計量空間の話 # 最初に内積を入れる # 途中で、シュミットの直交化の話をするが、それが重要 == [定義] V : K-線型空間 が公理 (IV) を満す時、「計量空間」と呼ぶ # 公理(IV) は、要するに内積の定義で、「計量空間」とは、「内積の # 定義されている線型空間」の事 (IV) x, y \in V に対して 内積 (x,y) \in K が定まり、次を満す (1) (x,y_1+y_2) = (x,y_1) + (x,y_2) (x_1+x_2,y) = (x_1,y) + (x_2,y) # 内積の計算をするの、和を外に出したい (2) (c x,y) = c (x,y) (x, c y) = \bar{c} (x,y) # このバーを忘れると大変 !! (3) (y,x) = \bar{(x,y)} # このバーも忘れないように !! (4) (x,x) は、正または 0 (x,x) = 0 -> 0 # K が C の時でも、必ず、自分自身との内積は実数でかつ非負 # この公理を満していれば、内積とよんでよい # 関数空間の内積には、色々な取りかたがある ( 積分で定義したりする ) # 実計量空間を、ユークリッド空間、複素計量空間を、ユニタリー空間と呼ぶ [定義](長さ) |x| = \sqrt{(x,x)} を x の長さと呼ぶ [定義](直交) (x,y)=0 のとき、x と y は直交すると呼ぶ # 関数どうしの角度なんて不思議な感じだが... [例 1] K^n では、自然に ^tx \bar{y} で内積をいれれば、計量空間 [例 2] V^2, V^3 は計量空間 (x,y) = |x| |y| \cos{\thita} # 高校の時に学んだ、内積の一般化になっている [例 3] f,g \in V=P_n(R) に対して、 (f,g) = \int_{-1}^{1} f(x) g(x) dx とすると、内積。 proof) # (1) 〜 (3) は積分の性質から当りまえ (4) だけは調べる必要がある (f,f) = \int_{-1}^{1} |f(x)|^2 dx = 0 => f(x) == 0 # f(x) は多項式だから、連続。なので、一点でも 0 でない所があれば、この積分は 0 にならない !! だから、積分が 0 になるのは、恒等的に 0 になる場合だけ [定理 6.1] (シュワルツの不等式) |(x,y)| <= |x| |y| proof) 以前やった、証明がそのまま利用できる # 以前の証明では、内積の性質 ( 上記の (IV) ) だけしか利用していないので |x+y| <= |x| + |y| proof) 以前やった、証明がそのまま利用できる # 以前の証明では、内積の性質 ( 上記の (IV) ) だけしか利用していないので # このように、「内積の性質(IV)」だけを利用しているので、内積の # 定義とは無関係に、成立することになる ( つまり、積分で定義して # も同じ結果になる ) [定理 6.2] x_1, .., x_n が 0 でないベクトルであり、互いに直交すれば x_1, .., x_n は線型独立 proof) c_1 x_1 + .. + c_n x_n = 0 とする。この時、両辺と x_i の内積を取ると、x_j ( j \ne i ) は、 x_j と直交するので、その内積は、全て 0 になるので、 c_i ( x_i, x_i ) = ( x_i, 0 ) ところが、0 との内積は 0 なので、右辺は、0 。一方、x_i \ne 0 なので (x_i,x_i) \ne 0 よって、 c_i = 0 これは、任意の i で成立するので、これは独立を意味する。 [定義] ( 正規直交基底 ) c_1, .., c_n \in V が互いに直交で、長さが 1 の時、これを正規直交系と呼ぶ 特に、c_1, .., c_n が V の基底の時、これを正規直交基底と呼ぶ # 「正規直交基底」は非常に重要な概念で、2, 3 年でもよくでてくる # これ自身が重要なので、これの作りかたも重要 # これの作り方の中で、有名なのがシュミットの直交化も重要 # 情報系でも使う事があるので「知らない」は困る !!! # 「シュミットの直交化」は重要なので、後期試験に出す !!! (*) e_1, .., e_r \in V が正規直交系で、a \in V が、e_1, .., e_r と独立とする。この時、この e_1, .., e_r と a から、e_1, .., e_r, e_{r+1} が、正規直交系となるように、e_{r+1} を、e_1, .., e_r, a から求める方法。 [手順] [1] a' = a - (a, e_1) e_1 - .. - (a, e_r) e_r とすると、 a' は e_1, .., e_r と直交する。 proof) # 実際に a' と e_r の内積を取ると 0 になることが解る (e_i,a') = (e_i,a) - (a,e_i)(e_i,e_i) = 0 [2] e_{r_1} = \frac{a}{|a|} とすると、 e_1, .., e_{r+1} は正規直交系となる。 [問題 例] が V の基底とするとき、これをシュミットの直交系を 用いて、正規直交系を作れ # [注意 !!] この順は、変更しては、ならない ( これは試験の時だけの注意.. ) [定理 6.3] V \ne { 0 ] は、正規直交系を持つ e_1, .., e_r : 正規直交系に付け加えて、正規直交基底がつくれる。 proof) e_1, .., e_r は線型独立なので、独立な a_{r+1}, .. , a_n を V の基底にできる シュミットの直交化を用いてできた e_1, .. e_r, e_{r+1}',.., e_n' は、正規直交基底 # これは、昔やった、正射影とちょっとだけ関係がある a_1, .., a_3 \in V^3 とすると。 シュミットで、作ったベクトルは、 a_2' = a_2 - (a_2,e_1) e_1 = a_2 - \frac{(a_2,e_1)}{(e_1,e_1)}e_1 となり、正射影の形になっている # じつは、シュミットの直交系は、正射影を繰り返して作っている 更に、平面への射影を考えると a_3' = a_3 - (a3, e_1)e_1 - (a_3,e_2)e_2 = a_3 - { \frac{(a_3,e_1)}{(e_1,e_1)} + \frac{(a_3,e_2)}{(e_2,e_2)} } となり、やはり、(平面への..) 正射影 # 次の問いは解けるようにしておく必要がある !!! # 次の問題が後期試験に出る !! 問 1 1 1 R^3 の基底 < ( -1 ), ( 0 ), ( 2 ) > 0 -1 3 [答] \frac{1}{\sqrt{2}} \frac{1}{\sqrt{6}} \frac{1}{\sqrt{3}} < ( -\frac{1}{\sqrt{2}} ), ( \frac{1}{\sqrt{6}} ), \frac{1}{\sqrt{3}} ) > 0 -\frac{2}{\sqrt{6}} \frac{1}{\sqrt{3}} [例 5] P_n(R) において、 F_k(x) = \frac{d^k}{dx^k} (x^2-1)^k : k 次多項式 # これは、単に基底というだけでなく、直交している # 基底は簡単だが、直交は簡単でないので、示すことにする proof) G_k(x) = (x^2-1)^k とすると、 F_k(x) = G_k^}(k) であり、 i= l の時 # 実は、直交を示すには、k > l で十分で、k=l の場合を考える必要はない # しかし、後で、k=l の場合が必要になるので、ここで一緒にやっておく 内積 (F_k, F_l) = \int_{-1}^{1} F_k(x) F_l(x) dx を考えると、部分積分を用いて、 = [ G_k^(k-1)(x) F_l(x) ]_{-1}^1 - \int_{-1}^1 G_k^{(k-1)} F_l'(x) dx ところが、前は、0 なので、結局後ろの部分だけが残る。 これを再び、部分積分を利用して l 回計算してゆくと... = (-1)^l \int_{-1}^1 G_k^{(k-l)} F_l^{(l)} (x) dx ここで、 F_l^{(l)} = G_l^{(2l)} = (2 l)! # G_l は、2l 次式で、2l 回微分すれば、定数になる !! よって、(k>l) であれば、 = (-1)^l (2l)! \int_{-1}^1 G_k^{(k-l)} = (-1)^l (2l)! [G_k^{(k-l+1)}]_{-1}^{1} = 0 # ここまでで、直交することは解った、次は正規にしたい。その場合、自分自身との内積を求めて、自分自身を割ればよい。。そこで、先の k=l の場合を考える k=l の時 (F_k,F_k) = (-1)^l (2l)! \int_{-1}^1 (x^2-1)^k dx ここで、この積分部分を I_k とすると、部分積分を利用して、 I_k = [ x(x-1)^k ]_{-1}^1 - \int_{-1}^1 x k (x^2-1)^k 2k dx = -2k \int_{-1}^1 x^2 (x^2-1)^k dx ここで、 x^2 = x^2-1 + 1 と考えると、 = -2k ( I_k + I_{k-1} ) となるので、 I_k = - \frac{2k}{2k+1} I_{k-1} よって、 I_k = (-1}^k \frac{2^{k+1}}{2k+1} \frac{(k!)^2}{(2k)!} これを元の式に代入すると、 (F_k,F_k) = \frac{2^{2k+1}(k!)^2}{2k+1} よって、 |F_k| = \sqrt{\frac{2}{2k+1}} 2^k k! よって、 E_k(x) = \frac{F_k}{|F_k|} = \sqrt{\frac{2}{2k+1}} 2^k k! \frac{d^k}{dx^k} (x^2-1)^k とすれば E_1, .., E_n が正規直交系列。 実は、P_n(R) の基底 <1,x,x^2,..,x^n> は自然だが、正規直交基底ではない。 しかし、これからシュミットの直交化をすれば、実は、上記の正規直交基底に一致する。 # 証明は、面倒なので、とばす。 # 内積を積分で定義すると、線型空間で、微積の話が出てくる !! この、直交基底は、有名で、名前がついており「ルジャンドルの多項式」 # [注意] 複素数に注意 !!! # 内積が沢山出るので、複素数の内積で失敗するとボロボロになる # => 複素数の方で練習しておくこと !!