2008/12/04 「代数幾何 B」、古津 先生 # 遅刻した.. 線型部分空間 [定義] V : K-部分空間 W: V の部分集合が同じ演算に関して線型空間になるとき W を V の(線型)部分空間とよぶ [定理] W (\ne 空)\sub V が部分空間 <-> 1) x、y \in W => x+y \in W 2) x \in W, c \in K => cx \in W [例] {0} は、V の部分空間 V は、V の部分空間 これ以外の部分部分空間を、真の部分空間と呼ぶ [例1] A \in M_{m,n}(K), W = {x \in K^n | Ax=0 } W \sub K^n = V とすると、 W は V の部分空間で、dim W = n - rank A [例2] V = M_n(K) n 次正方行列 dim V = n^2 W_1 = { x \in V | t x = x } : 対称行列 W_2 = { x \in V | t x = - x } : 交代行列 は、V の部分空間 proof) # 先の定理を利用して、示す。 X, Y \in W_2 の時 t(X+Y) = tX + tY = -X + -Y = - (X+Y) よって X+Y \in W_2 t(cX) = c(tX) = c(-X) = -cX = - (cX) よって cX \in W_2 # 部分空間を示すのは簡単だが、dim を調べるのはそれほど簡単ではない。 E_{i,j} : (i,j) 成分が 1 で残りは 0 とする は V の基底になる は W_1 の基底 は W_2 の基底 # 本当に作れるかは、各自、確認する よって、 dim W_1 = nC2 + n = \frac{n(n+1)}{2} dim W_2 = nC2 = \frac{n(n-1)}{2} # 次元を計算するには、基底を具体的に求めて、その個数を数えるのが簡単 [例] W_3 = { X \in V | tr X = 0 } とすると、W_3 は V の部分空間 # tr の話は 2, 3 章の話題なので、忘れているかもしれないが、4 章で利用するので復習する proof) X, Y \in W_3, a \in K に対して Tr( X + Y ) = Tr(X) + Tr(Y) = 0 + 0 = 0 よって X+Y \in W_3 Tr( c X ) = c Tr(X) = c 0 = 0 よって、cX \in W_3 よって、W_3 は、部分空間 次元を考える { E_{i,j} | i \ne j } \cup { E_{i,i}-E_{i+1,i+1} | i = 1 .. n-1} とすると、W_3 の基底になる。 dim W_3 = (n^2-n)+(n-1) = n^2-1 # 等式が一つふえると、だいたい、次元が一つ減る [例 3] W \sub V^3 W はある平面に含まれるベクトル全体 dim W = 2 # 部分空間の性質は沢山あるが、どれもはずせない大事な性質ばかり # 以下、W かいたらすべて、V の部分空間とする。 [定理 4.1] W_1, W_2 : V の部分空間 => W_1 \cap W_2 : V の部分空間 proof) x, y \in W_1 \cap W_2 とすると、 x, y \in W_1 なので、 x+y, cx \in W_1 同様に x, y \in W_2 なので、 x+y, cx \in W_2 よって、 x, y \in W_2 なので、 x+y, cx \in W_1 \cap W_2 # 和はそのままでは、部分空間になるとかぎらない。しかし、足し算に対応す # るもの欲しいのでそれを作る [定理 4.2] S : V の部分集合で空集合でないものとする このとき = { c_1 x_1 + c_2 x_2 + .. + c_k x_k | c_i \in K, x_i \in S } と定義する # この記号は、基底と同じかきかたで、混同しやすいが、これは基底ではない。 # 現れるために、口頭で、注意をするので、区別する。 と、 は V の部分空間 proof) x, y \in , a \in K とすると x = c_1 x_1 + .. + c_k x_k y = d_1 y_1 + .. + d_k y_k なので、 x + y, a x \in となる。 この を 「S から生成される / S によって張られる」部分空間と呼ぶ。 # 実は、この より、この の名前の方が重要 # ということで「和」に相当するもの考える [定理 4.3] V の部分空間 W_1, W_2 に対して、W_1 と W_2 の和空間 ( W_1 + W_2 ) を次のように 定義する。 W_1 + W_2 = { x_1 + x_2 | x_1 \in W_1, x_2 \in W_2 } すると、これは、線型空間 # 和集合は、部分空間にならないのだが、そのかわりに和空間を考える # 証明は一つ前と殆ど同じ [定理] W_1 + W_2 = < W_1 \cup W_2 > # こんどは、ちょっと方向をかえて、線型空間を利用する [定理 4.4] T : V -> V' : 線型空間 T(V) = [ Tx | x \in V } = Im T : T による V の像 ( イメージ ) # Im V は、複素数の虚部とまちがえそうだが、対象が線型変換なので、区別できる は、V' の線型部分空間 proof) x', y' \in T(V), a \in K とする \exist x, y \in V s.t. x' - Tx, y' = Ty 一方、T の線型性質より T(x+y) = Tx + Ty = x' + y' \in Im T T(cx) = c Tx = c x' \in Im T よって、T(V) は、V' の部分線型空間 T^{-1}(o') = { x \in V | Tx = o } : Ker T V' の零元 o' の T による全の逆像 ( T の核 : Kernel ) は、V の部分空間 proof) x, y \in Ker T, a \in K とすると T(x+y) = Tx + Ty = 0 + 0 = 0 T(ax) = a(Tx) = a 0 = 0 よって、 x+y, ax \in Ker T [定理] W = { x \in K^n | Ax = 0} = T^{-1}_A (0) : Ker T_A # 線型写像 T があると、定義域 ( Ker T ) と値域 ( Im T ) に一つずつ部分 # 空間ができるじつは、これには関係がある。 [定理 4.5] dim V = dim Im T + dim Ker T proof) E = : Ker T の基底とする e_1, .., e_s は V で線型独立 # 独立なベクトルがあれば、それから、基底が作れることを前にやったのでこれを利用すると.. これに付け加えて が V の基底とできる この時 E' = が Im T の基底であることを示せばよい 実際、 x' \in Im T とすると、 \exist x \in V s.t Tx = x' となる。 x は、V の元なので x = x_1 e_1 + .. + x_s e_s + x_{s+1} e_{s+1} + .. + x_n e_n これを、T で写すと、T の線型性質より、 Tx = x_1 T(e_1) + .. x_s T(e_s) + x_{s+1} T(e_{s+1}) + .. + x_n T(e_n) ところが、e_1, .., e_s \in Ker T なので、T(e_1) = .. = T(e_s) = 0 よって、 x' = Tx = x_{s+1} T(e_{s+1}) + .. + x_n T(e_n) すなわち、T(e_{s+1}) + .. + T(e_n) は、Im T を張ることがわかる あとは、これらが独立であることを示せばよい。 c_{s+1} x_{s+1} + .. + c_n x_n = 0 とすると、 T (c_{s+1} x_{s+1} + .. + c_n x_n ) = T(0) = 0 よって、 c_{s+1} x_{s+1} + .. + c_n x_n \in Ker T よって、 \exist c_1, .., c_s s.t. c_{s+1} x_{s+1} + .. + c_n x_n = c_1 e_1 + .. + e_s x_s すわわち、 - c_1 e_1 - .. - e_s x_s + c_{s+1} x_{s+1} + .. + c_n x_n = これは、e_1 から e_n の線型関係であるが、これらは V の基底なので 独立、すなわち、自明な関係しか存在しないので -c_1 = - c_2 = .. = c_n = 0 よって、T(e_{s+1}) .. T(e_n) は独立 よって、 dim Im K + dim Ker T = dim V [定理 4.6] 1) W_1 \sun W_2 => dim W_1 \le dim W_2 2) W_1 \sun W_2, dim W_1 = dim W_2 => W_1 = W_2 proof) (1) : W_1 の基底 e_1, .., e_r は W_2 で、線型独立 これにつけくわえて e_1, .., e_r, e_{r+1}, .., e_{n} は、W_2 の基底 よって、 dim W_1 = r \le s = dim W_2 (2) r = s より が W_1 の基底 x ( \in W_2 ) = \sum_{i=1}^n c_i e_i \in W_1 よって、 W_2 \sub W_1 よって、 W_1 = W_2 [定理 4.7] dim W_1 + dim W_2 = dim(W_1+W_2) + dim(W_1 \cap W_2) # これは大変重要な定理 !!! 使えるようにしておくこと # 証明は大変なので、時間があったらやる # 教科書にはのっているので、自分でおっかけてもよい [定義] V = W_1 + W_2 で、 V のベクトルを W_1 と W_2 のベクトルの和として 表すしかたが一意的の時、 V は W_1 と W_2 の「直和」と呼び V = W_1 \.+ W_2 = W_1 +o W_2 で憐らす。 # 直和の記号は、Text では、\.+ だが他の Text や講義では「+O」を # 利用するので、講義では、この +O を使う # 直和の定義と同値な記述が二つある [定理 4.7] V = W_1 + W_2 とする、以下は同値 1) V = W_1 +o W_2 2) W_1 \cap W_2 = {0} 3) dim V = dim (W_1 + W_2) = dim W_1 + dim W_2 proof) # 2) <-> 3) 2) W_1 \cap W_2 = { 0 } <-> dim (W_1 \cap W_2) = 0 <-> dim (W_1 + W_2) = dim W_1 + dim W_2 # 定理 4.6 より # 1) <-> 2) # ( <= ) W_1 \cap W_2 = { 0 } とする、 x ( \in V ) = x_1 + x_2 = y_1 + y_2 x_1, y_1 \in W_1, x_2, y_2 \in W_2 と表し方が二通りにかけたとそる x_1 + x_2 = y_1 + y_2 なので x_1 - y_1 = y_2 - y_1 ところが 左辺は、W_1 の要素で、右辺は W_2 の要素 これが等しいのでこの値は、W_1 と W_2 の共通要素となる ところが、W_1 と W_2 の共通要素は 0 のみなので、 x_1 - y_1 = y_2 - y_1 = 0 すなわち、 x_1 = y_1, x_2 = y_2 ということで、実は、同じ表現しかできていない # ( => ) a ( \ne 0 ) \in W_1 \cap W_2 とする V \in 0 = 0 + 0 = a + (-a) これは、表し方が一通りであることに矛盾する == 線型空間の話を来週やり、再来週は、線型写像の話をする