代数学幾何学 B (2009/10/15) 古津先生 # 前回から行列式の話がはじまったのだが、結局、準備(置換群の話)だけだった # あと、準備の残りは、問題だけ 問 1 : これは書くのが大変なので、プリントを作くり午後に配ってもらうので、それをみてください。 問 2 : n>2 の時、τ=(1,2) とすると L_τ : S_n -> S_n \in \in σ |---> τσ 偶 奇 奇 偶 この L_τ は、全単射なので、隅置換の数と奇置換の個数が同じなければ矛盾する。 よって隅置換の数と奇置換の個数は同じで、それぞれ n!/2 問 3 : σ = ( 1 2 .. n ) n n-1 .. 1 を考える。 n = 2m) の時 σ = ( 1 2 m m+1 .. n ) n n-1 m+1 m .. 1 = (1 n)(2 n-1)..(m m+1) よって、sgn σ = (-1)^m n = 2m+1) の時 σ = ( 1 2 m m + 1 m+1 .. n ) n n-1 m+2 m + 1 m .. 1 = (1 n)(2 n-1)..(m m+2) よって、sgn σ = (-1)^m 以上をまとめると sgn σ = +1 ( n = 4l, 4l+1 ) -1 ( n = 4l+2, 4l+3 ) # 以上で、準備がすんだので、次に愈々、行列式の定義を行い # 最初は、多項式で、行列式の定義を行い、直に行列の形にする [定義] (多項式の行列式) n^2 個数の変数 x_{i,j} ( i,j = 1,..,n ) の多項式 \sum_{σ \in S_n} sgn σ x_{1,σ(1)}x_{2,σ(2)}..x_{n,σ(n)} を n 次の行列式といい | x_{11} x_{12} .. x_{1n} | | x_{21} x_{22} .. x_{2n} | | .. | | x_{n1} x_{n2} .. x_{nn} | で表す。 # この行列式の定義で、S_n と sgn を使うので、準備が必要だった [例] n=1 の時 |x_{11}| # これは、絶対値の記号と同じだが、ここ # ではあくまでも、行列式を表す = \sum_{σ \in S_1 = {1_1}} sgn σ x_{1,σ(1)} = x_{11} n=2 の時 | x_{11} x_{12} | | x_{21} x_{22} | = \sum_{σ \in S_2} sgn σ x_{1,σ(1)}x_{2,σ(2)} # 個々の項目は二次 ここで S_2 = { 1_2, (1,2) } なので、 = sgn 1_2 x_{11}x_{22} + sgn (1,2) x_{12}x_{21} = x_{11}x_{22} - x_{12}x_{21} # これは、以前にやった二次の行列式と同じ n=3 の時 | x_{11} x_{12} x_{13}| | x_{21} x_{22} x_{23}| | x_{31} x_{32} x_{33}| = \sum_{σ \in S_2} sgn σ x_{1,σ(1)}x_{2,σ(2)}x_{3,σ(3)} ここで S_3 = { 1, ( 1 2 3 ), ( 1 2 3 ), 2 3 1 3 1 2 (2,3), (1 2), (1,3) } なので、 = x_{11}x_{22}x_{33} + x_{12}x_{23}x_{31} + x_{13}x_{21}x_{32} - x_{11}x_{23}x_{32} - x_{12}x_{21}x_{33} - x_{13}x_{22}x_{31} # これは、以前にやった三次元の行列式と同じ # この新しい定義は、以前の定義と同じ結果となるので、拡張になっている。 # 更に、これは、4 次も、一般に n 次でも同じ定義で行ける !! [定義] (行列式 : 一般の行列に対応する行列式) n 次正方行列 A = (a_ij) に対応して \sum_{σ \in S_n} sgn σ a_{1,σ(1)}a_{2,σ(2)}..a_{n,σ(n)} を A の行列式と呼び、 | a_{11} a_{12} .. a_{1n} | | a_{21} a_{22} .. a_{2n} | | .. | | a_{n1} a_{n2} .. a_{nn} | や、 |A|, det A, det(a_1,..,a_n) などで表す。 [定理](対角行列の行列式) 対角要素以外の部分が 0 となる行列の行列式を考える | a_{11} 0 .. 0 | | 0 a_{22} .. 0 | | .. | | 0 0 .. a_{nn} | すると、定義内の単項 sgn σ a_{1,σ(1)}a_{2,σ(2)}..a_{n,σ(n)} の最初の要素 a_{1,σ(1)} は、 σ(1)=1 でないと、その値は 0 となる ( 対角要素でないので.. ) よって、そのような要素を含む単項は 0 なので、総和の時には無視してよい ( 0 は加えても値をかえないので..) 同様にして、 a_{2,σ(2)} に対しても σ(2)=2 でない項が無視できる。 よって、 σ=1 でない場合は、無視してよい。 すなわち、 与式 = sgn 1 a_{11} a_{22}..a_{nn} となる。 [系] |E| = 1 |O| = 0 [定理](0 ベクトルを行あるいは列に含む行列の行列式) A の 一つの行(列)がすべて 0 ならば |A| = 0 proof) 第 i 行がすべて 0 とすると a_{i,σ(i)} = 0 となるので、 |A| = 0 # 列はちょっと面倒 第 j 列がすべて 0 とすると \forall σ に対して i = σ^{-1}(j) とすると A_{I,Σ(I)} = A_{I,J} = 0 となるので、 |A| = 0 # 行列式の定義では、それぞれの行の要素から、ひとつずつとってきている # ところが、後の添字に着目すれば、これは、並べ変えただけなので、 # それぞれの列の要素から、ひとつずつとってきているとも言えること注意 ## これは、よく利用する [定理] (定数倍の行列式) |C A| = C^N |A| PROOF) 行列式の定義の単項(N 項の積)が、すべて C 倍されるから C^N 倍になる # [注意] |-A| = |A| と勘違いしている人がいるが、これは間違い # 正しくは |-A| = |(-1)A| = (-1)^N |A| なので N によって異なる [問] イ) | 0 .. 0 a1| | 0 .. a2 0 | = sgn σ a1 a2 .. an | .. | | an .. 0 0 | ロ) | a b c | | c a b | = a^3 + b^3 + c^3 - 3 abc | b c a | [定理 2.1] |tA| = |A| proof) \sum_{σ \in S_n} sgn σ a_{1,σ(1)}a_{2,σ(2)}..a_{n,σ(n)} # σが S_n 全体を動く場合、σ^{-1}が S_n 全体を動く # すなわち、σ の現れる場所を全てσ^{-1}に置き換えても、足し算の順序は変るが、 # 値そのものはかわらない。そこで、そうしてみる。 \sum_{σ^{-1} \in S_n} sgn σ^{-1} a_{1,σ^{-1}(1)}a_{2,σ^{-1}(2)}..a_{n,σ^{-1}(n)} # σ = ( 1 2 .. n ) # σ(1) σ(2) .. σ(n) # に対する逆置換σ^{-1} は、 # σ^{-1} = ( σ(1) σ(2) .. σ(n) ) # 1 2 .. n # でも表すことができるので、この形で並べても単項内の積の順序がかわる積の値は代らない # そこで、そうしてみる。 \sum_{σ^{-1} \in S_n} sgn σ^{-1} a_{σ(1),1}a_{σ(2)2}..a_{σ(n)n} すると結果は、転置した結果になっているので、同じ。 # この結果はよく利用する。すなわち、列で成立することは行でも成立することを意味する # この根拠はこの 定理 2.1 となる。 [定理 2.2] ( n 重線型性 ) イ) det(a_1, .., a_j + a_j', .., a_n ) = det(a_1, .., a_j, .., a_n ) + det(a_1, .., a_j', .., a_n ) ロ) det(a_1, .., c a_j, .., a_n ) = c det(a_1, .., a_j, .., a_n ) [定理 2.3] ( 交代性 ) τ \n S_n の時 det ( a_{τ(1)}, .., a_{τ(i)}, .., a_{τ(1)} ) = sgn τ det ( a_1, .., a_i, .., a_n ) proof) (左辺) = \sum_{σ \in S_n} sgn σ a_{1,τσ(1)}a_{2,τσ(2)}..a_{n,τσ(n)} = \sum_{σ \in S_n} sgn τ sgn τσ a_{1,τσ(1)}a_{2,τσ(2)}..a_{n,τσ(n)} # sgn τσ = sgn τ # よって、 # sgn σ = sgn τσ / sgn τ # ところが、 # 1/sgn τ = sgn τ # なので、結局 # sgn σ = sgn τ sgn τσ = sgn τ \sum_{σ \in S_n} sgn τσ a_{1,τσ(1)}a_{2,τσ(2)}..a_{n,τσ(n)} # ここで、σ が S_n の全てを動くとτσも全てを動くので、 = sgn τ det ( a_1, .., a_i, .., a_n ) [系 2.4] A の二つの行(列)が一致すれば、|A|=0 proof) # 分りやすい行で示す。列の方は、転置(定理 2.1)を利用して示す a_i = a_j ( i\ne j ) とする。 よって、τ=(i,j) とすると det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = sgn τ det( a_1, .., a_j, .., a_i, .., a_n ) となる(定理 2.3)。 ところが、 a_i = a_j なので、 det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = det( a_1, .., a_j, .., a_i, .., a_n ) 一方、 sgn τ det( a_1, .., a_j, .., a_i, .., a_n ) となる(定理 2.3)。 ところが、 a_i = a_j なので、 det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = det( a_1, .., a_j, .., a_i, .., a_n ) 一方、 sgn τ = -1 なので、 det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = - det( a_1, .., a_j, .., a_i, .., a_n ) となる。 よって、 det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = 0 [系 2.5] A のある行(列) に他の行(列)の定数倍をくわえて得られる行列の行列式は 元の行列 A の行列式 |A| に等しい # R の基本変形をおこなっても、行列式の値はかわらない proof) det( a_1, .., a_i + c a_j, .., a_j, .., a_n ) = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) + det( a_1, .., c a_j, .., a_j, .., a_n ) = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) + c det( a_1, .., a_j, .., a_j, .., a_n ) = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) + c 0 = det( a_1, .., a_i, .., a_j, .., a_n ) = |A| # まとめておく。 # このあと、基本変形を利用して、行列式を求めるので、ここで基本変形による # 行列式の変化をしらべておく # 基本変形には、行の操作と列の操作があるが、これは転置があるので、きにしなくてよい [基本変形 による行列式の値の変化] 基本変形 行列式の値 P_n(i,j) |P_n(i,j)A|=|AP_n(i,j)|= -|A| (定理 2.3) Q_n(i;c) |Q_n(i;c)A|=|AQ_n(i;c)|= c|A| (定理 2.2) R_n(i,j;c) |R_n(i,j;c)A|=|AR_n(i,j;c)|= |A| (系 2.5) # 基本は、行列式の計算を定義通りに行うのではなく、この基本変形を利用して # 行列式が簡単に計算できるような形にもってゆくことになる。