Powered by SmartDoc

情報通信ネットワーク論[演習](2003/06/13)
Ver. 1.1a

2003年6月13日
栗野 俊一
日本大学 理工学部 数学科
kurino@math.cst.nihon-u.ac.jp
http://edu-gw2.math.cst.nihon-u.ac.jp/~kurino/2003/ccna/ccna.html
情報通信ネットワーク論[演習]2003/06/13 の資料

目次

目的

この演習の目的は次の三つです。

IP Networkの基本の確認
前々前回の実習の復習( Windows, Linux操作を除く)。
CISCO Router固有の内容
  1. CISCO Routerの基本的な操作方法。
  2. CISCO Routerでの具体的なNetworkの設定方法。

演習

Cisco Routerを用いた、Network実習

CISCO Router の設定準備

Network 設定に必要な情報

CISCO Routerの場合も、Linux の場合Windows の場合と同様IP Network設定に必要な情報は、同じく、以下の4つです。

  1. IP Address
  2. subnet mask
  3. default gateway
  4. name server address

CISCO Router と今までの違い

CISCO Routerが、これまでのWindowsや、Linuxと違う点を述べると、以下のようになります。

DisplayやKeyboardがない

WindowsやLinuxの場合は、Note-PC自身の設定を行っていましたから、Note-PC自身のもつ、DisplayやKeyboardが利用できましたが、CISCO Routerには、そのようなものが付いていません。

どのようにして、設定(操作)を行うのでしょうか?

Network用の接続口(NIC, Ethernet Interface)が予め付いている(しかも形が違うことがある)。
これは、CISCO Router(1)が、もともとNetworkに接続して利用する(というか実際は、Networkを作り上げる部品として.. )設計されているから、当然(2)ですね。
いきなり電源をoffしてよい
これは、CISCO Routerがいわゆるハードディスクを内蔵していないからです。Routerとしての仕事は、Linux PCでも代用可能なことが多い(3)のですが、Linux PCの場合は、ハードディスクを内蔵しておいきなり電源を切ることができませんので、その点で、現場では、Linux PCより、CISCO Routerの方が使いやすいということになります。

これらの違いの内、後者の二つは、問題ありませんが、最初の一つに関しては、次のTerminal Emulator Softを利用して、Windows PC (あるいは、Linux PC )で、このDisplayとKeyboardの代用を行います。

  1. 演習用に用意されているCISCO Routerには、大きく言って、1600 (1700)シリーズと、2500シリーズの二つのシリーズが用意されている。

    1600シリーズは、小型で、曲線に囲まれた形をしている方で、これは、基本的に1S1E ( 1 Serial, 1 Ethernet )の物である。これのEthernetは、10Base-T (RJ-45)の口(I/F)とAUIの口の二つの口がついており、選択可能(二つは同時に利用できない)である。

    2500シリーズは、平べったい、直方体の形。いわゆる19'inchラックに入る1 U ( Unit )のサイズで、2S1E ( 2 Serial, 1 Ethernet )である。

    2500シリーズのEthernetの口は、AUIなので、10Base-Tを利用するには、MAUが必要になる。

  2. 実を言えば、もっと、高級な(CISCO) Routerは、それ単体では、Network用のI/Fが付いていないものがあります。もちろん、そのままでは、利用できないので、I/Fを本体とは別に購入して、それ追加する形になっているわけですが、追加するI/Fは、後で変更ができるわけですから、初めから特定なものが固定で付いているより便利な仕組みになっている(が、その分、高価な.. )わけです。
  3. 少なくてもCCNAの範囲では、CISCO Routerにできることは、ほとんど、Linux PCでも可能。

TeraTermPro のInstall

前節で述べたように、CISCO Routerには、KeyboardもDisplayもついていません。したがって、CISCOの状態を調べたり、CISCOにこれから演習で行うような、様々な設定を行うには、不利な状況(4)と言えます。

しかし、これは、CISCO Routerに用意されているConsoleの口とPCのSerialの口をConsole Cableで接続し、更にPC側で、Terminal Emulator Softを起動することによって、PC側のKeyboardとDisplayを、あたかもCISCO Router自身のKeyboardとDisplayかのように利用することが可能(5)になります。

このTerminal Emulator Softですが、Windows ( Linuxからの利用は、次回以降行います)には、予め、「ハイパーターミナル」と呼ばれるソフトが標準で用意されているのですが、これは、使いづらいので、TeraTermProと呼ばれるSoft (これは、本来、sharewareですが、学生の皆さんが利用する場合は、Freewareとして利用可能です)をInstallし、利用することにします。

Freeware って何 ?

Freewareというのは、原則として、著作権者の意図によって(インターネット等を利用して)無償で入手でき、また、利用可能なSoftwareの総称です。

これに対して、普通の店で購入するSoftwareのは、一般に「有料ソフト」と呼びます。

また、Freewareと「有料ソフト」中間に位置付くものとしてSharewareというものもあり、これは、入手と、試用は無料だが、本格的な利用を継続するには、料金が必要なものです(TeraTermProは、本来は、利用を行うために料金が発生するが、TeraTermProの作成者の好意により、教育のための利用は無料になっていますので、心配せずに利用可能です。もし、これが気に入って、大学を卒業後も利用を続けようと思うのでしたら、是非、料金を払ってあげてください。)。

Freewareは、著作権者の好意に基づいて、われわれが利益を被ることができるわけですので、是非、著作権者に感謝の気持ち忘れないようにしましょう。

TeraTermProの入手は、Internet経由で、TeraTermPro の Home Pageにあるttermp23.zipをDownloadしてください。

Install作業は、ファイルのDownload後、これを開くだけで、後は、表示に従って進めれば、何も問題なくできると思います。

ついでに ssh も入手しよう。

この演習ではまだ使いませんが、ついでに、sshも入手してInstallしておくと便利です。

sshに関しては、Windows から ssh で接続する方法が参考になるでしょう。

sshを利用すれば、PCから、数学科演習室に接続して、(そこにあるC / Fortran Compilerなどが.. )利用可能になります。

  1. とはいえ、通常CISCO Routerの設定は、特に要望がない限り、納入時に、一度だけ行えばよく、その後は、電源を入れっぱなしにして置いておく(あるいは、必要な時に、電源を入れ、それ以外は、単に電源を切るだけ.. )という用法がほとんどであり、むしろ、Displayや、Keyboardは、無用というか、邪魔なことが多い。

    また、状況の確認という問題も、後の実習で行うように、Network経由で行うことが可能なので、動き始めたCISCO Routerには、もはや、KeyboardもDisplayも不要である。

    つまり、今回のCISCO RouterでのConsole利用というのは、非常に稀な状況(とはいえ、CISCO Routerの初級技術者の仕事はほとんど、この初期設定なのだが.. )と言える。

  2. つまり、この状態であれば、PCのKeyboardからの入力が( PCを経由して.. )そのまま、CISCO Routerに与えられ、逆に、CISCO Routerの出力メッセージが(やはり、PCを経由して.. ) PCのDisplayに表示される。

Cable 接続

PCとCISCO Routerの接続は、コンソールケーブルという特別なケーブルで、CISCOのコンソール口(6)と、PCのSerial Port間を結びます。

また、CISCOのEthernet口と、Hub間も10Base-Tで接続しておきましょう。CISCO 2500の場合は、MAUが必要なことに注意してください。

  1. コンソールと、10Base-Tのコネクタの形が同じ(共にRJ-45)なので、挿す場所を間違えないように。

TeraTermPro の起動と接続の確認

CISCOとPCをつないだら、TerTermProを起動して(7)ください。接続は、Serialを利用しますので、そちらを選んでから[OK]ボタンをクリックします。

その後に、CISCOの電源を入れると、画面上にメッセージが流れ始めるはずです。その中にCISCOの文字が現れれば、無事接続しているといえるでしょう。

なお、CISCOの電源を入れた後、実際に設定が可能になるまでは、時間がかかりますので、多少お待ちください。

  1. Installがうまくいっていれば、[スタート]→[プログラム]→[Tera Term Pro]→[Tera Term Pro]で、起動します。

CISCO Router の利用法

プロンプトの確認

電源投入後、しばらくすると、「Enter Keyを押すと開始します」といった意味のメッセージが出力されますので、[Enter] Keyを押します。

すると、Router>のようなメッセージ(8)が表示されます(9)

この状態で、[Enter] Keyを押すと、同じメッセージが出力されるのでこれが、プロンプトであることがわかります。

プロンプトの確認
Router>
Router>
Router>
  1. 人によって異なるかもしれません。
  2. もし、[Yes/No]と出ている場合は、Ctrol-Cを押すと良いでしょう。

特権EXECモード(Enable Mode)

この状態では、設定変更ができませんので、次に、enableというコマンドを入力し、[Enter] Keyを押します。

enable コマンド
Router>enable
Password: 
Router#

ここで、パスワードが聞かれる可能性があります(10)が、その場合は、そのパスワードを、演習中にお伝えしますので、それを入れてください。

このコマンドによって、Router#のように、プロンプトが、変化し、これまでの>から#に変わって、状況が変化したことがわかります。

この状態のことを「特権Execモード」あるいは、単にEnable Modeと呼びます。

現在の状態が、Enable Modeかどうかは、プロンプトで判断できるわけです。

  1. これは、LinuxでのLoginと同様な作業です。

Show コマンド

Enable Modeでは、Showコマンドを利用して、CISCOの状態を確認することができます。

ここで、利用するコマンドは、以下の通りです(試してみましょう)。

show interface ethernet 0

Ehternet 0 (Enternet Port No.0)に設定されている情報を確認します。

これによって、現在I/Fに設定されている、IP Addressや、Subnet maskを知ることができます。

最初の状態では、MAC Addressを見ることができますが、IP Addressは、設定されていないはずです。

show interface ethernet 0 の結果
Router#show interface ethernet 0
Ethernet0 is up, line protocol is up 
Hardware is QUICC Ethernet, address is 00d0.58e0.1c4d (bia \
    00d0.58e0.1c4d)
MTU 1500 bytes, BW 10000 Kbit, DLY 1000 usec, rely 255/255, load \
    1/255
  Encapsulation ARPA, loopback not set, keepalive set (10 sec)
          ....

ここでは、二行目の後半のaddress is 00d0.58e0.1c4dの部分がEthernet (MAC) Addressの表示部分で、00d0.58e0.1c4dが、十六進数12桁( 48 bit )のAddressです。

show ip route

Routing Tableの表示であり、Linuxのnetstat -nrと同じ意味です。

今回は、default routeの確認に利用します。

show ip route の結果
Router#show ip route
Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, \
    B - BGP
D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, * - candidate \
    default
       U - per-user static route, o - ODR

Router#

ここでは、何の設定も行われていないので、当然のことながら、Routing Tableは、空っぽであり、全く表示されていません。

show running-config

CISCOに設定されている、設定記述の全てを表示します。

show running-config の結果
Router#show running-config
Building configuration...

Current configuration:
!
version 11.2
no service password-encryption
no service udp-small-servers
no service tcp-small-servers
!
hostname Router
!
            .....
!
end

Router#     

表示の途中で、画面の左下に--More--と表示された場合は、[スペース]キーを入力すると、先に進みます。

本来は、この設定内容を見るだけで、全て設定情報が確認できますが、この方法だと、目的のものを探すのが面倒なので、IP Address等は他のコマンドで確認したのですが、name serverだけは、これで確認するしかないようです。

設定モードとconfig コマンド

enable modeで、config terminalと入力し、[Enter]と押すと、プロンプトが変化します。この状態を、設定モード、あるいは、単にConfig modeと呼びます。

config mode への入り方
Router#config terminal
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Router(config)#

この状態では、設定のみを行い、Showコマンド当は利用できません。なお、Ctrol-Zを入力することによって、Config Modeを終了し、enable modeに戻ることができます。

config mode からの抜け方
Router(config)#^Z
Router#

表示上では、^Zと表示されていますか、キーボードからは、[Ctrl]キーを押しながら、[z]キーをポンと押すことで実現します。

CISCO Router のNetwork 設定

Cisco Routerの場合は、DHCPでIP Address等を設定するということは、ほとんどないので、今回は、手動での設定だけです。

設定は、常にconfig modeで行います。設定が済んだら、Control-Zを入力して、enable modeに戻り、設定を確認するという手順になります。

ip address / subnet mask の設定

ip addressとsubnet maskの設定(これは、同時に行う)は、次の様にinterfaceコマンドを利用します。

以下の設定を入力する前に、config modeに入り( config tとする)更に、設定後は、enable modeに復帰する( Control-Zを入力する)ことを忘れないでください。

interface ethernet 0
ip address 169.254.2.xxx 255.255.0.0
no shutdown

なお、cisco routerのip addressは、自分のPCのip address (おそらく、169.254.1.xxになっているはず.. )の三つ目の数字を1から2に変えたもの(もし、自分のPCのIP Addressが、169.254.1.123ならCISCO RouterのIP Addressは、169.254.2.123とする)にしてください。

IP Address/subnet mask の設定方法
Router#config terminal
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Router(config)#interface ethernet 0
Router(config-if)#no shutdown
Router(config-if)#ip address 169.254.2.xxx 255.255.0.0
Router(config-if)#^Z
Router#

ここでは、ip addressとして、169.254.2.xxを、subnet maskとして、255.255.0.0がそれぞれ指定されています。

ここで、ちょっと、気づいて欲しいことは、interfaceコマンドを入力した後に、プロンプトが微妙に変化したことです。これによって、interfaceコマンドの後の指定が、interfaceコマンドで指定したデバイス(ここでは、Ethernet 0 )への設定を行っているのだということを、設定者に喚起しているわけです。

ping

Linx, MS-Windowsと同様pingコマンドが利用できます。

pingコマンドの後に、通信の宛先( IP Addressまたは、Domain Name )を指定することによって、そことの通信が可能かどうかを判定できます。

ping コマンド
Router#ping 169.254.0.1
Type escape sequence to abort.
Sending 5, 100-byte ICMP Echos to 169.254.0.1, timeout is 2 \
    seconds:
!!!!!
Success rate is 100 percent (5/5), round-trip min/avg/max = 1/2/4 \
    ms
Router#

pingもshowコマンド同様、enable modeで行います( config modeでは実行できないことに注意してください)。

default gateway の設定

default gatewayの設定は、config modeで、次のip route命令で設定します。

ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 169.254.0.1

default gatewayのaddressは、PCと同じものを設定します。

default gateway の設定方法
Router#config terminal
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Router(config)#ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 169.254.0.1
Router(config)#^Z
Router#

ここでは、default gateway addressとして、169.254.0.1を指定しています。

name server の設定

name serverの設定は、次のコマンドで行います。

ip name-server 192.168.3.1
ip domain-lookup

name serverのaddressも、PCと同じものを設定します。

default gateway の設定方法
Router#config terminal
Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
Router(config)#ip name-server 192.168.3.1
Router(config)#ip domain-lookup
Router(config)#^Z
Router#

ここでは、name server addressとして、192.168.3.1を指定しています。

以上の様にして、4つの情報を指定することができることが理解できたと思います。

そこで、以下に、この方法を利用して、実際にip addressを設定してみましょう。

Network 関係のコマンド

ここでは、Networkに関係する、いくつかのコマンドを説明します。

ping

Linx MS-Windowsと同様pingコマンドが利用できます。

pingコマンドの後に、通信の宛先( IP Addressまたは、Domain Name )を指定することによって、そことの通信が可能かどうかを判定する。

次のaddressを試してみなさい。

自分のPC
まず、最初に自分のip addressを試してみよう。
友人のrouter
友人のip addressを聞いて、そことの通信を試そう。
133.43.98.133
直接接続していないHostの例。
www.yahoo.co.jp
domain nameを指定する場合の例。この場合に、pingの出力の中にyahooのip addressも書かれているので、それもメモしておこう。
trace

Linuxでは、traceroute, Windowsでは、tracertでしたが、CISCOでは、traceコマンドとなります。

tracerouteコマンドの後に、通信の宛先を指定することによって、そことの通信をするときに、追加するRouterのIP AddressのListを表示する。

show arp

arp tableの表示は、LinuxやWindowsと異なり、show arpコマンドを利用します。

これによって、IP AddressとMAC Addressの対応関係を知ることがでます。

Network 実習

実習

ping/show arp/trace
  1. show arpを実行し、現在のarp tableには、何もないことを確認しなさい。
  2. 二人一組になり、一方から、他方にpingしてみよう。
  3. pingの後にもう一度、show arpを実行し、通信相手のIP Addressや、MAC Addressを確認しよう。
  4. 上記の実験をいろいろな人に対して行ってみよう。
  5. trace www.yahoo.co.jpなどとして、自分のPCから、yahooまで、どれくらいのrouterを経由するかを確認しなさい。

    このときについでに、yahooのip addressも確認しておくこと。

手動による設定
  1. config modeを利用して、ip addressとnetmaskだけを設定してください。
  2. この状態で、CISCO同士, PC、CISCOは、pingが可能だが、外(例えば、yahoo )とは通信できないことを確認しよう。

    pingを使ったときに、ip addressを指定した場合と、www.yahoo.co.jpとした場合のメッセージの違いも確認しよう。

  3. 今度は、default gatewayを設定してみよう。
  4. 同様にping/traceを利用して、今度は、ip addressを指定した場合にのみ、yahooと通信できることを確認しよう。

    domain name ( www.yahoo.co.jp )をつけたらどうなるだろうか?

  5. 最後に、name serverも設定してみよう。
  6. やはり、ping/traceで、yahooと通信( IP Address, Domain Nameの両方)を確認しよう。

電源の切り方

CISCOでは、いつでも、電源を切ることができます。

ただし、電源を切ると、これまで設定した内容は、失われます。

設定した内容を次回以降も利用できるように保存するには、保存のためのコマンドを実行しますが、今回は、説明しません。

次回以降の演習で説明する予定です。