代数学幾何学 A (2009/05/14) 古津先生 前回まで 2 次行列 <--> 線型変換 ( 対応が一対一になっている ) 3 次行列 の途中だった。今日は、その続きから == 例: ( 2 次元と同様射影子を考える ) a ( \ne 0 ) \in V^3 を考える 空間ベクトル x から a に平行な直線への射影子 ( a への射影子 ) を T とすると Tx = \frac{(x,a)}{(a,a)}a : x の a (と平行な直線) への正射影 # 図が、平面の場合とまったく同じなので、全く同じ結果になる # 空間は、3 次元なので、直線だけでなく、平面へも影を落すことができる [定義](平面への射影子) b, c \in V^3 : 線型独立に取る 空間ベクトル x から b, c に平行な平面への射影子 ( b,c の張る平面への射影子 ) を S とする Sx : x の b, c の張る平面への正射影 # b,c で表すより、a を利用した方が簡単な形になるので、こちらで考えることにする a を この平面の法線ベクトルとし、そこへの射影子を T とすると、 Tx + Sx = x となるので、 Sx = x - Tx = x - \frac{(x,a)}{(a,a)}a となる。 [問 2] a v = ( b ) で、a^2+b^2+c^2=1 の時、T を a への射影子とすると、 c T に対応する行列 A を求めよ。 a^2 T e_1 = \frac{(e_1,v)}{(v,v)}v = \frac{a}{1}v = ( ab ) ac ab T e_2 = \frac{(e_2,v)}{(v,v)}v = \frac{b}{1}v = ( b^2 ) bc ac T e_3 = \frac{(e_3,v)}{(v,v)}v = \frac{c}{1}v = ( bc ) c^2 a^2 ab ac よって A = ( ab b^2 bc ) ac bc c^2 # 毎回やることは、同じ、e_1, e_2, e_3 の像を求めて、それを縦に並べる [問 3] a, b が直交しているとする、a, b に対する射影子を T, S とすると イ) T^2 = T, S^2 = S proof) T^2x = T(T(x)) = (T(\frac{(x,a)}{(a,a)}a)) = \frac{(x,a)}{(a,a)}T(a) = \frac{(x,a)}{(a,a)}\frac{(a,a)}{(a,a)}a = \frac{(x,a)}{(a,a)}a = T(x) S^2x = S(S(x)) = S(x-T(x)) = Sx - ST(x) = Sx - (T(x)-T^2(x)) = Sx - ( T(x)-T(x) ) = Sx - 0 = Sx ロ) TS=ST=0 は上通り == 行列式 # 行列式が終ると、一章がおわることになる # 行列式は、何次でも定義されるが、最初は、平面の場合に関して行う [定義] ( 2 次の行列式 ) A = ( a b ) に対して、 ad-bc を A の行列式と呼ぶ c d A の行列式を | a b |, |A|, det A, det(u,v) ( ただし u = (a), v = (b) ) c d c d # A を (u,v) とも書き込む などと表す # }A| は 行列 A の行列式 ( であって、A の絶対値 ではない ) # | |A| | は、行列 A の行列式の絶対値となる、これは紛らわしいので、この場合は、普通、 |det A| と書く [定理] u = ( a ), v = ( b ) c d とすると、 u,v が線型独立 <-> det( u, v ) \ne 0 proof) # 対偶を示す u, v が線型従属 <-> u, v の方向が同じ <-> a:c = b:d <-> ad-bc = 0 [注意] |A+B| は |A| + |B| とは一般にはならない。 # しかし |AB| = |A| |B| となるので、証明しておく [定理] |AB| = |A| |B| # これは、重要な性質 proof) A = ( a b ), B = ( p q ) c d r s とすると、 AB = ( ap + br aq + bs ) cp + dr cq + ds となる。 |AB| = (ap + br)(cq+ds) - (aq+bs)(cp+dr) = (acpq + adps + bcqr + dbrs) - (acpq+adqr+bcps+vdrs) = (ad-bc)(ps-qr) = |A| |B| # では、行列式とはどんな幾何的な意味をもっているか ? # それを示すには、もう少し準備が必要 v_1 = ( x_1 ), v_2 = ( x_2 ), X = (v_1, v_2) y_1 y_2 とする。 一般に AX = ( A v_1, A v_2 ) なので、 # よくわからなければ、成分で表示して、確かめてみる これから、 |AX| = det( A v_1, A v_2 ) || |A| |X| = |A| det( v_1, v_2 ) v_1, v_2 が作る平行四辺形の面積が、X の行列式の絶対値 符号の決め方 v_1 から v_2 に回る場合は、A の行列式は正逆なら負 v_1, v_2 の A による像 A v_1 A v_2 が作る平行四辺形の面積は、 | det( A v_1, A v_2 ) | なので、上の式は、これが、|det A| 倍になっていることを表す。 # この事から、行列式は次の二つの情報をもっていることが解る # | det A | は、面積が何倍になるか # det A の符号は、ベクトルのなす角の符号 # 負の時は、角の方向が逆になる [定義] ベクトル積 # ベクトル積 <-> スカラー積 # (外積) <-> (内積) # ベクトル積は、空間の時だけ定義される。二次、四次以上では定義されない # 物理学では、空間を扱い、良く、ベクトル積を扱うので、ここでもやっておく V^3 の独立な二つのベクトル a, b に対して、次の三つ条件 1), 2), 3) をみたす ベクトル c を a, b のベクトル積(外積)と呼び a \times b で表す 1) c と a, b は共に垂直 # これで、c の方向は一通りに決るが、向き(+/-)が決まらない 2) a, b, c は右手系 # これで、向きも定まるので、後は大きさが決ればベクトルが決る 3) c の長さは、a,b の作る平行四辺形の面積 [定理] b \times a = - ( a \times b ) # c = a \times b とすると、 a, b, c は右手系 # よって、b, a, c は左手系になってしまう。 # 右手系にしたければ、 b, a, -c と向きをかえるために、負号をつければよい # よって、外積は不用意に、順番を交換してはならない [定理] a a' v - ( b ), v' = ( b' ) c c' の時、 | b b' | bc' - cb' | c c' | v \times v' = ( | c c' | ) = ( a'c - a c' ) | a a' | | a a' | ab' - a'b | b b' | proof) 右辺が外積の定義の三つの条件をみたすことを示せばよい。 [定理] e_3 = e_1 \times e_2 [定理] (c x) \times y = c ( x \times y ) (x_1 + x_2) \times y = ( x_1 \times y ) + ( x_2 \times y ) # この後三次の行列式をやる [定義] 独立な a, b, c \in V^3 が張る平行六面体を作る この体積 V は、 V = | ( a \times b, c ) | となる。 この ( a \times b, c ) を A = ( a, b, c ) の行列式と呼ぶ | a_11 a_12 a_13 | | a_21 a_22 a_23 | = a_11 a_22 a_33 | a_31 a_32 a_33 | + a_12 a_23 a_31 + a_13 a_21 a_32 - a_11 a_23 a_32 - a_13 a_22 a_31 - a_11 a_23 a_32 # 三次の行列式が計算できるようにしておく !! [注意] この方法は、3 次まで、高次は大変なので、別の方法を考える [定理] |AB| = |A| |B| # 二次と同様 |A+B| は |A| + |B| とはならない proof) 証明は二次と同様だが、黒板一杯になるくらい大変 !! # 一般には、n 次で証明するが、その場合は、具体的には計算せずに、抽象的な形で行う。 # 同様に、三次の行列式の意味を考えると... X = ( x_1, x_2, x_3 ) とすると、 AX = ( A x_1, A x_2, A x_3 ) で、 |AX| = det( A x_1, A x_2, A x_3 ) || |A||X| = |A| det ( x_1, x_2, x_3 ) で、体積を何倍にするかと、右手系が右手になるかどうかの二つの情報をもっている == [まとめ] V^2, V^3 では、線型変換が行列に対応していることを学んだ さらに行列の性質や、行列式を学んだ 来週からは、この行列の一般化 ( m,n ) 型の話をする ( 2 章 ) 行列の一般化は、更に 3 章で学ぶことになる。 == お知らせ(中間テストをやる予定 オリエンテーションの前後)