時間が多少あまったので、章末問題を解く 問1 ロ) | x a_1 a_2 .. a_n | | a_1 x a_2 .. a_n | | | | a_1 a_2 .. x | ## やりかたとして、多項式の性質を利用する場合と、行列式の展開を利用するやりかたの ## 二通りがある。 # まずは、行列の展開で考える 一列目に二列目以後を加えると、一列目には、共通の x + a_1 + a_2 + a_n がでてくる。 # この「共通因子を外へ出す」という作業は、今回はやらなくてもよいので、省略しても # よいが、これが必要な場合もある。 そこで、その部分を括りだすと、1 が並ぶ | 1 a_1 a_2 .. a_n | ( x + a_1 + a_2 + a_n ) | 1 x a_2 .. a_n | | | | 1 a_2 .. x | 2 列目から 1 列目の a_1 倍を引く 3 列目から 1 列目の a_2 倍を引く .. n+1 列目から 1 列目の a_{n} 倍を引く とすると、下三角行列になる | 1 0 0 .. 0 | ( x + a_1 + a_2 + a_n ) | 1 x -a_1 0 .. 0 | | | 1 a_2-a_1 .. x -a_n | よって、対角要素の積で ( x + a_1 + a_2 + a_n )(x-a_1) .. (x-a_n) となる。 # 多項式の性質を利用する場合 行列式を F_{n+1)(x) で表すとすると、これは対角の要素だけをとった x^{n+1} + 0 の項の次数は n+1 で、その係数は、1 となる。 同様に次数 n の係数は 0 となる。 # 一つ外すと、もう一つ外す必要があるので.. よって、 ( x + a_1 + a_2 + a_n ) の因数を持つ。 あとは、x に a_1, .., a_n をいれれば、同じ列がでてくるので、 x-a_i の因数もも持つ。 ハ) F_n(x) = | 1+x^2 x 0 .. | | x 1+x^2 x .. | | 0 x 1+x^2 .. | | 0 .. x 1+x^2 | いきなり展開すると、 (1+x^2)F_{n-1} - x | .. | # 漸化式がでてくれば、あとは下のほうからつくってゆく == # 今日の話では、基底の取り換え行列が重要なので、これが計算できるようにしておく !! 次回は、部分線型空間の話