代数学幾何学 B (2009/10/22) # 前回、行列式の定義とその性質をやった [定義] (行列式) det(x_1,..,x_n) = \sum_{σ\in S_n} sgn σ x_{1,σ(1)} .. x_{n,σ(n)} [性質] n 重線型性、交代性 を満す # じゃあ、逆に、n 重線型性、交代性 を満す場合はどうなる ? # 実は、ほとんど、行列式と同じ [定理 2.6] F(x_1,..,x_n) が n 重線型性、交代性 を満たせば F(x_1,..,x_n) = F(e_1,..,e_n) det(x_1,..,x_n) となる。 # つまり、行列式に、定数 (F(e_1,..,e_n)) を掛けたものになる proof) x_1j x_j = ( x_2j ) = \sum_{i=1}^n x_{ij}e_i ... x_nj とすると、 F(x_1,..,x_n) = F(\sum_{i_1=1}^n x_{i_1j}e_i_1, .., \sum_{i_n=1}^n x_{i_nj}e_i_n) であるが、n 重線型性を利用して、外に出すと = \sum_{i_1=1}^n .. \sum_{i_n=1}^n x_{i_1j} .. x_{i_nj} F( e_i_1, .., }e_i_n) ところが、交代性があるので、F(e_i_1,..,e_i_n) の中に同じものがあれば 0 になる。 よって、足し算して意味があるのは、i_1 から i_n が全て異なる、すなわち、 σ = ( 1 .. n ) \in S_n i_1 .. 1_n の時のみ。 よって、 = \sum_{σ \in S_n} x_{σ(1)1} .. x_{σ(n)n} F( e_{σ(1)}, .., e_{σ(n)} ) ここで、再び、交代性を利用すると F( e_{σ(1)}, .., e_{σ(n)} ) = sgn σ F(e_1, .., e_n) となるので、 = \sum_{σ \in S_n} x_{σ(1)1} .. x_{σ(n)n} sgn σ F(e_1, .., e_n) となる。ところが、F(e_1, .., e_n) が共通なので前に出すと、 = F(e_1, .., e_n) \sum_{σ \in S_n} sgn σ x_{σ(1)1} .. x_{σ(n)n} となるが、後は、実は、転置行列の行列式の定義になっている。 = F(e_1, .., e_n) | {}^t A | しかし、すでに、転置行列と元の行列の行列式は同じ値なので、 = F(e_1, .., e_n) |A| = F(e_1, .., e_n) det ( x_1, .., x_n ) となる [例 4] (バンデルモンドの行列式) # バンデルモンドの行列式は、いろんな所で、出てくる F(x_1,..,x_n) | 1 1 .. 1 | | x_1 x_2 .. x_n | = | x_1^2 x_2^2 .. x_n^2 | | .. | | x_1^{n-1} x_2^{n-1} .. x_n^{n-1} | = Δ(x_1,..,x_n) = \pi_{i F(r) = ( E_r O ) O O となるが、 s( F(r) ) = r # 左上の部分が E_r で |E_r| = 1 なので、 # r 次の 0 でない小行列式は作れる # 一方、r + 1 次の小行列式をつくると、どうしても # 0 だけの行が入るので、その値は 0 となる # よって、s ( F(r) ) = r である。 となる。 # rank は基本変形で変らなないので、 # s も基本変形で変らないことを示せばよい。 (1) P(i,j) では、s は変らない (2) Q(i;c) では、s は変らない (3) R(i,j;c) で s は変るか ? A の 第 i 列に、第 j 列目を加えて B になったとする # A と B では i 列だけが変っている A の s(A) 次小行列式で 0 でないものを Δ とし、対応する B の小行列式をΔ' とする。 第 i 列が含まれていない場合は Δ = Δ' なので s(A) = s(B) 第 i 列と j 列が共に含まれている場合 Δ = Δ' なので s(A) = s(B) 第 i 列がはいっていて j 列がはいっていない場合 A で 第 i 列を、第 j 列に置き換えた小行列式を Δ1、B の対応する行列式 を Δ1' とすると、 Δ1 = Δ1' ここで Δ' = Δ + cΔ1 なので、 Δ = Δ' - cΔ1 ここで、 Δ \ne 0 なので、 Δ' と cΔ1 のどちらかは 0 でない よって、 s(B) >= s(A) ところが、 A から B に基本変形ができる なら、 B から A に基本変形ができる すなわち、 s(B) <= s(A) よって s(B) = s(A) 以上により、基本変形を加えても s の値がかわらないので、 s(A) = rank A == 次回は、休み。 次々回、実際の行列式の具体的な計算を行う。 その後くらいにそろそろ中間テストをやるので...