2009/11/19 代数学幾何学 B # 30 分遅刻.. # 同値関係の話があったらしい.. [定義] 集合 A の任意の二つの要素の間の関係で、次の三つの性質がある関係を同値関係と呼ぶ。 x 〜 x (反射律) x 〜 y -> y 〜 x (対称律) x 〜 y, y 〜 z -> y 〜 z (推移律) [定義] \~x = { y \in A | x 〜 y } とし、 A/〜 = { \~x | x \in A } としたとき、これを商集合と呼ぶ。 例 1 : 座標系のない空間(平面) 二点の対 (P,Q) を 矢印 PQ とみなす。 A^3 (^2) = { PQ | P, Q は空間(平面)の点 } # これはまだ、ベクトルではなく、単なる矢印 として、これに次のような同値関係を導入する PQ 〜 P'Q' <-> 向きと長さが同じ これの商集合を考えると、それはベクトル空間となる。 # 高校までは、「向きと長さが同じ」なら、「始点が異っても同じベクトル」 # と考えていたが、暗黙の内に、商集合を仮定していた ベクトル空間は、同値類を利用して定義することができる。 [問] M_{m,n} : { m,n 型行列全体 } A -->*--> B の時 A 〜 B とすると、これは同値関係 proof) 1) A --> A なので、 A 〜 A 2) A 〜 B とすると、 A --> B なので、逆に B --> A なので、 B 〜 A 3) A 〜 B, B 〜 C とすると、 A --> B, B --> C なので、A --> C よって、 A 〜 C # じゃ、どのくらいあるか ? A --> Fmn(r) なので A 〜 Fnm(r) すなわち rank A = r ここで、異なる r は、 0 <= r <= min{m,n} なので、 ようするに rank が等しいものどうしにわけたことになっている。 よって、 min{m.n} + 1 種類 ある。 [写像] T : A --> B a の T による全逆像を考える T~{-1}(a) = { x \in A | Tx = a } [例 2] A = B = R で、Tx = x^2 を考える # これは、全射でも単射でもない。 # 全逆像を考えると.. a>0 T^{-1}(a) = { \sqrt{a}, -\sqrt{a} } a=0 T^{-1}(a) = { 0 } a<0 T^{-1}(a) = {} # 全逆像の要素は複数の時も、1 の時も 0 の時もある 一般に、 T(A) ( = { T(x) | x \in A } ) : A の T による像 を考えると、 T(A) \sub B である。 [定義] T(A) = B の時、T は、全射 ( 上への写像 ) とよぶ [定義] 上への写像かつ一対一の時、全単射と呼ぶ [定義] I_A : A ---> A : 恒等写像 \in \in x |--> x = I_A(x) [定義] T : A -> B, S : B -> A が、 S T = I_A T S = I_B を満す場合に、S は T の 逆写像と呼び T^{-1} で表す。 [定理] T : A --> B が逆写像を持つ <-> T は全単射 # 注意 # T^{-1} は、さきほど、全逆像と同じ記号 # 逆写像が存在すれば、 # T^{-1}(y) = x 逆写像 # T^{-1}(y) = {x} 全逆像 # となり、ほとんど同じなので、きにせずに、そのまま利用する。 [例 3] det : M_n(C) -> C M_n(R) -> R ( a 0 .. 0 ) -> a 0 1 .. 0 0 \ 0 0 .. 0 1 なので、全射だが、n > 1 の時に、単写にならない det^{-1}(0) は、正則でない行列全体になる [例 4] ( 自然な射影 (写像) ) A どの同値関係 〜 と商集合 \~A を考える x \in A に対して、 \~x \in \~A を与える関数 P を考える P は全射はあきらか ( P x = \~x なので ) P は単写になることはあるが、それは特別な場合 # 単写になるのは、同値な要素がない場合 ( つまり、関係自身に意味がない ) 場合 [例 5] T : C^n --> C^m : 線型写像 R^n --> R^m T に対応する行列を A とする。 # 後で定義するが、 T (A) の次元を rank A で定める これは、一般には、全射でも単写でもない rank A = m <-> 全射 T^{-1}(0) = 0 <-> 単写 # ここで 0 に矢印がないは、以下で述べるように # 線型空間の要素は、「矢印に思えないもの」が沢山あるので... == # ここから、一般のベクトル空間の話 [定義] 集合 V が、(I), (II) を満す時、V を線型(ベクトル)空間という (I) # 足し算の公理 : 足し算があり、それが足し算らしい x, y \in V に対して 和 ( x + y \in V ) が定まり、以下を満す 結合法則 (1) (x+y)+z = x+(y+z) 交換法則 (2) x+y = y+x 零元の存在 (3) \exist! z \in V s.t. \forall x \in V [ x + z0 = z + x = x ] この z を単位元と呼び、0 で表す 逆元の存在 (4) \foral x \in V [ \exist! x' \in V s.t. x + x' = x' + x = 0 ] この x' を x の逆元と呼び -x で表す (II) # スカラー倍の公理 a \in C に対応して x \in V の a 倍 ( a x ) という要素が定まり、以下を満す (5) (a+b)x = ax + bx (6) a(x+y) = ax + ay (7) a(bx) = (ab)x (8) 1x = x # ここまでの話で、「向き」とか、「長さ」というものは関係ない # C を R とすれば、実ベクトル空間になる。以下 C または R を K で表す。 # 以下、いくつか線型空間の例を示すが、これらは今後も何度かでてくる [例 1] V = { 0 } # 要素が 1 個の集合で、この要素はなんでもよい まず、和と定数倍を考えるが、V の要素が一つしかなく、結果も V の要素でなければ ならないので、 0 + 0 = 0 a 0 = 0 と决める。すると、(I), (II) を満すのは容易に確かめられる。 [例 2] V^3, V^2 : 実線型空間 # 当然満す。 [例 3] K^n : K-線型空間 # 当然満す。 特に n = 1 の時には、K 自身になるが、これも線型空間 [例 4] M_m,n(K) : K-線型空間 普通に、行列の和と行列の定数倍を考えれば、線型空間 # これは、行列なので、ベクトルとは思えないが、これもベクトル空間になっている # 「行列」の向きや、長さって何 ? => ベクトルは別に矢印である必要がないので、考えなくてもよい [例 5] A \in M_m,n(K) としたとき、 V = { x \in K^n | Ax=0 } \sub K^n とすれば、V は、K-線型空間になる。 V に、和とスカラー倍を定義する必要があり、それは、そのまま K^n の和とスカラー 倍を利用したいが、これは、単純ではない。なぜなら、 x, y \in V の時に、 x + y \in V とは限らない しかし、実際には、 A(x+y) = Ax + Ay = 0 + 0 = 0 A(cx) = cAx = c0 = 0 となるので、問題ない。 後は、(I), (II) のチェックだが、(I), (II) は、K^n で成立するので、 K^n の部分集合 V でも、そのまま成立する。 ## これは、Ax の左が 0 だから上手く行く # このように元の集合がベクトル空間の時、その部分集合でも、元の集合の演算を # を採用して、ベクトル空間にする事が多い。 [例 6] # 矢印らしくない例 V = { f(x) | K-係数多項式 } 和、定数倍を、関数の係数の和、定数倍で定義すれば、演算が入る 0 元は、0 とすると、(I), (II) を満す 他にも、 V' ( \sub V ) = { f(x) \in V | n 次元以下 } とすると、ベクトル空間となる [例 7] # これも矢印らしくない例 V = { T | A -> K } ( A は集合 ) T, S \in V に対して (T+S)(x) = T(x) + S(x) (cT)(x) = c(T(x)) とすれば、K-線型空間 ## これは、T の値域が R, C なので上手く行く ## 勝手な集合を値域を考える時は、だめ V' { T | T:[a,b] -> R: 連続 } これは、実線型空間 # 次の例の 9 と 10 は、今後も何度も出てくるので、次回詳しくやる